倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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※フロイトは安い方(楽しめなさそうなの)から落とします。


23. 怒りを糧に変えて

 

 それは、圧倒的蹂躙だった。

 

 3人の中から誰も落ちていないことが奇跡と言わんばかりの猛攻で、そして的確な攻撃と機体の防御力を生かした立ち回りにより目に見えて押し通されていく。

 

 すでに撤退を視野に入れているが、フロイトの立ち回りにより逃げることすらできない。

 

 卓越したセンスと戦闘力を誇るフロイトは歴戦の軍人も、造られた最強の失敗作すら上回る。

 

『そんな………私が……っ!ごめんなさい、スコー……ル』

 

『オータム!侮りすぎていた…………これが、アーマードコア!』

 

「まずは1人。楽だったな」

 

 フロイトが正体を現してから1分も満たない時間でオータムは撃墜された。

 

 一度生身で戦ったことのある相手だったから動きが読めたという意味でフロイトは言ったのだが、どう聞いても煽っているようにしか聞こえない。

 

 例え怒りがあったとしても、それを自身の力に変えることは非常に難しいことなのだ。

 

 プラズマミサイルによりアラクネのシールドエネルギーが全損し機能停止、そのまま動けなくなったため墜落していく。

 

 動かなくなったISには興味が無いフロイトは、残る2機に目を向ける。

 

 火炎を主体にした黄金の夜明けも残存エネルギーは少なく、いつ墜落してもおかしくない状況。

 

 エムのエンフォーサーのみがまともに戦えそうなくらいで絶望的な状況である。

 

 もはやオータムを見捨ててどちらかが囮となって逃げられるかどうかという苦渋の決断を強いられる。

 

「次はお前だ。もう少し楽しませてくれよ?」

 

『っ!この…………!』

 

 未だに大したことのない傷しか負っていないオープンフェイスが迫ってくる。

 

 レーザーブレードをチャージしつつ引き撃ちするが、クイックブーストを利かせたオープンフェイスには当たらない。

 

 近づいてくる鉄の塊にエムは初めて恐怖を覚えた。いや、恐怖自体は知っていても直接的な命の危機を間近で感じ取る機会は殆ど無かった。

 

 だからこそ自分の死が怖く思えた。

 

 思えばそうだ、逆らえば脳を焼き切られるナノマシンも注入され有無を言わさずに従わざるを得なかった。

 

 それからはいいように扱われ、オリジナルである織斑千冬に挑むことも許されず、失敗作の烙印を消せずにくすぶり続けている。

 

 そして今、無意味に、何も残せず散ろうとしている。

 

『…………嫌だ』

 

 みじめだ。

 

『こんなところで…………』

 

 まだ何も残せていない。

 

『私は…………っ!』

 

 何も選べていない。

 

『死ねるかぁぁぁあああああっ!』

 

 突然の急加速、蒼い線を引きながらオープンフェイスへと突撃する。

 

「早いうちなら攻撃できないと思ったか。残念だったな」

 

 それを簡単に対処できるのがフロイトである。

 

 切り札の一つである自機を中心にした超広範囲パルス、通称アサルトアーマー。

 

 MTですら一撃で破壊するパルスの嵐を、エムが突撃するタイミングで合わせて発動した。

 

 蒼白い光がオープンフェイスから放たれる。エムも気づくが時既に遅し、今から回避することは100%不可能。

 

 だが、彼女は止まらなかった。

 

 パルスの中へエンフォーサーと共に突入する。

 

 0.1秒、シールドエネルギーが削れていく。

 

 0.3秒、エンフォーサーの装甲が焼けていく。

 

 0.5秒、絶対防御が発動した。

 

 0.9秒、シールドエネルギーが尽きた。

 

 1秒、全身がパルスに焼かれる。

 

 死、全ての細胞がそれを感じるかのように死んでいく。

 

 それでも、死ねない。

 

 死にたくない思いが脳を焼く。

 

「…………なんだ?」

 

 本能が生きろと叫ぶ。

 

「赤い光?」

 

 体内に埋め込められた赤い粒子が全身を燃やす。

 

『…………ゥぁ』

 

 身体が、細胞が、遺伝子が。

 

『あああああああああああああああ!!!』

 

