スネイル「コーラルに手を出したら(人の手に余るコーラルの火によって)国が消えると思いなさい」
各国「(国家解体してくる!?)」
広報部長補佐から人事部長に昇進したペイター
V.Ⅷ「人事部長ペイター……悪くない響きだ」
バルテウスのデータを見つけたかんちゃん
「ミサイル!ミサイル!ミサイル!」
「見てこれ!逆関節ロボット!」
「京都で見たやつじゃん。私は普通にISにしてみたけど全然違和感がないよ」
VR空間でキャッキャと笑う女子高生たちではあるが、乗っているのは兵器である。
とはいえ仮想空間という許された場合のみでは一つのアトラクションと化す。
多くの機体を眺め、悩み、しかし制限時間があるためとっさに決めたモノを装備していく。
アーキバスグループはEN武装を主軸に生産しているため目移りしてしまうほどの豊富さがあり、どれもこれもすぐに決められるものではなかった。
よって、作成されたのはいびつな形のAC。コンセプトもへったくれもない地味に重量過多となる方の拡散レーザーキャノンに実弾オービット、小型のグレネードにリニアライフルとまとまりがない。
ISの方はEN武装一式でまとめてはあるがエネルギーの消費が激しいためISには向いてないと言えるだろう。
それでも新しいものは試したいと機械弄りが大好きな彼女達は仮想敵として無人MTが一定数、周期的に現れるモードで動かし始める。
ISはともかく初めてACを操作するためまともな動きができず、少しはMTを倒せても重量過多による弱々しい移動で被弾が重なっていく。
『AP残り30%』
「分かってるって!ちょ、もうちょっと早く動けないの!?」
「多分、武装詰め込みすぎだと思うよ。重すぎてブーストふかしても「おあー!?」ああ、やっぱり」
結果的にMTに袋叩きにされて学生が組んだACは撃破された。
「やっぱり重すぎたのが原因かぁ。頑丈そうなのでも多勢に無勢…………」
「ぴょんぴょん跳ね回って翻弄するタイプじゃない?」
「ジャンプしたら高く飛んだし、軽いのにしたらマシになるかな」
3人でACについての議論をしつつ、残ったIS装備の生徒もエネルギー切れでシミュレーション終了となり通信で話し合う。
「MTも武装積んだらヤバいわ、装甲もそこそこあるし物量で攻められたら詰んじゃう」
「実際、テロリストが兵器転用してるからシャレにならないね」
「だからこその安全装置とACなんだろうけど、めっちゃ訓練必要じゃん」
「でも、シミュレーションに出てくるMTって割としっかりした武装してたね」
「それってつまり最初から武装する事も考えて…………」
「「「…………考えないようにしよう」」」
一つの答えに辿り着いた三人はこれ以上考える事をやめた。
重機として活躍してるのは周知の事実だが、安全装置を抜いて改造したら鉄の棺桶となるMTの設計をしたスネイルがそれ以上の事を考えていないはずがない。
闇に触れた気がして汗が流れるが、ここでもう一つ気づいたことがある。
「あれ、そういえば更識さんは何してるの?」
「通信もして来ないし。あ、こっちからどうなってるか見れるっぽい」
「観戦モードあるんだ。どれどれ」
第三者視点から他人の動きを見ることが出来るのもシミュレーターの利点である。
チャンネルを切り替えるように簪が乗り込んで体験しているVR空間を映し出す。
そこは地獄だった。
地面には無数のMTの残骸、続け様に起こる爆発音、そして明らかに人為的に放たれた火が地面を伝う。
空には半透明のパルスを纏う人型の巨大ロボットが浮遊しており、フラフープのような輪に備え付けられた発射装置からミサイルが嵐のように発射される。
それを無限に湧き出るMT一機一機に対して数発、しかし破壊するには十分な量を的確に当てていく。
近寄れば火炎放射とショットガン、離れたら高速グレネードに大量のミサイルと隙がほぼ無い機体を、更識簪は乗り回していた。
『もっと、まだ、この子の性能はこんなもんじゃ無い!』
再び大量に発射されたミサイルがMTに襲いかかる。
的確に当たるミサイルの軌道はもはや芸術と言っていいだろう。
