長い道のりだった。
次回からいっぱい原作キャラ出しちゃうもんねっ。
なんならここまでが導入みたいなところ is ある。
自身に刻まれた生得術式に呪力を流し込むと、術式の効果が発動する。
これは呪術師が行う、術式を行使する際の必要最低限な手順である。
では、反転術式の際に使う正のエネルギーを術式に流し込むとどうなるか?
それはもうね。
原作ファンであるならば、知っていて当然だ。
呪力は負のエネルギーであり、正のエネルギーは別物。
術式が同じでも、流すエネルギーが別なら術式効果も変化する。
ではどのような変化が起こるか。
正と負のエネルギーは互いに正反対に位置するエネルギーである。
よって、術式効果も正反対に生まれ変わる。
例を挙げると、五条悟の生得術式である無下限呪術の術式順転【蒼】は、収束する力を生み出す。
それに対して術式反転【赫】は、弾く力を生み出す。
このように生み出す力の内容が反転しているのだ。
では、私の生得術式である呪力操術はどうだろう?
まだ一度も成功したことないけど、なんだか今日は成功しそうな、そんな気がする。
さっきの【反転術式・辿】のおかげかな。
正のエネルギーの巡りが良い。
『誘発』『羽化』『弾圧の救済』
『呪力操術、術式反転、【呪縛解放】』
術式が発動された瞬間、私の体の中の全呪力が、自身の呪力操作から解放されて体外へ、更にその勢いは止まらず四方八方へ拡散していった。
これが呪縛解放発動時に起きる第一段階だ。
つまり私は術式反転の発動に成功している。
では早速実験その2、
『術式反転を成功させて、反転要素・範囲・威力の特定』
さっきまで、命を落としかけていたとは思えない程切り替え早いけど、気にしない。
落としかけたけど、拾えたのだからモーマンタイだ。
完全に呪力を捨て去った私。
気の所為かな。
なんだか、体が羽のように軽い。
まるでどこかの天与呪縛パパみたいだ。
まあ私の場合はただ呪力が0なだけで、身体能力は普通のままなのですが。
この状態になると、自身には無いものの情報を周りから得ようとする人間本来の生存本能により、呪力を体感にて感じ取れるようになる。
視覚で光を、聴覚で音を感じるように、この世界にある呪力を感覚的に捉える。
「まずはお試しだ」
呪縛解放の第2段階。
狐呪霊に掌を向けて、ゆっくりと、ゆっくりと五指を折り曲げてゆく。
『サ、サササササササゲルルアアア』
狐呪霊は絶叫する。
ぼちゅん。
破裂音。
「後8本」
『アガガガガガ』
狐呪霊は苦痛に鳴いた。
ぼちゅん。ぼちゅん。
破裂音。
「後6本、ほら次」
『ヴヴヴアガ……』
狐呪霊は低く唸るようにして、こちらに憎悪のこもった瞳を向けた。
良い目だね。
それでこそ、呪霊。
まだまだ序の口、死んでくれるなよ。
『ササゲロ…………ガ!? 』
苦悶、驚愕、1番は困惑かな?
「術式は使えないよ。お前は呪縛解放の術式対象だ」
呪力操術の術式反転【呪縛解放】は、発動している間は自身の呪力を完全に消し去ることを縛りに、対象の呪力を呪力操作の支配から解放する。
要するに、呪力を制御出来ないようにする。
さあ、ここでひとつおさらいを。
Q.呪霊の身体は何で出来ているでしょうか?
A.負の感情。
呪霊は恨みや後悔、恥辱など、人間の身体から流れた負の感情が具現し意思をもった異形の存在である。
ひとつと言ったな、あれは嘘だ。
Q. 呪力とは何か?
A. 人間の負の感情から漏れ出たエネルギー。
では最後の問題。
Q. 上記の問題の2つから導き出せる真実は?
A. 呪力と呪霊のどちらも人間の負の感情から生まれるものである。
呪力と呪霊はイコールかといえばそうでは無いが、かなり密接な関係にあることは間違いない。
この世の全ての人が呪術師のように呪力を操る事ができるなら、呪霊は生まれないという仮説も、それを元にした説ですよね、九十九の姉貴!
