私もルビコン川についてはAC6で初めて知りました。
ルビコンと名のついた川は存在する。
古代ローマにおいてユリウス・カエサルが掟を破り進軍した歴史ある川である。
その際にカエサルが言い放った『賽は投げられた』という言葉はあまりにも有名だろう。
現代から半世紀前、ルビコン川全域にて大規模な火災が生じた。
原因は不明だが、この火災はあらゆるものを焼き尽くした。
それでも人間はしぶとくその場に住み着く事はできた。
だが、まっさらになった土地には利用価値がある。
身元不明の住人、犯罪者、テログループの一員…………
生き残った者に混じり、外からやって来た不法勢力も介入してきた為に暗黒の時代を迎える。
それでも搾取されるだけでないと住民たちは立ち上がった。
表面上は穏やかであっても水面下は苛烈な戦いを続け、いつしか巨大組織へと変貌していく。
その組織の名はルビコン解放戦線、民間であり手練れの武装組織である。
その出会いは、偶然だった。
スネイルは名前だけとはいえ馴染み深い地名がある場所に旅行へ来ていた。
この頃はまだ所長の座に着く前であり、ISの発表がされてからそれほど経っていない時であった。
これから忙しくなる事を見越して興味のあった場所へ行く事を決めた彼は、それが正しかったのかどうか後に悩む事になる。
既に頭角を表し始めていたスネイルはまだ存在していたライバル達から敵視され、場合によっては消されそうになっていた。
多くの策謀を掻い潜り生き延びたスネイルに、ライバル達は強硬手段に出る。
武装組織へ優秀な科学者が旅行しに行ったという通達。誘拐して排除すれば報奨金を出すと。
案の定、スネイルは襲撃された。それでもただでは転ばぬのがスネイル、自身の知識がどれほど危険であるかを正しく理解していた彼は持ちうる自衛手段を使い抵抗した。
とは言っても1人だけではどうしようもない。全てが時間の問題かと思われていたその時だった。
『旅行者か、手を貸そう』
颯爽と現れた優男が参戦し、2人で謎の襲撃者を撃退した。
こんなに治安が悪いのかと驚いていたスネイルに彼は語る。
『ここは確かに観光名所だが、治安が悪いのも確かだ。だが、このように誰か一人を襲撃するということは滅多にない』
『でしょうね。最初から私目当てだったと考えると心当たりはあります』
『つまり、まだ襲撃されるかもしれないという訳だな』
ある程度の心当たり、そして襲撃の可能性を考えると普通の宿ではまた襲われる可能性があるので優男に匿われることとなった。
いくら観光名所とは言えど故郷で悪事を働かれるのは見過ごせない。
優男が所属する組織、ルビコン解放戦線のセーフハウスの一つへと案内された。
『ルビコン解放戦線…………本当に存在していたとは』
『噂くらいならあったかもな。ここならしばらく安全だ、観光にしては少し殺風景だがな』
『結構です、誰もここまで波乱万丈な旅行になるとは思いもしませんでしたので』
普通なら混乱する場面のはずなのに、あまりにもどっしりとした考えを持つスネイルに苦笑いした。
どこまで肝が据わっているのか、それともただ傲慢なだけなのか。真偽は分からないにせよ狙われるだけある人物だということは分かった。
『申し遅れました、私はスネイル。貴方の名前は?』
『済まないが本名は名乗れないんだ。まあ呼び名はある』
『では、その呼び名を』
『ラスティ、そう呼んでくれ』
スネイルはヒュッと声が漏れそうになった。
スネイルが見る限り、街は平和に見える。だが噂のルビコン解放戦線が存在しているとなれば暗い所では相当な行いがあるのだろう。
容易に襲撃されたスネイルだからこそ実感する。この世界は想像以上に争乱が多すぎる。
AC世界は尋常ではなかったが、それと比べるのは酷だろう。
幼い子供が街を駆け回って遊び、見知らぬ男性が商売として野菜や果物を売る。
だがよく見ると子供の着ている服は古く、八百屋の店、いや、ほかの建物も何とか組み立てたといったややオンボロと言った風貌だった。
観光地としての雰囲気を出すのはいいが安全性が欠けている。
ACの開発が先決と考えていた彼の心は動いた。
『そうか、私は優先順位を誤っている。ただACを造るだけではダメだ、MT、そして巨大な建物があってこそのアーマードコア…………』
彼は闘争のために文明を発達させることを決めた。
人類の新たなステージを目指し、されど急激な進化は大きな悪影響を与えることを理解しているため強化人間の設計はしないように。
そのためには些細な街でも十分に復興させることが大事だ。
命を救われた手前、何らかの恩は返さなければならないと考えていたスネイルの耳に銃声が聞こえた。