「よく見たらあれ、京都の…………?」
「本当だ、という事は互換性あったのあれ!?」
「でもACも互換性がある武装ばっかだったし」
「でもレーザーは出してない…………あれ、簪さんの専用機に似てない?」
「あっ!そういえばアーキバスCEOが手掛けたわけだから、どっちかのデータを流用したのかも!」
この考察は的を射ていた。
アーキバスバルテウスを製造するにあたって、スネイルは大元となる惑星封鎖機構の無人機であったバルテウスを参考に、データのみではあるが大元となる初代バルテウスを作製したのだ。
これが運命か気まぐれか、打鉄二式の『山嵐』に転生するなど当時のスネイルも思いもしなかった。
自身が扱う専用機の大元に乗り込めた簪はとても気分が良くなっていた。
家のしがらみも、日本代表候補生としてのプレッシャーも忘れ、透き通った心で純粋に楽しんでいた。
元々、彼女はヒーローが好きだった。
家では何か後ろめたい事をしているのは分かっているが教えてくれない家族、何もさせて貰えず、おこぼれで貰った日本代表候補生という肩書。
一時は専用機すら手元に届くことがないと絶望した時もあった。
誰にも助けて貰えず、誰も信用できない状況で手を差し伸べたのがスネイルだった事を彼女は忘れていない。
最初は嫌味っぽい人とは思ったが、機械に対しては真摯に向き合い完成まで手伝ってくれた恩人。
巨大ロボまで製造しているものだから就職するならここが良いと心を固めるのは言うまでもない。
とはいえ、今はバルテウスに乗って滅茶苦茶調子に乗っている。
入社したら実機を乗り回してやるという半ば狂気のようなモノも口から漏れ出ていた。
『なにやら、楽しそうな事をしていますね』
学友達が止められない中、1人の男の声が皆の耳に入る。
『シミュレーターを使用しても良い時間はとっくに過ぎてます。初日とはいえ資料をまとめる時間も作らなければいけないはずですが』
そう、息抜きに来たスネイルである。
大量にある仕事にひと段落を付けて訓練に来たのだが、学生達がまだ乗っていると言う事を聞いて様子を見るために通信で話しかけたのだ。
「スネイルさん!?あ、お、お恥ずかしいところを…………」
『乗り回し方は、まあ悪くないでしょう。ですが、夢中になり過ぎるのはいただけません。特に学生の身であるのなら有効的に使うべきです』
「は、はい!すみません!」
改修後とは言え実機を実際に乗り回した本人から動きが悪くないと言われた喜びと同時にはしゃぎ過ぎたという恥ずかしさが簪に襲いかかる。
事実であるが故に、そして相手が実際に偉いせいで責任転嫁する事もできず顔を真っ赤にするしかない。
『時間も押しています。1週間の時間はあるでしょう、今日に全てを費やさずペース配分を間違えないように学びなさい』
それだけを言い残してスネイルとの通信は切れた。
恐らく彼もシミュレーターで仮想敵相手にACを操作するのだろうと予想はつく。
何せ臨海学校で見せた太足の巨大ロボが彼の専用機てある事は間違いなく、CEOである以前にスネイルも1人の戦士なのだから。
と、考えたところで簪はシミュレーションを終了して薄暗くなった箱の中から出る。
「また、今度ね」
今はまだ1週間しか使えないが、入社すれば使い放題、実績さえ作れば開発もやり放題になるだろうと彼女は考え更なる勉学に励む事を決意した。
しかし…………
「「「「なんだったんだろう、あの割れた顔みたいなの」」」」
通信では本人の素顔でなく、別れた三つの顔のような意味不明のエンブレムが映し出されたことに簪と一緒に話を聞いていた3人は疑問に思った事は言うまでもない。
シミュレーターには事前に登録したエンブレムを自分の顔代わりに通信に出すことができる仕様。
なお、スネイルとヴェスパー部隊がそれぞれ考えたエンブレムを持ち込んだ際にフロイトとオキーフ、ラスティにホーキンス以外は滅茶苦茶喧嘩した。
そら(イカれエンブレム持ち込む奴らが自分のを棚に上げて馬鹿にしたら)そうよ。
今この作品のスネイルでちょっとしたIFの話を思いついたので完成したら別作品として上げようか考えてたり。