お姫様のナイトであろうとした女が聖園ミカのために死ぬまで 作:恥谷きゆう
キヴォトスのテレビでは、今日イチバンのニュースが報じられていた。
「ご覧ください、この盛大な盛り上がりを! ゲヘナとトリニティの平和条約、『エデン条約』の調印式まであと2時間を切りました! 会場にはトリニティの正義実現委員会とゲヘナの風紀委員会が集って警備にあたっています。 しかし早くも小競り合いが発生しそうな雰囲気もあり、長年対立してきた両校が本当に手を取り合うことができるのか疑問も残りますね!」
テレビに映るクロノスのリポーターは率直な分析を述べていた。
それから目を逸らしたチサキは、書類の処理に戻った。
しかし、あまり集中できずにすぐにペンを置いてしまう。
視線はまたすぐにテレビに戻る。
パテル派の暫定的な代表になったチサキは、調印式への参加を辞退した。
ティーパーティーのホストであるナギサが参加すれば十分であると考えたのが一点。
それから、ゲヘナに敵対感情を持つものが多いパテル派を監視、統制するためトリニティに居た方がいいと考えたのが一点だ。
調印式を台無しにでもされればナギサの努力が水の泡となってしまう。
パテル派内の統制については、チサキの尽力によりほとんど解決している。
ゲヘナに敵対感情を持つ者は未だ多いが、ひとまず調印には納得してくれた。
「はぁ……私もみんなで出かけたかった」
補習授業部はみんなでお昼ご飯を一緒に食べに行った。
チサキも誘われたが、派閥のことを考えると今日は校内に居たほうがいい、と断った。
ハナコなどは『チサキさんが責任を負う必要なんてないですよ』と気遣ってくれたが、それでもチサキはこの条約が無事に締結されるまでは自分の務めを全うしようと思っていた。
時折テレビで会場の様子を確認しながら、チサキは書類仕事をチマチマと進めていた。
カメラの前で、友好を示すようにトリニティの旗とゲヘナの旗が交錯する。
式典は滞りなく進んでいた。
トリニティの代表であるナギサとゲヘナの代表であるマコトが登場し、中央へと向かう。
条文が読み上げられ、両校の代表が小さく頷き調印しようとする。
まさに歴史的瞬間。長い歴史が刻み込んだ憎悪の連鎖を断ち切る第一歩、になるはずだった。
──次の瞬間、冗談のような規模の大爆発が会場を襲った。
「なっ……!?」
テレビ画面を見ていたチサキは立ち上がる。
両校の重要人物が集っていた調印式。
その会場は、何者かの手によって襲撃を受けた。
チサキの頭の中を思考が駆け巡る。
誰が襲撃したのか。ゲヘナか? トリニティ内部から?
しかし、両校の厳重な警備を搔い潜って襲撃など可能なのか?
ナギサの安否は。条約はこれからどうなる? 正義実現委員会のトップふたりは無事か?
