地に立ちて_見上げる天に_藍見えず   作:黒兎可

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ちょっと長すぎたんで分割します
 
独自解釈注意


人を求め、誰かを求め(前)

 

 

 

 

 

「困ったときは、諸悪の根源の名前を出すと良いんじゃないかな? 惣右介とか藍染隊長とか護廷十三隊一眼鏡の似合う色男とか」

「そうは言っても駄目だろ虎徹。本人、今現世行ってていねーんだから話にならねェよ。藍染隊長だって忙しかったんだろ? じゃあ仕方ないじゃねェか」

「そうは言っても僕の仕事量って変わらないからね、志波(しば)副隊長。とりあえず後は、更木隊長がハンコ押せば許認可とか色々降りる様に仕事は調整してきたし……。今日の事は明日にでも報告書まとめないとなぁ、ハァ」

 

「ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ! ソー・クラァイ! 暗い(クライ)(クライ)喰らい(クライ)! 悲しい悲しいコトを言わないで欲しい…………、もっと楽しく行こうじゃないKa!」

 

 疲れた様子の虎徹志道と、同様に疲れた様子の青年隊士。二人の前方で異様に高いテンションで笑うのは、剃り込みが特徴的な色付眼鏡(サングラス)をした、男であった。肌は浅黒く、しかし異国人という風体でも風情でもない。どちらかといえば、太陽のように高温に常日頃から焼かれているのを伺わせる。そんな男が「燕尾服のジャケットを思わせる」白い羽織りを羽織っているのはアンバランス極まりなく、その背に大きな黒いギターケースを肩に背負ってるのもアンバランス極まりない。

 もっともそれらの恰好が、決してオシャレから来ているものでないことを、志道は知っているのだが。

 腰には5振の刀。左3つ右2と、死神として見るにしては異様極まりない風体である。

 

 そんな男に、青年の死神は腕を組んでつっかかる。

 

「つーか俺、()()()()に会うの何年ぶりだ? まだ護廷隊に入っちゃいなかったろ、あの頃。久々すぎるわ恰好全然ちげェわで、一瞬誰かわかんなかったぜ」

「ボニーちゃん乗り回してた(ダブリュ)(エー)(アール)(ユー)(ジー)(エー)(ケー)(ア-イ)・悪ガキだったNe、海燕チャン。ちゃん僕もいやぁ丸くなったなぁって涙流してるYo」

「いや別に、言うほど悪ガキって訳でも……、訳でも……?」

「藤丸君たち呼んできたいね」

「止めろォ!? 絶対なんか変な感じで苦笑いされるだろうがッ!」

 

 思わず大慌てで止めに掛かる海燕と呼ばれた青年であったが、そんな彼に苦笑いを浮かべる志道と「Ha~Ha~Ha~!」などと笑う()()

 流魂街を歩く三人のうち、前方でげらげらしている彼こそ、全ての斬魄刀を打ったといえる刀の神、護廷十三隊の上位組織である、王属特務零番隊・第三官「西方神将」と長い肩書を持つ男である。

 

 零番隊。主に霊王を守護する存在。死神が霊界の調停者を名乗るのならば、いわば現世・虚圏・尸魂界(三千世界)の守護を担当するのが彼等と言えよう。

 

 本来であるならば尸魂界の上層にあるとされる霊王宮に居る男であるが、何故彼が流魂街に繰り出しているのかと言えば、話は数日前に遡る。

 

『零番隊がこちらに降りて来て、何やら調査をする任務があると聞いてね。本来なら僕もその()()()()()()()必要があるのだろうが、生憎西梢局(せいしょうきょく)の方の調査依頼に立ち会わなければならなくなった。まことに口惜しいが、どうしても外せない案件らしくてね。僕ではなく先方からの依頼に対して、総隊長から指名されてしまったのだ。

 だから、王属特務の案件は君を推薦しておいたよ。探し物は大得意なのだから、大いに役立つと良いだろう』

『おおおお、をのれ藍染惣右介諸悪の根源……!』

『ふふっ』

 

 志道の非難の追及をひらひらと躱す藍染惣右介の憎らしい程の微笑みであった。

 なお藍染も藍染で、その派遣される依頼というのが王属特務・すなわち零番隊の案件に直接関係するものであるらしい。外せないといったのも事実であるにはあるのだろう。もっとも本人はその相手を直に見たかったのも事実なので、それが出来ない腹いせに志道を巻き込んで一緒に苦労しようという、ちょっと高度な絡みであった。

