さん付けしただけでここまで言われるのほんと草なんだが?残当。
何やら騒がしいと思うとアメリカから無人ISが暴走したという情報が入ったスネイルです。
これはホーキンス経由で日本政府からの情報なので間違い無いでしょう。
私が不在の際の交渉役はホーキンスに任せていますので。他のメンツに関しては、忙しいのと未熟なのと、あと適任では無いのがいるので彼に任せることとなっています。
さて、この状況は完全に仕組まれていると考えて良いと思います。
その原因は篠ノ之束博士でしょうし、どうせ碌なことを考えずやったはずです。
とは言え、織斑千冬が居るので大丈夫でしょう。IS武装のテストという事で専用機がなくとも予備用のISを持ってきているでしょう。
そう思っていた私が愚かだった。
「私の聞き間違いでしょうか?生徒5人で対応させると?」
「っ!スネイル所長、いつから…………?」
「私に情報が入っていないとでも?この騒ぎ、ツテがあるならすぐに分かる事です」
本当のところは運が良かったから知ることができた、と言うべきですが黙っておきます。
そもそも明日には日本政府との我が技研におけるテロリスト対策についての話し合いがあり、それをやむを得ずキャンセルしたからこそ入った話だ。
たまたま気を利かせてくれる人間がいたから良かったものの、こいつらは本気で言っているのか?
私は作戦会議をしている最中の教員及び専用機持ち達の会話を盗み聞きしていたが、聞き逃せなくなり乱入したのだ。
「織斑千冬、貴女なら例え訓練用のISでも武装さえあれば乗りこなせる筈です。いえ、専用機を持っていてもおかしくは無いのでは?」
「私の専用機は凍結状態だ。いくら私でも生身では勝てん」
「そういう事ではない、何故ーーー」
「私の推薦だよー?」
詰めようとした私の言葉を遮る篠ノ之束博士。
「第4世代型の紅椿はエネルギーを増幅させる機能があるんだ。それをいっくんの白式に合わせると燃費が悪いのが、何といつまでも戦えるようになるのだ!」
「才能の話ではない」
自慢そうに言う博士の言葉を一刀両断し、私は織斑千冬の前へ行く。
「貴女は自分が何を言っているのか分かっているのですか?」
「…………聞いた通りだ。一番確実な方法で暴走したISを落とす為の」
「その為に死地へいけと命じるのが、貴女のやり方か」
私の言葉に場が静まり返る。
いくら訓練したとはいえ、戦場を直に感じる事は無いはずの学生だ。
強力な専用機持ちであっても模擬戦のような命の取り合いではない戦いを繰り広げていたわけだ。
そこは良い。彼女達は専用機を持ち国の代表となるよう訓練していた人材、それなりに覚悟して来たわけだ。
だが、そこでまだピンと来ていない男性操縦者は論外と言わざるを得ない。
代表候補生でもなく、それどころか最近までISを触った事もない。
仮想とはいえ、どのような乗り心地か、操作感かを様々な方面に協力を求め、先進的技術を見返りに得たデータから作られたシミュレーターを体験した私でも分かる。
センスがフロイト並みなら戦場に出て問題ないだろう。だが、そこそこ出来ると思っていた私でも慣れるのは時間がかかりました。
ACの操縦は即座にできたのですがね。
「全く、そこまで考えてなかったとは」
「待ってください。ISには絶対防御があります、簡単に死ぬ訳では」
「いいえ、検証は済んでいます。何処まで、そしてどのように突破出来るのか」
この言葉にたった1人を除いて驚愕していた。
ISは無敵である。その定説は固定概念として世界に君臨してしまっている。
過信した故に、足元を掬おうとするものが現れないと思い込んでいる。
「わざわざ日本にいる学生を投入するのもおかしいでしょう。独自の形態があろうと国が、いえISが暴走している時点で国連も介入しなければならない事態のはずです」
「その、国連もIS学園の戦力で対応しろと通告が…………」
「…………そのような戯言、本気にしたと?」
そんな馬鹿な話あるものか。せめて近くのIS搭乗者くらいは連れてくるものだろう。
いや、それよりも何を考えたら国がそのような判断になる?ISに乗れるとはいえ子供に重要な案件を任せるか?
