Rebellion Against Fate   作:zawadinosaur

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お待たせしました第二話です!甘酒さんもドリベンタスさんも筆がお早い…!!こちらも抜かねば無作法のいうもの…!!


第二話『新生活の誘い』

 

 

『コルタナ』の面々との軽い顔合わせの後。

今現在フィリアはミラに連れられて彼女の自室に案内されていた。

カルガモの親子のように彼女の後ろを付いて歩き、キョロキョロ辺りを見ては目を輝かせながら前に進むフィリアは、傍から見ればテーマパークに来た子供のように見えていることだろう。

だが、自然とそうなってしまうくらいにはキャメロッ島は美しかった。

 

──絵本の物語に出てくるような古めかしいランプや、レンガで出来たアジのある柱。

──赤、青、黄、紫、浅葱。

──七色に揺らめく花畑。

まるで童話の世界に飛び込んだような景観は何度見ても飽きが来ない。

ただ、

 

「……う〜ん。」

 

景色に見惚れるたびに、何処かからガシャガシャと鎧が擦れる音が響いて来て結局ここは傭兵組織だと再認識させられる。

 

「うおぉぁぁあ!!!??」

 

「ギャハハハハハァ"ァ"!!!!!」

 

「チッ………威力が足りなかったか……。」

 

というか、『ドリトス』と書かれた室内から嘘みたいな爆発音と物騒な笑い声と共に鉄製のドアがガーデンに落下して来た。

絶対犯人の人が爆発力について反省しているし、ミラが特にリアクションを示さない辺り日常茶飯事なのだろうか。

 

(やばすぎんかこの組織………トリスタン卿ももしかして千仭の谷に突き落としてくるタイプなのかな……?)

 

めちゃくちゃ不安になるフィリアだったが、ミラはひたすら自室を目指していてあの爆発についてフォローもしてくれない。

そんな先程来た道とはまた別の通路を歩く道中、花が乱れ咲く緑豊かなガーデンの方から、3人組の騎士がこちらに向かって来るのが視界の端に見えた。

年齢は、自分と同じ程度で17歳…くらい?

蒼色の服装と茶髪が印象的な青年と、全体的にに暗い色の服を基調とした、緑髪の少女。

そして、桃色の髪をツインテールにした少女が、2人の後に続いて歩いている。

彼らの存在にミラも気付いたのだろうか。

足を止めて、進行方向を90度切り替える。

 

「ケイ卿、ハルカさんも。それに……………えっと……。」

 

「フイミンですよ!!朋溟吹診っっ!!それなりに顔合わせてるじゃないですかっっ!?」

 

「………そうでしたごめんなさい。」

 

ミラの口から出た名前に、フィリアの身体が跳ねる。

この一行の正体はカレンの話にあった件のケイ卿と、その相棒であるハルカ。

そして多分その補佐(?)フイミンだった。

 

「こんにちはミラさん。話すのは『無花果の会』と戦った時以来かな。」

 

「そうですね、最近はハルカさんとの稽古もご無沙汰でしたし。」

 

「ミラ。私はいつでも準備万端だよ。何なら今からでも全然いけるよ。」

 

すっかり挨拶をするタイミングを逃したケイがにこやかな笑顔で会釈し、彼の背後からハルカがひょこりと顔を出す。

だが当のフィリアは、全く話題に付いて行けていなかった。

『無花果の会』?

フルーツ大好き集団の話だろうか。

ちなみにフィリアの好物はイチジクのタルトだ。

もし想像通りの組織なら、ぜひお友達になりたいものだ。

閑話休題。

ケイ、ハルカ、フイミンの3人はフィリアの顔を見た途端怪訝そうに、特にハルカやフイミンは警戒心を強めたように表情を変える。

ピリピリとした嫌な緊張感が冷気のように肌を刺す。

背後の2人が意識を変えたのを察したのか、

 

「ミラさん……そちらの方は…?」

 

ケイは少し申し訳なさそうな表情を浮かべた顔で問いかける。

ご指名だと、背筋を伸ばして小さく二つ咳払い。

 

「ウチの新入りです。今日から配属されたんですよ。」

 

ミラのお膳立ての元、フィリアは3人の目を見てビシリと敬礼する。

まずは第一印象!

やる気と気合を見せなければ。

 

「フィリア・スノーフレークです!!!!!本日付けで『コルタナ』に所属します!!!どうぞよろしくお願いします!!!」

 

会心の挨拶!

きっとみんな笑顔で間違いなし!

