倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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ランクマでチェーンソー使いたいマンです。ロマン、いいよね。

あと評価9の欄が300人超えました。皆様に圧倒的感謝。


32. 天災と最強

 

『織斑千冬、準備運動はよろしいですか?』

 

 倉持技研2番研究所、シミュレーター内に世界最強(ブリュンヒルデ)は居た。

 

 何故彼女がここにいるのかと言うと、とある国の権力者が『ISとACはどちらの方が有用なのか』と発言したことから始まる。

 

 MTの販売から短い期間とはいえ様々な国が羨望していた遂に販売され始める時期まで時間は遡る。

 

 企業の力が広がることはいいのだが、ISを産業にしていた企業が当然の如く難色を示す。

 

 何しろ自社の兵器よりも高性能と謳い、さらには女性以外でも訓練さえ受けたら乗ることは可能(操縦できるとは言っていない)であるACが市場に流れたら確実に価値が暴落する。

 

 そうなってしまえば牛耳っていた産業が衰退し、今まで横柄にふるまっていた為寄ってくる人間が今まで以上に減ってしまう。

 

 上流階級から引きずり降ろされたくなかった企業は結託してACの価値を少しでも下げようとした。

 

 その結果、ISとACの最強議論が上がったわけである。

 

 はっきり言って用途が違うため意味はないのだが、そこで駆り出されたのが世界が認める織斑千冬である。

 

 もう分るだろう、本来なら乗り気にならない筈の彼女は束の口車によって参加せざるを得なかった。

 

 そして本来なら断るはずのスネイルも、どこから聞きつけたか分からないフロイトがガン詰めしてきて厄介なことになったため、やむなく許可を出したのだ。

 

 様々な思惑が絡み合い実現した異種格闘。流石に実機では被害が大きく出るため倉持技研のシミュレーター内での決着になったが。

 

「十分だ。しかし不思議な気分だ、外に出ずともISを乗り回しているという感覚は」

 

『我が社アーキバスグループの技術を舐めないでいただきたい。フロイト、そちらの準備は』

 

『とっくに出来ている。早く始めてくれ』

 

 フロイトは愛機であるロックスミスに搭乗して開戦の時を待つ。

 

 造られた世界最強とただの人間である世界最強の戦い。

 

 ACも大型で機敏ではあるものの、ISほどの小回りは効かず最高速度もISには劣る。

 

 一応ブランクはあるとはいえ、自分にとって最適な装備を得た上で試運転も終わらせた千冬は万全の状態。

 

 この戦いは生放送で各国及びIS関連企業が見ている。

 

 無人機とはいえ重量級ACでISを落とした実績があったとしても、ベテランの世界最強(ブリュンヒルデ)が負けるはずがない。

 

 自然な驕り、女尊男卑の風潮は未だに根強く残っている。

 

『では、カウントダウンを始めます。その前に一つ』

 

 割れた顔のアイコンからスネイルが話し続ける。

 

『フロイト、この程度乗り越えなさい』

 

『ああ、そうだな。分かった』

 

 短いやり取り、世界最強(ブリュンヒルデ)をこの程度と言う度胸。

 

 千冬の力を信奉する人間はかなり居る。その者達を敵に回す勢いの言葉であるが千冬には違うように聞こえた。

 

「随分、信頼されているんだな」

 

 そしてカウントダウンは始まる。

 

 千冬とて真剣勝負の場で手を抜くような事をしない。

 

 叩き潰すなら全力、それも束が認めた天才が信頼する相手。

 

 簡単に負けてやるわけにはいかないのだ。

 

 開始のブザーが鳴る。2人のスタートは速攻だった。

 

 千冬の搭乗ISは『進・白騎士』と名付けられた束プロデュースの第四世代ISである。

 

 基本ベースはかつて事件を起こした『白騎士』であり、プラズマブレードと荷電粒子砲、さらに両肩にはプラズマミサイルとエネルギー消耗が高いが高火力の武装である。

 

 とにかく強く、そう言う各所の意向からデータのみで造られた代物である。

 

 どうしてデータのみかと言うと、完全な兵器となるのを束が嫌がり、妥協案としてスネイルが提案した事でどうにか実現できたと言った所。

 

 無論、実機で製作も可能であるが束もしくはスネイルが居なければ不可能である。

 

 適当に作るなら別に良かったのだが、フロイトが「世界最強か、楽しみだな」と本気で期待していた上に「まあ、フロイトなら負けはないでしょう」というスネイルの発言で束のプライドが刺激されて真面目に造られた経緯があったりする。

 

 間違いなく単体ISでは最強であるISと最強として存在している千冬が組めば敵う者はいない。

 

 対となる者を除けば。

 

 スネイルの技術力、そしてフロイトの類稀なる戦闘センス。性格も真反対な男2人。

 

 最強の巨大ロボットと最高レベルで扱える最強のパイロットが組めば無敵である。

 

「はあああっ!」

 

 千冬はプラズマミサイルを発射しつつ牽制、そしてプラズマブレードを振り抜く。

 

 対してフロイトが搭乗しているロックスミスはプラズマミサイルを発射された事を確認し直撃前にQBで回避、そしてレーザーブレードで切り払う。

 

 サイズも重量も大きな差がある。押し合いならばロックスミスに軍配が上がるが千冬が簡単に終わるはずがない。

 

 互いのブレードがかち合った瞬間、千冬はブレードを支点にするように縦回転してレーザーブレードを回避、それどころかロックスミスより上を取ったのだ。

 

 縦回転のまま叩き切られると思われたが、ロックスミスも上を取られた瞬間に前方へQBをふかして即刻ブレードの射程圏外へと逃げる。

 