ここまで物騒なのかという思い、しかし住民達は逃げ惑うのではなく何かに立ち向かうように走っていく。
それに乗じてスネイルも密かに向かう。
音の発生地点にたどり着くと、そこは戦場だった。
物陰に隠れて流れ弾に当たらないようにして見てみれば、マフィアかギャングか分からない相手と住民が銃を向け合い殺し合っていた。
恐らく縄張り争いに反抗する住民を追い払うか始末するかして街の利権を得ようとしているのか、怒号と悲鳴と銃声が飛び交う。
よく見ると武器の質は襲っている側が上で、住民側が劣勢と思われた。
そのようなスネイルの予想は覆される。
『灰かぶりて我らあり!』
『略奪者共を追い払え!』
『な、なんだこいつら、士気が高すぎる!』
『こいつら本当に市民…………ぎゃあっ!』
『敵は大したことない、一気に畳みかけるぞ!』
性別関係なく街の大人が盾となり、そして鉾となり戦いを制していく。
土着の民兵かと考えていたスネイルも、あまりに手慣れた戦闘を見て感心してしまう。
だが、ここまでの手練れが未だに侵略に脅かされているのは支援がないからかもしれない。
実際に彼らには罪はなく、戦わざるを得ない人間となってしまっているのだ。
『お前、旅行者か?』
スネイルの後ろから声がした。
不覚を取ったと思い、ゆっくり立ち上がって後ろを振り返ると銃を突きつけるマフィアらしい男が血走った目で見ていた。
『ちょうどいい、人質になってもらうぞ』
明らかな脅し、相手がスネイルでなければ涙目になっていただろう。
『何故、貴方はここを狙うのですか?』
『知るかよ!資源があるって聞いたからちょいといただこうって話よ。そのまま前向いてあっちに行け!』
ルビコン、資源、そして昔に起きた大火災。スネイルの頭の中で嫌なピースがはまっていく。
もし、
『なるほど、参考になりました』
『さっさと動け!死にたいのか!』
『警戒を怠ると、私みたいに背後を取られますよ?』
『何を言って、ぐあっ!?』
スネイルの失態をさらに悪化させたような光景、背後からの不意打ちを受けたマフィアはそのまま昏倒する。
『ここは戦場だ、巻き込まれるぞ』
それを成したのはラスティと名乗る男。爽やかさはあるが、どこか修羅をにじませている雰囲気でスネイルに語り掛ける。
『心配には及びません。似たような現場は知っているので』
スネイルの脳裏に浮かぶのは仕事を大量に押し付けられデスマーチで阿鼻叫喚となる職場。このころから上層部は最悪だった。
そうか、と言う風にラスティはスネイルの横を通り過ぎて戦場へ駆けて行った。
その後は瞬く間に住民が侵略者を制圧し、戦いは終結した。
『もうここには来ない方が良い。次に何かあったらどうなるか分からないからな』
『いえ、また来ますよ。命の借りと、貴方の力が必要になると思いますので』
『言ってくれる。その立場になるのか?』
『ええ、なりますとも』
スネイルが町を離れる際の会話である。
ラスティと軽く握手をしたのちに、警告と友好を示してスネイルは街を去った。
そして数年後…………
『倉持技研2番研究所所長スネイルです。約束通り、借りを返しに来ました』
大規模な工場計画を携えて彼は戻ってきた。
彼が設計したMT、そしてACのパーツを造るために各国の地域に経済支援を図り、地盤を強固に固める作戦を彼は決行した。
地域住民に新たな職を用意し経済を発展、MTが完成すると重機代わりに利用してもらい街の復興を支援、そして侵略者から守るための強固な壁まで準備した。
そこまですると怪しくみられる。彼らが隠している物を欲しがっているのかと疑うが。
『もし私の予想するものであるなら、むしろ焼き払わなければならない。そうでなければ、決して外に出さぬよう管理しなさい』
『…………驚いたな。性質を知っているのか?』
『似たような物を、ですが』
スネイルの支援の条件、それは資源の完全なる封印もしくは破棄。そしてラスティという『英雄』を日本に呼び寄せたいと。
『私の夢には障害が多すぎる。その中に貴方達が戦う
そう言ってスネイルはかつてのように握手を求めた。
『…………そういえば、私は昔、ある夢を持ったことがある』
スネイルの計画、夢、そして創造する物の内容をあらかた聞いたラスティは問う。
『ISのように、高く飛べるか?』
『もちろんです。高く、そして速く、鳥よりも自由に』
お互いの手が再び握られた。
友情に見えてお互いどう利用しようかとしか考えてない模様(雰囲気ぶち壊し)
まあラスティからするとスネイルは職を提供してくれるけど戦争の火種になりかねないし、監視目的についていくのが一番な理由。
ついでに英雄になったのはスネイルが介入する前なので、このラスティガチの英雄だったりする。