「雪菜が一人で治療するって本気?」
「うん、その間に硝子には3つの事を出来るようになって貰うよ」
季節は夏、呪霊と虫が最も多く出現する季節だ。
そんな呪術師と虫取り少年らが大変な時期に、私は硝子にとある課題を出したのだった。
私が東京都立呪術高等専門学校に入学してから3ヶ月が経ち、さしす組との関係性もかなり変わった。
五条くんと夏油くんは、授業や任務で会う度に私と硝子にちょっかいをかけてくるのだ。
それを何回か繰り返していくうちに、やっと二人の顔面偏差値の高さに慣れてきて、尊死する確率が低くなってきた。
稀に事前通達なしにヘアセットを変えてきた五条&夏油ペアが教室に入って来て、尊みの暴力で轢き殺されることはあるけれど、普通の状態であるならば8割は致命傷を避けられる。
しかしだ。
顔が慣れてくると今度は耳が壊される。
今まで顔で精一杯だった脳の容量に余裕が生まれ、耳から入ってくるイケメンボイスを脳が理解してしまう。
中村○一&櫻井○宏ボイスで両側から話しかけられてみな? 飛ぶぞ。(n敗)
脳内で二人のことを、アイドルみたいな雲の上の存在のポジションから、同じクラスのカースト上位の人くらいまで下げれたのほんとに褒めて欲しい。
硝子とはもう毎日一緒と言っても過言では無いくらい隣にいる。
ほぼ任務が被っているので、むしろ一緒に居ない時間の方が少ないかもしれない。
一度、私が頑張って良くしていた第一印象を聞いてみたことがある。
最初の方は硝子曰く、『外見はかわいいけれど、内面が変態』という偏見を持たれていたみたいだ。
全くもって遺憾である。
しかし、今となってはたまにお休みを合わせてスタバに行ったりします。
お揃いのコスメを買って双子コーデでディズニーしたり、2年の歌姫先輩に奢られに行ったりした。
もうお互いが下の名前で呼び合う仲だもんね。
羨ましかろう?
出来ないと思ってた呪術廻戦の世界で、原作キャラとの青い春。
転生して良かった……。
そんなこんなで出会って3ヶ月、ニコイチになった雪菜&硝子ですが、そろそろ環境の変化にも慣れたし、硝子も私も反転術式アウトプットの精度向上が伸び悩んで来た頃。
そんな時ふと不安が過ぎる。
私はこのまま高専で治療の任務のみをこなしていって、本当に推しを救えるのだろうか、と。
最近はさしす組に思い入れが強すぎて、夏油くんも死んで欲しくないし、硝子の曇り顔も見たくないと思ってしまうほどだ。
ひとまず推しを救わないと、日本が完全に終わってしまうので、まずは五条くんを第一優先で。
私が転生する前の原作知識の中で、五条悟を死へと導いてしまうターニングポイントは全部で4つくらいあった。
時系列で順番に辿っていくと。
1つ目は、 星漿体である天内理子の死。
2つ目は、呪詛師となった夏油傑の死。
3つ目は、獄門疆による五条悟の封印。
4つ目は、両面宿儺と一対一の死闘。
ほんとはもっとあったんだろうけど、細かいところまで覚えていない……雪菜、アンタ記憶力良かったんじゃないの?
とりあえず今思い出せる情報の中で、一番最初に立ちはだかる壁は、 星漿体の天内理子事件。
そして、そのイベントのボスは。
『伏黒甚爾』
最強の
私のミッションは、パパ黒が理子ちゃんをはいお疲れ解散させないように守り抜くこと。
そして、『盤星教 時の器の会』のクズ共と五条&夏油ペアを接触させないこと。
この事件は五条悟が反転術式を修得し、術式反転と虚式を使えるようになる超強化イベントだ。
しかし、夏油傑の呪術師であることの根幹が揺らいでしまう、SAN値チェックイベントでもある。
この事件 + 九十九姐さんの言葉 + ミミナナ村事件 = 特級呪詛師夏油傑の完成だ。
もし五条悟の唯一の親友である夏油傑が、呪詛師にならず処刑を免れることができたならば、渋谷事変での五条悟封印は起こりえないはずだ。
何故ならば、獄門疆での封印の際に必要な脳内時間1分を、羂索は夏油傑の姿無しでは成し遂げられないからだ。
よって、2人を盤星教に合わせずに理子ちゃんを守る。
これは決定事項、なんなら私がこの手で……。
いや、今それを考えるのは止めておこう。
まずは私がパパ黒よりも強くならなくちゃいけない。
しかも理子ちゃんを守りながら。
少なくとも、覚醒五条くんとパパ黒がやり合うところまで時間稼ぎ出来るほどには。
多分現時点の私の力では、あの身体能力と特級呪具に敵わないだろう。
実際にどれぐらいのスピードとパワーがあるのか、こちらの世界で見た事が無いから正しくは分からないが。
まあ、覚醒前の悟くんの六眼で捉えきれない速さは私も対応が不可能だってことくらいは分かる。
だからといって、対策を考えずに出くわしてそのまま殺されては、原作通りの地獄の世界へ一直線だ。
やはり修行パートは必須。
期限は1年間。
それまでに対人戦の経験を増やし、術式の解釈を更に広げなければ、あのバケモノには勝てない。
しかし、現在の任務は治療ばっかり。
硝子と2人でやってもまあまあ忙しい。
ならば……。
あっ、お話の冒頭に戻ります。
「硝子を最強ヒーラーに魔改造しちゃおう大作戦だ!!」
目の前の硝子は、ドン引き&白い目でこちらを見ていた。
「まーた、雪菜の発作がでたよ」
「発作じゃないって! 硝子も反転術式もっと楽になりたいでしょ?」
「それはそうだけどさー」
「でしょでしょ! なら早速、後のお仕事は私に任せて!」
はしゃぐ私に、硝子はため息。
「はあ、雪菜は一度おかしくなったら、満足するまでずっとこうだから……わかったよ。3つって何やれば良いの?」
「よくぞ聞いてくれた。まず1つ目は呪力総量の拡張」
え、まだ1つ目の題しか話してないのに、証拠に可哀想な人を見る目で見られたけど。
「あのね、雪菜。術師の呪力総量は先天性。生得術式と一緒で生まれた時から決まっている」
「知ってる」
「ならなんで──」
「私の術式を使う」
私は呪力を全身から右手へと集める。
1年という限られた時間を効率的に使うには、この呪術高専保健室を原作通り一人で回してもらうしかない。
今のところ保健室に来た呪術師は、
しかし、原作ではそんなこと無かったはずだ。
1人でも多く救う、私が伏黒甚爾レベルに強くなる。
両方やらなくっちゃあならないのが、転生者の辛いところだな。
そのために私が抜けても事足りるぐらい、硝子の反転術式を強化する。
世界を救うためには、推しを救う。
推しを救うためには、私が強くなる。
私が強くなるためには、硝子を強くする。
なんて遠い回り道。
でも仕方ない。
これは世界を救う戦いである!
「それじゃあ、行くよ!」
そうして私が呪力を溜めた手を、硝子に向けて──。
「いや何が?」
ペシッ
「説明を、しろ?」
「あっ、はい……」
ほっぺた叩かれました。
誤字脱字感想評価してくれた方ありがとう!
貴方の大切な時間をこの作品に割いてくれて感謝の舞。