Rebellion Against Fate 作:zawadinosaur
今回は次回の決着に備えての助走の会となります。今回もキャラブレがありましたらご指摘をお願いします…!
──side ミラ
──村中央付近の廃屋。
崩れかけの木造建築の中で待機していたヒラミーとミラは、凄まじい地響きと共に僅かに身を震わせた。揺れに合わせて木の端から滴る水滴が勢いを増すが、2人は決して動かない、声の一つも上げはしない。
外で待ち構える怪物どもに気が付かれればこの任務はその時点で敗北だ。残る2人の仲間は、きっとシュバルツが誘導してくれる。
「………フィリア…。」
そう信じていても、ミラの心には未だ胸騒ぎに支配されたままだ。ハルカとシュバルツが彼女を守ってくれていると分かってはいるが、それでも心模様は落ち着かないままだ。
……もしもフィリアに何かあったら。
……もしも、取り返しのつかない事態になっていたら。
そんな暗い想像を振り払うように頻りに雨降る村を見つめていると、
「あ…。」
地響きから僅かな間を空けて、深い色の靄姿が雨の奥で微かに揺れる。小脇に、空色の荷物を抱えて。
その姿は確かに、仲間たちのものだ。
「フィリア…ッッ…ハルカさんもっ…!!」
「ご無事で何よりです、ハルカさん!」
ミラは涙を堪えながら仲間の無事を喜び、ヒラミーはホッとしたように胸を撫で下ろす。フィリアを抱えたハルカは、二人の反応に軽く頷くと即座に物陰に腰を落とした。
「無事………とはちょっと言えないかな。」
「ぅ……ぅぅう…」
…が、当のハルカの表情は明るくない。
片手で持ち運んでいたフィリアを優しく半壊した床材の上に下ろすと、空いた左手で頬に滴る黒い水滴を拭った。本来なんて事のない動作だが、その短い動きでミラは戦慄する。
「ハルカさん…その手……ッ!?」
「……大丈夫、まだ剣は振れる。私のことよりフィリアを心配してあげて。」
そう語るハルカの両掌は、黒い水滴のせいで見えにくいが確実にキズだらけになっていた。剣を握り続けていた指先は勿論、裾に隠れて見えないが、スランガの攻撃を受け続けていた上腕部は既に鬱血が始まっていた。
客観的に見ても、マトモに戦える状態とは言い難い。
それに、フィリアの状態も良いとは言えないものだ。
「フィリアは……大、丈夫……?」
「う〜…ん……大丈夫、じゃ…ないかなぁ…」
にへら、とフィリアは表情を緩ませるが、先程から左脇腹をしきりに摩っている。まず間違いなく、その部位に何かしらの異常が起きている。例えば、肋骨の骨折…とか。
「ッ…!!」
ギリ、と拳に勝手に力が入る。大切な彼女をこんな目に遭わせた敵が憎くて憎くて堪らない。状況が状況でなければ、すぐに報いを受けさせに突っ走ってしまいそうな激情が心の中でマグマのように煮えたぎってくる。
………だがそれ以上に自分が情けなくて、許せない。フィリアが辛く苦しい時に何もできなかった。それどころか、テフラーを失った上に敗走寸前まで追い込まれているのが現実だ。
どこまでもマイナスに傾く自分の思考は歯止めが効かずに、どこまでも深く落ちて………
パン
「っ!?」
と、突然鳴った破裂音にミラはハッと我に帰る。音の発生源に目を向けると、ヒラミーが粛然とした面持ちで両手を合わせていた。
「……一先ず、状況を整理する方が先です。」
『ですわね…。一度、全員の持つ情報をすり合わせましょう。』
ヒラミー………否、
感情に流されかけた自身の未熟に唇を噛みながら、ミラもまた先達たちの会議に耳を傾けるのであった。
「──一つ、確認させて下さい。」
ミラとヒラミー、フィリアとハルカ、そしてシュバルツ。
それぞれが目にしたこと、達成したこと、観測したことの3つの報告を終え具体的な行動策へ議論が当たったそのタイミング。
雨音に消え入りそうなくらいの小声と共に、ヒラミーは人差し指を立てた。
「この村に囚われていた人たちは、既にフィリアさんが解放してくれている。それで、合っていますね?」
