倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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気づけばUAが10万突破しました。



10.  水を差すどころか水鉄砲

 

 私のACことオープンフェイスが完成してウッキウキのスネイルです。

 

 時間が飛んだって?あのセキュリティを組み立てて実装するくらいは3日あれば問題ないですし、学園トーナメントやらもほとんど関わっていませんので。

 

 というよりも学園トーナメントでもトラブルが起き、中止となったのでこれと言うこともありません。

 

「見てくださいよ、何もしてないのに笑ってますよ」

 

「例のやつがやっと完成したみたいだね。動作も良好みたいだし、いずれ私達にも支給されると言ってたね」

 

「本格的に戦争でも起こせそうですね」

 

「閣下の発明の功績から、それくらいの力は必要ということさ…………」

 

 ホーキンス、説明ご苦労。MTの方も買い手がつき、ようやく量産体制に入ったことでもしものための部隊として彼等にもACを渡す事となりました。

 

 1人はリアルに戦える事を喜び、1人は何処か遠く見て、1人は事情が事情なだけに納得した顔をして、1人は若者の未来を憂い、2人は正義感に燃えて、会計担当はビビった。

 

 遠くない未来にMTが武装化され世界中に配属されることは間違いないでしょう。

 

 私が売り出したMTは安全装置諸々の件で武装化は困難ですが、設計図から見直せばできない話ではないのですから。

 

 とはいえ、MTもそこそこの大きさではあるもののISに対して多少の脅威に収まり、ACでも簡単に対処できるので素直に重機として使って欲しいものです。

 

 さて、試運転するにも場所が必要になります。ACはかなりの巨体ですので場所や移動方法の確保は必須となります。

 

 移動方法については例の輸送ヘリを名目上はコンテナ大量輸送用として造ったので問題ありません。

 

 ただ、場所については流れ弾が飛んでも大丈夫な様に広く、そして何もない所がいいのです。

 

 空中は戦闘モードだと厳しい部分があり、かといって海はあらかじめ場所を取らなければいけないがACの機密が漏洩する可能性も高い。

 

 まあ、これは漏れたところで他に配る予定もなく独占しますので姿や動きを見るだけなら全て些事なのですから。

 

 段取りを決めるための情報集めをオキーフに…………いえ、ここは実績作りのためペイターにでもやらせますか。

 

 オキーフも最近は忙しく、私に情報を仕入れてきてくれます。特に亡国機業というテロリストは重点的に、彼が自主的に集めているのです。

 

 やはり知人が居たことが大きいと予想が付きますよ。ショックだったのか、それとも…………

 

 おや、通信が入ってきましたね。これは、スウィンバーン?

 

「私です。何かありましたか?」

 

『あー、スネイル閣下。忙しいのは分かってるんだが…………その、なんで私がこれを伝えなければならんのだ…………』

 

 物凄い歯切れの悪いスウィンバーンだった。有事の時ならば堂々と報告し、逆に都合の悪い時だとこのようにばつが悪そうにしてくる。

 

 嫌な予感しかしないが聞くしかない。

 

『なんだ、上層部から何故か私に連絡をよこしてきてだな』

 

「…………要件は?」

 

『お、怒らないで聞いて欲しい。近日中にIS学園で臨海学校が行われるから技術者としてついて行け、だそうだ』

 

「分かってはいましたが、もはや拒否権も無しに伝えてきましたか」

 

『最近思うのだが、嫌がらせが多くなってきていないか?こうも業務に支障が出るとクレームの一つでも入れた方が良いと思うのだが』

 

「アレが聞くと思いますか?」

 

『それを言ったらおしまいなのだが…………はあ、予算をごまかすのも大変なんだ。MTはともかく、スネイル閣下が選んだ全員に件の物を配備するのも難しくなるぞ』

 

「分かっています。だからこそ資金を貴方に託しているのですから」

 

『…………閣下は本当に人が悪い。私が持ち逃げしたらどうなるか分かっているのに大胆なことをするとは』

 

「貴方のことです、身の危険が迫ったら命乞いをすると思うので情報よりも金を出させた方が被害が少なくなるでしょうから」

 

『信用していると見せかけて信用していない!?』

 

 スウィンバーンは良くも悪くも自分の身が可愛いタイプですからね。もしもの事があれば企業への被害を減らすためのダメージコントロールもしなければならないので。

 

 戯れはここまでにしておいて…………上層部め、本当に何を考えている。

 

 私が今から学生に何か教えろと?

 

 技術者としては教材を持っていき、兵器を作る者としての心得を教えるくらいしかないのだが資料だってすぐにできるわけでもないんですよ。

 

 それをわざわざ部下に伝えて、そして断ることも反論することも責めることもできない状況に追い込む。

 

 悉くが神経を苛立たせてくる。粛清してやろうか…………!

