あれ、おかしいな。全話にスネイルが出ていないぞ?
そう言うのを前提で見てください。
『仕事の時間よ。アレさえ堕とせばこちらの勝ち。ある程度の実力は把握しているわ。それに、研究所近くで被害は出せるかどうかは…………彼の人間性によるわね』
『とにかく壊す、それでいいんでしょ?』
蜘蛛のような八つ足をカシャカシャと動かしてオータムは言った。
彼女達、亡国機業幹部まで出払って成し遂げるミッションは倉持技研2番研究所の襲撃。
前回侵入した時はルビコンの英雄ことラスティが居たことにより退却したためそれ以外のめぼしい情報は持ち帰ることは出来なかった。
だが今回のラスティは情報を流すだけ流して逃走した上層部を捕らえるために不在、戦闘要員となりそうだったオキーフも諜報のためすぐに戻ってこれない。
増設していたACは京都へ出払い、残るはオープンフェイス1機と考えていた。
いくら奇策を思いつきオータムを撤退させた男も3機のIS相手には分が悪いと言わざるを得ないし、スネイル専用機と思われるACに乗り込むはずも無い。
流石に生身の人間で複数のISに敵対しようとする面子はおらず、紫を主体としたACがスタンガンを向けて発砲した。
上空、といってもISにとって低空の場所を飛んでいたため上空へ回避することにより射程距離から外れてあらぬ方へと飛んでいく。
ISが上空へ飛んだことによりオープンフェイスもジェネレーターをフル稼働させて上空へと飛ぶ。
『あの鉄の塊、最初に見た時は信じられなかったけど、よく飛ぶっ!』
『下手に近づくと左手のレーザーランスでやられるぞ』
『分かってるわよもう!だったら背中に張り付いてやればいいだけの事!』
迫りくるACに対して急降下したオータム。それに合わせてACからも両肩からプラズマミサイルが放たれるが、エンフォーサーが間に入りパルスシールドを展開して防御する。
プラズマの爆風こそ恐ろしいものだが、全員がエネルギー兵器に対して対抗するためにEN耐久値を底上げしているのだ。
これも倉持技研からリークされた情報から作り上げられた装甲である。
プラズマミサイルが防がれた事を確認したオープンフェイスはレーザーランスをチャージする。
『させないわ』
スコールが操る
金属を簡単に融解させる温度を持つ火球、ACに対しても少なくないダメージを与えると考えられていたが、オープンフェイスは避けるそぶりを見せずに特攻していく。
『っ!?避けるぞ!』
『アレに突っ込んでいく!?』
エンフォーサーを盾にしていたオータムも驚きを隠せず二手に分かれて回避する。
火球にぶつかりながら突貫する鉄の塊は恐怖でしかない。確実に命の危機を感じつつも大回りに回避するが、オープンフェイスはエンフォーサーに狙いを定めた。
レーザーランスからブースターを吹かせて突貫し、超音速にて突破しようとする。
これが無人、もしくは一兵卒が搭乗していれば即死していただろう。
だが、ここにいるのは数多の戦場を駆け巡った手練れの者。1人は若いが人工的に手を加えられた強化人間故に戦闘力は世界基準で上位に当たる。
優れた戦闘センスを万全にぶん回し、ISでは規格外の大きさであるエンフォーサーを巧みに飛行させて紙一重で避けた。
無論、これがかすりでもすれば死んでいたかもしれないという危機があったことに冷や汗は流れたが。
『よく、釘付けにしたわ!』
ブーストが切れた瞬間、オータムのISことアラクネがオープンフェイスの背中に張り付く。
ブーストを吹かせた後で熱はこもっているがシールドにより防がれるので関係ない。
サイズが違いすぎるが、ブースターを一つ壊すには十分だ。
ガンガンと装甲脚でブースターを滅多打ちにして潰そうとする。
だが、スネイルの設計したブースターは非常に硬い。高速移動を実現すべく耐久性に優れたモノを採用しているため簡単に破損はしない。
だが、オープンフェイスは何を考えたのかブースターを切り、背面を下にして落下していく。
『あら?もう壊れたの?』
『違う!離脱しろ!』
『何を焦って…………そういうことねっ!』
