倉持技研2番研究所所長スネイルです   作:蓮太郎

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日間ランキング2位になりました。感謝永遠に。

このまま火をつけろ、スネイル閣下のケツに


6. 弾幕というパワーに飛び込め

 

 専用機が完成したと報告を受けたので視察に来たスネイルです。

 

 この専用機というのはもちろん我が倉持技研2番研究所が支援している日本代表候補生の件である。

 

 正直な事を言うと、ここまで早く完成できるとは思っていませんでした。

 

 せめて数ヶ月はかかるとの見込みだったのですが、更識簪自身が整備課の者達に自主的に協力を呼びかけ、その力で完成させたようです。

 

 人間関係を築くことが苦手と踏んでいましたが、評価を改めなければなりません。

 

「スネイル閣下、そろそろ到着します」

 

「結構。メーテルリンク、彼女に渡したデータは『例の物』です。パルス兵器を封印した状態で勝ちなさい」

 

「了解です。閣下の御意向に沿う様にいたします」

 

 今回はどこにでもいる我が社の人間ではなくメーテルリンクと呼んでいる女性を運転手にしてIS学園へ出向いています。

 

 一応は完成させたとはいえ、後半は学生のみで開発したので粗がないか探して欲しいという依頼であり、責任者の名を勝ち取った私が出向くことになるのは当然でしょう。

 

 とはいえ、粗を探すのにはプロのIS乗りも必要と言う訳でメーテルリンクを呼び出し出発することになったのです。

 

 メーテルリンクは我が2番研究所のIS武装の広報担当の1人であり、私の基準を満たした能力を持ち合わせている為この様に優遇はしています。

 

 今は見る影もありませんが、昔の彼女は反抗的でした。

 

 ですがシミュレーターを使いIS対ACをさせて完膚なきまでに叩き潰させてもらいました。

 

 ついでにACの方も操作させてみると良い腕をしていたのでAC開発中の事実を伝えると陥落しました。

 

 私としてもAC乗りが全員男であっても良かったのですが、ACとISの融和性を知りたくなったので懐柔していき、今では完全に私の部下となりました。

 

 たまに毒を吐かれることはありますが、ISが必要な時には毎回連れ出しますので重宝してます。

 

 では見せてもらいましょうか。貴女の普段の訓練の成果を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識簪は、現在とても緊張している。

 

 データは渡されたものの装備の調整に手間取り一人ではどうしようもなくなってしまった時期があった。

 

 スポンサーとなったスネイルに嫌味を言われたくないのとこのままでは切られてしまうのではないかという恐怖が当時の彼女に襲い掛かった。

 

 もちろんだが、ここのスネイルに助けを求めるとネチネチと小言を言いつつ完成までしっかり支援してくれるので完全に杞憂だったりする。

 

 それにクラス代表戦には間に合わせたい。どこからか噂を聞きつけたクラスメイトが期待の眼差しで見てくるようになったのだ。

 

 相当なプレッシャーに苛まれ、このままでは不味いと思い勇気を振り絞って整備科の方々に声をかけたのだ。

 

 反応は、快く受け入れられた。それだけでなく専用機を弄れるということで皆張り切ってしまい予定よりも早く完成したのが今回の模擬戦の発端である。

 

 まさか完成早々にスネイルがやって来るとは思いもしなかった。

 

 ついでにプロのIS乗りまで用意してかなり本気である事を知ってしまった。

 

「ここでやらなきゃ価値が無い…………やらなきゃ」

 

 アリーナを貸し切って、手伝ってくれた整備科の人たちとスネイル、ついでに織斑千冬が見守る中で始まる模擬戦闘。

 

『ブザーが鳴れば開始の合図だ。両者、準備はいいな?』

 

「は、はい!分かりました!」

 

「いつでも大丈夫です」

 

 声からも焦り気味な簪に対してメーテルリンクと呼ばれている女性は冷静だった。

 

 それもその筈、彼女は先日の裏切り者の襲撃にて少し(・・)醜態をさらしてしまったので挽回しなければならないのだ。

 

 だが今回の相手は学生で専用機とはいえ独自で訓練を積んでいなかった子供だ。

 

 メーテルリンクの武装も実は実戦を初めてする武器を装備している。

 

 右手にVP-60LCSのレーザーキャノン、左手にVP-67EBのスタンバトンを持ち、肩にVE-61PSAの型番が付いたパルススクトゥムを装備している。

 

 そして腰には二丁のVP-66LHのレーザーハンドガンを装備していた。

 

 これらの設計は全てスネイルが行い、IS用に調整した試作品である。

 

 お互いに見ない武装に警戒し、静寂な時間が過ぎていく。

 

『ブ――――』

 

 ブザーが鳴った瞬間、『ソレ』は放たれた。

 

 固有名称『山嵐』、打鉄弐式の最強武装である合計48発のミサイルの一斉発射。

 