 

 だが、今は我慢するしかない。ACもまだ一機しか出来ていない現状で円満に抜けることは出来ない、いや多少のトラブルはあるとしても倉持技研としての大損害は免れない。

 

 それならば乗っ取るか?いや、まだ先の話になるため今はいいでしょう。

 

 それに、『アレ』も作らなければいけないのだから、その時が来るのは先でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倉持技研2番研究所所長スネイルです。何か言いたいことでもありますか?」

 

「いや、本当に来てくれるとは思いもしなかった」

 

「私も来たくありませんでしたよ。全く、仕事でなければここには来ませんよ」

 

 猶予が数日しかなかったことに一度愕然としたものの、何とか座学の資料になるものを完成させて直で現地入りしたスネイルです。

 

 合間に仕事をこなすまでは良かったのですが、フロイトが早くACパーツ作れと急かすわ余計なISパーツの開発を他研究所から回されてくるわで、てんやわんやでしたよ。

 

 もう資料作りながら妨害をいなして期日までに何とかした私を褒めて欲しい。アーキ坊やの幻覚を見るにはまだ早いですが。

 

 時刻は昼前、太陽が頂点に達する直前で到着した私に職員は砂浜へと案内した。

 

 そこには水着姿で海を満喫する学生達が居た。

 

 …………まあ良いでしょう。学生なのですから初日は遊ぶくらい許容できます。

 

 学び、そして遊ぶことができるのは学生のうちしか出来ません。存分に遊んだ後に勉強すると良い。

 

「しかし、講義の前日に来るとは熱心だな」

 

 そう、午後からの講義の予定なので昼前には着いておきたかったので…………

 

「前日…………?」

 

「ん?予定はしっかり伝えていたはずだが?」

 

「予定は今日と聞いてますが」

 

「明日なんだが?」

 

 私と、いつの間にか近づいてきた織斑千冬との情報に齟齬がある。

 

 待て、確かに私はスウィンバーンから今日と聞いていたが、その情報が本当に正しかったのか?

 

 上層部は女尊男卑の思想に染まり、スウィンバーンにすら嘘を伝えた可能性が非常に高い。

 

 スウィンバーンが間違えたという線もあるが、流石に無いはずです。

 

「嵌められたのか?」

 

「そう言ったところです。何処までも、何処までも…………!」

 

「まあ、何だ。今日1日は休んだら良い。そもそもスーツは暑くないのか?」

 

「スーツは戦士の嗜みです」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

 企業戦士という意味での嗜みですよ。思えば織斑千冬はまともに企業に勤めた事はあるんでしょうか?

 

「む、あれは…………」

 

 遠くに見えたのはビーチでバレーをする男性操縦者こと織斑一夏。

 

 女性3人と審判1人の計5人で楽しんでますね。よく見ると篠ノ之束博士の妹と代表候補生4人じゃないですか。

 

 あの時は私闘をするくらい仲が悪いと思っていたが和解したのでしょう。

 

 と、いうよりも…………?

 

「気づいたか。あいつは好意を持たれてるんだ」

 

「その割には平然としていませんか?」

 

「それに気づいていない」

 

 織斑千冬からの補足が勝手に入る。それは、まあ他から見たら一目瞭然な物です。

 

 篠ノ之束博士の妹と代表候補生4人以外からも見られている事に気づいているのでしょうか?

 

 確かに彼も顔つきは姉に似て整い、そこそこ鍛えられた肉体も若い女性にとってそそる物でしょう。

 

 その反対に彼も性的な興味を持つ筈なんですが、そのそぶりが一切ない。

 

 何だこの違和感は?何か、気になるのだが…………

 

「す、スネイルさん?明日来るって聞いてたのに」

 

 モヤモヤする感覚を拭えないでいると、ひっそりと身を隠すように白のスクール水着を着た見覚えのある生徒が来た。

 

「ああ、貴女ですか。日にちを間違えただけです」

 

「意地を張ったな」

 

「外面は必要ですので」

 

「???」

 

 頭の上にはてなマークを浮かべる更識簪と茶々を入れる織斑千冬にため息を吐く。

 

「少し待っていてくれ。今から生徒達に紹介をする」

 

「ご自由に」

 

 日が照っている中、私は特注の涼しくなるスーツを着てきた事を僅かな幸運と思いながら生徒の集合を待つのであった。

 

 





V.Ⅶ「わ、私は悪くない!閣下を嵌めようと嘘の情報を伝えるとはなんたる卑劣…………!」

※いつもの嫌がらせなのでスウィンバーンは本当に悪くないです。
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