あっそれから主人公の嫁の名前を若干変更します。
もうちょっと刀鍛冶の家っぽい感じで
虎徹 鈴音 → 錫音
時は明治後期、三十年代以降。
北方の地震から多少の年月は経ち、公害事件が取りざたされるような、社会としてはまだまだ動乱の頃。
大きな戦らしい戦はもはやなく、しかし国の形が移り変わっていく途上その最中にある、そんな頃の大阪。
政府が府を1つ敷いたその地にて、着々と力をつけ手を伸ばす屋号があった。名を、浦原商会。国際スポーツ大会への出場が話題に上るような時分に、戦争の爪痕を癒す様に、あるいは「かすめ取るように」淡々と金と土地に手を伸ばすその号。
その群の1つにある浦原商店という店にて、下駄帽子と揶揄される男が。ぼうっと茶を飲む。畳でくつろぐが故に下駄は履いていないが、恰好はそう変わりない。甚平、独特の模様が描かれたハイカラな帽子。不敵に浮かべる笑みに反して庶民的な恰好で、かつ成金らしさもなく、それでいて妙な迫力がある。
いうなれば、妙に胡散臭い。
そんな男が真昼間だというのに寝大仏の体勢で、バリバリせんべいを齧りながら茶を飲み、新聞をめくっていた。
「ほう? なるほど、なるほど。地獄蝶の目撃例からみて、炭鉱の問題は長引きそうっスね……。
霊関係の商品に手を回すのは、まだ時期尚早っスかね。基本は仕入れと、アタシ的には駄菓子売りを継続ってところでしょうか。夜一サン、どう思います?」
「こっちに話を振るでない。というかそんなくつろいでおる姿を見られたら、平子の奴にぶん殴られるぞ」
「恐いこと言わないでださいっスよ……。あっちは一応、商会所属ってことで得意分野を任せてるっスから。そういうの間違えないっスよ? アタシ」
「適材適所というか
「元々勧めたのは夜一サンじゃないっスか。アタシの予定だと、平子サンたちを食べさせて行けないって。
あとそれから、数年でこっちを引き上げるつもりなんで、そのおつもりで」
「これほど大きくしておいてあっさり畳むと言うか、お主」
「意外と大きくなって来たんで、むしろ
そもそも皆、年とりませんからね。流石に10年以上経つと不審がられてきますでしょう」
「抜かりないと言えば抜かりないの。……屋号は残すのか?」
「ハイ。もともとは商店一本に絞るつもりでしたしね」
流通ルートは残ってますし、後は土地でも転がして何とかなるでしょう! とけらけら笑う男に、男の懐で蹲っていた黒猫はあくびを一つ。そのまま先ほど同様に「人語を話しながら」、男に呆れていた。
「運営する才はあるくせに着眼点が悪いというか……。まあ喜助じゃし、求めるものでもないかの」
「中々酷い言い様っスねぇ」
「事実であろう。
……というかここの土地を最初に借りる時、儂を妻として紹介したこと未だに忘れておらんぞ? 全く、おしろいを勝手に塗りたくりおって」
「いやぁ、どうしても今の社会情勢って良い年した男と女がプラプラしてるなんて、体裁悪いじゃないっスか~。お金も土地も右から左に断られるくらいならって、夜一サンも納得してたはずでは?」
「じゃからといって寝室に連れ込まれて全身隅々まで手で塗りたくられるとか予想しておらんわッ!!? このドスケベめっ、もっと揉まんかいっ!」
「どう言う物言いっスか、それ……。いえそもそもアタシら的には今更じゃないっスか~。それにそういうことを言ってますけど、その後
「あー、昼間からかなり子供たちの教育に悪そうな話をしているところ申し訳ありませんけど。
浦原元隊長ならびに四楓院元隊長、お久しぶりです」
と。唐突に声をかけられ、しかも共に名指しされたせいもあり。浦原と呼ばれた下駄帽子の男も、四楓院と呼ばれただろう黒猫も、そろってその場でひっくり返って、店の入り口の方を見た。
ボロきれといった和装な剃髪の男、腰に刀をさしている彼の隣。浦原たちに声をかけて来た洋装の男は…………、その服は、シャツも含めて上下共に徹底的に真っ黒だった。髪に白いメッシュのようなものが入っているのがワンポイントになっているが、それ以外はむしろ病的なまでに黒い。
そしてその服装の印象を見て、浦原はやや頬を引きつらせた。
「まさかあなたが来るとか全く思ってませんでしたが……、ええと、何かご用事で? 虎徹サン」
「