考えるも、会場から離れた場所にいるチサキには何も分からない。
錯乱しつつも、チサキは自分にできることをしようとする。自分が今すぐにするべきはトリニティ内部の暴走の阻止。
政治的に大きな意味を持つ式典の会場が攻撃された事実は重い。
下手をすれば、このままゲヘナとの全面戦争が始まってしまう。
しかし、チサキの予想に反して校内ではそのようなことを企てる余裕がないほど混乱が生じていた。
外に出てすぐ、チサキは目の前の光景に困惑することになる。
「な、なにこの化け物は!?」
「どこから出てきてるの……? 誰か、正実を呼んで! 早く!」
トリニティの敷地に突然現れたのは、黒い修道服にガスマスクを被った者たちだった。
異様な雰囲気で、生気を全く感じさせず死人のようだ。
青白い肌。ヘイローは不自然にひび割れている。
あんな生徒たち、トリニティにもゲヘナにも存在しなかったはずだ。
彼女らは自らの銃を構え、トリニティ生を攻撃しようとしている。
「……まさか、ユスティナ聖徒会?」
わずかな記憶から正体を推測する。
文献に残された、かつてのトリニティの権力者。
今得られる情報から詳しいことは分からない。
ただ、目の前で襲われているトリニティ生を放っておくことはできなかった。
「どいてくれ!」
困惑する生徒たちを押しのけて散弾銃を構える。
いつものように敵への肉薄し、発砲。
弾丸は確かにガスマスクを捉えた。
しかし、ガスマスクの修道女は悲鳴のひとつも上げずにその場で幽霊のように消滅した。
「これは……幽霊か何かか?」
困惑するチサキだったが、すぐに頭を切り替えて周囲の状況を観察する。
突然の襲撃に混乱しきったトリニティ生たち。反撃しようとするものと逃げ惑う生徒が、ばたばたと行き交っている。時折生徒同士がぶつかり合い、トラブルに発展しそうになっている。
それを見たチサキは、散弾銃を一発空に打ち上げた。
近くで響いた銃声に生徒たちの視線が集まるのを確認した彼女は、よく通る声で呼びかけた。
「戦闘に自信のない生徒は大聖堂へ避難を! その中の一部でいい、正実に現状の報告を行ってくれ! 戦える者は私に続け!」
ショットガンを掲げたチサキの堂々たる物言いに、混乱していた群衆が動き出す。
暫定的に迎撃態勢が整ったトリニティは、正体不明の敵への反撃を開始した。
臨時の戦列を組んだトリニティ生の銃口が響く。
アサルトライフルやマシンガンを持った生徒による遠距離からの制圧射撃。それが終われば、ハンドガン、ショットガン、サブマシンガンなどを持った生徒たちが敵に接近し、生き残ったユスティナ信徒に襲い掛かる。
次の敵の集団が来れば、彼女らはすぐに下がり、弾丸の補充を終えたアサルトライフルやマシンガンが再び制圧射撃を始める。
しばらく銃声が続くと、信徒の襲撃は落ち着いてきた。
無限に思える物量のシスターたちだったが、第一段階は乗り越えられたらしい。
戦っていた生徒たちは安堵のため息を漏らした。
しかしチサキの表情は硬い。
原因が分からなければ対策のしようがない。
それに、調印式会場の爆発はどうなったのだろうか。
ずっと目の前の敵を倒すのに集中していたせいで、状況が全く分からない。
誰が一番この状況を分析できているだろうか。
ティーパーティーは不在。正義実現委員会もトップが不在。シスターフッドのトップ、歌住サクラコも会場に向かったはずだ。
パテル派は……ダメだ。既に手綱を握るだけでも困難だったのだ。
こんな事件が起きた後では過激派がヒートアップする。ゲヘナとの全面戦争などと言い出している頃かもしれない。
