倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

35 / 36

 まさか今年最後の投稿がこの作品になるとは誰も思うまい。


34.その存在、プライスマックス

 

「アイスワーム、だと?」

 

 私ことスネイルは信じられないものを見た。

 

 ロシアで暴れ回るACよりも巨大で顔面が鑿岩機の超巨大ミミズの写真と衛星から撮った動画を見せられてなお信じられなかった。

 

『ああ、ロシアがそう命名したらしい。スネイル、これを見たら何で動いてるか分かるだろう?』

 

「赤い粒子、際限なく動き回り、ISの武装でもろくに傷がつかない…………やはりコーラルという事ですか」

 

『そうだ。どうやら「技研」の連中もなりふり構わず暴れ回ることを決めたようだ』

 

「我が社アーキバスからルビコン解放戦線への全面協力を保証します。早急にあなたのAC『スティールヘイズ』をそちらに送ります」

 

『助かる、だがアレを倒せると思うか?』

 

「そのためのACです。敵戦力を計り、帰ってくるのがあなたの仕事です」

 

『こき使ってくれるな。例の件(・・・)も進めてくれよ?』

 

「善処します」

 

 ラスティとの通信が途切れた瞬間、私は椅子に全体重をかけた。

 

 待ちなさい、何故このタイミングでアイスワーム?確かに『技研』が関わっているなら可能性はありましたが、この世界でコーラルが関わっていた時期はルビコン開放戦線が発足する前の話です。

 

 つまり、50年以上前にアイスワームが開発されていたことになります。

 

 コーラルを潤沢に取れる時期に作り始めたと思われますが、あの巨体スケールをそのまま作るとなると我が社が他プロジェクトを止めて総動員して1年で出来るかどうかです。

 

 ACの製造はともかく、全国に送り出すために量産するMTの工場を止めた事を含めての計算で1年です。

 

 世界的企業になったアーキバスですら相当な予算と人員を注ぎ込まなければ作成できるかどうか怪しいイロモノを奴らは有している。

 

 …………腹を括りましょう。あの時のエンフォーサーのように惑星封鎖機構の機体を奴らがコーラル漬けにして有している、と考えて良さそうです。

 

「スネイル閣下、国からの呼び出しです」

 

「繋げなさい、おおよその見当はつきます」

 

 ロシア領で起きているアイスワームの暴走は、規模からしてすぐに出回る事でしょう。

 

 それを早めに鎮火したいために私を呼ぶ、珍しく合理的な判断です。

 

「はい。ですが、どうやら日本だけでなく世界各国の大臣らが集まっているみたいですが…………」

 

「なるほど、招待に応じましょう」

 

 アーキバスの協力がなければアイスワームは討伐不可能でしょう。

 

 ただ、唯一の不安点といえば奴のアーマーをどう突破するかです。

 

 みんな大好きワーム砲は私の頭の中に設計図があり、パーツは既存のものを一部流用するので組み立てられるので短い期間で完成はしますがレールキャノンの存在が無いのが痛い。

 

 こういう時に篠ノ之束博士が隠し玉として何を持ち出してくるかも恐ろしいところではありますが、既に賽は投げられてます。

 

 出す資料を用意しつつ会合の時間を待ちます。

 

 では、新たな戦いを始める準備をしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議は踊る、されど進まずというのはこのことか。

 

 いざ国家間の対策会議に参加したと思えば責任のなすりつけ合いばかり声が響く。

 

 画面越しの緊急会議とはいえ醜く争う姿、実に滑稽です。

 

 ですがこのままでは何も起こらないのもまた事実。

 

 世界の命運を決める会議だというのに何も決まらなければ話にならない。

 

「そろそろ宜しいでしょうか?」

 

 私の一声に、罵倒大会が始まりそうな雰囲気がしんと静まりかえる。

 

 これですよ。私が企業故に国すら無視できない力を有して私の話を聞くしか無いこの現状。ここまで頑張ってきた甲斐がありました。

 

「これはアイスワームに対応するための会議でしょう。態々あなた方の愚痴を聞くために私は参加したわけではありません。このまま続くようであれば私は退出を検討しますが、如何でしょうか?」