本当に当たり前のように見通してきてますね、と何とも言えない顔をする浦原。警戒するように彼の前に立ちはだかる黒猫。もっともそんな彼女の前に「はい」とどこからか取り出した旬の魚。ぎょっとした顔でほぼ条件反射に飛び掛かる黒猫に、浦原は「ある意味一番恐ろしいっスよこれ、夜一サン」とため息をついた。
※ ※ ※
念願の十一番隊に配属されてからの、班目一角の日々はそれなりに忙しかった。
まず十一番隊のうち、現状3割強程度が事務屋となっている。常に事務作業をしているのが1割、戦場で記録を取りながら虚と戦うのが2割。主に第四席こと先代副隊長である虎徹志道が手を回した結果の人数比ではあるが、その結果として微妙に前線での人数が足りない。
本腰を入れて戦う面子が減っているため、あまり舐めてかかることが出来ないでいた。
これに関しては、隊長副隊長三席それぞれの意見として。
『ンなもん、全部適当に斬りゃ良いだろ』
『こてっちゃんが休むのと戦うの分けて交互にしろっていっても、みんな聞かないじゃ~ん!』
『あの
三者三様ではあるが、状況は何一つ問題としていないらしい。
ともあれ多忙ではあったのだが、異様に規格化された襲撃地点の予測、後処理たる書類関係の大半が既に終わっている状態ときているため、否応にでも隊長たる更木剣八がいまだ志道を重用するのかがよくわかる。否、重用といっても「テメェはテメェで仕事して、俺は俺で戦えば良いってだけだろ」というスタンスであるのだが、お互い悪感情を持っている訳でもないため完全に両者の仕事ぶりは噛み合っていると言えた。
故に日々闘争は常に自らを追い立て、それでいて妙に練られたスケジュールにより確実に休みや訓練の時間も確保されている十一番隊。三席・射場鉄左衛門などは「伝え聞く十一番隊が戻ってきたのォ……!」などと言う。
そんな中で、一角は悶々としながら霊術院を歩いていた。わざわざ実技指導にと呼ばれ、上司同伴で卒業校に訪問したような形である。そんな一角であるが、指導中もどこか身が入っていなかった。
「どうしたんだい? 一角。浮かない顔して……、志乃ちゃんからハゲって言われたことまだ気にしてるのかい?」
「別にハゲじゃねぇよ! 剃ってンだよ! てか知ってるだろ弓親お前っ!?
いやそんな話はどうでも良いンだよ。そうじゃなくってなァ……、何で俺の斬魄刀からあんなヘンなモンが出て来るようになっちまったかってよ?」
「ああ、あの『ドロドロした』やつだね。液体っぽくて使い道がないって言ってたけど、何か思いついたのかい?」
「思いついたらこんな顔しちゃいねぇよ」
「だろうね。君も中々難儀だ……」
同輩たる弓親は、ため息をつきながらモミアゲを払う。どこか女性的な仕草だが彼の容姿には合っており、道中すれちがう女子生徒の何人かが一瞬弓親を見て足を止める程度には、「それらしい」フェロモンが出ているのかもしれなかった。
もっともそのキラキラしたフェロモン的な何かに、一角はやや「うげぇ」と声を上げる。
「ちょっと! 何さその『うげぇ』とは一角!」
「いやだってお前、隊長に気持ち悪ぃって言われてたろそれ……」
「まあ仕方ないか。美しさ、芸術とはえてして理解者が少ないもの…………」
「うげぇ」
「だから!」
軽いコント時空であったが、ふと足を止める一角。どうしたんだい? と問われると、弓親を押して曲がり角に二人そろって隠れる。そこからそろり、と覗き見る二人は、見覚えのある男の姿を見た。
死神の死覇装として当然の黒以上に、本来他の死神ですら白であるべき襦袢どころか帯紐すら黒。流石に腕章は正気に戻ったのか白紐のままだが、そんな黒髪の男の前髪は一部だけ色が抜け白髪。いつも見る眼鏡に、十一番隊らしくない優男のような微笑み。 身長で言えば一角たちよりやや低いくらいの彼であるが、あらゆる意味で隊の中で逆らおうと考える者はほぼいない、特異点的な存在。
虎徹志道。現十一番隊、第四席の席官である。彼は生徒だろう女性の頭を撫でてから、激励していた。
「じゃあ頑張ってね。それから…………、君は霊子の吸収効率が異様に良いんだから、食事制限なんてしたら『生命の危機』ってことでむしろ周囲の霊子を強引に取り込んでもっと大きくなるんだから、ちゃんと食事はとりなさい」