 闘争を求める。

 

「何っ、赤いアサルトアーマーだと!?」

 

 赤い爆発が仕留めたと思い込んでいたオープンフェイスに襲い掛かる。

 

 アサルトアーマー自体がスネイル構想の物で上層部にすら漏らしていない切り札のはずだったが、どういう奇跡か目の前で起こったのだ。

 

 油断していたフロイトに機体の揺れが大きく伝わる。

 

 一瞬で衝撃値がたまりスタッガー状態となったオープンフェイスは一時的に機能を停止する。

 

『…………そう、切り札を使ったのね』

 

 スコールは安心したように、しかし複雑そうにつぶやいた。

 

 それは任務の前に行った施術、エムを、織斑マドカをさらなる強化人間へと変貌させる禁断の手術。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『コーラル』と呼ばれる物質がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同刻、京都。

 

『これは…………』

 

 上空を飛行して暴れるMTの反応がある方へ向かっていたホーキンスはある光景を目にした。

 

「撃て撃て撃て!」

 

「テロリストに屈するな!俺たちが国を守るんだ!」

 

「何がMTだ!こっちは戦車だぞ!」

 

 日本の自衛隊たちがMTに向けて発砲していた。

 

 戦闘している中にミサイルと火炎放射を放ち続けるIS乗りもいたが、熱量は彼らの方が上である。

 

 総合的なダメージで言うと圧倒的にISなのだが言うのは野暮だろう。

 

『これはこれは、まだまだ捨てたものではないなペイターく…………そういえば別行動だった』

 

 よく共に行動していた部下はいなかったが、ブースターを吹かせて援護に入ろうとする。

 

「隊長、あれを!」

 

「なんだ、新たな敵か!?」

 

「巨大ロボ、四つ足だ!」

 

 突然現れた正体不明の機体に自衛隊たちは慌てる。

 

 MTよりも大きく、しかも四つ足で武装しているとなると現在維持している戦力では太刀打ちできない。

 

『こちら、倉持技研2番研究所からの増援だ。今から奴らの殲滅に取り掛かる』

 

 広域通信によってホーキンスの声が聞こえると共に手に持つプラズマライフルが放たれる。

 

 紫の線を引いて解き放たれたエネルギーの塊はテロリストのMTに直撃して叫び声を上げた後に爆散。

 

 かなり苦労していたものを一撃で破壊されて沈黙してしまう。

 

『…………うん、とりあえずは一つ。君たち!今こそ大和魂で奴を倒すべきじゃないか?』

 

 しれっともう一機を撃って撃破した後に発破をかけてみる。

 

 ホーキンスが撃破した2機を除き、既に自衛隊と更識簪のISによって行動不能となっている2機を除けば後1機である。

 

 全員の視線が残った1機のMTへ向けられた。

 

『え、あ…………うわあああああ!』

 

 ドスドスと足音を鳴らしながらMTは反転して逃げていく。

 

「逃げるな!責任から逃げるな!」

 

「ぶっ壊してやれ!もう二度と暴れられない様に!」

 

「大和魂見せてやる!」

 

 声かけが上手くいったようで自衛隊や戦車、気づけば戦闘ヘリも駆けつけて逃げるMTを追いかけていく。

 

 内心はテロリストよりもこちらを追及してくるんじゃないかと心配していたホーキンスだったが、ヘイトがテロリストに向けられてホッとした。

 

「そそそ、その機体もスネイル所長が設計したんですか!?四脚ロボ…………!」

 

 更識簪を除いては。

 

『あー、たしか君は閣下から支援を受けていた子だったね。状況は?』

 

「あ、最初はここで私がMTを食い止めていたんですけど、途中であの人たちも参戦してくれて、避難誘導とかも手伝ってくれたんです」

 

『なるほど。流石に政府も重い腰を上げたか』

 

「いえ、命令違反してきたようです」

 

『…………何?』

 

「暗号通信に切り替えます」

 

 どうやらのっぴきならない事情があると感じたホーキンスも言われたまま暗号通信を受け取り回線を開く。

 

「今回、IS学園は修学旅行を隠れ蓑にした亡国機業、先ほどのテロリストの殲滅作戦に当たっています」

 

