フロイトは謹慎&減給&しばらくシミュレーターに触れるの禁止になった。
兎はいつの間にかロケットに乗って逃げたのでお咎めなし。
V.Ⅰ「何故俺だけなんだ」
『エム、仕事の時間よ』
『今回のターゲットは倉持技研2番研究所所長スネイル、と言いたかったけどメインはアーマードコアと呼ばれた兵器よ』
『先日にアメリカ軍のISが暴走したことは覚えているわね?』
『アメリカの極秘兵器が、倉持技研の極秘兵器に破壊されたと各所からの問い合わせが倉持技研に殺到している混乱に乗じて情報の奪取が仕事内容よ』
『今回の騒動に伴ってスネイル・秋葉は倉持技研の乗っ取りを画策しているみたいなのよ』
『様々な不正を証拠に動き出し、上層部を排除して自身が開発した商品を各所に売り出そうとしている。残念なことにその中に私達は居ないの』
『あそこにも私達、
『もし不正の証拠があればついでに消すと助かるわ』
『いい?目的は奪取、破壊だとあの男に損害は殆ど与えられないわ』
『いえ、もしかしたら…………』
『アーマードコアを奪えば大損害になるかもね?』
『聞こえているわね。ミッション開始よ』
インカムから聞こえる声に返事はしない。潜入任務故に声を出すとバレてしまう可能性があるからだ。
『こちらの協力者によって入る際に1分だけセキュリティを切っているわ。それ以上の時間は向こうにバレてしまうから、タイミングを逃さないように』
赤外線で警護している壁の上を確認し、まだ電気が通っていることを確認する。
特殊な暗視ゴーグルによって赤外線を可視化しており、観察し続けていると赤外線が突如消失した。
『今よ』
それを合図に彼女は常人をはるかに超えた身体能力で壁を駆け上がり、2秒も満たない時間で飛び越えた後に音を立てずに着地した。
警備員はいるが、様々な任務に就いた彼女なら無視して先へ進むことが可能である。
死角を利用し、
『カードキーが必要な扉ね。偽装のカードキーはあるかしら?』
耳元から聞こえる声に従いカードキーを腰のポーチから取り出し、付属していた装置にスキャンさせて扉を通る。
そのまま走り抜け、目的地になる地下につながる通路へ出る。
『ここは…………相当苦労して作ったようね。深さも分からないわ』
地下通路には中が見られるように窓が設置されており、覗き込むと暗くどこまでも落ちそうな空間が広がっていた。
だがよく見ると足場もあったり、照明もついていたりと作業できるスペースが備わっている。
完全に巨大な機械を整備するための空間と言っていいだろう。
『このまま進みなさい。最下層に降りなくても中央付近に管理室があるみたいだから、そこに侵入しなさい』
曲がり角から誰か出てこないか、曲がり角の先に誰かいないかを警戒しつつ進んでいくが妙に気配が少ない。
申し訳程度に警備員らしいのが存在しているが、彼女からしたら取るに足らず回避も簡単な相手で拍子抜けしてしまう。
管理室はカードキーではなく、意外にも普通のディンプルキーと呼ばれる防犯に優れたモノであった。
その程度の鍵ならテロリストである彼女は簡単に開けられる。
『…………静かすぎるわ。重要拠点の筈なのに人が少ない。この日は業務を停止させているというのに』
事の発端はスネイルがACを出撃させる為にカーゴヘリを起動させたことにより研究所から街の上空へ、そして砂浜まで移動した事によりクソデカヘリの目撃情報が多数上がった事による。
SNSで拡散され、ニュースにまでなった為に事情説明で一時的に業務を停止するよう倉持技研上層部が命じたのだ。
だが実情は告発の足止めに近い。
上層部はACがどれだけあるのか知らず、スネイルは上層部の不正を多く握っている。
IS武装からMTの製造に移行、そしてACの量産のために技研を奪い取ろうとしているのだ。
なので今回のミッションはMTの価値を少しでも下げて、なおかつテロに使われたら危険物を作った人間として処される可能性を作るための工作なのだ。
『これね。ここに全部あるとは思わないけどデータを抜きなさい』
暗い部屋でパソコンをつけてデータを探す。
カタカタとパソコンを操作してMTの情報が入ったファイルらしきものを見つけコピーしようとした。
兵士として造られた者の勘。この瞬間をしくじれば命を落とすという感覚を捕えた瞬間、即座に後ろに飛びのいた。
それと同時にぱん、と乾いた音が管理室に響く。