「そ! そんなことないもん! ……あっ、ないですよ! もうぅ…………、絶対おかゆしか食べないんですからねっ!」
対面、そんな彼よりはるかに身長が高い……、下手すると自分たちよりもちょっと大きいかもしれない女子生徒と、彼が話している姿を見た。色の抜けた髪に、和装と言うのに胸も体格相応以上に存在感を発揮している。
彼の妻がいわば「ちんちくりん」、どう見積もっても
話しながらどこか甘えるような声を上げつつ、それでていきゃっきゃうふふと軽い喧嘩をしているように見える二人。最終的にはプリプリ肩を怒らせながらその場を後にする女性を見て、弓親と一角は顔を見合わせた。
「(浮気かよ。まァ、アレじゃ飽きるだろうが、よりによって生徒に手を出すたァなぁ)」
「(さぁ? 今でも仲良しじゃなかったっけ、四席のところって。もしかして年下趣味?)」
「言いぶりが完全に
で、別に浮気じゃないよそこの二人。事務屋へ転属希望かい?」
ひぃ!? と思わず声を上げてしまった一角たちのすぐ目の前に、瞬歩で距離を詰めた志道の姿。
特に何の脈絡もなく、当然のように存在を把握され、あまつさえ「一言一句」聞き逃している様子がないのを含めて、彼はある意味で恐怖の対象であった。
なにせ先輩隊士から伝え聞くそれは、いわく「千里眼」だの「地獄耳」だの、そんなあいまいな情報ばかり。 機嫌を損ねれば、前線でただ虚やら何やらを斬っていれば良い仕事から、七面倒くさい根回しと書類書きと調査とその他諸々の仕事が待ち受けている。
実際、そういった職権乱用をしない志道ではあるが、単純明快に直情思考が多い十一番隊であるからして、彼のその振る舞いと物言いとはあまり信用されていなかった。
されたら一番の恐怖であるという意味で、彼もまたよくからかいに使っているのが悪い。
「とりあえず『斬術と戦闘の実技指導』についてはお疲れ様ってところなんだけど、その風評被害は色々聞き逃せないからねぇ……。それこそ
ちらり、と自分の腰の斬魄刀を一瞥してから、そんなことを言う志道。
何故かカタカタ震える斬魄刀であったが、「は、ハイぃ!?」と慌て震える二人はそんなことには気付かない。
「じゃ、じゃあ、あの
「変わった表現するね、一角君。
というより、君と弓親君は会ってると思うよ? 一回」
「は?」
「えっ?」
「配属される前、一度、家内の実家に来てるだろう? その時に副隊長と一緒に遊んでいた」
そこまで言われて二人とも、おぼろげながらに記憶を掘り返す。確かあれは、副隊長たる草鹿やちるの斬魄刀を彼女専用に調整(デコレーションとも言う)しに行った際のことか。
実際あの後、反俗された後に本当に料金を割り引いて色やら留め具やらを誂えてくれたりもされているのだが、そういえばその時には、あの時の泣き虫な小娘はいなかったなと。
泣き虫な小娘。虎徹志道の娘で、確か色の抜けた髪に、何かあるとすぐぴーぴー煩いような――――。
「…………えっ、四席の娘っスか!? えっあの小娘!!?」
「ものすごく……、健康に育たれたんですね…………?」
「その反応は、実は結構予想通りだ」
ははは、と苦笑いする志道とて、娘がああいう形に育つとは思ってもみなかったろう。もし予想していた者がいるとすれば、彼の斬魄刀の本体たる彼女をおいて他におるまい。
虎徹勇音。志道の娘の一人であり、現在は霊術院で色々と学んでいる
とはいえ姿形はあからさまに両親に似ずといったところ。志道でさえ身長は
だが言われてみれば確かに、あのすぐ泣きわめきそうな雰囲気だったり、髪の色などは当時の雰囲気が残っていると言えなくもないか。後、志道が「ほら」と手で前髪をかきわけると、確かにその眉毛の太さや雰囲気も彼と一緒だったりする。黒い前髪が意外と長いので、目立たないため気づかれなかったようだ。
「霊的にも普通にすくすく育ってるから、十年まではいかないけど結構経ってるからねぇ。それなりには大きく育ったって感じだ。
ただ本人、女の子にしては背が高いの気にしてるから、あまり言わないであげてね? 泣かせたら――――」
「は、はい! 全然大丈夫っス!」
「一角が無神経なこと言いそうになったら僕が止めますので、はい!」
「って、てめぇどうい意味だ弓親ァ!」