『ええ、私もそれは確認しています。間違いありませんわ。』
フィリアたち一行の最初期の目標は、『白蛇教に攫われた人々の解放』だった。そして、それに次ぐ目的が『白蛇教』の調査。
現時点の状況で『白蛇教』は既に壊滅し、その被害者たちは既にこの村から離れている。事実だけを並べれば目的は達していると言えるだろう。
だが、だからと言って、新たに発生した脅威を見過ごすことはできない。加えて、スランガは『セルパ・アレーニア』に繋がる手掛かりだ。
戦って勝たなければ、何も得られない。
「……良かった。フィリアさんがそこまでやり遂げてくれたのなら、私も尻込みしている訳にはいきませんね。」
ヒラミーが静かに呟いたその言葉に、全員が耳を傾ける。
CNを持つ彼女がその発言をする意味を、フィリアを除く全員が理解していた。
「───『加護』を、全開で使用します。」
その宣言に、フィリアは息を呑む。
コードネームを与えられた騎士の特権とも言える能力──『加護』。
強烈な強化、或いは敵に対する弱体化を付与する一方、代償として自身にも大きな負荷を付加するギフト。
ヒラミーに与えられたものは、『一刀両断』と『活火激発』。
素の状態でも攻撃性能の高いギガーに、さらなる破壊力を追加する穏やかな彼女とは正反対なまでに暴力的な能力。だがその能力と引き換えに、発動する現象は『周波環境すら巻き込む急激な温度上昇』。早い話が、
たからこそ、囚われている一般人がどこにいるのか分からない中では安易に切ることが出来なかったヒラミー最大の切り札。
「そこで一つ、皆さんに提案があります。」
ここで全員の視線がヒラミーに集中する。
すぅ、と軽く息を吸い込むと彼女は見た事もないほど緊迫した表情で、
「───あのギガロンは、私とレスナーで倒します。」
簡潔に、端的に、己の果たすべき役割を宣言した。
「ッ待ってください!」
『そうですわ…いくらベディヴィア卿といえども…単身では…!』
ヒラミーの表明した言葉に、ミラとシュバルツはあの怪物の脅威を知る当事者として難色を示す。相棒を倒されたミラと遠目からアレの脅威を全て観測していたからすれば、あんなものは一人の手には余る代物だ。
桁外れの膂力とエネルギー、そして耐久力。CNを持つ騎士であっても複数掛かりでなければ立ち向かう事すら出来ないであろう相手。それを天性の才をもつヒラミーとはいえ、たった一人で戦うなど仮に『加護』を全開にしたとしても…
だが、そんなことはヒラミーも百も承知だった。
「…あっ、待ってください待ってください!!流石に私もアレを一人で倒せるなんて思ってませんよ!!」
慌てて自身の驕りとも取られかねない発言をワタワタとした動きと共に撤回すると、コホンと一息置く。
そして、
「……勝つために、皆さんのリバイバーを一時お借りしたいんです。
ミラさんからはダケルス、ハルカさんからはカムラン。……そして、フィリアさんからはグランデさんを。この場を打開するために、彼らを私に預けてはくれませんか…!?」
目を伏せながら、ヒラミーはこの場の3人へ掟破りの提案をした。
本来、ホリダーとリバイバーはその培った信頼関係と相性で強さが大きく変動する。ましてや、『円卓』に所属する者であれば相方との関係は切っても切れないものになる。
ミラにとっては、『円卓』の騎士を志した頃から共に励み、成長してきた相棒の一人。
ハルカにとっては、この世の何よりも大切な人──ケイから預かり受けた彼の相棒。
そしてフィリアにとっては、物心ついた時から共に人生を歩んできた相棒だ。
それを一時とはいえ借り受け、自分のリバイバーとして扱うなんてホリダーとしては邪道もいいところだ。何より、仲間たちへ申し訳が立たない。
誠実なヒラミーは、この場を率いる長としてでは無く対等の存在として3人へ頭を下げる。
正直なところ、この頼みは罵倒されてもおかしくないものだと自覚している。
だから、彼女は仲間たちの顔を見ることが出来なかった。顔を上げれば、軽蔑の視線が待っていそうで…。
