倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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20. MTは燃えているか

 

 MTの量産に伴い上層部を蹴散らそうと画策しているスネイルです。

 

 ACが知らぬ間に露呈して噂話が広がりつつある今、利権のみを取ろうとする彼女達には退いてもらう必要があります。

 

 何せ、偉そうにしているだけで特に何もしていない。いや、私への嫌がらせはしていますが。

 

 秘密裏に他研究所の信用はある人物に通達はしています。そろそろ不正ばかりしている奴を排除しないか、と。

 

 男性陣の大半は私についてくるという回答はありました。女性についても権力だけで無駄にふんぞり返っている奴は気に食わないと私の陣営へ来る者も居ます。

 

 打算でこちらに擦り寄ろうとする者も居ましたが、所詮は小物。別所へ情報をリークするそぶりを見せたら再教育です。

 

 そしてACの動作確認も銀の福音のお陰で十分すぎるデータが集まりました。

 

 これで計画の一つ、ヴェスパー部隊の設立が一気に近づいた。

 

 既にオープンフェイス以外の機体も試運転の段階まで漕ぎ着けているのが1つ、いや2つほどあります。

 

 それにラスティのワガママも聞かなければならないので、そちらの方もほぼ完成に近い状態で置いてあります。

 

 ただ懸念点を挙げるならフロイトがパーツを多数求める事でしょう。

 

 現在、私が支援という名で世界各国に配備させた工場ではアーキバス製の武装を作るための部品を作らせています。

 

 そのため私が知るベイラム製武装やファーロン製武装、RaD製品などはどうしても遅れを生じる。

 

 何故あの男はアーキバス製品を申し訳程度にジェネレータにしか使わなかったのだ。本当に困って仕方がない。

 

 とはいえ世間的にはまだ大々的に発表する気はないのでこのまま極秘に開発です。

 

 先にMTを世間に広め、もし間違った用途、戦争で使うようなら我々ヴェスパー部隊が相手になるという形になります。

 

 何故そこまでするか?生みの親なのですから責任を持って始末するのが筋でしょう。

 

 それに乗り込んだ相手の事は知りませんが。

 

 テロリストは害虫です。遺伝子改造でもしない限り害を及ぼすものを放置する理由はありませんので対策するのは当然の事。

 

 いずれ無人機になるであろうMTですが、ハッキングされてしまう可能性だってあるので多くの対策は必須となります。

 

 特に篠ノ之束博士は面白半分でやりかねない。せめて強制シャットダウン機能はつけなければ…………

 

 篠ノ之束博士で思い出しましたが、IS学園で学園祭があった際に件の男性操縦者が襲撃される事件が起こったと報告がありました。

 

 何をやっているのかと言いたいですが、やはり亡国機業が関わっていたというべきか。

 

 どこでも湧きますね奴らは。バルサンでも炊いてやりましょうか?

 

 流石にこの一件を重く見た…………いえ無人機の侵入の時点で重く見なければならないのですが、重すぎる腰をようやく上げて生徒全体の質を上げるための大会を開くことになるようです。

 

 なんやかんやと多くのイベントが潰されていたので戦力強化は必須項目となるでしょう。

 

 今回のイベントはタッグマッチということで我が技研が支援している…………もはや興味を持っているのは2番研究所しかいませんが、更識簪も参加するとのこと。

 

 彼女のISは遠距離攻撃を主軸としたもの。申し訳程度に薙刀も武装に含まれているが使う機会は殆ど無いでしょう。

 

 だからこそ組むのは中距離もしくは近距離に特化したISでしょう。

 

 それこそ男性操縦者が思い浮かぶのですが、あれは少し特化しすぎて扱いづらい。それどころかミサイルの乱射に巻き込まれる可能性が高いため相性は悪い。

 

 そうなると一体誰と組むのか…………

 

 まあいいでしょう。勝つことに関しては技研に箔が付くので自己判断で決めて、勝っていただけたらいいので。

 

 今は尻尾を出すまで泳がせましょう。既に私が上層部を蹴落とすという噂が立っていますが些事であるため放置です。

 

 踊るなら好きなだけ踊りなさい。そして私の手の中で踊り狂い果てるといい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『閣下、MTの生産は順調です』

 

『日本はもちろん、中国、イタリア、そしてアメリカへの輸出状況はおおむね良好です』

 

『実績のない会社への販売ははじいております。これでよろしかったでしょうか?』

 

「よろしい。新興およびペーパーカンパニーらしきものはテロリストと判断してブラックリストに入れておきなさい」

 

 ようやくMTが世界に出回るようになってから私はとても忙しい日々を過ごしている。

 

 輸出されたMTが襲われないよう警護を手配したり、他社との交流による値段交渉。そして開拓地への支援など多くの方面へ働きかけ地位を確固たるものにしようとしている。

 

 多くの恩を売りつつMTの性能に揺らぎが無いかのチェック、それにモノだけよこせと圧力をかけてくる愚か者への対処…………

 

 しばらく私が直接ACに関わることは出来なさそうです。

 

 とはいえ殆どのアーキバス製のパーツは揃っており、しいて言うならフロイトとラスティのACのみ未完成となっています。

 

 これは仕方のないことで、ラスティはともかくフロイトが今あるパーツではしっくりこないという我が儘を言いだすので保留にしています。

 