 つまりはいつもの無茶振りの応酬の一環である。

 また、志道が「霊王宮はさきちゃんあんまり視えないみたいだからなぁ」と嫌がっていたのも、藍染なりに薦めた理由の一つであるかもしれなかったが。

 

 そんな運びで「天空より落ちて来た」天柱輦を待ち受ける山本元柳斎重國を始めとした数名の隊長格。八番隊隊長の京楽は被った傘を持ちあげて「割と短期間に何度か見てるねぇ」と苦笑い。十三番隊隊長の浮竹は、隣に引き連れていた海燕と雑談しながら。そして四番隊隊長の卯ノ花は、何故か全く関係ない隊番の志道の背後に笑顔で立ち、盛大に彼を焦らせていた。

 そして中から現れたのが、件の「刀神」こと二枚屋(にまいや)王悦(おうえつ)であった。

 

Ha(ハァ)~~~~~~~~()Ho(ホゥ)! 海燕チャン、お~、ひ~、さ~!」

 

 相変わらず軽いねぇ、という京楽の乾いた笑いはともかく。軽く打ち合わせをした後、ギターケース1つに斬魄刀を5本持って来たかの男は、燕尾服風の白い隊主羽織りだろうそれの首元を調整し、志道と海燕を引き連れて、すぐさま流魂街へと繰り出していった。

 

「本当は千手丸もマユリチャンを揶揄うのについてきたかったみたいだけど、和尚から止められちゃってNe!」

「そりゃ止められるでしょ、というかアンタがこっちに降りて来るのもどうかって話なんだし……」

Non(ノン)Non(ノン)Non(ノン)。千手丸も昔は結構ヤンチャしてたし~? ()()()研のマユリチャンと今顔合わせるとロクなことにならないって言われてSa?

 いやそんなことより、志道チャンと海燕チャンって普通に知り合いだったのKai?」

 

 そう言われて、お互い顔を見合わせる海燕と志道。

 

「あー何っつーか……、人生の先達?」

「浮竹隊長からの紹介で面識を持って、夫婦関係でたまに相談受けたりってくらいですかね? あと、瀞霊廷通信でインタビューとか対談したりしましたけど。いえ、アレは東仙隊長の意向がかなり出てる感じだから止めてもらいたいのだけど」

 

 それに大体家庭環境それぞれ違うから普通に参考にはならないと思うのだけれど、と遠い目をする志道。腰の斬魄刀がカタカタ震えているのを左手で抑える黒づくめの彼に、刀神は「ラブ()ウォー?」と海燕からしたらよくわからない反応であった。

 

 志波(しば)海燕(かいえん)。流魂街の出ながら才気あふれる若い死神であり、一応は没落貴族の跡取りでもある。その後一時、平子真子が隊長だった時代の五番隊に在籍した後すぐに十三番隊へと移り、めきめき頭角を現して現在は副隊長である。志道とはそのあたりで軽い面識こそあったものの、剣八交代劇や彼の降格などで紆余曲折あり、しっかり顔を合わせたのは件のインタビューの前後、ここ数年だったりした。

 

「で、さっきからこの虎徹に調べさせてっけど、一体何探してンだ? 俺が呼ばれたのは、多分帰りにすぐ『送り返せる』ようにするためなんだろーけど」

Oh(オゥ)? 全然聞いていないのKai?」

「僕も詳しくは言われませんでしたね」

 

 志道に関しては道中で色々やりながら、斬魄刀経由で真実に至れるだろうが。それはそうと、二人に対して具体的な案件の詳細は伝えられていなかった。曰く、王属特務が出てくるようなイレギュラー。曰く、東と西の霊的バランスに関わる問題である。

 そして更に曰く――――関わる死神は零番隊から厳選された死神であると。

 

 そう言う意味では海燕からすれば、自身はともかく志道がこの場に呼ばれていることが意外であった。

 しかし、それに深く追求することはしない。それをせずとも個人個人、何かしら人生でいらぬ気苦労を背負うものだ。自分と彼との付き合いでそれが測れる程でもないのだろうし、()()()()()()()()()()()()彼にあえて踏み込むのも悪いと言う、ごくごく出来た大人の感覚だった。

 とはいえ当然、零番隊筆頭と普通に面識がある志道からすれば、あらゆる意味で指名される理由に心当たり以外なかったりするのだが。

 

 そんな二人の微妙な機微を察しつつも、あえて触れずに刀神は続ける。もっとも、こちらも思慮は出来た大人のそれであったがテンションだけは子供じみていた。

 