 ただ標的に直線で向かうのではなく、スネイルが持ち込んだデータにより山なりに軌道を描き退避しようと後退した相手を追い詰める凶悪な武装となった。

 

 これが学生相手なら全弾命中と行かなくともシールドエネルギーの大半は持っていかれるだろう。

 

 だが、相手は対IS、そして対ACのシミュレーターに深く関わる人間。囲い込む様に飛んでくるミサイルの対処法は嫌と言うほど学んでいる。

 

 その機体のデータ元になった機体はスネイルとのシミュレーションで嫌というほど味わったのだ。

 

 だからこそ最適解を知っている。

 

「嘘ッ!?あの弾幕を見てド直球に突っ込めるの!?」

 

「コワ…………何であんな行動とれるの?」

 

 観戦していた整備科の人たちが驚いた声を上げドン引きしている。

 

 確かに引き撃ちするようなら確実に狩ることが出来るのが山嵐だが、山なりに飛んでいくということで突っ込めば回避しやすいという弱点を抱えていた。

 

 スタンバトンをチャージしつつ簪の懐に入り攻撃しようとするメーテルリンクではあったが、簪の肩に装備されてある二門の荷電粒子砲が向けられている。

 

 一瞬の警告音が聞こえた瞬間にメーテルリンクは横に跳ねるように回避した。

 

 先ほどまで居た場所に蒼い線を残して弾丸が奔った跡を残していた。

 

「(やはり弱点は考えていますね。正面が一番被害が少なく済むから正面に向けて即座に撃つ…………)」

 

「(避けられた!今すぐ近接の準備を…………っ!)」

 

 回避したことにより追尾が追い付いたミサイルがメーテルリンクの横をかすめてシールドエネルギーが僅かに損耗する。

 

 他のミサイルは掠ったもの以外は瞬間加速(イグニッション・ブースト)を使用して回避され地面に追突し爆破してしまった。

 

 それでも止まらない彼女に簪は薙刀を準備しようとするが、拡張領域から取り出すことに慣れておらず数舜手間取ってしまう。

 

 その僅かな時間は致命的だった。

 

 メーテルリンクは既に射程距離の短いスタンバトンをぶつけてチャージしていた電気を放電、みるみると簪のシールドエネルギーが減っていく。

 

 放電が終わる前に簪は後退、空中へと飛び出して牽制としてリロードが終わったミサイルを4発、直線でかつ可能な限り高速で放つ。

 

 それに対してパルススクトゥムを展開し直撃こそ防ぐものの爆風による貫通ダメージは通りメーテルリンクのシールドエネルギーも減っていく。

 

 距離を取られたことでメーテルリンクは右手に持つレーザーキャノンを放ち再び飛んできたミサイルを撃ち落とす。

 

「うっそ!?レーザー!?」

 

「単発だけどあれかき消せちゃうの!?」

 

「待って、あれEMP付じゃない?あの電気の広がり方的にそうじゃん!」

 

「じゃあ、放たれた奴はプラズマ?」

 

 整備科の面々もメーテルリンクの武装のあれこれを考察していく。専門的なことを学んでいる彼女達の考えは外れていないことに大声が聞こえたスネイルは感心した。

 

 大声でギャーギャー騒いでいるのは不快だが、自身が作った武装を正しく理解されることは喜ばしい。

 

 自身の能力の高さを象徴することが力の証明になるのだからメーテルリンクにはもっと張り切ってほしいものだと思っていたりする。

 

 スタンバトンを持っていた左手もレーザーハンドガンに切り替えてオーバーヒートにならないよう調節しつつ射撃を行い簪のシールドエネルギーを着実に削っていく。

 

 これに焦って簪もミサイルを何度も打ち込むが、回避されるかパルススクトゥムに防がれるかで大したダメージにならず、そのままシールドエネルギーを規定量まで減らされ撃墜扱いにされて終了した。

 

「ふむ、ミサイルのロックオン精度は及第点。応用がまだまだ甘いですね。射撃の牽制はいいところを突いていましたが、その薙刀をもっと早く取り出すことから始めなさい。貴方の弱点は文字通り接近されること、逆を言えば接近戦を完璧にいかずとも上の下まで磨き上げたら―――」

 

 そして始まるスネイルの講評。

 

 長々と始まるソレにはメーテルリンクは慣れてはいるが、学生の身である簪や整備科の人たちは割と辛く感じてしまう部分があった。

 

 偉そうに言っているが褒めるところは褒めているし、欠点や失敗した部分は的確に突いてくる。

 

 IS操縦者に対してこびへつらうことが多い男性が多いこのご時世に、スネイルという本当に偉い男に対して本当にどう接したらいいのか分からなくなる学生たちだった。

 





この講評が長く続いて学生達は門限ギリギリになったんだよね。

やはり長話する奴は嫌われる。ただし内容だけは良質なので逃げるに逃げられなかった。
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