 

 

 

 

………と思っていたが。

 

「「「「……………。」」」」

 

予想に反してウケは良くなかったの。

あんまりにも大きい声を出しすぎたからか、それともはっちゃけすぎたか。

自己紹介を言い切ってから数秒、5人の間に沈黙が鎮座していた。

やっちまった、と冷や汗をダラダラ流していたところに、ケイはこちらに一歩踏み出してくれた。

 

「俺はケイ・サクラ。花の名前同士、仲良くしてくれると嬉しいよ。困ったことがあったら何でも相談に乗るよ。」

 

「は………はい!」

 

友好の証として差し出された掌を、全力で握り返す。

握ったケイの手は温かくて、でも男性らしさを感じないくらい優しいものだったが、鍛錬の跡はありありと刻まれており、彼の積み重ねて来た血の滲むような努力が刹那で感じ取れた。

 

「ハルカ・フィーセ。一応ミラの師匠だから、良かったら今度2人で鍛錬しに来て。」

 

「よろしくお願いします!!」

 

続いて、フィリアはハルカとも握手を交わす。

ケイ以上の修練を経たであろう彼女の掌は剣を握り続けた者の傷痕が残されているが、年相応の少女らしさも確かに残していた。

そんな掌レビュアーみたいなことがぽこぽこと頭に浮かんできたが、それよりもミラの交友関係にミラは驚いていた。

てっきりミラは『コルタナ』の面々とだけ関わりがあると思っていたが、意外にも交友関係が広いらしい。

クールな見た目とは裏腹に案外明るいのかな?

 

「私は」

 

「フイミさんですよね!!覚えました!!」

 

彼女が口を開くより先に、フィリアはとびきりの笑顔を彼女に向ける。

流石に第一印象が『名前を忘れられていた人』なんてそうそう忘れられない。

これを機に、ミラにもしっかり覚えて欲しいものだ。

 

「うう〜いい子……!こんな後輩が欲しかった…!!」

 

「ホントにごめんなさい…。」

 

口元を押さえて涙ぐんでいるフイミンを見て、ミラは本当に申し訳なさそうに顔を伏せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはそうと、歩いて数分。

漸く目的地であったミラの部屋に辿り着いた。

木製の扉くらいしか特徴のない質素な部屋のネームプレートには、『ミラ・エンフォーサ』と彼女の名が刻まれていた。

 

「上がって。ここが私の部屋だよ。」

 

「お、お邪魔します…。」

 

ミラに促されるまま、ドアノブに手をかける。

思い返せば、他人の家に入るのはいつぶりだろうか。

思い出せないくらい昔のことだが、あの特有の緊張感とワクワクはまだ胸に張り付いたままだ。

一体、どんなお部屋なのだろうか。

内装にはその人の本質が出ると聞き齧ったことがあるが、ミラの場合はどうなのだろう。

見た目の通り、質素で無骨なインテリア?

それとも、柄に合わず可愛らしいぬいぐるみが大部分を占拠している女の子らしいデザインなのだろうか。

それともそれとも、武器だらけのヴァイオレンスな感じ?

想像は尽きないが、見ればすぐに分かる。

意気揚々とノブを捻って、土足でお邪魔する。

そしてフィリアの視界に飛び込んできたのは、

 

「え……?ここがミラさんの部屋…?」

 

「そうだけど…。」

 

ミラは意外そうに首を傾げながらそう言うが、だが目の前に広がっているの光景はとてもそうとは思えない代物だった。

 

──ベッドと、デスクと、小さなクローゼット、以上。

それなりに大きい部屋だったが、物が無さすぎるせいで半分以上スペースが余っていた。

寝泊まりできればそれでいいと言わんばかりの間取り。

意外と、ミラはミリマリストなのだろうか。

見たところ、机の上の小さな写真掛けくらいしか私物がない。

ホテルのルームサービスが入った後かのような整頓具合で、まるで生活感がない空間に、フィリアは思わず呟く。

 

「……え、物置?」

 

「失礼すぎない?」

 

軽くため息を吐いたミラは、ベッドに腰掛けながら続ける。

 

「……まあ言わんとしてることは分かるよ。何にもないからね、この部屋。

…昔から、欲しい物とか全くなかったんだ。空いてるスペースは、好きに使ってくれていいよ。」

 

そう言われて室内を見渡すが、何もない空間が普通に一部屋くらいありそうだ。

これだけ空いてるスペースがあれば、シングルベッドに、本棚、学習机と色々置きたい放題だ。

早速持ち込んだ漫画と、DVDと、折りたたみ式の机を展開して、フローリングの床に腰掛ける。

無論、遠慮はしない。

だって好きに使っていいって言ったもん。

 

「……ミラさんっていつから円卓にいるの?」

 

スーツケースを開きながら、世間話代わりに軽くミラに質問を飛ばしてみる。

そもそも、これがずっと気になっていた。

ハルカやケイにも当てはまることだが、一体いつからここに所属しているのだろうか。

 

「私は……割と最近だよ。昔住んでた家と家族を左目と一緒に全部失くして、その時お母さんに拾われて『円卓』に入ったんだよ。」

 

「──え?」

 

ミラはサラッと言っているが、言っている内容がグラビティに過ぎる。

家族も、家も失くした?