お互い事務屋へと転属させられるのは意地でも嫌であるらしい。ガミガミと仲良く口喧嘩しつつも、若干思惑はそれぞれ違いそうではあったが、志道はそんな一角の肩を叩く。
「そんなに暇しているなら、ちょっと現世に行く用事があるんだけど、一角君付き合わないかい?」
「は? 何で俺が……」
「最近、修行に行き詰ってるみたいだし、気分転換、気分転換。
僕としてはもともと回道の成績良かったんだから、そっち伸ばすべきじゃないかって思うけど――――」
「ンな軟弱な発想してたら、十一番隊は務まらんでしょうが」
「それも君の選択だ。ただ、同伴は強制させてもらおう」
えぇ、と嫌がる一角相手に、ニコニコ微笑む志道。そして一角の背後で、何故か弓親が「お願いします」と言わんばかりに手を合わせ、会釈程度に目を閉じて頭を下げていた。
※ ※ ※
そのような流れで現世まで同伴して来た班目一角であったが。
志道が早々に「ここ、目的地だよ」と当たり前のように入っていた怪しげな店に、特大の爆弾がいた。
「浦原元隊長のことは
ん、なるほどなるほど…………、性格的にはどっちもどっちかな? でも倫理観がしっかりしてるのは、四楓院元隊長がずっとべったりだったせいかな? うん。
やはり女性の情念というか情愛は怖いというか……、ある意味でこれに負けるんだよなぁ。やっぱり色々認識が甘い……」
「お主一体どんな度胸してここまで顔を出せたんじゃ、志道」
「いえあの、平子サンから聞きましたけど、とてもアタシらに友好的な振る舞いをする立ち位置には思えないっスけど、ええ…………。当たり前のように「反死神」の認知結界もすりぬけてますしね? えぇ」
「ほら。これでも僕、一応は
「新十郎というか、刳屋敷剣八といい剣八ですの一言で何でもかんでも押し通すのやめぬかっ」
あまりの状況の混沌振りに、流石の一角も開いた口が塞がらなかった。
志道と話している二人。帽子を脱いだ甚平の男と、妙に身体に張り付いた黒い洋装な浅黒い肌の女。それぞれがそれぞれに、霊術院でも教師から教わった直近の大事件、その首謀格。魂魄大量消失事件、ならびにその背後にあったとされるより大きな事件。「朽木響河」が首魁とされたそれらの実働を担っていたとされる浦原喜助と、その協力者と目される四楓院夜一である。
現世へと追放となり、その途中で行方をくらまし現在、定期的に二番隊が捜索隊を派遣しているらしいが、それでも足取りが全くつかめていない。
にもかかわらず、当たり前のようにその居場所を割り出し。当たり前のように顔を出して、当たり前のように茶をしばいている。
二人からツッコミを受けつつも、のらりくらりと会話で躱す志道が、もはやアウトローというか、自分の尺度で推し量れる存在ではないと感じ始める一角であった。
卓袱台の隅でらしくないように、借りてきた猫のように小さくなる一角。そんな彼の前に「お茶が入りましたぞ!」と湯呑を置いてくる眼鏡の巨漢も、どこかで見覚えがあるような、ないような。
「で、ええと? ご用件とおっしゃられましたが」
「あー、先に断っておくと。今日の話は別にあっちと共有はしないんで、そこはご安心を」
「全く安心する要素のない空手形なんスけど……。その、『友人』なんスよね? ご友人というのならば……」
「まあ、友人同士といっても実際もっと複雑と言えば複雑ですかね? 実質、お互い敬意と親しみと同情を持ち合わせている潜在的敵というか」
「どんな友人関係っスか……」
「どんな友人関係じゃお主ら……」
「あっちも結構意地張るし、僕も積極的に情報共有するような関係ではないし。せいぜい答え合わせに聞きに来るくらいかな? 最近は。
とはいえあまり情報共有すると、
どうせ負けるのに違いはないのに、無駄なことをしてる相手なんだし」
「これまた、何と言ったら良いっスかねぇ……。アタシらが勝てる保証があるのを喜ぶべきか、そのためにどれだけの努力が求められるかすら共有されないことを恐れるべきか」
「というかここまであからさまに霊術院の教えにケンカ売っとる死神なぞ、初めて見るのぉ……」
若干呆然とする犯罪者二名(?)に、やはり志道は普段の振る舞いを崩さない。一角すら把握できないレベルで「現在進行形で」二人のことをつまびらかに知ることが出来る志道にとって彼ら二人は恐れるべき存在ではないのだ。少なくもその精神性において、彼の斬魄刀から太鼓判を押されている。
