倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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お久しぶりです。Aランク帯から抜け出せない者です。




27. 始まりは盛大に

 

「倉持技研2番研究所所長スネイルです。私の記者会見に臨めたこと、光栄に思いなさい」

 

 初手から尊大すぎる発言により顰蹙を買った。

 

 だが、この程度の罵詈雑言はスネイルには通用しない。

 

「時間は有限です。質問は手短にするよう心掛けてください」

 

 どこまでも不遜な態度に会場は色々な意味で盛り上がる。

 

 それでもこんな男に質問せざるを得ないため、記者はスネイルに問う。

 

「MTという兵器は最初から戦闘用に造られたのですか!」

 

「愚問です、貴女は私が作成した資料を読んでいなかったのですね。下調べもせず、よくもまあこの場に来ようと考えたものだ」

 

 MTについては説明会も過去に数度行われており、どのようなものか自体は倉持技研のホームページに載せられている。

 

「ですが、質問には答えましょう。誰が最初から兵器として造るとお思いで?兵器転用されることは見越してどれほどの安全装置を組み込んだことか」

 

 最初の罵倒により記者の顔が真っ赤になったことを確認してスネイルは答える。

 

 MT自体は作業用の大型重機として製造されている。

 

 だが、歴史を紐解くと万物何事も人を傷つけるものへと変貌する。

 

 肉を切るだけの刃物も人に刺せば凶器となり、そこらの石ですら殴れば人を傷つけ、殺傷力がなさそうに見えるビニール袋だって顔に被せて口を密閉すれば処刑用具の完成である。

 

「それを正規の手段も無しに無理矢理外すものなら、それはもはや鉄の棺桶と化します」

 

 重機であるが故に丈夫に造られているMTにはある程度の攻撃はびくともしない。

 

 流石に戦車砲やミサイルなど破壊力を持つ兵器なら仕留める事は可能。

 

 もしもの事があって緊急脱出する為の機構を備えているのに、それを外せばどうなるかは日を見るよりも明らかである。

 

「それすらも分からない猿が喜んで乗るような物を我が社が造るとお思いで?作業用として開発されたものを乗り回すのは勝手ですが、違法に改造された物に我が社が責任を負う必要はありません」

 

 この話はこれで終わりと言わんばかりの態度。どこまでも不遜すぎて反省しろと言っても咎められないくらいである。

 

「あの日の上空でISが伴っていた人型の機械は一体なんですか!」

 

「レーザーらしきものも放っていましたが、アレは兵器ではないんでしょうか!?」

 

 ここで本命に近い質問が飛んできた。

 

 京都でも暴れていたIS兵器(ISC兵器であることはスネイル一派とルビコン解放戦線にしか知られていない)についての言及は避けられない。

 

 だが、スネイルはどうしても訂正しておかなければならない部分があった。

 

「ISの僚機ではありません。ISこそが僚機であり、あの作戦の主力となる物の補佐にすぎません。人型の機械について、我が(・・)倉持技研の最終防衛ラインを超えた相手に対して動かす最終兵器、とだけ答えておきましょう」

 

 最終兵器、多くの物を生み出したスネイルの口から出たその単語は誰にとっても聞き捨てならなかった。

 

「つまり、国に隠れて兵器を量産していたという事ですか!」

 

「MTも初めからそういう意図で作られていたんですね!」

 

「あの場でのロボットがやった殺人について責任をどう取るつもりだ!」

 

 まるで待っていたかのように、罪を犯したと擦り付けるように、つるし上げるように責める。

 

 彼の部下が人を殺したのは事実である。テロリストと交戦し、そのほとんどが抹殺されている。

 

「それがどうかしましたか?彼らは自分がするべきことをやったまで。その点に関しては政府との交渉により正当防衛とみなされて無罪となっています。これ以上どう文句を付けようというのです?」

 

「だ、だけど人殺しには」

 

「ではテロリストに、人殺しに黙って人を殺させていいと?」

 

 スネイルの言葉に会場は静まり返る。

 

 態度は相変わらず不遜であり、自分の発言が正しいと信じきっている顔で言い続ける。

 

「なるほど、素晴らしい発想だ。『女性である私はいざという時にISを使用できるから他はどうでもいい』と」

 

 そこまで言っていない、と誰かが口を開こうとしていたのだが、畳みかけるようにスネイルは話す。

 

「確かに我が社が開発した装備程の物でなければISを倒すことは難しいでしょう」

 

 何故ここでISの話題を持ち上げる?

 

 自社の製品を自慢することはどこでもよくある話だ。特にこの場で最も傲慢なスネイルならしてもおかしくはない。

 

「ですが、何故総数300にも満たないものを、天上の者しかその手に掴むことができないISを、たかが一市民である人間が手に取れると思っている?」

 

 凍った、静まり返ると先ほどは表現したのだが会場が絶対零度になったかのように動きどころか音すら消えた。

 

「そう、そもそも前提がおかしいと気づいてすらいない。篠ノ之束博士ただ一人にしか作れないものを何故配る必要がある?貴様らが一度兵器と認識したものをどうしてその手に掴めると思っている?」

 

 黙ってしまった記者たちにスネイルは語り掛ける。

 

この男を吊し上げるための記者会見のはずだったのに気づけば立場が逆転していた。

 

「ええ、私が造り上げた物の殆どは人を殺せるものです。最初からそうであるものもあれば、元の用途はそうでないものもある」

 

