倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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 アーキバスでこの部隊は欠かせないよねって話。


5. その男、問題児につき

 

「皆さんお集まりいただきありがとうございます。移動中ですがスネイル閣下からブリーフィングがあります。傾聴するように」

 

『倉持技研2番研究所所長スネイルです。今から約1時間前にMTの機密データを盗み出した者が他県へ渡ったと情報が入りました』

 

『現在は監視で止めていますが逃げ出す先が亡国機業(ファントム・タスク)というテロリスト集団であることが問題です』

 

『我が社からの裏切りに加えて反社会勢力への逃亡。他企業へ逃げるならまだしも碌な扱いを受けるはずのない場所へ逃げるとは…………』

 

『そして情報が正しければ、亡国機業幹部が日本に密入国している可能性があります』

 

『よって、貴方達には裏切り者の確保及び機密データの回収をしてもらいます』

 

『その際にテロリストによる妨害が予測されるのは当然理解しているでしょう』

 

『自己防衛は各自死なない程度にしておきなさい。仮に銃撃戦が起こった場合は私が手を回します』

 

『回しますが…………限度はある事を理解しておくように』

 

『分かっていますね、フロイト隊長(・・・・・・)?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長殿、名指しされていますよ」

 

「…………何だ?聞いてなかった」

 

「またですか!?また閣下からの小言が飛んできますよ!」

 

「まあまあ、これが第一隊長という男だ。気にしすぎると閣下みたいに眉間のしわが取りにくくなるぞ?」

 

 大人数が乗れる車にみっちりと4人の男と1人の女が座っていた。

 

 ブリーフィングを流した女性が完全に興味なく端末をずっと見ていた隊長を叱るがどこ吹く風。

 

 車内で一番歳をとっている中年男性がその間をとりなして、しっかりスネイルを悪く言いながらにこやかに話す。

 

「珍しいな、ここまでしようとした奴は。スネイルからは逃げられないと知っているだろうに」

 

「閣下から言わせたら目先の欲に眩んだ、といったところでしょう」

 

「まあ最初から閣下に目をつけられていたこと以外は上手くいっていただろうね」

 

 この裏切り者の最大の不幸は、少しだけ不審な動きをスネイルの前で見せたことだ。

 

 わずかな違和感をあの男は察知した上で泳がし、そして決定的証拠を押さえて動く。スネイルがよく行っている粛正の手順だ。

 

 目的地の飛行場付近の場所で彼らは全員車から降りる。

 

「メーテルリンク、ISの具合はどうだ?」

 

「大丈夫です。閣下が準備したパルスシールドもあるので皆さん私を盾に使ってください」

 

「頼りになるね。だが、その装備は対ISの物って言っているようなものだよ」

 

「はい、なので皆さんも注意してください」

 

 しっかりと拳銃も所持はしているが、本命は待機状態にしてあるパルス兵器である。

 

 自身を守るためのシールドエネルギーをパルスシールドで節約しつつ、敵の気を引き付けて残った4人が制圧するというチームとなっている。

 

 他の4人もほとんどが物騒なものを隠し持っている。

 

 隊長に至ってはギターケースを担ぎながら、その中に何丁ものアサルトライフル、サブマシンガンを隠し持っているのだ。

 

 ちなみに、武器の携帯はスネイルが様々な方面に働きかけて特例的に認めさせているのだが、事情を知らない一般市民からしたらテロリストと間違えられても仕方ないため基本は極秘作戦時にしか彼らは集められない。

 

 なお、隊長の持ち物は他隊員(メーテルリンクを除く)に比べると過剰すぎる。

 

 そしてこの持ち出しはスネイルに許可された範囲を超えていたりする。

 

「さて、それじゃあ行くとしよう。目標はあそこにいる」

 

 そう言って優男が指をさしたのはどこにでもありそうな倉庫だ。だが、その中身はテロリストが潜む魔窟となっている。

 

 流石の亡国機業も名称だけはまともに買い取ってはいるが、スネイルとこの場に居ないもう一人の隊員の手にかかれば情報は抜かれてしまう。

 

 5人は倉庫を襲撃する為に散っていく。

 

 企業を愛する男の駒として、彼らは今日も働き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が倉庫を爆破しろと言いましたかフロイト!そもそも爆発させる必要もなかったでしょう!?」

 

「仕方ないだろう。向こうの専用機が出てきたんだ、メーテルリンクはパニックになりかけて役に立たないから一番効率よくダメージを与える方法だ」

 

「だから持ち込んだ弾倉から弾丸を抜き取り、テロリストが持ち込んでいた爆弾に当たるよう弾丸を複数仕込み、挙げ句の果てに生身で挑発して誘い込む囮役をやったと?」

 

「囮役をやったのは俺だ。まさか何も着込まずにあれほど高く飛べるとは思わなかったが」

 

「だとしても、その後に1発の弾丸に全てを賭けるのは無謀と言っているのです!その作戦で連鎖的に弾丸が発射されて相手の裏をかき、こちらのメンバーに被害が出なかっただけ奇跡と思いなさい!」

 

 スネイルの怒鳴り声が2番研究所に響き渡る。

 

 叱られているのはやはりフロイトであり、作戦に参加した隊員は冷ややかな目でその光景を見ていた。

 

 事の顛末を話すと、倉庫に突入して亡国機業構成員を制圧し裏切り者を捕えたまでは良かったが、赤い蜘蛛を模したISが突如乱入し激しい戦闘になったのだ。

 

