ちょっとだけいつかの伏線回収フラグがあるかもしれない・・・
文字数いつもよりちょい多め注意。まあほら、ご年配は昔話すると長くなるってよく言われt(※手記はここで途切れている)
決して風流をたしなむという訳ではありませんが、最強、という言葉が物々しく風流に欠けているということくらいは理解しています。理解していますが、それをかつて渇望した身としては古い写真を見ているような、こそばゆい気持ちが湧きたちます。まるで初恋に浮かれた少女の日々、そのような懐かしさと身を焦がす想いが。
いえ、今でも霊的には若いことに違いはないのですが。当時から計算しても十は年を取っていません。生理は完全にコントロールしていることもあり、精神面でも日常生活に支障はなし。
そして、そう……、何を考えようとしていたのかと言えば、つまり強さという概念についてです。
力が強い。霊力が高い。特殊能力で無双できる。色々と尺度はあるでしょうが、私にとってはつまり「剣八」という在り方そのものが、それに近いのでしょう。
戦いこそすべてと、人生をささげるのであるならば。ありとあらゆる剣を折り、斬術を切り返し、一つ二つや百や千で済まない程に流派を絶滅させこの身一つにその深奥を獲得してきたのが、かつての八千流。柄にもなく……、いえ有頂天だったのでしょうが、当時自ら名乗ったのがその名前でした。
千年前の戦いの後、あまりに殺し過ぎて強者がいなくなったことに衝撃を受け回道を身に着け、強き者を生かすという発想にたどり着くまでにも中々時間がかかるほどに、闘争に取りつかれていた我が人生。ほとほと、風流とは程遠い、真紅の足跡だと思います。
いえその、俗に火輪使いと呼ばれる斬術師たちを絶滅させたのは、流石に総隊長から大目玉を喰らいましたが。大して堪えはしませんが、どうも斬術使いたちが現世へ逃げ延びてまた別な問題が云々ということになり、その後現世で「完全に根切りにする」ことになったのも含め、中々残念な出来事でした。
胴体だけになっても意外と粘って来たもので、出来心で回復させればもっともっと愉しめるのではと……ああいえ、そう言う話ではありませんね。
剣八。幾度斬り殺されようと、決して倒れず立ち続ける者。
我が身こそが決して折れぬ剣であるという、その在り方。
誰が私をそう呼んだのかは忘れましたが、なるほど良い呼び名だと感心したものです。
まあ、それを言った誰かは人のことを餓狼どころか地獄の悪鬼羅刹のように罵倒し怯えていたような気がしたので、ざんばらりん、と綺麗に斬り揃えて並べたような記憶があるような気がしますが、それはどうでも良い話でしょう。
まだまだ斬術の経験が浅い頃であれ、もはや周囲に敵なしと、それでも強敵を求め暴れ続けた私でしたが、その在り方を山本
そのような経緯もあり正式に死神となった私でしたが……、何の因果か現在は四番隊、護廷十三隊の医療班を任されています。速度においてかつて私を完膚なきまでに叩きのめし、その上で回復までさせた麒麟寺。彼に叩き込まれた回道や、医療にまつわるあれそれが生きているのだから、人生というのは何が起こるか分かりません。
故にこそ、新たな出会いを期待して。いずれ「私を殺した」
あの日あの時、私が「剣八として殺され」もはや八千流を名乗るような気分でもなくなって以降。十一番隊は、私の贖罪のためにある舞台だと認識しています。
本来なら最強であった存在を、わざわざその強みを押し殺してしまった私という存在にとっての。
だからこそ霊術院で、時折回道の講習を覗き見ながら活きが良い
特にここ最近の剣八は、修羅の道へ全く新人を導くことがありません。故に私が代理をするのも、なんら不思議はないことでしょう。嫌がられてますが、十一番隊としては怠慢極まりないので仕方ありません。
私が手塩にかけた
彼が唯一、新人の頃から引き抜いたのは
その二人とも頭角を現し、狩能隊士は後に消息を絶つことになるのですが……。いえ、この話は関係ありませんね。重要なのは、あの小僧、あら失礼、七代目が十一番隊を精鋭部隊として組んでいたということです。
隊を預かるは隊士の長。ゆえに立場として口出しするものではありませんが、それはそうとちょっと思う所はありました。ええ、私の趣味とは少しばかり違うといいますか。見繕うのも他の隊士に任せてましたし、それとてよほど
意図してかどうかはわかりませんが、十一番隊そのものが一種の
そんな理想が高い所に置かれてしまっては、あの子が面倒がって近寄らなくなってしまうではありませんか、と。あの子も、更木で見かけたあの子も斬り合ったからわかりますが、おおよそ根の気質は私と一緒でしょう。むしろ私より純粋に子供なので、生真面目であるがゆえに面倒事を嫌うような、そんな気もします。
このような悩み、誰に打ち明けることができるものでもありません。それ故にため息をつきながら廊下を歩いていた私でしたが。
道行く途中、すれ違った生徒。前髪くらいしか特徴のない眼鏡の
あまりに、聞き逃せなかったからです。
『卯ノ花隊長だ……って、何? さきちゃん――――へ? やちる? 初代剣八って何さ?