「Perfect! 簡単に言うと西梢局(ウェストブランチ)から面倒な(ホロウ)がやってきてるのSa。そいつをどうにかしちゃうのが今回のちゃん僕のミッション!」

「虚? いや、でもあっちの奴って確か――――」

「So、So、だーかーらー、ソゥいうことSa! 『異なる法則で定義された』霊界での魂魄の行き来自体はまァ無い訳でもないとしてもNe。何年か前に『特大の』ブツがいくつかこっちに来て、その調整にちゃん僕もちょっと仕事してたくらいだし。

 ただそれでも、流石にこっちで最上級大虚(ヴァストローデ)級の虚がハッピーバースデイ! しちゃうのは回避したいってところなのSa」

「――――ッ!?」

「細かい情報は教えられないから、そこは勘弁してくれYo? だけどその虚は間違いなく特殊で、だからちゃん僕が派遣されてるってことだけは、頭に入れておきNa!」

 

 驚愕に顔をゆがめる海燕と、特に表情を変えない志道。

 ともあれ事態の重さは十分に理解できたろう海燕。それと同時に、少なくとも噂に聞く「調べ物に特化した」志道の能力が零番隊からすら信頼されているという事実に驚き「お前スゲーなァ!」と肩をバシバシ叩いたりしていた。畏怖よりも素直な称賛の感情に、志道は少し「止めてって……」と珍しく照れた様子である。

 

「惣右介とかみたいに含みがないから、ちょっとリアクションに困るなぁ……」

「素直に受け取っとけよ。これでも五大貴族の当主からの称賛だぜ?」

「軽いなぁ……。そこが良い所なんだろうけど」

 

 ある意味でいたいけな少女の心をかき乱しそうなくらいに、などとボソッと言う志道のつぶやきに、海燕は「ん?」と聞き返す。小声だったから聞こえなかったのだろうそれに、志道は「大したことじゃないよ」と軽く返した。

 

「ま、そういうことなら是非とも協力するぜ! 流魂街には妹や弟もいるし、それだけじゃねェ。付き合いがある連中も多いし、ガキ共もいっぱい居るんだ。

 守ってやらなきゃ、死神が廃るってモンだ!」

「気持ち、は有難いけど今回、戦闘で海燕チャンはそんなに出番はないZe?

 血筋は悪くないけど~~~~? 残念ながらまだ霊威が足りてないのSa! もう一皮ムケれば、ビンビンに問題なくなるけどNe!」

「ん? 虎徹はどうだってんだよ」

「そっちは足りてるけど、ちゃんボクがやりたいことがわかってるなら()()()()()()()()ってのは理解してるはずだよNe?」

「ええ、問題なく」

 

 だったら本当何で俺呼ばれてるンだ? と疑問符を浮かべる海燕と、この先の展開が一通り読めている志道に。

 ちらりとサングラスをずらしながら、鋭い視線を向けてニヤリと笑う刀神・二枚屋は。

 

「処置と処理はちゃん僕がやるさ――――職人の仕事に手戻りは無ぇ」

 

 そこだけ込められた、軽薄さを無くした妙な迫力。言葉に裏打ちされた彼の何か、おそらくは背後にある圧倒的な()()を前に、海燕は何も言えなかった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 刀神が志道に探らせていたのは、とあるものの霊圧。獣の爪の破片のようなものを彼に見せ「これと同等の霊格から放たれている零絡あるいはその痕跡を辿ってくれないKai?」というものであった。

 当たり前のように裂読の情報測定を用いて、歩いていく志道。

 

 なお最初に爪を見せられた時点で「潤林安ですね」と断言した志道であったが、座標の追跡は意外と難航していた。行ったり来たりを繰り返し、厳密に場所を特定することが出来ていない。本当にコイツ頼りになるのか? と若干失礼な目を向けられ始めていた志道だったが。とある呉服店の前で足を止め、視線を店内に向けた。

 丁度そのタイミングで、店から出て来た人物が二人。まるで姉と妹のような雰囲気を漂わせている二人だ。片方はセミロングの黒髪に、やや跳ねた癖のある妹のような少女。もう片方はロングヘアの黒髪に、朱色の口紅を塗っている姉のような女性。どちらも容姿は美しい部類に入り、流魂街の庶民区画だというのに妙な品を感じる。

 

「いましたね。……すごいね、さきちゃんでも全然わからないのか」

「あ? 何言ってンだ虎徹?」

「刀神、唇を塗った方です」

 