 これらの行動は、ブレードがぶつかり合って1秒にも満たない瞬間で発生している。

 

 普通の人間ならば千冬に切られて終わりだった。

 

 ロックスミスが振り向きざまにアサルトライフルを放つが高速移動する『進・白騎士』は捉えられない。

 

 フロイトもアサルトライフルは運が良ければ当たるだろうと言う感覚で垂れ流しているため期待はしていない。

 

 だが、勝利の道筋を確実に構築し始めている。

 

 ロックスミスは左肩の武装、レーザードローンを展開した上でABで急加速し接近、『進・白騎士』も再び叩き斬らんと高速で接近する。

 

 このレーザードローン、AI制御ながら牽制に長けており千冬の進行方向を予測してレーザーを放つ。

 

 このレーザーを簡単に避けるのはいいが、その避ける進路が誘導されている事に数瞬の間気づかず、ロックスミスを見上げる形に下へと潜り込まされる。

 

 ロックスミスの肩には拡散バズーカが装備されている。

 

 面の制圧力が凄まじく、ACから放たれる巨大な砲弾はISでも避けづらい。

 

 それが地面に向けて撃ち、尚且つ地面に近ければ爆風を食らうのも必然。

 

「ぐうっ!少し油断したな」

 

 仮想の衝撃が身体に響き、そして削れるシールドエネルギーを見て衰えたと千冬は実感した。

 

 いくら世界最強と設計された身体とてブランクは響く。

 

『なーにやってるのちーちゃん!あと7割だよ?気を抜いたら落とされちゃうよ!』

 

 親友の通信が耳元で聞こえる。

 

 ロックスミスの拡散バズーカも弾数には限りあるとはいえ、まだまだ発射は可能。したがって一発当てられてこの体たらくでは堕とされるのも時間の問題。

 

『ちーちゃんの動きについてくるだけあって強いね。そういや海の時もISから逃げきってたし』

 

「束、アレ(・・)を使うぞ」

 

『スネイルさんが言うだけあって…………マジ?もうお披露目しちゃうの?』

 

「どうせ私にしか扱えないように仕組んでるのだろう?」

 

『ま、私とかちーちゃんくらいしか使えないよ。だけど…………』

 

「信じろ、誰であろうと、私はもう負けない」

 

 さほど経っていないのに遠い昔に感じる記憶。世界に理解されず、互いにすれ違い叶うことが無いと思った夢。

 

 様々な運命が折り重なって再び公の場で友に居られる奇跡を終わらしたくない、もう過ちは犯さない。

 

『…………分かった。かっとばしていきな世界がみんな待ってるぜ!』

 

 束も千冬の意思を汲み、束がOKを出した。

 

 決して加減していたわけではない。

 

 行き過ぎた技術は多くの敵を生んだ。それをかつて実証しただけに選べなかった選択を今ここで取る。

 

 全てが敵に回るわけではない、天災にも味方となる企業がいるのだから。

 

「これが私が出せる全力…………いや、それを超える!」

 

 拡散バズーカを受けたことにより一度大きく離れた『進・白騎士』は緑に輝き始める。

 

 天災が作り出した最高傑作、それが電子の世界に舞い降りる。

 

 両肩のプラズマミサイルが変形し、そしてレーザーブレードもさらに輝きを増していく。

 

『なるほど、ああいう機体もあるのか』

 

 フロイトも思わず足を止めてその美しい光景を眺める。

 

 ここで攻撃していれば試合終了となるのだが、そのような楽しみを潰す行為をフロイトがする訳が無い。

 

 なお、スネイルはこの呟きに対して「そうそうありませんよ、あんなもの」とこぼしたのは別の話。

 

 『進・白騎士』、この最初についている『進』は誤字ではなく『未来へ進む』という意味で付与されたもの。

 

 宇宙進出を掲げているが、今はまだ月までしか届いていない。

 

 故に、今は『月』止まりであるが更なる拡張性を有しており、今後の技術が進歩する毎に更なる躍進を遂げるIS。

 

「行くぞ、私の、私達の道を切り拓く!」

 

 未来を進み続けるISが今、ロックスミスに戦いを挑む。

 





『進・白騎士』
 篠ノ之束がデータ上のみで創り出した「ぼくのかんがえた現時点のさいきょうIS」。コジマは使っていない。
 第四世代であるが、ほぼ次の世代に片足を突っ込んでいる。
 非常に高性能ではあるがエネルギーの消耗が非常に激しいが、拡張領域にアーキバスの技術を参考にしたジェネレーターを積んでいるためISのエネルギーはシールドに、武装のエネルギーはジェネレーターから得ているためバランスがいい。
 出力も恐ろしく高く、最高出力はACにも通用する。
 しかし、出力が高すぎる故に訓練した軍人でも扱える代物ではない。
 文字通り千冬の専用機である。
 
 武装は『月光(つきあかり)・雪片』、両肩に『極光』という武装を積んでいる。
 荷電粒子砲を放棄して3つだけの武装と思うが、『月光・雪片』はエネルギーとパルス複合のブレードであり、『極光』は文字通り原作AC6の肩武装『オーロラ』である。
 さらにエネルギー出力を高める事によってルビコニアンデスキュベレイやどすこいエアちゃん号のゴッドバードアタック(流石に股は広げない)が使用出来るので一般AC乗りは簡単に狩られるだろう。これ本当にISなんですか?

 なお作者は未だにアレの避け方をよく分かっていない。

 もしもの世界があったら、としてIF話を書きました。よろしければ読んでいってください。
https://syosetu.org/novel/340316/

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