それはつまり、帰るべき場所を失ったと言うことに他ならない。

そんな境遇の彼女に対して同情も、哀れみも、何もかもが不適切だ。

聞き返しては見たものの、何と返していいか分からず一先ず苦笑いを浮かべてみたが、彼女はこちらの心持ちを察してくれたのか腰を上げる。

 

「……取り敢えず、この話はまた後ね。荷解きが終わったらさっきの部屋まで来て。」

 

そう短く言葉を残すと、ミラは部屋から出て行ってしまった。

その背中に何か声を掛けるべきだったのかもしれないが、フィリアとは生きて来た世界が違いすぎる。

歯痒い思いをしながらも、意識を切り替える。

 

「………う〜む。」

 

1人きりになった室内でフィリアは腕組みしながら唸る。

荷解きをしてくれと言われたから、スーツケースに入る程度の荷物なのだから、10分もあれば終わる。

だがそんなに早く戻るのも、なんだか勿体無い気もする。

折角なら残り少ない個室の時間を満喫しておかなければ。

 

「…よし!」

 

取り敢えず暇つぶしに、この部屋の構造と内観を把握しておこう。

別に深い意味はない。

ただエロ本の一つでもあれば面白いな、というだけだ。

暗殺者のように静かな足取りで部屋を物色して、物色して、物色する。

初めはベットの上。

だが当然、見える範囲には何も無い。

しかし、定番はここではない。

身を屈めてベッドの下を覗いてみる。

するとそこには、黒いケースが置かれていた。

これこそ求めていた面白グッズかと思いながら箱を開けると、そこにあったのは

 

「うぉっ……。」

 

何十種類もある銃と、それに合ったマガジン。

そう言えばここは傭兵組織。

その事実をすっかり失念していた。

やばいものを見てしまった、と反省しつつケースを元あった位置に戻して原状回復で隠蔽する。

次は、デスクの上。

 

「う〜ん?なんか文字ばっかりだな…」

 

だがそこに置いてあるのも、銃器取り扱いの参考書や、体術のテキスト、筋トレの指南書などどれも堅苦しくて面白みに欠けるものばかりだ。

見た目の通り、ミラはかなりストイックなご様子だ。

 

「…ん?」

 

一つの小さな写真立てが目に留まる。

何の変哲もない、ただの写真だ。

でも何故だろうか。

ものすごく目を引かれる。

 

「……綺麗な人。」

 

そこに写っていたのは、今よりも一回り小さいミラと、灰色の髪を後ろ結びにした女性。

アルビノカラーを人型にした、というのが第一印象。

きっとこの人がミラの育ての親…ということなのだろうか。

カッコいい女性、という一点では親子共に遺伝子が強いようだ。

ここでカレンの言葉を思い出す。

先代のトリスタン卿は、女性だったと彼女は言っていた。

ということは、彼女が先代ということになる。

だがあの隊室にはこの人の影も形もないなかった。

一体どこに行ってしまったのだろうか。

考えても仕方がないことだが、後でミラに聞いてみることにしよう。

 

「よしじゃあ間取り決めるか!」

 

まずは、ベッドを置く場所を仮定。

そしてそこから最も楽に漫画に手を伸ばせる場所へ本棚を配置。

そしてそこへ隣接するように机の配置を決め、そこから派生して様々な生活用品の置き方、配置、デザインを確定させていく。(この間約200秒)

そうして完成した大まかな間取り。

IQ100くらいのフィリアの頭脳が弾き出した結論は、

 

「PARADISE!」

 

小気味良く指を鳴らすと、フローリングに腰をついて『祝賀海鮮』の最新巻をスーツケースから出してページを捲る。

この島に来る前にヘリポートの近くにあったコンビニで買っておいたのだ。

ずっと楽しみにしてた宝物を前に、欲望のままにページを捲ってめくって捲り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後。

無事に読み終えた。

まさか半面スッくんがあんなことになって、まこーらが覚醒して、かしーもが歴史に残る語録を残すとは…。

 

「良いものを読ませていただきました…。」

 