あっ』
『――――お待ちなさい?』
にっこりと微笑んで青年の手をとろうと左手を伸ばしましたが、少々不可解なことが起こりました。
動かした速度は間違いなく私が早く、先の先をとったのもまた私。一瞬の攻防を支配していたのは私であり、院生がそう簡単に受けられるような動きではありません。
にもかかわらず、明らかに遅い動きなのに「ぬるり」と、彼の手は私の掌握をすり抜けました。
まあ、直後に院内では禁止されている瞬歩による逃走を試みましたので、霊圧差でごり押しして行く先行く先に先回りし、逃げ場を失わせましたが。まだまだ当時の彼も単なる一生徒、本物の殺意を前にするのは初めてか、経験が浅かったのでしょう。
思わず転んでしまい、脚を擦ってしまったのはまだ可愛らしい部類でした。
『急いで意味もなく逃げるからそうなるのです。少しそのまま動かずに。――
斬魄刀を抜き、始解。わざわざ解号を言う必要はありませんが、意識的に形状を抑制するので、集中のためにやむなくです。
反り返った曲刀の肉雫唼、その刀身に沿うように変形した
その涎を、すりむいた青年の傷口に流し、簡単に傷を癒しました。肉雫唼の体には対象を回復させる効果があり、それは肉雫唼の血であれ肉であれ、涎であれ関係はありません。回道で直すよりも手早いので、今回はこちらを用いましたが、青年は特に忌避することも無く、むしろ肉雫唼を見て同情しているようでした。同情? 「こんな小さな形に押し込められて……」などと呟いていたので肉雫唼への言葉なのでしょうが、何故そんなことを言うのでしょうか、この青年は。
少しどころではなく興味が湧き、そのまま顔面を片手で鷲掴み、その辺の教室に連行しました。
戸を縛道で封鎖し、音も極力漏れないようにし準備は万端。
微笑みながら見れば、彼の表情は引きつり、汗もだらだらとみっともなく垂れ流しでした。あらあらメガネがずれて、何を怯えることがあるというのでしょうか。女性からかように微笑まれたのですから相応の返しというものがあるでしょうに。
『い、い、いえいえいえいえ、何の用事ですか? 卯ノ花さん。僕、これから図書塔に行くつもりなんですけど、その、十一番隊について座学課題が出たもので、ええ』
『何を言い訳したいのかは知りませんが、私を
――――いかにして私の氏素性を知ったのか、お教え願えますね?』
震える彼が何度も首肯するのを見て、私はますます笑みを深くしました。他意は有りません。ただ興味深い獲もの、あら失礼、観察対象に違いはないのですから。
ちなみに余談ですが、彼が手に持っていたレポートは「五代目・無刀剣八の戦績」についてのものだったようです。嗚呼懐かしきかな、あの
とはいえ彼、
私の
持ち主が霊圧の量に応じた霊的な結界を展開し、その周囲の情報を所作の一つ一つや物、記録にいたるまですみずみ調べ上げ短期的な未来予測すら可能にする。どう考えても「今の彼の霊圧」から出力される始解で持ち得て良い能力の範囲を超えています。
おそらくですが、彼の心を写し取っただろう浅打の段階で、何かしら不備があったと見るべきでしょう。例えば
それでいて零番隊が放置しているということもまた異常と言えば異常。何かしら
人などは、一皮剥けば、獣なり。
だからこそ圧をかけながらも、彼との会話を続けてみました。ええ、意外と話しやすい子だというのもありました。1を与えたら1を返してくれるような、ごくごくありふれた、当たり前に……、当たり前というにはコミュニケーションに違和感を抱かせませんね。
しかしそれが人徳からくるものかといえば、私は疑問がありました。人徳というには何か歪なものを感じていたのでしょう。だからこそ
……、この力、その気になれば瀞霊廷を含めた尸魂界の何かをひっくり返すことも容易だと、その危険性を問うてみれば。