 ここでやはり人を殺すための道具を作る武器商人と罵ればまだ気は保てたのかもしれない。

 

 だが何も言えない。事実を突きつけられた彼女達は全員が冷水を浴びせられたかのように顔は青白く、しかし汗は流れている。

 

「ISもそうです。初期は宇宙開発を目的に開発されたスーツ。私が開発したMTやACのように地球外での活動を想定したものです。オーバースペックと考えている方もいるかもしれませんが、それは宇宙に対して見積もりが甘いと言わざるを得ない」

 

 眼鏡が光を反射してスネイルの目を映さないように白く見える。

 

 その下にはどれほど冷たい眼光が輝いているのかは全く見当もつかない。

 

「そのオーバースペックな物を、何故自信満々に自身が扱えると?宇宙飛行士と言う人類の中でも高スペックな者でなければ本来許される筈のないものが、何故自分の手に渡ると?」

 

 もうこの時点で賢い皆は思っているだろう。

 

『こいつ。言いやがった!』、と。

 

「知能が低い猿にとっては、こういう高次元の物もただの兵器としか認識できない。今回のテロリストについても同じこと。まあ、既に対策は済んでおり、浄化を始めている真っ最中ですので」

 

 静まり返った会場に言い放つ。

 

 この男はどこまでも平等だ。

 

 ただ才能で人の良し悪しを決める程度には(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)平等であった。

 

 この傲慢さがいずれ身を滅ぼすだろう、そう考える者も少なくはない。

 

 たかが一人、しかし企業という枠組みに当てはまっている以上は、まだ様々な方面から圧をかけて罪をでっちあげさえすれば足止め、そして簒奪は出来るかもしれない。

 

 悪いことを考えているからこそ口に出さない。

 

「これ以上、質問が出ないという事は終了でよろしいですね…………ああ、そうでした」

 

 くだらない会見を切り上げようとしたスネイルだったが、ふと何かを思い出したかのように向き直る。

 

「今回の不祥事に関わった者は全員処分させてもらいました。よって、倉持技研における上層部が全員不在となったため、現在私が代理の代表として立っています」

 

 突然何を言い出すのかと疑問に思う記者たちだが、構わず彼は話し続ける。

 

「多くの人材が抜けたことにより、倉持技研は企業として大きく衰退しました。なので私が買い取りました」

 

 一体何を言っているのだこいつは。

 

「私自身は倉持技研2番研究所所長として席は残しますが、私が新たに設立した企業の傘下となります」

 

 まがりなりにも日本における大企業を買い取り傘下に収めるという常識はずれなことをやってのけたと目の前の男は豪語する。

 

 事実、スネイルには多くのモノを発明し、利権によって財産を築き上げている上に将来性を見越して多額の融資も受けられるようになっているのだ。

 

 目の前の利益しか見ていない愚物は彼を避けるが賢い者なら惜しみなく金を出して恩恵を受け取るのは当然の事。

 

 それに海外に多くのコネを持つスネイル(とスウィンバーン)にとって資金集めは容易くなくとも難しくはなかったのだから。

 

 爆弾発言で多くのことをうやむやにされつつある中、スネイルは告げる。

 

「『アーキバス』、私の会社であり人類を宇宙へ進出させる先導者となるでしょう」

 

 それだけを言ってスネイルは壇上から降りる。

 

「それともう一つ」

 

 会場から出る直前、スネイルは胸元につけていたピンマイクを通じて最後に言い放つ。

 

「我が社アーキバスは篠ノ之束博士と連携して5年以内に地球外へ人類の生存圏を伸ばす計画を立てています。いつまでも権力にしがみついていたいのなら、どうぞ停滞を楽しむと良いでしょう」

 

 最後の最期に核弾頭よりも威力の高い爆弾を投下しておいて、今度こそ本当に会場から去っていった。

 

 なお、この短い会見は全国に放送されている。

 

 この意味が分かる者が、将来を約束されているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいの?あんなに大胆に宣言しちゃって?」

 

「貴女ですか。ええ、よほどの下心が無い限り利用できる物は利用する。時間は待ってくれませんので」

 

「何でそんなに急ぐの?実現は可能だけどゆっくりでもいいんじゃない?」

 

「…………貴女は最重要案件『C』についてどこまで知っている?」

 

「名前を引っこ抜いたくらいでほとんど何も。凄いよね、今の時代に紙だけで管理してるって。現地に行くよりも知ってる人に聞く方が早いよね」

 

「まあいいでしょう。遅かれ早かれ連絡を取ろうと思っていたところです。もう関わってしまった貴女にも知る権利がある」

 

「そこまでして隠したいものってなんだろう?時結晶みたいなやつ?」

 

「それが何かは…………いえ、ISに関わるものでしょうが、簡単な話ではありません」

 

「そこまで言わせるものなの?」

 

「もちろん、近いうちに訪れるであろう人類の危機ですから」

 

 





いびつな世界に大きな一石を投じたスネイルの巻でした。

そして遂に登場アーキバス。高まる企業の力、まさしくスネイルが企業になったのだ。

ISもACもそれぞれの用途があるだけで、大した差はないと思うんですよ。選んで使うことが、そんなに上等なのか。

そして篠ノ之束にも知られるコーラル。いったいどっちの要素に見られるのか…………と言いたいところだけどスネイルのストレスと引き換えに多少は制御できるようになっている模様。よかったね、スネイル!

次回、最終回(予定)。
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