 突然の志道の言動に困惑した海燕であったが、刀神の方はと言えば特に違和感もなくサングラスのつるを押さえて位置を直してから、二人の女を見た。

 

()()()()Ze?」

「まあ、承知しましたけど――――――――卍解・無間(むけん)裂詠(さきよみ)

 

「って、おおッ!?」

 志道が斬魄刀を抜いた後、突如その場一帯が暗闇に包まれた。しかも気のせいでなければ、周囲から何かが自分たちを見ているような、薄気味の悪い感覚を覚える海燕。思わず生娘のように自分の抱え「何いきなり卍解してンだよ!? 意味わかんねェぞ!」とキレる。そんな海燕に苦笑いを浮かべる志道と、彼等を背に「共にこの空間に囚われた」少女たちの前に、二枚屋は立った。

 

「あ、あの…………、死神様、何か? 雪奈(ゆきな)さんに何かありますでしょうか、ええと、粗相でも?」

緋真(ひさな)さん、あ、危ないですよ? で、でも私も危ないですね、ええと……」

 

 なまじ死神を前に、それ以前に訳の分からない空間に囚われたにしては、意外と肝が据わっている二人であった。お互いがお互い、目の前の死神から庇い合うように、それでいて及び腰に話し続けている。そんな彼女たちのうちの姉のような方にサングラス越しに視線を向けた二枚屋は、突き付ける。

 

 

 

「ユーは…………、意志(ドク)鼓動(グランピィ)接吻(ハッピィ)毒杯(スリーピィ)美貌(バシュフォ)瀉血(スニーズィ)可能性(ドピー)、さてどれかNa?」

「――――ッ」 

 

 

 

 突然放たれた、一見訳の分からない名詞の投げかけ。それに対し、妹のような少女が困惑すると同時に、姉のような女性は驚愕と殺意を目に宿らせた。

 きゃあ、と突き飛ばされる少女。前に投げ出す訳でなく、自分の後ろに庇うように投げたのは、彼女を庇護対象と考えているからか。

 

 そんな姉のような女性、雪奈と呼ばれた彼女は腕を振り――――それと同時に志道たちの位置まで瞬歩で後退する刀神。

 

「デカいの来るZe、構えな!」

「は、はァ? いや全くもって話が読めねぇンだが、どうしろって!」

「とりあえず始解しておけば良いと思うよ。5秒くらいは時間稼げるから」

 

 訳が分からないなりに、海燕は志道の言葉に従う。「水天逆巻け、捩花ァ!」と斬魄刀を抜いて解放した直後、それは起こった。

 

 女性の目の前に「巨大な」「氷でできた」「竜の頭」のようなものが出現し。その口が開き――――青白い虚閃(セロ)を放つ。

 いきなりの攻撃に絶叫を上げながらも、瞬歩で散る三者。

 

「凍結効果ある虚閃って、やっぱり根本的に何か違いません!? 刀神!」

「細かいことは和尚に聞いてくれYo!? 抜く暇も斬る暇もあくびする暇もあったもんじゃないZe!」

「いやアンタだけは絶対余裕だろ、何だその背負ってるギターケース!? 全然傷一つついてないじゃねェか!?」

 

 海燕の指摘する通り、刀神は背負ったケースを重いだろうに投げ出しもせず、軽々と持ち運んでいる。遊びで持ってきているようにしか見えないが故に、真面目にやれ! という感覚が勝る海燕。もっとも志道は何一つ指摘しないため、それはそれで意味不明であった。

 

「ハァ~~~~、ちゃん僕いじめは良くないと思うんだけどNe?

 まァ、まぁ、ま()? 志道チャンなら扱い知ってるから持ってても大丈夫だと思うし、頼んだYo!」

 

 そして言いながらギターケースを放り出し、刀神は空中で斬魄刀を一つ抜き。

 自らに再び竜の顎が向いているのを視認しながら、解号を唱えた。

 

 

 

「――――焼き入れNa、火鑽(ひきり)

 

 

 

 抜刀術か、あるいは居合か。ともあれ抜き放たれた刃は、その剣の軌跡に沿って「鞘から炎を放射した」。

 

 龍の顎から放たれる虚閃は、空中で()()()()()刀神より放たれる炎と激突。

 同時に接触点から漂う冷気と熱とが一気に爆発し、暗闇の世界全域を覆うよう大きく強く広がった。

 

 

 

 

 

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