「ハナコ、君ならこの状況を解決するすべを知っているのだろうか」
己の知る最も智慧に秀でた友人なら、正解に近いところにいるかもしれない。
しかし、駆けだそうとしたチサキの背後に、呼びかける声があった。
「ち、チサキさん!」
聞きなれた声だ。同じ派閥のひとり。パテル派には珍しい純朴な子で、チサキも少しに気に入っていた。
「ぱ、パテル派が……レイコさんたちが戒厳令の発令を求めてティーパーティー本拠に押し掛けてます!」
「ッ……遅かったか」
方向転換して走り出す。
まさか暴走がこんなに早いとは思っていなかった。
移動の最中にも校内を見渡すが、どこも混乱しきりだ。
こういった時に秩序を保つ治安組織である正義実現委員会も、動きが鈍い。
調印式という重要イベントに上級生のほとんどを派遣してしまったのだろう。
黒い制服姿の彼女らはとても修羅場慣れした人員には見えなかった。
ティーパーティーの本拠につくと、煌びやかな装飾のドアを乱暴に開け放つ。
「今すぐ、ゲヘナに先制攻撃を仕掛けるべきです! ナギサ様がいない今、私たちが行動に出なければ!」
「何をもたもたしているのですか! あなたたちフィリウスはナギサ様の仇を取るつもりはないのですか!?」
叫んでいるのは私と同じパテル派の生徒だ。
彼女らの先頭に立っている生徒に駆け寄って胸ぐらを掴む。
「何をしている! 誰の命令でこんなことしてるんだ!」
「ち、チサキ様……き、決まっています! 私たちがミカ様の意思を継ぐのです! 憎きゲヘナをキヴォトスから消し、和平条約を踏みにじった報いを受けさせてやるのです!」
「……なぜ、ゲヘナがやったと? その根拠は?」
チサキの目に力が籠る。ぎりぎり、と襟を掴んだ手に力が籠った。
嫌味と皮肉によるコミュニケーションばかりしていた彼女にとって、チサキの野性的な威圧感は本能的な恐怖を覚えた。
「そ、そんなの見れば分かる! あんな野蛮な方法、ゲヘナじゃなくてなんだ! あの汚らわしい角や尻尾、見ているだけで寒気が……」
「──もういい」
愛銃を抜いたチサキは、目の前の少女を撃った。
その場にいた生徒たちにどよめきが走る。
キヴォトスの一般的な生徒にとっては発砲など日常茶飯事だ。
しかし、ここにいる生徒はトリニティの良家の令嬢ばかり。
彼女らの常識では、警告も宣戦布告もなしに罪のない相手に銃を撃つなど信じがたいことだった。
戸惑うお嬢様たちを相手に、チサキは激しい怒りを籠めて宣言した。
「先に撃った奴から私も撃つ。痛い目にあいたくなければ寮に帰っていろ」
チサキの中には焦りがあった。
状況も分からないまま、内紛など起こしている場合ではない。
普段であれば使わないような乱暴な手段で事態を解決しようとする。
先ほどの敵の姿を思い出す。修道服にガスマスク。異様に青い肌。
あれは本当にゲヘナのものか?
もっと別の、今のキヴォトスには存在しない何かではないか。
「それと」
戸惑う生徒の中、ひとりだけリボルバーを構えた少女に対して、チサキは鋭い目を向けた。
リボルバーの撃鉄が落ちる。飛来した大口径弾は、チサキの二の腕を掠めていった。
「──ヒッ」
「レイコたちはどこに行った? お前たちがここにいて彼女らが何もしていないはずがないだろう」
特に過激な思想を持った一団がいない。
呆然と立ち尽くすリボルバーの生徒に、チサキはショットガンの銃口を突きつけた。
「み、ミカ様を解放しに……」
「──は?」
この期に及んで、ミカ様を祭り上げるだと? 彼女が牢に入った時、彼女のことを魔女と罵ったくせに。
何も知らないくせに彼女を馬鹿にしたのに、今更頼る?
