閣下の断末魔は今は効かないがいずれガンに効く。すっげえ清々しいよね。
IS学園で非常事態が起こったことを知ったスネイルです。
日本代表候補生である更識簪がクラス対抗戦に何とか間に合わせて専用機を完成させ、いざ当日を待っていたと思いきや、乱入者が現れ交戦状態になったとのこと。
セキュリティはどうなっているのかと言いたいところです。しかし、その乱入もメリットと言うものがほとんどないように考えられる。
その時のクラス対抗戦は中国代表候補生と男性操縦者が戦っている最中、アリーナの内部から流れ弾を守るためのシールドエネルギーを貫通した上で着陸させているのです。
さらに、観客席の生徒たちを退避させようにも何者かからのハッキングを受けてまともに逃げることもできず、教員のISすらロックを掛けられるという始末。
日本のIS学園のセキュリティは我が研究所よりは劣りますが多くの機密を扱っている以上はかなり厳重のはず。
それを易々と突破して戦闘を仕掛け、なおかつ妨害を出来る人材と言えば心当たりとなる人間は一人しかいない。
篠ノ之束、一体何がしたい?
ずっと思っていましたが、彼女は何もかもが自分本位で動く人間、フロイトに開発能力を天が授けたようなものです。
胃に穴が空くというレベルじゃない問題児。そして世界初の男性操縦者がISを動かしているタイミングでの乱入。
世界最強の織斑千冬の弟だから気にかけた?そんな生ぬるい理由であのような人間が手を出すはずがない。
あの二人の関係に裏があるとみて間違いない。世界最強と天災、その弟がどのように繋がるのか調べる必要があります。
ですが、今は亡国機業です。珍しくオキーフがやる気になっているので、今この仕事を回すとへそを曲げるかもしれないので保留にしておきましょうか。
さて、私はACの開発に戻るとしましょう。既に最終段階に入っているため完成も間近と言ったところ。
楽しみだ、どこぞの狂人ではないが心が躍る。
今は兵器として作り上げたとしても、宇宙活動で十分に使用できるものとして方向を転換させて正式に配備させる。
天災が施したように世界を簡単にひっくり返せる技術、だが私はあのような過ちを犯すつもりは無い。
綿密にプランを立てていくのです。企業のために戦う戦士なのですから。
「閣下、IS学園の2番研究所が支援している生徒から報告があります」
「何事ですか。篠ノ之束博士が現れたとでも?」
「二人目の男性操縦者が現れたとのことです」
「なんだと…………?国籍は」
「フランスです。代表候補生として転入を果たしています」
「名前は?」
「シャルル・デュノア。名前の通りデュノア社のご子息として通っています」
「おかしいですね、あそこには子供は居なかったはず」
「隠し子でしょう。それに…………」
書類仕事をしていた私に直接報告しに来た部下が言葉を止める。
世界初の男性操縦者である織斑一夏は開発に縁がある人物との血縁という繋がりから可能性はあった。
だが、今回ぽっとでの2番目男性操縦者はそういった下地が無い。
十中八九、性別を偽装して入学したのでしょう。
男性から女性へ手術的に性転換した人間はISに乗れないという報告は聞いていましたが、女性から男性へ性転換した人間が乗れたことは無いという話は聞いたことはありませんね。
女性であるなら乗れるものを、わざわざ女尊男卑の時代にやるような者は居ない。
そういった推論から結論は決まりきったものになる。
「となると、目的は織斑一夏でしょう。大方、第三世代機のデータを取るために投入されただけです」
報告する部下から目を離し、書類の方へと目を向けた。
いずれ勝手に排除される分子にわざわざ目をつける必要もない。
そもそも明らかにスパイのような物を突っ込むのはどうなのか?先日にも所属不明の敵が乗り込んできたのでもしかしたら思っている以上にザルなのかもしれない。
流石にこれ以上面倒を見る気はない。日本代表候補生の専用機の調節くらいしか足を運ぶ理由もないので手を回す必要もない。
「報告はそれだけですか?」
もう言うことがないかと私が聞くと、部下は一礼して離れていった。
