体調崩したけど私は元気です(矛盾した発言)
そしてご唱和ください、あの台詞。
『くっ、なかなかに素早いな!予測よりも早い』
『ホーキンスさん、そいつを守ってばかりだと堕ちますよ!?』
『護らねばならないんだよ。少なくとも今は…………!』
2機のACと7機のISは明確に苦戦していた。
今までにない挙動をする相手に追いかけるのが精一杯で、しかし隙を見せたら的確に攻撃を仕掛けてくる。
人間では考えられない動きで翻弄される彼らの耐久値は減らされていく。
それでもなお彼らは喰いつく。
人の身を超えた何かを相手に、誰かを守らねばと言う使命を各々が胸に抱えている。
「もう少し引き付けて!一夏がエネルギーを断てばどうにかなるはずだ!」
「3秒…………いや5秒は持たせる!」
シールドを展開したシャルロットが一夏を襲い掛かるエンフォーサーに体当たりを決める。
これまで誰一人堕とされていないのは執拗に一夏を狙っているということが大きな理由。狙われているなら守ればいい。
このようにダメージを分散させることで持たせてはいる。
体当たりを受けてエンフォーサーは軌道を揺らしながら一時は停止するも、ジェネレーターを強制的に過剰に稼働させて得た推進力によって無理矢理動こうとする。
「ぐううう!いか、せるかぁ!」
「チャージ完了だ!行け、一夏!」
「終わらせる…………!うおおおおおおっ!」
紅椿から受け取ったエネルギーを全て零落白夜に回してエンフォーサーに斬りかかる。
エンフォーサーも回避行動を取ろうとするが、しがみついたシャルロットとラウラのISに搭載している慣性停止結界による妨害、簪のミサイルを途中まで接近を許しセシリアのレーザービットに撃ち抜かれたことによって物理的な視界は塞がれ、シャルロットが離れた隙に鈴音が衝撃砲を叩き込む。
流石のエンフォーサーも多くの攻撃を叩き込まれてスタッガー状態となり動きを止める。
そして、雪片がエンフォーサーのエネルギーシールドを切り裂いた。
『アア…………ソンナ!』
その悲痛な叫びと共にエネルギーを失ったエンフォーサーは堕ちる。
「うおおおお!」
このままでは落下死してしまう彼女を救うべく、一夏は動いた。
その際にホーキンス、そしてペイターも同じような行動に出た。
と言っても二人は一夏と違いエンフォーサーを鹵獲し、最重要案件『C』の出処を探るためである。
打算とやさしさ、合わないものであっても利害のみは一致してるがための行動。
だが彼らは知らなかった。
『マダ…………終ワラセナイッ!』
「なあっ!?爆発、巻き込まれ…………!」
『危ない!』
C兵器はジェネレーターが破損しない限り止まらないということを。
残存していたコーラルによって過剰に生産されたエネルギーをアサルトアーマーのように展開。近くに寄っていた一夏が巻き込まれようとしていたが、ホーキンスが間に入り盾となる。
強力なアサルトアーマーによってリコンフィグの損傷が更に拡大。最悪なことに、ジェネレーターが停止しようとしている。
『くっ、済まないが私はこれ以上持たないようだ…………撤退する!』
ぎり、と歯ぎしりする無念の声が全員の耳に届く。
ACという巨体のロボットが無秩序に落下してしまうと被害が広がってしまう。
そして何よりも足手まといになる事は確定した盤面で引かなければ迷惑となる。
まともにブースターすら吹かせなくなった機体が徐々に下降していく。
『ホーキンスさん!くっ、奴め不死身か!?』
再起動したエンフォーサーに再度攻撃を仕掛けるペイターだが、その攻撃は素早く飛行するエンフォーサーに届かない。
その上にパルスガンの残弾も少なくなっている。
ここのスネイルが作成したEN武装およびパルス武装は直接ジェネレーターに繋がっているのではなくエネルギーの籠ったカートリッジを詰め込むことで弾切れというデメリットを背負うもののジェネレーターの負荷はかなり抑えられている。
なのに白式の仕様がアレであったためスネイルは心底呆れたという。
肝心のジェネレーターは拡張領域に収納されているため取り出すことは非常に困難。
かといって武装も半壊とはいえ大量のエネルギーを放出するだけで十分な凶器となり、数多の生物及び機器類の脅威となる。
代表候補生らISもエネルギー残量が相当なくなってきており、唯一まだまともに動けそうなのはエネルギー供給を受けられる一夏とエネルギー生産ができる箒のみ。
もはや打つ手もなくなってきた。地上の兵士たちも対応できる手段が無い。