そんな身勝手な真似があるか。
「ふざけるなっ!」
己の内の激情が抑えられなかった。
無防備な生徒に散弾をぶちまける。
気絶した生徒には目もくれず、チサキはミカの牢へと急いだ。
近づくにつれて、荒々しい声が聞こえてくる。
誰かが倒れこむ音がしてから、ようやくチサキはその場についた。
「──ミカ様ッ!」
白い翼が、桜色の髪が、特徴的なヘイローが、床に倒れ込んでいる。
それを踏みつけるのは、探していた過激派の生徒たち。彼女らは自らの銃を抜き出し、無防備なミカを撃とうとしていた。
「ッ……どけえええええええ!」
喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。
その方は、お前なんかが踏みにじっていい人じゃない。
本当のお姫様みたいに可愛らしくて、無邪気にカラカラと笑って、お菓子が好きで、王子様を夢見ている。
そんな普通で、何よりも尊い、私を救ってくれた人だ。
「チサキちゃん!?」
「なっ……」
怒り狂った猪のように彼女の元に駆け寄ろうとしたチサキは、しかしあまりの怒りに周囲を観察することすらできなくなっていた。
「っ」
チサキのすぐ横にいた少女が足を突き出す。前に走ることのみに頭を支配されていたチサキは、全く無防備なままに地面に倒れ込んだ。
「ガッ……どけ……どけえええええ!」
絶叫しながら立ち上がろうとした彼女の背中を、足をかけた少女が踏みつけた。
背中の中心を抑え込まれ立ち上がることができなかったチサキは、銃を手に取ろうとする。
しかし、間に合わない。
チサキが手に取ったショットガンは、至近距離から放たれた過激派生徒の弾丸によって弾き飛ばされた。
「ッ……」
チサキは身体を動かして拘束から逃れようとするが、完全に抑え込まれていてその場から動くことができなかった。
機動力で相手を翻弄してきたチサキにとって、抑え込まれた体勢はあまりにも不利だった。銃も手元にない。
それもすべて、頭に血が昇って周囲もまともに見れなくなった自分のせいだ。
ミカを傷つけられた怒り。そして、情けない自分への怒りにギリギリと歯を食いしばる。
お姫様を守る騎士になるのではなかったのか。
冷静に、堂々と、彼女を守るはずではなかったのか。
「このっ……魔女の下僕がっ!」
「裏切り者の一派のくせに!」
足蹴りにされる。弾丸が撃ち込まれる。侮蔑の言葉を吐かれる。
ミカの姿を見ようとするが、頭を踏みつけられて視界が遮られた。
ギリギリと、奥歯を嚙み砕かんばかりにチサキは歯ぎしりをした。
何をしているのだ。ナイトというのは、お姫様の危機を救うものなのだろう。
こんな場所でみっともなく這いつくばっている私はなんだ。
こんなナイトに意味はない。今の私に、意味はない。
絶望しながら必死にもがくチサキを、過激派生徒は嘲笑いながら踏みつけた。バタバタ動く手足を嗤い、弾丸を撃ち込んだ。
憎悪に支配された彼女らの攻撃性は留まるところを知らなかった。
チサキの顔に絶望が広がる。
何もできない自分への嫌悪が広がっていく。
──その時、小さな正義の声がした。
「なにしてるのっ!」
黒い制服に、ピンク色の髪。
下江コハルの声が、暴力を続ける生徒たちのもとに響いた。
◇
「なにしてるのっ!」
突然の乱入者、コハルの声にチサキを押さえつけていた生徒たちは激しく動揺した。
「いやだって、こいつらは裏切り者の一派で……」
「そ、そんなの関係ない! いじめみたいなのはダメ! ダメなものはダメ!」
「……コハル」
わずかに震える声で、それでも自分の言葉を決して譲らないコハルの態度に、チサキの中で激しく感情が揺り動かされる。
「ふ、ふざけてんじゃ……」
コハルを力づくで抑えづけようとした瞬間、彼女の後ろから大きな影が出てきた。
「お、大人……?」
「みんな、待たせたね」
激しい怒りの籠った先生の顔を直視した過激派生徒たちは、逃げるようにその場を去って行った。
◇
目まぐるしく変化する状況を把握しきれていなかったチサキは知りえないことだったが、重傷を負っていた先生は先ほど目を覚ましたばかりだった。
先生の手によって、過激派生徒の暴行は食い止められた。
ミカとチサキは共に外傷はすぐに治療可能なレベル。
しかし、ふたりの精神に及ぼした影響については未知数だ。