もっとも浦原の方は「止める奴いねーと、平然と倫理の壁飛び越えるけどな。とっとと夜一さんは薬盛って本気で襲ってガキこさえてやった方が、霊界のためだろ」などと志道の精神世界から言われているが、そのあたりは割愛。
「で、アタシらに何の用っスかね。ご意見は理解しましたし、伝え聞く話とも合致してるのでもろもろ大丈夫だとは思いますけど」
「さっき言った通りです。将来的には、今日僕らがここに来るまでに使ったような他業者をいくつか仲介して、尸魂界側から特定できないような形での闇の仲介業みたいなことをするつもりでしょう? あっち側の情報も集めたい以上。当然開発力を生かした、独自のアイテムとかも出しますよね。
だからその足掛かりってことで―――― 一つ、彼の斬魄刀を診てあげて欲しいんですよ」
「…………って、はァ!?」
志道から突然話をふられた一角は、その場で飛び上がる。三者、いや茶を入れた巨体の男含めて四者の視線がつきささり、らしくないくらい謎の緊張感が走る。弓親に言わせれば案外真面目な一角であるからして、予想外の所からぶん殴られたようなアウトロー具合に少し参っているのかもしれない。
志道から促され、訝し気に思いながらもおずおずと鬼灯丸を鞘ごと卓袱台に置く。
斬魄刀自体は器子を持っていないため、普通の人間には見えないのを良いことに全く隠さず、廃刀令違反もなんそのな恰好で来た一角。当たり前のように置かれた刀であるが、夜一のみ「警邏に霊力あったら一発で御用じゃぞ?」などとアドバイスされる。
「折れているわけでも無いですし、これを一体……?」
「少し、一角君が扱いやすいように解析してあげて欲しいんですよ。僕の裂読で結論も含めてすべて視えはするんですが、ものすごく感覚的な話過ぎて口頭で教えようがないというか。実践含めて、それっぽい道具作るのもお得意でしょう?」
「確かに得意っスけど、涅サンに頼めば良かったのでは?」
「タイプライターのことでその……」
「あぁ…………、アタシから引き継いだのが不満ってことっスかね。
それに、わざわざ連れて来てアタシに診せるということは、つまり『勝つのに必要』ってことっスかね」
「正確にはどっちでも大丈夫だと思いますけど、勝率は少しでも上げておきたいって言うのと――
「は、は……? って、隊長? 元隊長!?」
何かに気付いて飛び上がる一角。そういえばさっき
「よくその性格で
「とはいえ、
そのあたり、ウチのさきちゃん的には不満が残ってそうだけど」
「あまり考えたくもない規模の話っスねぇ……。取引先の裏金関係とか、暗記してるのが飛んじゃいそうっス」
ともあれ、その後数時間ほどかけ。一角は鬼灯丸に関する悩みを解消するに至る。
解放後、三節棍の中部、柄のあたりから出る謎の粘液。霊力を込めれば込める程、大量に飛び出るそれの感触があまりにもシモのブツのようで薄気味悪がっていた一角であったが。それに血止めの薬剤としての使い方を見出し、固めるための霊力の出し方、トレーニングの仕方、さらには志道から指摘された「固まった状態だと柄尻の方に溜まっていく」などなど、手ほどきを受けることになる。
これにより浦原と若干の面識や、彼への恩義が出来た一角。深夜、帰り道の断界にて「今日の事は、色々黙っときますよ……」と、若干釈然としていないものの、一定の納得をすることに決めた。
なお鬼灯丸解析の分の料金は、環(※尸魂界の通貨)での支払いが「まだ」出来ない関係上、現世でこれから大事件やら何やらが起きる場所、土地としてのねらい目の情報だったりといったもの。
当然だが、どう考えても志道が調べる暇も何もあったことのない話だったりする。おかげで噂に聞く能力の信憑性が増し、ますます一角は上司たる志道に苦手意識を植え付けられることとなった。
・鰤二次恒例?一角強化計画:
実は弓親から「悩んでるみたいなんで力になってあげてください」と事前相談があった。ただそれがなくとも、さきちゃんがやる気だった。
裂読『いやだって転生者的には何かしてやりたくなるだろ。卍解だって随分と雑だし。シドー、それっぽく言えば素直に言う通りにするからありがたいけど、罪悪感もあるな……』
鬼灯『相棒も、ちったぁ自分に向き合えばなぁ……』