まだ平和なアーキバスグループの様子、そして学生。
1つの山場を越えたスネイルです。
ようやく宇宙開発が本格的に始まり、歴史が進み始めたところですが私の仕事が減ったわけではありません。
当然ですが増えていく一方ですよ。
されど焦る必要はありません。ほとんどが我が社アーキバスグループが主導となり推し進めているのですから私の裁量で進歩を操作することは造作もない。
寝ても覚めても仕事ばかりでいいのか、と?
今はコーラルについて調査を進めることが必須であり、現状のコーラルがどれほど存在しているのかを調査中です。
ルビコン川におけるものは当然として、既に持ち去られた物や他の場所で湧き出ている可能性だって否定はできないのです。
十分な量が無ければISC兵器であるエンフォーサーを製造することは出来ない。
いや、そもそもエンフォーサー自体が出所不明の技術で造られたものというのが気になる。
一度だけ篠ノ之束博士に見せても初めて見るものと言ってデータを取っていった程のもの、これが何を意味するか?
我々が知らない天才が、それもコーラルに関わる者がいる。
頭の痛い話だ。危険性を理解してなお研究しようとする輩が居るとは。
既にコーラルを持ち出されている時点でルビコン解放戦線だけでは手に負えない状況となっているのは理解しています。
既に彼らと話し合い、私のコネで極秘に摘発できないかと各国に掛け合っています。
コーラルの有用性はある程度説き、デメリットをこれでもかと勢いで並べてやりました。
エネルギーとしては魅力的でしょう。しかし引き起こされる深刻な環境汚染、そして増殖する事による大火災の危険性…………
半世紀前の大火災が何十倍の規模で起こるという事を念押しして教えてやりましたよ。
もちろん、明かせる部分や知らせる人員は絞っています。
ルビコン解放戦線のコネも利用していますからね、これで漏れたら彼らの組織内にも手を加えます。
ふう、コーラルの事はこれくらいにしておいて仕事をしましょう。別に裏社会ばかりのことを気にする必要も無いはずです。
確か、今日はIS学園の学生が社会見学の一環として研究所へ来る予定でしたね。
こういうのでいいんですよ、学生と言うのは。
何故子供を戦いに出すのかが理解に苦しむ。臨海学校の時もそうだったが教員も戦闘員の一人でしょう…………
今更過去のことを気にしてもどうにもなりません。
案内はペイターがすることになっています。
彼は、まあ、よほどのことが無ければ問題は無いはずです。
偶に辛辣であり失言が飛び出すこともあったりしますが、滅多なことであの面は見せないので大丈夫でしょう。
さて、宇宙開発の仕事に取り掛かりましょう。息抜きはその後です。
「アーキバスグループ人事部長ペイターです。一部の方は私の声に聞き覚えがあると思います」
「あっ、京都の時に逆関節ACに乗ってた人!」
「君は、確か閣下直々にISの調整をされた…………名前は更識簪さんでしたね」
「はい、よろしくお願いします!」
「他の方々も、本日はよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!」」」
倉持技研2番研究所にて、ペイター引率の社会見学が始まった。
IS学園から更識簪を始めとした整備科数名が研究所内部を見学し、実際の現場はどのようになっているのか学ぶのだ。
もちろん見せられる箇所は限られるが、地下に格納されている巨大なハンガーヘリまで見る事は許可されている。
「こちらが倉持技研2番研究所に所属する研究者が日々新たな開発に勤しんでいます。まあ、未だに閣下が開発したものを改良している所に留まっていますが」
「閣下、というのはスネイル氏の事ですか?」
「ええ、前から閣下呼びを強要してきましたが今では名実共に閣下と呼んで問題ないですからね」
「確かにあの人なら言いそう…………」
「そもそも最初から偉いんじゃなかったの?」
よく考えなくてもペイターが入社した時点で研究所所長になっているので偉い人ではある。
研究者達は図面を引き、どのような回路を取り付ける事によってエネルギー効率をよくするか議論している。
白熱しているが冷静で、長所と短所がはっきりと指摘し、またはされて改善にはどのようにするか実りある話ばかりしている。
「閣下が所長の頃、2番研究所ではなかったですが他研究所ではこのような議論もあまりなかったみたいです。今はIS産業だけでは追い出されると皆頑張ってますよ」
「あー、確か更識さんのISって一回放置されたんでしたっけ?」
「ええ、閣下が間に入った事で他研究所の怠慢も徐々にですが明らかになるきっかけの一つになりました」
「本当は余裕があった?」
「他の研究所に仕事を回せば。まあ、閣下が働きすぎのせいで他の仕事を押し付けられて、当時の2番研究所の稼働率は320%を超えてましたからね」
怠慢ってレベルじゃないと彼女達は言いかけたが口をつぐんだ。
そんな所に自分のISを頼んでいたのかと簪は思ったが、そのおかげで巨大ロボとの縁が繋がったとある意味では感謝しなければならない。
そもそも、アーキバスグループへの社会見学の倍率は非常に高い。
現在進行形で躍進して世界規模になる超エリート企業の肩書を得た企業に縁を結びたい人間は多数いる。
コネはもちろん、入社するための履歴書に書くことが出来る要素としてステータスになると考えられるからだ。
このようなメリットはある、しかし彼女達の本当の目的はこれではない。
「では、皆さん希望していたでしょうスネイル閣下直々に手掛けたISシミュレーターです」
様々な施設、そこで働く人々を見学した後にたどり着いた地下施設。
そして置いてあるのは大きな箱であり、最新装備をVRにとりこんだ体感式のシミュレーター、ほとんど本物に近い体験が出来る最先端技術の塊である。
そして、ACも本番よりもGが少ないとはいえ体験もできるのである。
「これが噂の…………」
「でっか!何詰め込んだらこんな大きさになるの?」
「この中に、打鉄弐式の元になったデータが…………」
そう、簪の専用ISである打鉄弐式の元となる初代バルテウスのデータが眠っている。
このシミュレーター自体は相当前に製造されている。
当時の倉持技研が誇る技術のうちの一つとしてISデータを組み込んでテストプレイが可能である施設であり、スネイルも開発には常用する逸品である。
この中のデータをぶっこ抜いた篠ノ之束も共同開発となってからは、クロエやフロイトと共に遊んでいたりする。
ちなみに束はともかくフロイトは職務中だったりするので職務怠慢である。
「スネイル閣下から許可は得ています。では、乗りたい方は居ますか?」
「「「「はいっ!」」」」
「全員ですね。時間は押してるわけではありませんが4人分使えるように席を取っています。これはシミュレーターですので遊びではない事を覚えておいてください」
こうして生徒達はシミュレーターに乗り込む。
彼女達はシミュレーター内に存在する無数のIS装備データ、そしてAC機体データに翻弄される事になるだろう。
数多の組み合わせがある以上、どれを組み合わせるかは千差万別。
人によって装備や機体が異なる正解を見出すデータの海の中で、簪は見つけた。
「あった…………君は、バルテウスって言うんだ」
初代バルテウス、然るべき者の手にそのデータは握られた。
初代バルテウス(修正前)と戦った事はありますか?私は初見のボスで2番目に苦戦しました。
そんなミサイルカーニバルな機体がかんちゃんに渡り、いずれ乗り込む将来有望な人員を引き込まない訳ないよね?
生徒会長「わ、私どんどん卒業に近づくにつれて妹の進路が家から離れて…………うわああああああ!」
生徒会員「(また生徒会長が変な電波受信してる)」