『極力、僕は普通に生きたいだけなんです。……元々、さきちゃんみたいな斬魄刀が目覚めなかったら、普通に死神やってるつもりだったので。でも、目覚めたからと言って生き方をかえることもないです。
第一、やる意味がありませんから』
『野心がないと、受け取っても?』
『例えば貴族に取り入ったり乗っ取ったりしたところで、管理に責任持てませんから。謀反なんてされるのがオチですし、身の丈に合わないだけの力を振るえば反動も大きいんじゃないですか?』
『なるほど。つまり……、我が身可愛さということですね』
『そういう言い方は、どうなんでしょう……? うーん、でも両親や妹に申し訳ないですからね、それは。やっぱり、家族からの気持ちとか、もらったものは大事にしないと』
ごくごく穏当に、殊勝なことを言っているような吾妻志道。しかし長年の勘が私に告げました。我が身可愛さ、という点について彼は否定すれば良いのに、否定しなかったその事実こそが重要であると。
会話の中で、彼はごくごく自然体で私と話しています。もちろん怯えのような感情もありますが、それはそうとして私との会話には違和感を抱かせません。つまり話題の内容は、彼が普段から思っていることをそのまま話しているということに他ならない。
だからこそ、カマをかけました。
『時世はいつ何があるか読めたものではありません。時にそれは護廷十三隊が流魂街の魂魄を殺す事にもつながります。その程度のことは理解していますね? ……では、その時に家族が処理された後だと知らされたなら、あなたはどう動きますか?』
嫌な質問をしてきますね、と彼は表情がひきつりましたが。しかし、そのまま悩むことなくすぐさま、素直に答えました。
『辛くて悲しいし、やるせないと思いますけど……、その特別を胸に前へ向かうしかないんじゃないですかね。その状況で普通に生きるというのなら』
普通に生きる、という言葉がこれほど空虚に聞こえたことはありませんでした。自分が何を言っているのか、彼は理解しているのでしょうか? いえ、理解できないというより、もはや理解することが出来ない状態になってしまったというのが正しいのかもしれません。
常時開放型の斬魄刀により、未来予知めいた力を得てしまった彼は、その視野が一つの魂魄のそれではなくなっています。他人の気持ちがわかる、ではなく自分含めて全てが平等に並列に並んで、目的合理性「のみ」が先立つ状態となっている。であるならば、先ほどの返答の際に目的として存在したものは何であるか。
普通に生きる――――家族を殺された義憤よりも優先するべき目的がそれである。言い換えれば、必要があるなら家族を殺す事もいとわないということ。開始点となっている事情こそ異なれど、割り切り切り捨てることへの躊躇のなさに、少し感心もしました。良き外道の精神ぶりであると、笑みが深まりました。
その割り切りを何故もっとまともな道に生かすことが出来なかったか。私が言う事でもありませんが、ひとえに何かしらの出会いが悪かったのかもしれませんが……、少し調きょ、あら失礼、矯正すればかつての雀部長次郎のようになれたかもしれないと、思わせるものがありました。違いがあるとすれば……彼の差配する駒は、自分自身ではなく彼以外全域にわたることでしょうか。
次に彼を見たのは、彼が一番隊でその雀部長次郎の下で働いているのを見た時でした。思わずぎょっとしました。あれほど護廷十三隊の基本的な理念に真っ向から違反する院生ないし隊士もそうはいないでしょうに、そんな彼がよりにもよって十一番隊でもなく一番隊への配属をされているという事実に。
表面上の彼の性格的には間違ってもいないのでしょうが、雀部副隊長に聞けば仕事についてこんこんと真面目にこなしている姿勢が好ましいと聞きました。遠からず護廷隊の部隊単位での業務をすべて一人でこなす程に理解するだろうと、そう期待されていると。