「気づいたのか?いや、勘だな」
男の声がするのと共に電気が付く。
「留守の最中に空き巣は褒められたものじゃないな」
そこに立っているのは優男。髪を後ろにかき上げ彼女に向けて銃を構えている。
「お前を拘束させてもらう」
銃を構えたまま接近してくる男に対して、エムは近接戦闘を仕掛ける。
優男は発砲するが目視で避けられ蹴り上げられるかと思われたが横に回避してさらに銃を撃とうとする。
しかし、蹴り上げてすぐにエムが投擲したナイフに気づくと銃で受け止めてはじくが、その隙に再度接近されて殴り飛ばされる。
鍛え上げられた拳にとっさに防御した腕が痺れるほどの衝撃が走り拳銃を落としてしまう。
『エム、その男を始末しなさい。見られた以上、生かしてはおけないわ』
冷徹な判断、テロリストとして当然のことを何の疑問もなく素手のまま抹殺しにかかる。
武器を使えと言いたいのだろう。
忘れているかもしれないが、彼女は一種の強化人間なのだ。たかが1人を素手で殺すことは容易い。
その1人が特別でなければ。
エムの高速で放たれる攻撃に対して優男は全て最低限のガードでしのぎ続ける。
いくら彼女が相手だろうと明らかに実戦慣れした戦い方、徐々に違和感を持つようになる。
「この戦い方には覚えがあるな。そうだ、クローンが高速学習する戦い方にそっくりだ」
「何を…………っ!」
僅かな取っ組み合いの時間で優男が言った言葉に一瞬動揺し、その隙に地面へと投げ飛ばされる。
「がはっ!?」
「待てよ、その顔…………まさか例の計画の残党か。オキーフの言っていた情報は間違っていて欲しかったが…………」
『なるほど、貴女の出自についてある程度知っているようね。いえ、こちらにもあの男に見覚えがあるわ』
ようやくしっかりと顔を見ることが出来たらしい優男が持っていた疑問を確信に変えた。
そしてインカムから聞こえるスコールの声に苛立ちを感じつつ、すぐさま戦闘態勢に戻ろうとする。
『撤退よ。まさか厄介な人物がいたとは。今、この男を始末すると厄介なことになる』
「何を弱気なことを…………!」
今度は優男から仕掛けてくる。腰のホルスターに入れてあったスタンバトンを抜き押し付けようとする。
倉持技研で重要な場所を警備していて、なおかつ容赦なく発砲してきた男が持つ武器はろくでもない物に決まっている。
たかが棒でも当たる訳にはいかない。
管理室から格納庫を一望できる唯一の窓からISを展開しながらぶち破り、そのまま指示された通りに上空へ高速移動。天井に向けて拡張領域に仕舞ってあった銃剣付きライフルを取り出し放つ。
カーゴヘリを格納するための倉庫の役割もあり、その程度では破壊は出来なかった。
それと同時にアラートが鳴り響く。侵入者が派手に暴れたせいで起動したのだ。
『焦らないで。途中で窓から外を見たでしょう、たとえ外壁が硬くても人間用の扉はそこまでではないはず。そこから脱出しなさい』
本来なら通路をISで爆走して逃げるのがよかったのだが判断を誤ったことに気づいた彼女は歯噛みする。
冷静さを取り戻した彼女は言われた通りに途中通路の窓を破り、侵入した扉までかっ飛ばした後に体当たりで強引に突破、そのまま上空へと逃げて行った。
「…………全く大したものだ。だが、いいことも知れたな」
遅れて外に出た優男は空を見上げた。
空は朝日が差し込もうとして、ほんのわずかに明るかった。
「スコール、何故撤退の指示を?」
『あの男は政治的立場上、殺すことは難しいの』
「何故?ただの警備員だ」
『とても強い警備員よ。なにせ…………』
スコールは思い出す。ある場所、ある川の近くの田舎町であった戦い。
観光名所とは裏腹に、密かにテロリストに掌握され搾取され続けていた街を救おうと立ち上げられた組織があった。
長い戦いの末、彼らはテロリストを追い出すことに成功。その組織は成長し、暗躍する悪を打ち破る秘密組織へと変貌していた。
『ルビコン解放戦線の英雄、通称スティールヘイズ。彼を始末すると向こうも全力で私たちを潰しにかかるでしょうね』
朝日に照らされているエムには、その重要性は理解できなかった。
誰かを守るための戦いを経て強くなった者への信仰が。
やっと謎に包まれたラスティについて触れられる。
そして何故ACが極秘に製造出来るようこじつけたのか。
…………纏められるか?休み、欲しいなぁ…………