「…………………!」
俯いたままぎゅっと目を瞑るヒラミーだったが、
「……頭を上げて下さい、ベディヴィア卿。」
ミラの声と共に優しく鳴ったチャリン、という音にハッと目を見開く。
そのまま顔を上げると…
「──私と同じで未熟ですが…ダケルスをお願いします。」
「そうです!!ちょっと複雑ですけど…グランデをお願いします!こちらこそ!!」
「私も、ケイから皆を守ってって言われてるから協力は惜しまないよ。」
そこには予想は大きく外れて、3人の笑顔が待っていた。ヒラミーは手渡された三枚のメダルを受け取ると万感を噛み締めながらそれらを握り締めた。
だってそれは、ヒラミーを自身の大切な存在を預けるに足る人間だと認めてくれたことに他ならない。
──信じてもらえた、託された。
であれば、全力で臨む以外の選択肢は選べない。
「〜〜っ…!ありがとう、ございます…!!これで…!!!」
手のひらの中で3つのメダルを強く握りしめながら、ヒラミーはその瞳に強い決意の光を灯らせた。
『…ギガロンへの対策は一先ずこれで良いとして…。問題はあの大男の方ですわね。』
シュバルツの声が、静かに響く。
ギガロンへの対策はヒラミーたちによる『加護』の全開使用で対処することで対抗できるだろう。
だが問題はまだ一つ残っている。とんでもなく大きな課題が。
「確か名前はスランガ…でしたね。
…ハルカさん、貴女から見てあの男はどれ程のものでしたか?」
その問いに、ハルカは一切迷う事なく答えた。
「──強い。単純に、とんでもなく強い。仕組みもカラクリもないから対策のしようがない一番厄介なタイプ。」
返答を返しながら、ハルカは自身の手のひらに目を落とす。先程まで傷だらけだった両手は、既に『鳳龍の冥加』の効果で治癒が始まっている。
だがそれでも、万全とは程遠い状態だ。
「じゃあ、今の戦力では…」
震える声でミラが溢したその言葉に、ハルカは切り捨てるようにハッキリと答えを口にした。
「間違いなく負ける。多分、これはどうやっても変えられない。」
彼女が出した結論に、全員が固唾を飲む。
この場において、最も白兵戦に秀でているのはハルカだ。その彼女が勝ちの目がないと断ずるのなら、それは間違いのない事実なのだろう。
だが仮にギガロンを打倒出来たとしても、その主人であるスランガを倒さなければそれは完全勝利とは程遠い。
「だから、何か戦力差を覆すだけの搦手が必要。」
『搦手…ですの?ですがそんなもの誰が…』
「ミラさんの射撃などが候補に上がるのでしょうか…。」
「それは勿論考えましたが…あのレベルの拳士に通じるかどうか…。」
「…あっ」
……搦手。
その単語に、フィリアの頭脳はとある光景をフラッシュバックさせた。
「じゃあ、私のさっきのアレはどうですかハルカさん!!」
それは、先程フィリアの覚醒した新たな能力。敵の動きをまるで未来でも見るかのように読み取れる新たな力。フィリアはこれを
あれと同じ動きをもう一度披露することができれば、スランガの隙を生み出すことが出来るかもしれない。
「……確かにもう一回あの回避と同じことが出来るのなら、勝ちの目はある。」
そしてその見解はハルカも同じだった。しかしそれはとある条件をクリアすることが大前提だ。
『問題は再現性ですわね…。フィリア様、もう一度同じことが出来ますの?』
その場の誰もが思考に浮かべた疑問を、通信越しのシュバルツが皆に代わって問いかける。そしてその事は、フィリア自身重々承知していた。
例えどれだけ強力な能力であっても、どれだけメリットを生み出せる力であっても、発動出来なければそれは存在しないのと同じだ。
オマケに、フィリアにとっての『意識潜航』は目覚めたばかりの武器。たった一度しか使っていない現状では未知数としか言いようが無い。
だが、それでも尚フィリアは確信していた。
「出来ると……思います。たった一回ですけど、コツは掴めました。あとはビビらずにやれれば───」
『問題なく出来るはずです。』戦闘に於いてはからっきしなフィリアらしからぬ自信の言葉。