彼の斬魄刀、その情報収集能力を甘く見ていたことを痛感させられました。いえ、当時よりも彼自身の霊格霊位が上昇していることも理解していましたが、その上でまさか学習効果にも影響が出るとはついぞ思ってもみませんでした。
主席こそ五番隊に入った藍染惣右介に譲りはしたようですが、彼自身の成績も決して低いという訳ではありませんでした。むしろ私の視点から見れば、確実に卒業してまあまあ良い印象を与えられる成績を意図的に演出しているようにすら見えて、妙な薄ら寒さすら覚えました。
まあ一番薄ら寒かったのは、卒業した彼の名前が虎徹志道になっていたことですが。
霊術院でかなり突飛な揉め事があったと聞きましたが、まさか彼がその中心にいたとは……。
いえむしろ、そういった事件がありながらも、しっかり卒業して一番隊なんて厳格な場所に入り込んでいることが、彼の異常性の証左といえるでしょう。
しかもそのことに、誰一人として違和感を抱いていない。
あの山本ノ字斎ですら、新婚の部下を労わるような雰囲気でいるという事実が、異様さを際立たせています。誰一人として正気を失っていないというのに、状況はことごとく狂気にまみれていくこの様――――。
なるほど、これです。今十一番隊に必要な「狂気」は、これでしょう。「八代目」刳屋敷剣八が「七代目」犬崎剣八を殺して以降、鳴りを潜めていた餓狼としての気質を蘇らせる劇薬。涙ながらに
故にこそ、護廷十三隊の部隊としてより際立って成り立っているのが、今の十一番隊ですが――
目指すならばせめて愚連隊であり特攻隊でありなさいと。口にすればするほど、刳屋敷新十郎は何とも言えない顔をしていましたが。外側からどうにもできないならば、内側から変えるべきでしょう。何、あの子はまだまだ霊的な経験不足。私からの
そう決心した時点で、丁度十一番隊の副隊長が亡くなった時期と重なり――――私は虎徹十席を、そのまま刳屋敷剣八に推挙しました。
そして後日。いきなり副隊長は無理だったようで、まずは十一番隊の第七席からとなったようですが。
『いくら何でも無茶振りが過ぎませんかね、
あの頃から、彼は私の事をそう呼ぶようになりました。
今だからこそ、思い返してみれば…………、もしやあの時点で、自分が九代目剣八に就くことを予見してのけていたのでしょうか。それでいて、今の更木隊が私の「概ね意図した」それになっているのは、何とも皮肉なことです。時間こそかかりましたが、彼は私のお願いを果たしてくれたのですか。
だからこそ――――――――。
「早く貴方も
個人的な好悪とは別な感情として。そう思ってしまう私の
※ ※ ※
新人隊士を連れて救護の実地演習にいく、一連の流れ。未だ学生気分が抜けない隊士も、ことこの場の緊急性と重要性を肌と匂いで理解していきます。洗礼というには生温いものですが、筋の良し悪しとタイプを見極めるのにはうってつけ。吐き気に負ける子たちを見るのも、慣れたものです。
さて。個人的な注目株は、虎徹志道の娘である虎徹勇音。三番目か四番目の子供だったと思いますが、ただただ異様に背丈が大きい。それに伴い身体も華奢な訳はなく、体格に見合っただけの腕力もあるでしょうに、性格はどうやら母親に似ているようです。以前、虎徹隊士の夫婦と遭遇した際、私を見た彼の妻が妙な叫び声を上げて彼の背後に回り抱き着いていたのを覚えています。
あら可愛らしい、と。笑みが深まり、なるほどこれをあなたは守りたいのかと、別な興味も湧きましたが……、いえ今思い浮かべるには、少々物騒すぎですね。
そんな彼女ですが、しかしそこは私の見立て通り。嫌々ながらも吐くことはせず、律義に他の先輩隊士から、傷の状況など細かい話を聞いていますね。そのまま知識にしてしまおうというよりも。沢山の状態を見て、それに対する見解を聞き、繰り返すことで自分の見立ての精度を上げようというのでしょう。