長々と高説垂れて何が言いたいんだ雪菜さん。
つまり、
「狐くん、君自体を術式対象にしているので、呪力で出来たその体、私は君を分解し放題だ」
ぼちゅん、ぼちゅん、ぼちゅん。
狐が泣いた。
「私は君の素敵な尻尾を分解し続けるから、君の再生力が私の呪縛解放を上回るなら、私を殺すチャンスをあげよう」
そこからは、戦いでは無い。
一方的な蹂躙。
私にとっては実験なのだけれど。
そして実験その3、
『呪霊は体の何%まで消滅すると肉体を維持出来なくなるのかの検証、呪縛解放の術式対象範囲の最大値と最小値の観測』
83本目に尻尾が再生出来なくなったので、下半身から順番に分解していき、最後に頭部だけになった狐呪霊は、安らかな表情とともに消滅を確認。
これは術式で祓ったことになるのかな?
まあまあ強めの呪霊だと体が1/10残っていても再生する可能性があるということが分かった。
最後まで気を抜かない事が大事だね
呪縛解放の対象範囲は、最大値が自身の視界全て、最小値はさっきの狐呪霊の尻尾の毛1本でも対象選択可能だった。
もしこれから仲間が増えて戦うことになっても、フレンドリーファイアが起こる可能性を減らせるのは、嬉しい結果だ。
最初は呪力操術ってハズレ術式かも、なんて思っていたが、かなり使い勝手の良い術式で本当に良かった。
何より呪力操作が感覚的に呪力を使ってるだけなのに、プロ並みの操作力を実現出来るところがありがたい。
本来であれば、この高みまで登り詰めるために数十年の修行が必要なはず。
原作に出てくる登場人物たちはみんな天才だ。
異常な速度で成長する。
五条悟や夏油傑はもちろんのこと。
虎杖悠仁なんて呪力のじゅの字も知らなかったはずのに、等級の高い呪霊や呪詛師とも互角以上に戦えている。
伏黒恵は禪院の血を引き、領域展開まで出来ちゃう。
私は天才では無い。
生まれた時から前世の記憶があった分、たまたま生き残れているだけの存在。
スタートダッシュが成功しただけ、せっかくここまで強くなれたのに研鑽を怠ってしまえば、すぐに天才の方々に追い抜かれてしまうことは明白。
よって、呪術に関してもっと知識や実力を身につけるために教育機関とかあったら良いな、と思う所存です。
「以上です。ご清聴ありがとうございました」
「うわあ! 急に回想シーンから戻って来ないでください!」
目の前の佐藤さんは、飲んでいたコーヒーを思わず吹き出しそうになるのを何とか抑えていた。
転生やこの世界の原作あります関連のことは流石に話していないが、私の術式や今に至るまでの経緯は事細かに伝えたので、少しは信用を勝ち取れていたら良いのだけれど。
「後は残り2年間で実戦経験を沢山積むために、ここら辺一帯の呪霊を狩り尽くしました。それから手持ち無沙汰になったので、狐狩りした時みたいに遠征しようかなと思ってたところ佐藤さんが来てくれました」
「私が接触するまでに大事にならなくて良かったですよ……。それに君の実力はある程度分かったけれど、暇つぶしに特級相当の呪霊を倒しに行くのは危険です。やめましょうね」
佐藤さんは本当に優しい人みたいだ。
今日会った私にも、ここまで真摯に接してくれている。
まあ、あえてその優しさにつけ込んで指摘を入れるとしたら、実はあれから反転術式・辿を3,4回使うレベルの対呪霊戦を数回行っている。
無論遊んでいた訳ではなく、どれくらいまでの部位欠損や呪力消費で、反転術式が機能しなくなるかの実験だったから許して欲しい。
「で、でも! ここら辺は田舎なので、そこまで強い呪霊はいなかったです。だから安心安全でしたよ?」
「あなたが祓った呪霊の中に1級呪霊数種、特級呪霊内特定疾病呪霊1種、仮想怨霊1種がいたはずなのですが……」
お、おう……。
普通にヤバい呪霊たちがいたらしい。
まだ原作より前の時系列だったので、情報の集めようがなかったからこれも仕方ない……はず。
そんな感じで反省してるようでしてない表情をしていると、佐藤が話しをまとめてくれた。
「何はともあれ、五体満足で特級相当の呪霊を単独撃破出来るその才能を是非とも呪術高専で活かして欲しいと思っています」
「いいですよ! よろしくお願いします!!」
「学校も転校という扱いになってしまいますし、家族の方ともご相談なされてた方が……え、今何と?」
あれ、聞こえてなかったか。
ならばもう一度。
「明日から早速お世話になります! よろしくお願いします!!」
数秒の沈黙。
「いや判断が早過ぎる!!」
佐藤さんの驚く顔と、デザートで頼んだチョコケーキが美味しかった。
そして何より、
遂に夢の呪術高等専門学校キタ───!
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