一瞬、アラクネの装甲脚で簡単に破壊できたと思ったが地面が近づくにつれて理解した。
手の届かない所に居るなら押し潰せばいい。鉄塊ならではの戦法だ。
オータムは意図を理解した瞬間に離脱。大したダメージを与えられていないことに歯噛みするが、そのまま落ちれば損傷は大きいだろう。
そう考えていたことが甘かった。
地面に落ちる5秒前にブースターを点火。体勢を即座に立て直した上にスタンガンを連射してきたのだ。
いきなりの攻撃に面食らったオータムはその数発をくらい大きくシールドエネルギーを削られる。
このスタンガンはハンドガンの部類に入るのだが、明らかに巨大なのと放電能力によって装甲脚で防いでも効果は覿面である。
『やらせはしないわ』
『手間がかかる…………!』
追撃のプラズマミサイルによって撃墜されそうになるオータムをエンフォーサーで庇い、黄金の夜明けの火炎放射によって弾頭を破壊していく。
プラズマとはいえど極度に加熱させられたら暴発してしまう。
火炎によって爆発したプラズマは僅かな時間のEMPになるが、開けた戦場かつ目視で視認できているので役に立たない。
スタンガンを打ち切りリロードになったタイミングでエンフォーサーが前に出つつレーザーライフルを発射する。
オープンフェイスはクイックブーストにより横に回避するが、お互いの距離は徐々に近くなる。
片方はレーザーランスを、もう片方はレーザーブレードをチャージしながらぶつかり合う瞬間を待っている。
僅か数秒、その時間が長く続くように感じたが…………
『堕ちろおぉっ!』
レーザーランスを肩装甲を削られながらも辛うじて、最小限の被害に留めつつレーザーブレードがオープンフェイスの胴体を薙いだ。
普通ならこれで決着だろう。だが、相手はACである。
『やったか!』
『いいえ、浅くしか入ってないわ。MTも相当だったけど、ここまで頑丈だとは、最初から戦闘用に考えていた訳ね』
装甲に浅くなく、されど深くも無い傷を負うだけで済んだ。
一見大したことないように見えるが、一時的にとはいえその部分が脆くなっている証拠でもあるため集中的に狙えば機能不全に陥らせることは可能だろう。
それでも強敵なのには変わらないため気を引き締めた3人だった。
「…………お前は煽り癖があるから黙っていろと言われたから試してみたが、大して変わらないな」
公開通信でスネイルではない声が聞こえた。
『この声、2番研究所所長ではない?』
『こいつ、まさか!』
「ご名答だな赤いの。俺に撤退させられたことは覚えていたか」
『あの時の野郎!』
先程から無言だったのはスネイルではない。
なんか来ているのが見えたからスネイルよりも先に来て勝手に出撃したフロイトである。
その来ていたというのも一度バラけてから2番研究所を襲おうとした彼女達が集まりつつある上空までしっかり見えていたからという視力も馬鹿みたいに良かったからという理由付けがあったりする。
「戦った感じはそれなりの戦場を歩いてきたと見える。だから動きのパターンが読みやすい」
フロイトは淡々と言う。
まるで当然かのように、シミュレーターで数多の想定された戦場を、戦闘用AIを駆使した敵IS及びACを落としてきた男が。
自分達をまるで興味ないと言わんばかりに。
『ふざけやがって、ぶっ殺す!』
『チッ、先走るな!』
「その動きは前と、さっき見たぞ」
突貫するオータムとそれをフォローせざるを得ないエムに対してプラズマミサイルを発射、それに加えて直線でなく横へ移動しつつスタンガンの連射。
まるで先が見えているかのように彼女達が飛ぶ線上を狙い撃ちして、それぞれ防御するも少ないダメージを負う。
「遊びは終わりにしよう。そろそろスネイルも誰が乗ってるか気づく頃だ」
時間にして5分、長いようで短い戦いに終止符を打つと
V.Ⅶ「わ、私も罰則覚悟で閣下のACに乗ってでも出撃しようかと思ったんだ!でもフロイトが先に…………」
V.Ⅱ「(人造人間16号を殺された孫悟飯のエフェクト)」
スネイルも急いで出撃しようと思ってたら既に愛機を勝手に持ち出されていた件。