遠く何処かにいる作者に合掌すると、フィリアは大の字で寝転んで天井と睨めっこをする。

ポケットに入れていた携帯端末で、感想サイトを覗いてみると、どこも絶賛の声で溢れかえっていた。

それらの読者の声に全面同意すると、フィリアも自分の感想を掲示板に書き込む。

そして掲載されていた考察を目の当たりにして、再び本に目を通す。

新たな発見をしてはネットの海に潜る。

繰り返すこと、3度。

ひとしきり満喫し、興奮状態から覚めて深く息を吸うと、

 

「……何か、忘れてる気が…。」

 

胸の内に違和感が残っていることに気がつく。

何か、忘れている気がする。

だが、一体何を…?

ページを捲りながら思索に耽ると、ミラの言葉が頭の中にフラッシュバックした。

『荷解きが終わったら、さっきの部屋まで来て。』

 

「───あ。」

 

バネのように起き上がり、時計を見る。

ミラが部屋を去ってから、既に40分以上が経過していた。

いくら荷解きといっても、スーツケースひとつ分なんて5分もあれば終わる。

つまり、今の自分は

 

「30分以上遅刻………ってこと!?!?」

 

馬鹿すぎる自分の横っ面にグーパンチを入れてやりたいが、それより先に立ち上がる。

道順はギリギリ覚えているから、後は全力で走り抜けるだけだ。

どうか、進行通路に人が少ないことを願う。

 

「うぉおおおおぉぉおおおお!!!!!」

 

扉を開け放つと、韋駄天の如く、アキレウスの如く、フィリアは全速前進で『コルタナ』を目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…っ!!!うぇえ!」

 

全力ダッシュの1分後。

肩で息をしながら久々の運動に色々戻してしまいそうだ。

プルプルと震える手でドアノブに手を掛けて、深呼吸。

汗を拭いて、背筋を伸ばす。

 

「遅くなりました!」

 

ドアが吹き飛びそうなくらいな勢いで扉を開け放つ。

 

「お待ちしていました、フィリアさん。」

 

怒られるかもと思いながらビクビクていたが、そんな気配は全くない。

たださっきまで大所帯だった『コルタナ』は3人だけになっていた。

ミラと、バリトンと、シャグラン。

ミラはメダルの手入れをしながら。

バリトンは初対面の頃と同じく無表情のまま。

シャグラン隊長のデスクで穏やかな笑みを浮かべたまま。

 

「どうぞ掛けてください。」

 

促されるまま椅子に腰掛けるが、何だか面接みたいな雰囲気で緊張してしまう。

『円卓』に入る時も試験は『宝探し』だったし、面接なんて人生で初めてかもしれない。

 

「…………円卓の騎士には最低限、身につけておくべき能力があります。」

 

ソワソワしていたフィリアを気にせず、シャグランは静かに語り出す。

内容からしてどうなら面接ではないらしい。

心配して損した。

今は大人しく続きを聴くことに専念する。

 

「格闘能力、リバイバーを用いての戦闘能力。これは生存能力に直結します。そして、射撃能力。こちらは我々の部隊だけに限らず、あらゆる戦闘において必要となる能力です。」

 

「…………なる……………ほど。」

 

戦闘力が生存率に直結するという点に関しては全面賛成だ。

正直、今のフィリアが戦場に行けば数秒で殺されるか、人質に取られるだろう。

そんなことは、長年戦い続けているシャグランたちの方がよほど理解していた。

つまり、これから行われるのはそれを無くすための鍛錬の日々。

未熟なパンピーを『兵士』にするための作業。

 

「我々がマンツーマンで、貴方に持てる技術の全てを叩き込みます。格闘能力をバリトンさん。リバイバーを用いた戦闘技術をミラさん。そして射撃能力を私が直々に教えます

──辛い日々だとは思いますが、なるべく耐えてくださいね。」

 

正しく、地獄の日々だ。

『なるべく耐える』だって?

愛を語る仮面の研究者みたいなことをシャグランは言っているが、フィリアにとっては笑い事じゃない。

こちとら17年間一般人をやって来たんだ。

逸般人になった覚えはない。

それに、いきなり3つも新しいことを覚えろと…?

算数一つ覚えるのも苦痛な自分には荷が重い。

無理に決まっていると投げ出したい気持ちで一杯だが、これは自分が選んだ道だ。

引き返す道も、後悔も、全て捨てて来たはずだ。

覚悟を決めろ。

そう言い聞かせて、天井を仰ぐ。

 

「はいッッ!!よろしくお願いしますっ!!」

 

こうして、フィリアの新たな生活が幕を開けたのだった。

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