『それは、まさか生徒が主体となってしているんじゃないだろうね?』

 

「残念ながらその通りです。専用機を持った生徒が京都に潜伏して襲ってくると予想していたテロリストを相手にするという訳だったんですが…………」

 

『MTが出てきたと』

 

「は、恥ずかしながら武装も爆発物以外は効果が薄く…………」

 

 子供になんてことを言わせているんだとホーキンスは言葉に出さないが憤りを感じた。

 

 こんな作戦ともいえないものを拠点襲撃でもなくカウンターとして扱うといった待遇に疑問を持つ。

 

 ホーキンスはISの登場により世界情勢が女尊男卑へと変わっていたことには一度閑職に追いやられたことで感じていたが、ここまでとは思いもしなかった。

 

 安全圏で高みの見物、そして若い人材の使い潰し。それを多く見てきたホーキンスは非常に苦しい思いだった。

 

 だが、ここは戦場。思考はすぐに戦闘へと切り替えられる。

 

『待て、少し戦っていたが敵のISの姿が見られない』

 

「そうなんです。先程から姿もレーダーにも反応がないんです」

 

 明らかにおかしい点。欺瞞情報に踊らせられたのかと思考すると別の通信が入る。

 

『ホーキンス!緊急事態だ!』

 

『スウィンバーン?どうした』

 

『研究所の方で襲撃があった。IS3機での襲撃だったが、フロイトが勝手に出撃して2機まで落としたのだが…………』

 

『何があった』

 

『最重要案件「C」だ!突然戦闘領域を離脱してそちらに向かっている!』

 

 一瞬思考が止まった。

 

 最重要案件『C』、それはルビコン川に眠る資源を利用した兵器が現れた場合における事案。

 

 本来ならラスティが所属しているルビコン解放戦線が管理しているはずなのだが何らかの理由で流出した場合に対応しなければならないという地雷案件である。

 

 『C』を利用した兵器は通常兵器よりも高威力かつ高出力を持ち、ACで対応せよとスネイルがきつく言うほどの。

 

『いつ、そちらを離れた』

 

『少し前だが、あの速度だと…………閣下!?』

 

 スウィンバーンが焦る声と共にスネイルが何かをしたらしい。

 

『あー、先に言っておくがフロイトは無断出撃だ。その上に閣下のACを中破させてな、そちらに行くには耐えられないと言うか…………』

 

 都合の悪いことに歯切れが悪いのは変わらずだが、すぐに来れるかもしれない戦力にスネイルが含まれないと言う悪いニュースだった。

 

『気をつけろ、奴は様子がおかしい』

 

『残念ながら、もう手遅れのようだ』

 

 広域レーダーに一つの所属不明機体が映る。

 

 カメラを拡大してその方向へ向くと赤い線を引くように超高速で飛んでくる機体が1つ。

 

『あっちは、ペイター君が居る方向!急がなくては』

 

「あれは…………?」

 

『敵だ。君は来ない方がいい」

 

 返事を聞かずにホーキンスは機体を飛ばす。

 

 嫌な予感がしているが、どのように案件をこなすか頭の中で組み立てつつ技研から届いた情報を確認しつつ新たな戦場へ向かう。

 

『オリムラ……チフユ……イチカァ……!』

 

 人の業は、とても根深い。

 





(多分)今作のラスボス降臨です。強化人間とコーラルとISと暴走ですよ奥さん。

ISC兵器エンフォーサー、フロイトの手によって半壊したものの本編の技研ほどではないがこの世界に造られたMTのジェネレーターを弄くり回してコーラルを動力にした上に拡張領域に隠すことで実質半永久的にエネルギー供給できることに成功した。しかしジェネレーターが重すぎるため拡張領域を圧迫し、武装は全て外付けかつエネルギー武装にせざるを得なくなっている。

だが、そのリスクとしてコーラルに適応する身体が必要となり、現状では耐えられそうなエムしか乗り手が居ない上に、コーラルによって常に身体を蝕む欠陥すぎる兵器。

フロイトはこれに対してエムの前にスコールを落としてから戦いを楽しんでいた、突然離脱したので追いかけようとしたが機体損傷とスネイルの怒りにより自動操縦に切り替えられ強制的に戻される。

スネイルはと言うと…………?
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