 

『それは困る。貴社だけでなく他企業にも件の兵器を打倒するため話を持ち込んでいるのだが、対応が一番早かった貴社に力を求めたいのだ』

 

「その見返りは何がありますか?世界平和?馬鹿馬鹿しい、あって当然のものを報酬として出されて喜ぶ愚物だと思われてるのなら心外と言わざるを得ない」

 

『…………国家間の関税を減免。国家における公共事業に貴社を招き入れる事を公式に認めよう』

 

「ええ、それでいいです」

 

 他国への事業介入は金になる。MTの派遣や宣伝を含めてこちらから出す金額も多くなるが、循環する金が多くなる。

 

 そこに漬け込み他製品を売り出せば損失を回収どころか黒字に持っていけます。

 

 そう、何故なら我が社アーキバスは世界的企業。国の後ろ盾を得たので手出ししようとするならば国に刃向かうも同然。

 

 亡国機業の残党だけでなく『技研』も手を出しにくくなるでしょう。せいぜい良いデコイとして今回の件に関わりなさい。

 

 では、アイスワームを倒す方法ですが、やはりワーム砲ことVE-60SNAの組み立ての指示は既にしています。

 

 後は現地に赴かせたラスティがどれ程の情報を持ち帰ってくるか。一応パルス装備を勧めてはみましたが、新型の開発も急がせるべきですね。

 

 それに2枚目のシールドが実際にある場合、それをどう対処するか。

 

 レールキャノンも元はジャンク屋が所有していた企業ですら把握できていなかった超兵器。案外似たようなものが他社に存在するかもしれません。

 

 何せ、ISという超兵器に対抗すべく躍起になった会社は旧倉持技研以外にも存在する筈ですから。

 

 私が経営者だったら間違いなく新技術の開発、もしくはISを利用した別兵器の開発など考えは出ます。

 

 ただ、ルビコンIIIほどのサイズ感がこの地球には無いため、難しい話です。

 

 とりあえず他企業にも粉をかけてみましょう。期待はしませんが。

 

 もし本当にダメならば、こういう時に頼りたくないですが篠ノ之束博士の出番でしょう。

 

 彼女の仕事に間違いはありませんが、絶対にどこかで悪ふざけをぶち込んでくるのが目に見えます。

 

 あとフロイトが混ざれば大変なことになり、私が企業になりかねない事態になるかもしれない。

 

 ようやく地盤が固まったところなので変な行動は本当にやめてほしい。特にフロイト、篠ノ之束博士はまだ自分がふざけてる自覚がありますがフロイトは無自覚にやらかす事ので会社的に大問題なのです。

 

 篠ノ之束博士はまだ外部顧問の立ち位置なので仕方ない扱いはされますが、社内の警備部門兼機動部隊首席がやらかすのはアーキバスの経歴に傷がつくので。

 

 それでも今のところ任務達成率100%なので、どこでやらかすのかが心配です。

 

 問題児への愚痴はこれくらいにして、仕事に取り掛かりましょう。

 

 対テロ用の兵装とはいえ外に出せないものです。慎重に取り扱わなければならず目を光らせる必要もある。

 

 相変わらずやる事が多い。念の為の兵器も考えなければならないので本格的に協力者を探してみましょう。

 

 ISの武装を開発していたのだから少しは有効な武装を開発している企業が一つくらいある、と思いたい。

 

 せめて衛星砲くらいの引き出しがないものか。

 

 無い物ねだりをしても仕方ありません。とにかく手を回しましょう。

 

 企業(我々)の戦いはこれからです。

 





遂にワーム砲開発開始。レールキャノンはどこの衛星砲が代わりになるんだろうね(すっとぼけ)

流石にスネイルもISに対してACだけで十分と考えていたから手をつけてないのでガチで一から模索する羽目になっています。

どこかに都合よくISコアと融合して生きながらえてる衛星軌道上にいる何処かのメイドの妹が居たらなー。

全部が全部、捨てたものじゃないと思うんですよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。