だがそれを言い終わる前に、異変は起こった。
「え」
突然チクリと額に痛みが走る。針の穴のような痛みの震源地は波のように頭全体に広がっていって…
「ぃっ……!!?」
次の瞬間には、脳髄を刺し貫くような巨大な痛みへと変わり果てた。あまりに唐突な激痛に、フィリアの身体は大きく揺らぐ。
「ッ!?」
「っフィリアさん!?」
「フィリア………っ!!」
突如蹲ったフィリアに、ハルカ、ヒラミー、ミラは三者三様の反応を取るが、この場の誰よりも困惑しているのはフィリア本人だった。
音が、遠い。
視界が、歪む。
触覚すらまともに機能していない。
手を付いているのは硬い木の板であるはずなのに、彼女の手にはまるでスライムのようにズブズブと沈み込む物体のようだ。
霞む視界の中、パタと小さくナニカが落ちる音が響く。
1滴。
2滴。
そしてその量は瞬く間に数を増やしていった。
「あ………っれ…ナニ…これ…?」
ジクジクと頭を蝕む痛みのせいで集中もロクに出来ない。自分が出血してしまったことくらいは認識出来るが原因も何もかもサッパリだ。
痛みと混乱でフリーズしかけているフィリアに、顔を真っ青にしたミラが手拭いを片手に駆け寄る。
「フィリア…っ血が…!!鼻……目からも…!」
「ご、めんミラ……大丈夫、大、丈夫…だから…!」
ミラに拭いてもらった布地に目を遣ると、純白のはずのそれは半分以上血に染まっていた。自分でも驚くほどの出血量だ。
さっきのスランガの攻撃が元ではないはずだ。脇腹に受けた攻撃が頭にまで達するはずがない。であれば、考えうる限りの原因は…
「さっき見えた………ビジョンのせい…?」
あの時の現象──『未来視』にも近しい相手の動きの先読み。その代償が、これだと言うのだろうか。
たった一度使っただけでこの消耗だ。もう一度同じことをして無事でいられるのか。その先にいるのは、本当に元の自分なのか。
最悪の想像に頬を冷や汗が滴り落ちる。
「その出血量…間違いなく脳に影響が出てる。これ以上は無茶だ。」
ハルカの見立ては間違っていない。そして同時に確信した。これは報いだ。
奇跡なんて、何の代価もなく起こるものではない。本来起き得ない事象を引き寄せたのだ。それに見合う対価を…自身の存在を削り取って差し出すような最悪の感覚。
(でも…………それ、でも……)
だが、フィリアの心には別の気持ちが芽生えていた。
「ッ…フィリアさんは、このままここで待機を。」
「うん。アイツは私とミラとシュバルツで…」
ヒラミーの指示も、ハルカの判断も、間違っていない。騎士として、上に立つ者として、今のフィリアをそのまま戦場に立たせるのは賢明とは言えないだろう。
このままこの場で待機して仲間たちの無事を祈ることが、フィリアにとっての正解なのだろう。
「待って、下さい…ッ!!」
でも、それだけ出来ない。例え不正解でも、ここで指を咥えて見ていることだけは出来ないのだ。
「フィリア…?」
不意に立ち上がったフィリアを、ミラは怪訝そうに見つめる。
正直なところ、既にふらついて倒れそうな現状だが唇を噛み締めて平衡感覚を必死に保つ、
「私も……戦います…戦わせて下さいっ…!!」
「ですが…これ以上負担が掛かればフィリアさんの身に何が起こるか…」
「分かってますッ!」
分かっている。自分の身に危険が及ぶことも、最悪の場合、命を落とす事になるかもしれないことも。
だが、それ以上に耐えられないのだ。
ヒラミーが、ハルカが、シュバルツが、ミラが。
仲間たちが命を賭けて戦っているというのに、自分だけが安全な場所に引き篭もって震えているなんて。
あんなにも強く優しい彼女たちが傷だらけになっているのに、自分だけ戦場から遠い場所にいるなんて、死ぬよりも嫌だ。
「これ以上はヤバいかもって…私も思ってます…ッ!頭はすごい痛いですし、足も覚束ないです…!
でも、そんなことで止まりたくないんです…!私は弱いけど…せめて皆さんと同じ場所で命を張らせて下さい…ッ!!