万事休す、そう思っていた。
『前に貴様を虫と評したことは訂正しましょう』
公開通信で、彼らが知る声が聞こえる。
『貴様は、駆除すべき害獣だ!』
遠くに残っていた赤い線が爆発すると共にソレは飛んできた。
ACのような形でありながらフラフープのような輪をつけ、さらに半透明のパルスを纏った人型兵器。
『所長!?まさか完成していたのか!』
ペイターの言葉と同時に放たれた深い紫のチャージビームがエンフォーサーの肩にかする。
ロングレンジでの致命的攻撃が飛んでくると理解したエンフォーサーは一時的に一夏達から離れる。
従来のACとは違う何か。この場で知っているのはペイターのみ。
アーキバスバルテウス、倉持技研2番研究所における最終兵器である。
『ISによる社会情勢の変化はいいでしょう。その程度、実力でねじ伏せられる』
まるで独り言のようにエンフォーサーにパルス弾を放ちながら、ペイターのパルスガンよりも密度の高い弾幕を張る。
『テロを起こすのも、まあいいでしょう。貴様が選んだ道、叩き潰そうが文句は出ない』
もはや1人だけの世界に入ったのでないかと言う呟きが聞こえる。
普段の彼を知る者なら思うだろう。
『だが貴様は、禁忌を犯し、私の…………企業の作り上げたMTの信用を破壊しようとした!』
今まで以上に激怒している、と。
『害獣め、駆除する以外選択肢はない!』
あまりの気迫に押されたのかエンフォーサーも戸惑うように飛び回る。
専用にチューニングされたパルスガンに当たればエネルギーを大きく削られるため回避せざるを得ない。
いくらエネルギー補填が効くと言っても、削られ続けるとジェネレーターの損耗は避けられないのだから。
それはそうとして、明らかにブチギレMAXなスネイルは地面よりはるか上空とはいえ無差別に弾幕やレーザーをばら撒いている。
しれっとデュアルネイチャーにも当たっているしIS達も避けなければ当たっている。
「周りが見えていないぞ!?」
「死ぬほどブチ切れてるよあいつ!」
「スネイルさん、怒るのは分かるけど無差別はヤバいです!?」
エンフォーサーの方も避けるだけではない。
隙を見てプラズマライフルを放ち攻撃しようとするが、ほとんどがバルテウスが纏うパルスアーマーに阻まれる。
はっきり言うと相性が悪い。レーザー系統だと削りにくいパルスアーマーはバルテウスの脅威になりにくい。
『ここは引く!私達が居たら所長の邪魔になる!』
一番合理的と言える判断を取るペイターはいつでも駆けつけられるようにしつつも現場から離れる。
「一夏、アレの倒し方が分からない限り私達に勝ち目はない」
「引くって言うのか!?」
「引くしかないだろう!巨大決戦に巻き込まれるぞ!」
このままでも自分達の身が危ないとラウラがまだ参戦しようとする一夏を引っ張り戦域を離脱する。
『オリムラアアアアァァァッ!』
それを追いかけようとするエンフォーサーだが、バルテウスから放たれたレーザーをバックステップで避けるが、残留したプラズマが行手を阻む。
まずはコレを倒さねば前は進めない。ソレを理解したエンフォーサーはバルテウスに向かい合う。
『消えろ…………害獣!』
『オ前ガ死ネェ!』
レーザーとプラズマがぶつかり合う。
上空で行われている巨大兵器同士の決戦。
地上の者は、片方がコーラルという超危険物質をばら撒きまくり、もう片方がそれを焼却するために調整したレーザーとプラズマ弾で焼き続けているという事実を知らない。
『私ハ、証明シナケレ、バ、イケナイッ…………最強ガ誰カ!』
あまりにも自分勝手な理由を口にしながら暴れるテロリストに対してスネイル怒りのボルテージが上がっていく。
『杜撰すぎる国の対応、頭の悪い上層部、そして何よりもこの星を食い潰そうとする害獣…………』
どちらも怒りに身を任せ、脳の血管が何本も千切れて、神経も焼かれていてもおかしくないレベルでの応酬。
あの間に入ろうとするならたちまちスクラップか挽肉になるだろう。
『どいつもこいつも、この私を苛立たせる…………!』
ギリギリと歯軋りの音が全員の通信から聞こえる。
『死んで平伏しろ!私こそが企業だ!』
冷静な判断が取れなくなっている男の叫びはどこまでも響いた。
この通信、公開通信だから地上にいる人達にも聞こえてるんだよね。
でも様々な方面の対応も相当アレだから仕方ないよね。
あと期待してた人もいるかもしれないけどペイター君の昇進芸は出来なかった。
まだ優しい世界(当社比)だから簡単に死人を出す閣下じゃないからね。