チサキの表情は、普段にも増して固いように見えた。
先生はそんな彼女を心配したが、チサキは「大丈夫です」とだけ返した。
状況が落ち着くと、チサキはミカと自分を助けてくれたコハルに改めて礼を言った。
「コハル。あの時、声を上げてくれてありがとう。私の代わりにミカ様を助けてくれてありがとう」
「え、いや、私はたまたまここにいただけだし……」
コハルは照れて顔を真っ赤にした。堂々とした立ち振る舞いのチサキに対して微かな憧れを抱いていたコハルにとって、その言葉は素直に嬉しいものだった。
赤面するコハルとは対照的に、チサキの顔は冷めきったままだった。
それは、勇敢で誠実なコハルとは違う、己の不甲斐なさを悔いている故の表情だ。
「違うよ、コハル。私は個人的な理由で彼女たちを止めようとした。コハルさんは違う。ただ、その正義によって、狂ってしまった状況の中にあってただ己の正しさを全うしたんだ。……全然違う。私なんかとは、全然」
自分ではなくコハルこそがミカを助けたのはそれ故だろう。チサキはそう分析した。
エデン条約が結ばれるはずだった今日。様々な場所で憎悪が爆発した。
ゲヘナへの憎悪、ミカへの憎悪に暴走した生徒たち。
そして、ミカを傷つけた者への怒りによって行動したチサキ。
コハルのように、正しいと思えることを実行したのではない。
ただの私怨だ。あの生徒たちと何も変わらない。
「理想のナイトはこんなことしない。ただ主君のために、そして潔白なる正義のために悪行を止めるはずだった。……そこから外れた時点で、私はミカ様のナイトを名乗る資格を失ったのだ」
「……そ、そんなに考えすぎることでもないような気がするけど」
コハルはあくまでフォローしていたが、チサキの中では既に考えは固まっていた。
自分がミカを助けられなかった理由。それは、最後まで志を全うできなかったからだ。
「……すまない。長々と自分のことばかり語ってしまった。コハルさん。トリニティは今どんな状況になっているかな。パテル分派の統率でも、敵の殲滅も、私にできる限り力を尽くそう」
「え? でも、怪我してるし休んだ方が……」
「そういうわけにもいかないよ。とりあえず、事情を知っていそうな人に話を聞いてみる」
先生の復活により、状況は一変していた。
瓦解しつつあったトリニティの秩序の再生。状況の分析。
エデン条約調印式の会場だった古聖堂は、爆撃と共にアリウス分校によって奪われていた。
エデン条約を利用することで、かつての戒律の守護者、ユスティナ聖徒会を復活させたアリウスは今、トリニティとゲヘナをも上回る戦力を有している。
それでも、先生は諦めなかった。
彼の人徳によって、役者は集った。
ゲヘナ、トリニティのヒナやツルギ。その他、生実や風紀委員会の生徒たち。
そして、補習授業部の面々。
彼女らは、ひとり戦うために遠くに行ってしまったアズサを取り戻すために戦うことを決意した。
補習授業部は、先生と共に古聖堂に向かう。
アリウス分校の精鋭、アリウススクワッドと対峙するアズサを救出する形で介入した補習授業部。
アズサに対してとりわけ強い想いを持っていたヒフミは、堂々と前に出る。
大好きなハッピーエンドを諦めない。私たちの
そう宣言したヒフミに応えるように、古聖堂の曇天は晴れ渡った。
満を持して、先生が宣言する。
「私たちが、エデン条約機構だよ」
キヴォトスにおいて唯一連邦生徒会長の代理を務められる先生による、エデン条約の再宣言。
元来生徒会長によって結ばれるはずだったエデン条約において、それは正当な契約だった。
戒律の守護者であるユスティナ信徒は混乱する。エデン条約機構がふたつ存在する。
エデン条約の敵対者を排除するという任務の定義が揺らぐ。
ユスティナ信徒の動きは明らかに鈍くなっていた。駆け付けた風紀委員会や正義実現委員会が、次々と信徒を排除していく。
アリウスは、もう既にトリニティとゲヘナの両校を敵に回す力を失ったのだ。
最後の最後で介入してきたゲマトリアのマエストロの戦術兵器すらも退けて、先生と補習授業部は、ついに勝利を収めた。
こうして、補習授業部の物語はハッピーエンドを迎えることができた。
しかし、物語はまだ終わっていない。
士道チサキの物語は、まだ終わりではない。
なぜなら、彼女の物語はハッピーエンドとは程遠い終わりを迎えることになっているからだ。