 5人でありながら無差別に攻撃を仕掛け暴れまわる1機に苦戦していたが、フロイトの奇行…………ではなく奇策によりその場を切り抜けることには成功した。

 

 ついでに裏切り者は2番研究所に帰還した後は教育センター(政府お抱え極秘施設)送りとなった。

 

 だがスネイルが怒っている主な原因は綱渡りでしかない行動で勝利をもぎ取ったことだ。爆破の規模も先ほど言った通り誤魔化しはいくらでも効くが人員の損耗だけはどうしようもないのだから。

 

 このような物騒な内容が聞こえているが、近くを通りかかった研究員は聞いていないふりをした。

 

 誰かが機密データを盗んだ事は知っていたが、その後の顛末は彼らの研究に関わることはない。

 

 知らない方が良いことだってあるのだ。

 

「全く、倉庫一つをガス爆発で隠蔽出来たのはいいものの…………政府からの苦情も頂きましたよ」

 

「そうか」

 

「待ちなさい、シミュレーターへ直行するのは話が終わってからです」

 

「そうか」

 

 説教に全く興味なくそのまま立ち去ろうとする彼をスネイルは腕を掴んで逃さんとする。

 

「貴方はいつも興味がないことについては聞き流す、その癖を直さなければ減給待ったなしですが?」

 

「そうか、それは困るな」

 

「心にもないことを言ってますよ」

 

「ペイター君、素直なことはいいんだけれどあそこまで明け透けな態度をとる人間にはなってはいけないよ」

 

 ちなみに、部隊の人間は基本コードネームで呼ばれている。誰が誰なのかは馴染みはあるだろう。

 

 スネイルも才能のある人間を探し、後始末の部隊として設立したらまさかの人材になってしまったために知っているコードネームを与えてしまったのだ。

 

「確かに貴方の強さは折り紙付きです。世界最強と呼ばれる織斑千冬にも食らいつくことは出来るでしょう。ですが、IS相手に生身で立ち向かうのはいくら何でも命知らずだということを知りなさい」

 

「シミュレーターではそこそこいい線いっていたんだがな」

 

「いい線で戦死する馬鹿がどこに居ますか!貴方が戦ったのは現実です。ホーキンスとペイターの援護、メーテルリンクの目くらまし、ラスティの誘導が無ければ何一つうまくいかなかった筈ですが?」

 

「だが上手くいっただろう?」

 

「偶然!上手く!いっただけで!毎回こうならないんですよ!」

 

 対ISのシミュレーションはもちろん行っている。だが、フロイトからするとその勝率は低い。

 

 フロイトを生身と想定した場面で、『低い』という評価で済んでしまうのがフロイトなのだ。

 

 この後の説教がとても長い時間続く。もちろん任務成功の報告さえ終われば部隊は解散、それぞれの元の業務に戻るのだ。

 

 説教され続けるフロイトは全く反省の色を見せず、スネイルが疲れてしまったことにより終了した。

 

「…………持ち場に戻りなさい。これ以上は時間の無駄です」

 

「そうか、分かった」

 

 その言葉を待っていたかの如く、彼はそのままスネイルの前から去ろうとした。

 

 だが、ふと何かを思い出したようにフロイトは足を止めた。

 

「そうだスネイル。シミュレーターの『機体』についてだが、もう少しバリエーションが無いのか?」

 

「…………まだ研究の途中です。数種類ある中で開発可能な段階に至った物をデータ上に載せています」

 

「足りないな、それに武器もエネルギーだけじゃなく実弾も欲しい」

 

「……………………善処しましょう」

 

 妙に間が空いた返答だったがフロイトは特に気にせず本当に退出していった。

 

「あの、シミュレーターのデータを作るのにどれほど時間がかかるか分かっているのか…………っ!」

 

 不可能ではない、ただアーキバス製以外の武装は殆ど一からプログラムを書き出さなくてはならないためスネイルでも相当の時間を必要とするのだ。

 

 しかもプログラムだけでは出力できず、設計図も引いて形にしなければ正しく出力されないため、文字通り一から作らねば出来ぬことである。

 

 これほど苦悩してもフロイトの言う通り武装の多様化は必要であるため本気で作り出さなければならないことに気づいているスネイルは才能だけはある人間を制御しようというのは非常に難しいことだと毎日頭を悩ませるのであった。

 

 未来のエースは常に我儘なのだ。

 





この世界における彼らのAC操作能力
1>2≧4≧3>5>6>7>8

生身での戦闘能力
1≧3>4>6≧8>5>2=7

強化人間の技術は漏らしてないので生身の作戦行動時に作戦担当と会計担当が居ないのは当然だと思いました。諜報担当は別の案件に動いてます。

ちなみにACの操作能力の基準はスネイルが作り上げたシミュレーターにISのデータだけでなくアーキバス製ACのデータも入れているからです。

他研究所の人もシミュレーターは使えますが、殆どの者がACの方を息抜きのゲームとしか認識していません。

真相を知るのはスネイルを筆頭にこの部隊とスネイルが選別した極一部のみ。

正直な事を言うとフロイトをTSさせるかフロイトとスネイル、メーテルリンク以外をTSさせるか悩みましたが元のままにしました。

そのまま奇人変人でありながら精鋭部隊ってカッコいいと思いませんか?
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