──これ以上、足手纏いは…イヤなんです…!」
決意と涙が込められたその言葉に、その場の全員は何も言う事が出来なかった。ヒラミーも、ハルカも、シュバルツも、一人の先達としてその成長を素直に喜びながらも、そう易々とは行かない現状に閉口する。
そんな中で、一人割り切れない複雑な思いを抱いているのはミラだけだった。
無論、ミラもフィリアの成長は心から喜ばしい。出会ってからたった数ヶ月だが、それでもずっと隣で見守り続けていた彼女が、一人の騎士として己の意志を貫こうとしているのだ。正直に言えば、涙腺が緩みそうなくらいには嬉しい。
──だが同時に、胸の中に確かに在る靄の存在もミラは感じていた。
フィリアが一人の騎士としての信念を口にした事は喜ぶべき事だ。しかし、それは同時に彼女が守られるだけの存在では無くなったということを意味している。その事実がミラにとっては複雑極まりなかった。
…フィリアを護るのは常に自分でありたい、そんな独占欲にも近いものが芽生えつつあった。ミラ本人がこの感情の正体を知るのは、また別の機会になるのだが。
「……分かりました。」
シン、と静まった小屋の中。沈黙を破ったのはヒラミーの声だった。
「──フィリアさんの参戦を許可します。」
「っベディヴィア卿!」
彼女が出したその結論に、フィリアは喜びのあまり小さく声を上げる。
「ただし!!」
だが、その感情の流れを断ち切るようにヒラミーは言葉を続けた。
「私が…もしくはご自身でこれ以上は危険と判断した場合は、即座に撤退することを義務付けます。この条件が呑めないのであれば、参加は認めません。」
それは、至極当然の条件だった。大前提としてこの任務は、フィリアの初任務にして彼女の育成を兼ねた作戦だった。その当の本人が命の危機に瀕するのであれば本末転倒だ。
先刻までと打って変わってシュンと顔を曇らせるフィリアへ、ヒラミーはは申し訳なさそうに形の良い眉を顰める。
「…すみません。私だって、フィリアさんの気持ちは痛いくらい分かってます。でも、私はCNを与えられた騎士として…トリスタン卿からこの任務を任された者として、皆さんを無事に帰す義務があります。」
彼女はこの場を率いる長として自らの立ち位置を明確にすると、その炎のような瞳でフィリアを見つめる。
「──だから、生き残るために死力を尽くすつもりです。そして、フィリアさんにも無理をさせない程度に動いてもらいます。
…………では、これから各々の動き方を詰めていきましょう。」
「………作戦は、決まりましたね。」
静かに、ヒラミーは暗がりの中で口を開いた。
つい数分前まで開かれていた作戦会議は、ようやく終着した。
「──私とレスナーたちで、ギガロンを。」
「──私たち4人で、スランガを倒す。」
──スランガとギガロン。
あの怪物コンビを打ち倒す為に打てる作戦の全てを詰め込んだ。
だがそれでも、状況は五分にすらなっていない。あちらはまだまだ元気だというのに、こちらの戦力はか細い糸のように弱々しい。
──リバイバーたちをひどく消耗させているヒラミー、ミラ。
──決定的な瞬間まで決して姿を晒すことが出来ないシュバルツ。
──全身に甚大なダメージを負っているハルカ。
──『意識潜航』の影響で息も絶え絶えなフィリア。
率直に言って、この戦力で奴らに向かって行くことは自殺行為以外の何者でもない。
「私から言えることは、もうありません。…ただ一つだけ。」
すぅ、と深く息を吸う。
そして、ヒラミーは順番に仲間たちの顔を見つめる。
──自分を信じて相棒を託してくれた仲間たちへ、自分をこの場を率いるリーダーとして信じてくれる仲間たちに掛ける言葉は一つしかない。
「──勝ちましょう。」
その言葉に、3人は顔を上げる。
シュバルツは、雨音響く高台で口元を綻ばせる。
戦力差は圧倒的でも、勝ち目が薄くとも、負けるつもりはない。死んでやるつもりもない。
各々に帰る場所がある。待っている大切な人がいる。
かけがえの無い居場所がある。
だからこそ、負けるわけにはいかない。
彼女たちの決意は硬く固く、原動力として身体を動かしてくれる。
ほんの一拍を置いて、ヒラミーは笑顔と共に宣言した。
「──勝って、明日を掴みましょうッッ!!」
「「「はいッッ!!」」」
『はいッッ!!』
黒い雨はまだまだ止みそうにない。
──だがその向こうへ向かう為に、彼女たちは進むのだった。
次回、VSスランガ戦は終了します!
え?まだ姿が出てきてない敵がいる?……まあそれはおいおいと。