 それに機密を喋ったことを私は根に持っていますからね。

 

 なので最悪の事態を想定した動きはいつでも可能です。しいて言うならば到着まで少し時間がかかるかもしれないという点。

 

 それでも武装していないMTは自動車みたいなもの、ISの手にかかれば破壊は簡単です。

 

 …………そのISが敵でなければの話ですが。

 

 今は二脚しかないのです。四脚かつ武装してあるなら十分に勝機はあります。

 

 そこまでの水準に引き上げてこそACが輝く時。ACが有利ではあるもののコストでいうなら四脚MTの方が有利で物量でゴリ押すことだって可能なのですよ。

 

 まあ、そこまでの設計はあっても製造はしていないので時間はかかるでしょう。

 

 全て私がする必要はない。少しは自分で考えて作ってほしいものだ。

 

『スネイル、今いいか?』

 

 通信越しにオキーフから声がかかる。どうやら何か有用な情報を仕入れたようです。

 

「手を動かしながらになりますが、報告だけなら」

 

『先日、侵入者がいただろう。あれの身元、というよりも製造元を見つけた』

 

「…………続けて」

 

『亡国機業が匿っている兵隊の1人、「プロジェクト・モザイカ」から生まれたクローンの1人だ』

 

「その計画は、まさか」

 

『察しの通り、人工的に超人を作り上げるイカれた計画。ラスティも言っていたが、あの織斑千冬と顔が同じだったそうだ』

 

「その計画と織斑千冬の誕生、どちらが先ですか」

 

『計画の方だな。つまり、あの姉弟はクローン、いや、お前から言わせてもらえば強化人間と言ったところだ』

 

「なるほど、いえ、納得しました」

 

『納得?何をだ』

 

「以前に一夏を見た時、どこかおかしいと思ったので」

 

 無駄に女に囲まれて好意をぶつけられながら朴念仁ぶりを発揮していた理由が今分かりました。

 

 恐らく、造られるにあたって脳も弄られているはず。そこで恋愛感情や種の繁栄的な本能を強制的に抑えられ、その分を戦闘センスに回そうとしたのでしょう。

 

 織斑千冬もそうです。引く手数多ながら他者への興味も表面上であり、弟とイレギュラーと同等な篠ノ之束博士にしか重要な線は繋がっていない。

 

『もしかしたら他にも似たようなのがいるかも知れん…………と言いたいが奴は例外らしい』

 

「そのような気狂いが簡単に実験をやめるように思えませんが」

 

『篠ノ之束という天然が現れたからな』

 

「なるほど、馬鹿らしくなりましたか」

 

 それは当然、アレと比べたら強化人間など全て馬鹿らしくなりますよ。フロイトも戦闘面では似たようなものですが。

 

 何なんですかあれら、天然で産まれていいようなものではないですよ。

 

 まさにイレギュラーと言った人材ですが、下手すると本当のイレギュラーが現れかねないので口にはしません。

 

『報告はそれくらいだ。一応、耳に入れといた方がいいと思ってな』

 

「ええ、揺さぶりをかけるには十分です。恐らく知っているのはその研究をした人間と篠ノ之束博士、もしかしたら織斑千冬当人も知っているかもしれませんね」

 

『かもな。それじゃあ俺は…………待て、情報が入った』

 

 ここでオキーフが一度会話を切り、何かを確認している。

 

『緊急事態だ。京都で亡国機業が暴れている』

 

「何故京都で?」

 

『件の男性操縦者が居るからだ。それだけじゃない』

 

 わざとらしく間を開けて、オキーフは言った。

 

『MTも一緒に暴れている』

 

「そうですか…………向かわせる戦力を決めましょう」

 

 まさかここまで早く行動に出るとは思いませんでした。

 

 どこかでMTの技術が盗まれるのは想定済みです。ですが、ここまで早く盗用されるとは…………

 

 現在、どこかでMTを奪われたという話はありません。つまり、情報が漏れた。

 

 私の部下が漏らすはずがない。そのような動きがあれば、すぐ私に伝わりますので。

 

 …………ですが、一つだけ心当たりがあります。

 

 私の支配下でなく、私を陥れたいだけに動く奴が。

 

「ホーキンスとペイターを行かせなさい。彼等にも現場の空気を味わうことが必要です」

 

 その指示を出してすぐに私は通信を切った。

 

 なるほど、そうですか。

 

 もっと私を怒らせたいと。

 

 ならばその喧嘩を買いましょう。高値で売り飛ばしてやる…………!

 





ちなみにトーナメントは特に介入なく終了。優勝はちゃっかり取るかんちゃん。ついでに一夏。

戦法は一夏が特攻してその後ろからミサイルを大量にばら撒く。一夏を無視して接近されたら新調した火炎放射器で周りを薙ぎ払い距離を取り、その間にまた一夏が攻めてくる極悪サイクル。

なんか優勝したら一夏と付き合うとかなんとかの話があったようだが、かんちゃんからは無視されたし一夏はどっかのショッピングに付き合うとしか思ってなくて呆れさせたという。

そしてオープンフェイスの次に完成させたのがホーキンスとペイターの機体。ホーキンスはともかく、ペイターの機体が早めに完成した理由はスネイルがシュナイダー製の製品をアーキバス製品の次に作るようにしたから。

シュナイダー製を求めるのはラスティ、そういう事です。
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