余計な報告とは、これだけで少々時間を潰しましたか。
私専用のAC、オープンフェイスが夏までに完成しそうとはいえ油断はできません。
最近の情勢、特に日本国内の状態が怪しい。何度も言うように警戒だけは怠らないようにしなければ。
あと上層部の横槍にも…………全く、やることが多い。
研究も大詰めなのに予算を削ろうとするとは。スウィンバーンが居なければ私一人では対応しきれなかった。
どこまで足を引っ張るんだ、全く。
「私に、IS学園のセキュリティ面を見直せと?」
『そうよ。君なら出来るでしょう?』
「私にもやらなければならない案件だって残っています。それに私は2番研究所の所長です、研究所の一般職員である技術者ならともかく、わざわざ私を指名して行かせるのはおかしいでしょう」
『先約は断りなさい。これは命令です』
「…………善処します」
『これでもし何かあれば君の責任ですからね』
私の承諾を聞いてから余計な一言を乗せて上層部の人間は電話を切った。
「うわぁ、閣下が激怒してる」
「ホーキンスさん、私、スネイル所長に次のシフトのことについて聞きたいんですけど」
「今はやめておきなさい。いくら若い君でもあの状態の閣下に捕まったらただじゃ済まないよ」
後ろでいつもの二人組が何かを言ってますが、本当に世話をさせようとする馬鹿がどこにいるのですか!
流石にセキュリティは専門家に投げたというべきか、我が技研に依頼してくれたというか。
だがその仕事をよりによって私に振り分けるか!?私は所長だぞ!?
名指しで言われた以上は行きますよ、行きますとも…………!
「スネイル。新しい武装の件なんだが…………後にしておこう」
「あのフロイト隊長が諦めた!?」
「あの二人もそこそこの付き合いみたいだし、限界点を知ってるんだろうね彼は」
今の私は何かヤバそうなオーラでも纏っているのでしょうか?しっかり聞こえてる会話にフロイトが混ざり、そしてすぐ退場していきました。
以前に私が企業になりかけたのが効きましたね。あの頃のフロイトは今よりも自由過ぎて手に負えませんでしたからね。流石に私もやり過ぎたかと反省はしています。
しかし現地に行かなければ分からない極秘情報に等しいものをどうにかしろとは。
万が一、情報を漏らすならいくら上層部でも容赦は出来ませんよ。
確実に血圧が上がっている事を実感しながら、私は運転手を呼びつけてIS学園に向かう事にした。
「倉持技研2番研究所所長スネイルです。それで、私はセキュリティを見直す為に来たのですが、何事ですこの騒ぎは」
「え、えーと、あはは…………」
男性操縦者とイギリス代表候補生の模擬決闘の際に織斑千冬と同行していた女教師に私は問いかけた。
さっさと仕事を終わらせたかったのでアリーナまで一直線に来たのですが、この騒ぎに困惑しています。
その中心となっているのが織斑千冬、その生身の彼女に止められている青髪のIS操縦者と男性操縦者、織斑一夏が居た。
その傍らに金髪のIS乗り…………いえ、よく見ると男装していますね。
「彼が騒動の発端ですか」
「そそそ、そんな事ないですよ!?」
明らかな動揺のせいで誤魔化せていない事に気づかない教師を尻目にため息をつく。
この学園の問題は男性操縦者を中心に起こっている。
彼は疫病神なのか?そう思わざるを得ず仕事も長引きそうになる事を予感した。
〜第1回スネイル半ギレ事件〜
フロイトがISでも扱える試作のEN武装を勝手に持ち出し、スネイルが改良したのは良いが使い道が無いので放置していた某役立たずパーワードスーツに勝手に取り付け、共々ぶち壊した。
スネイルがその光景を目にし、フロイトが反省の色を見せなかった事が逆鱗を撫でるくらいの刺激となり、スネイルが拳銃を持ち出し乱射した事件。
壊したところまでは我慢できていたが、適当に謝ったことが一番いけなかった。スネイルは色々な功績とフロイトが全面的に悪いという事で減給だけで済んだ。
その時のキレる寸前のスネイルをフロイトが覚えていた&本人曰く「まだガチギレしてない(意訳)」の小言と説教を受けた為に引き際だけは覚えた。