生真面目と言うより、健気に見えます。そんな隊士を見ているのは、まるで居もしない自分の子を見るような感覚がして笑みが深まりますね。……朽木銀嶺元隊長にでも聞かれれば「
そんな時、意外な霊圧が私に迫ってきました。意外すぎて動くことも出来ず、声をかけられた際に素で驚いてしまったほど。
「よぉ、調子はどうだ? あんた」
「――――――――これは、更木隊長。如何なさいました? 何か用事でも?」
「別にねぇよ。何かなきゃ話しかけちゃいけねぇって訳でもねぇだろ」
ニヤリ、と笑い私を見下ろす巨漢。かつては胸に抱きしめられるほどに小さかった
更木剣八。現十一番隊隊長にして、私が閉ざしてしまった真なる最強、真なる「剣八」。
罪深きは私の弱さであったというのに、彼はそれでも私を求め、護廷十三隊へとやってきたのでした。
とはいえ、以前私は彼を失望させています。
『剣を取らねぇあんたとは、
てっきりはるか高みから自分が来るのを待っていると思っていた私が、実際は全く別なことをしていたのですから、その失望も当然と言えば当然でしょう。とはいえ彼にとって、私は唯一斬り合いが成立した遊び相手でもあります。このような関係が、すんなりと綺麗にまとまる訳もありません。
ぎくしゃく……、外からどう見えているかわかりませんが、そう、ぎくしゃくと。私と彼との歯車が、それぞれ微妙にかみ合わず。虎徹隊士が何か言いたそうにしていましたが、空気を読んだのか何も言わず。今日までそのトゲのような何かは、私たちの間に刺さったまま。
だというのに、これは珍しい。まさか彼の方から私に話しかけて来る日があるとは。
以前、隊主会の際に「ありゃ何を話してんだ?」とかなり本気で内容を理解しないまま聞かれたことはありましたが、そのような緊急のことではありません。
世間話でもするように声をかけられたことが、あまりにも意外だったのでした。
彼はちらりと新人たちを見て、その中の虎徹勇音を見やりました。
「あれか、志道の娘は」
「あら、知っているのですか?」
「隊長だからな」
何故かそこは少し胸を張って、しかし可愛らしいと感じるには中々むくつけき胸板が私の前にそびえたっています。
「ま、様子見に来たって訳でもねぇけどな。本当、たまたま見かけたから声をかけたってだけだ」
「…………、そうですか」
何と雑な、と口にしかかり、笑顔で取り繕いましたが。本当に理由も話題もなく話しかけてきたようです。何でしょう、そこはかとなく幼児のお使いを思い出します。そんな私の失礼な考えを知らず、更木剣八は私に背を向けます。
「じゃあ、な。……何かあったら、うちの連中も頼む」
「ええ、よしなに」
それだけの会話。棘を忘れ、会話らしい会話が一応は成立していることに内心、驚いています。会話自体に違和感がないこと含めて、あの子の振る舞いの変化もあるのかもしれませんが……。らしくない、というと、私の立場で思うことは一つ。
「……この間の意趣返しですか? 虎徹隊士。今回は何を企んでいるのやら」
おそらくは虎徹志道の差配なのでしょうが……。更木剣八の背中で「またね~、れっちゃんママ~!」などとニコニコ笑いながら手を振る草鹿副隊長の姿に、何だか鳩尾を抉られるような、名状しがたい生ぬるい感覚が込み上げました。
・肉雫唼の解号:
古めの斬魄刀は全体的に長い印象があったので、本作ではこんな形になります。「生」について触れていないのがポイント。
・咲黄泉(さきよみ):
裂読の当て字。裂読自体のモチーフの一つが彼岸花なので、そういうニュアンスも含めてる。
・知らない剣八がいっぱい……?:
当然本作での話ですのであしからずです汗。四代目の無刀ちゃんはちょっとだけ「メゾン・ド・チャンイチは事故物件」にも出てる。