「…………分かりました。現状、どうしようもないなら好きにするといい」
「ふっふーん、いい戦果を期待することだね!」
煽りに聞こえ、そしてフラグにも聞こえる篠ノ之束博士にため息をつきたくなる。
この場の人間でISの恩恵を最も受けていない私がどうこう言っても響くことは無いだろう。
肝心の男性操縦者と、篠ノ之束博士の妹がやる気を見せているのが後押しとなり作戦は決行することになった。
だが、万が一が起きるのが戦場の常である。
私もフロイトとシミュレーターで対戦していた際に、追い詰められていたと思うとラッキーパンチ、いや、この場合はラッキーランチャーが当たり撃墜判定にしたこともありましたね。
恥ずかしながら、あの時は操作ミスで発射してしまったのが奇跡的に当たったのです。その後はフロイトにどうしてランチャーを撃った判断をしたかしつこく聞かれて面倒でしたよ、ええ。
このように不測の事態が起こる可能性は否定できないのです。
幸いなことに、まだ時間はある。
…………いえ、丁度いい機会でしょう。彼らが失敗した際のプランとしてメーテルリンクを呼びましょう。
なんだかメーテルリンクが便利な扱いになっている気がしますが、小回りが利く人材なので使えるのは違いないのです。
そして、私のACも運びましょう。
失敗を願うことは酷だが、私のACの試運転に付き合う機会を貰いましょうか。
「一夏君が撃墜されました!」
「そんな、なんで!?」
「密漁者をかばって、よりによって箒さんの流れ弾で…………!」
観測に徹していた教員たちの叫びが響く。
私としても、誰かは撃墜される可能性は考えていましたが、よりによって作戦の要である彼が堕ちるとは。
さらに言うと、篠ノ之束博士の妹が搭乗しているISが放ったものが、最悪のタイミングで侵入してきた密漁者に飛び、それをかばったという。
あまりにも運が無い。犯罪者など放置しておけばいいものの、密漁自体が誰の支援も受けられず死ぬ可能性の高いものをわざわざかばうとは。
しかも、この戦いを見た以上は拘束されてどのような目に合うのやら。
それならいっそ死んだ方が楽だったのかもしれません。
それにしても織斑一夏、まさかここまでお人好しだったとは。
自分が失敗したら分かっているのでしょうか?最悪、ここが爆撃されて全てが灰燼になりかねないということに。
「私の作戦が失敗して嬉しい?」
横から話しかけてきた篠ノ之束博士に、私は一瞬どう答えたらいいか分からなくなってしまった。
状況としては、新しい力を授けたが故に妹が危険な行為を犯し、その結果が親友である織斑千冬の弟を傷つけてしまった訳なのだが。
「いえ、特に何も。失敗する可能性はあると考えていましたが、まさかこんな形で終えるとは」
「むう、ま、失敗なんてよくあることだよねー。でも、いっくんが回復したらもう一回いけばいいもんね!」
あまりにも無神経な言葉にあわただしい空気が更に険しくなる。
医療用ナノマシンが存在していても、戦えるまで回復するまでには敵ISを足止めする必要はある。
その足止めに今戦っている代表候補生を使い潰そう、彼女はそう言ってるのだ。
あまりにも行き当たりばったりな提案にため息を吐く。
最終的に自分の目的さえ果たせばどれほどの犠牲が出ても良いと考えている。
ええ、私もそう思いますよ。ですが、企業に勤めている以上は身内の犠牲は許容出来ません。
「…………保険をかけておいて正解でしたね」
代表候補生が残り、何とか銀の福音の足止めしている最中に私の端末が震える。
「えー?援軍呼んだの?これから面白くなるのに?」
不服そうな言葉とは裏腹に、何処か楽しみにしているように弾んだ声。
そして何か期待したような目をこちらに向けている。
「知ってるよぉ〜?『シミュレーター』に色んなもの突っ込んでるんだよねぇ〜?」
他の人間がクエスチョンマークを浮かべているが、私は冷や汗をかきそうになった。
シミュレーターはISのデータを取り込み、設計を完成させたら試運転できる仮想VRの事である。
そこには以前発表したMTのデータ、そしてACのデータも入れている。
しかしMTならともかくACを実際に製造するとなると、非常に複雑な構造故に製造不可と他研究所から言われている。
だが私は開発した。そして、篠ノ之束博士は私がそれを開発したのではないかと思っているのか?
いや、そもそも他研究所にも提供しているとは言え厳重に保管してあるシミュレーターの情報が漏れてるのがおかしいのですが。
その理由も篠ノ之束博士が単独犯なら話はすぐ終わるのですが。
「私です、到着時刻は?よろしい、そちらへ向かいます」
少し時間は空きましたが、端末による通話により到着を告げられる。
ならば後は事を成すのみ。今考えている行動を取る為にこの場から立ち去ろうとする。
「見せてもらおーじゃん、何を持って来たかをね」
妙に評価の高い篠ノ之束博士に怪しさを感じながら、私は何も言わずにそのまま行くのだった。
ちなみにワーム砲はまだ開発していない。
ルビコニアンデスワーム級にヤバい奴はいないし、そもそもISにもだいぶ刺さる上に下手したらオーバーキルになるからスネイル頭の中にだけ設計図を残してる。
どでかいパルス兵器もそうだが、あんなもん量産して世に出してみろ、飛ぶぞ(世界中の電子機器の命が)