地に立ちて_見上げる天に_藍見えず   作:黒兎可

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お久しぶりです!

今回も情報量多めなので、読みづらかったりしたら後で修正入るかもです


あえて境界を踏み越えないが故に

 

 

 

 

 

 流魂街東地区某所「辰教(しんきょう)」。瀞霊廷より離れていくにしたがって治安が(すさ)む流魂街であるが、そういった治安の悪い中にしてはそれなりに()()()住居が並ぶ区画を抜け、足を進めていくとその大屋敷は見えてくる。

 驚くほど白く広い漆喰塗りの壁。あからさまに周囲とは隔絶された風情にある大屋敷は、生い茂る木々の風情も含めて、いっそ貴族の邸宅のようにも見えた。

 

「西地区の戌吊程ではないが、こちらも()()()()()地域だと聞いていたが……、それでいてこの景観を維持できるのか」

「子供の頃は『とにかく広い屋敷』って印象しかなかったけど、こうして改めて見るとやっぱり浮いてるなあ。……高台にあるから、目立つのは当然と言えば当然なんだけど」

 

 閉ざされた正門は外界の存在一切と内側を隔絶しており、なおその空気すら拒絶してるようでもある。

 とはいえ守衛のように立つ死神らしき死覇装の二名は、来客として来た二人についても反応せず、微動だにせず立ったまま。「馬車用の大門」の両側に立つ二人に会釈だけして、虎徹志道は呼び鈴を鳴らした。

 慣れた様子で、そのまま人が来るのを待たずに守衛のすぐ後ろの扉に手をかける志道。かちゃり、と平然と戸が横に引け、当然のような顔をして藍染惣右介を手招いた。

 

「……待たないのかい?」

「ん、いや、待つとむしろ面倒なことになりそうな気配がするからね。

 とりあえず入ろうか。念のため斬魄刀はいつでも抜刀できるようにしておくのを勧める」

「一体何が起こると言うのだ、志道…………」

 

 本日の二人は、当たり前のように死覇装姿。斬魄刀の携行も当然のように行っており、双方揃って何かしらの任務のためにこの場に赴いていることを伺わせる。

 門を過ぎた先の庭も、明らかに広い。背の高い木々に囲まれ、ちょっとした林に迷い込んだような錯覚をさせる路。それをじっと歩いていくと、途中何度か分岐点。特に何かを確認するまでも無く、あっさりと何度か左右に曲がり、その迷路のような路を抜けた。

 

 眼前に広がる武家屋敷は、やはり周囲の流魂街の風情にはそぐわないしっかりとした作りであった。それだけに、これだけの土地を有するだけの歴史と、まるで何かしらの立場を表明するためのような()()()()()

 

 そんな家を見て、志道は珍しくその場でしゃがみ込み、大きく息を吐いた。

 

「入りたくないなあ、やっぱり……」

「ここまで来てそれを言うのかい?」

「いや、今ならまだ『怒られるけど』引き返せるくらいだから。今からでも遅くないし、僕だけ帰るって言うのは駄目かな?」

「珍しいね。君がそこまで嫌がるというのも」

「珍しいって言っても普通の範疇だよ。理由としては、まあ、あんまり言いたくないんだけど……」

 

 基本的に内心の全てがどうかはともかく。お互いある程度の仲の良さを保っている二人であるからこそ、普段と様子が違う相手に対する反応もまた軽いものである。「伊達メガネの位置を調整し」、藍染惣右介は不思議そうに志道を見下ろしていた。

 それなりに付き合いが長い藍染は、志道の反応から理由について推測をするのだが……。彼がこういう反応を取る場合は、割合家族関係のことが多いというのをふと思い出した(主に藍染が()()()()()彼の妻の、主に夜の事情に関することが多い)。

 

 

 

()()────」

 

「──深剃(ふかぞ)れ、神剃(かみそり)一番(いちばん)!」

「──切剃(きりそ)れ、神剃(かみそり)二号(にごう)!!」

「──整剃(そろえぞ)れ、神剃(かみそり)三式(さんしき)!!!」

「──削剃(けずりぞ)れ、神剃(かみそり)四方(しほう)!!!!」 

 

 

 だからこそどう会話を続けようか、としたところで。突如として霊圧も気配も何一つ感じさせなかった四人の女中が、それぞれ手のひらサイズの刃を振り上げて志道相手に襲い掛かろうとしているのを、唖然として見ていた。

 否、実際に襲い掛かってはいたのだが、彼の一声で背部に出現した絡繰腕(マニュピレーター)のような、その先端に取り付けられている刃でそれぞれ四人分往なされて事なきを得ていた、というのが正しい。

 

 あっさりと受けた志道は、和装の割烹着姿の彼女たちを軽く払いのけて立ち上がり、両手をぱんぱんと叩いた。すぐさま当たり前のように手に持っていた刃物(剃刀?)をそろって反対の袖に隠すと、彼女たちは皆一列に並ぶ。その顔が全くもって同様のつくりをしていることから、彼女たちがおそらく四つ子なのだろうことが一目で察せられた。

 

「「「「お帰りなさいませ、志道様」」」」

 

 なお、声についてはそれぞれ微妙に異なっていたりするので、判別はつきそうだ。

 

「うん、ただいま。…………今回()気が立ってるなあ」

「せっかくここまで来たのに逃げようとする志道様に問題があるかと」「ずっと帰ってきてなかったんですから、寂しがってますよ?」「……」「昨日はお楽しみだったようですね、ケッ」

「うん、お楽しみだったのは僕というより錫音ちゃんだから……。いや、まあ、否定はしないとして、その情報を無駄に知らせるのは止めようね? いつも言ってるけど不機嫌になられても困るからね。

 刀、抜いたままで良い? 良いのか、そっか。うーん……」

 

 自らの感知に引っ掛からずに出現した四つ子に対する警戒をしながらも、やはりどこまでも慣れた様子の志道に対してコメントができない藍染惣右介。志道がため息をつくと、そんな彼の両腕を四つ子の内の二人が腕を組む形で拘束し、うち一人が先行して屋敷の戸を開け、もう一人が藍染の前に来て「こちらになります」と案内する形になった。

 

 そして通された屋敷の奥には、二人の女性。

 黒髪の……四つ子と同じ顔をした、しかし無表情な彼女たちと異なりどこか穏やかな表情の女中と。

 

 

 

「──破道の三十一・赤火砲(しゃっかほう)

追花六(おいはなろく)────」

 

 

 

 もう片方の少女からの突然の鬼道に、全く事情が呑み込めず流石に驚く藍染惣右介と、特に苦も無く払う虎徹志道。背部の絡繰り腕で薙ぎ、その軌跡を手元の斬魄刀でなぞるように斬る。一連の動作で、当たり前のように鬼道は霧散し。

 

「………………お久しぶりですね、義兄(にぃ)さん。相変わらずご健勝のようで」

「うん、久しぶり。…………不満があるからって帰宅早々に襲撃や奇襲は止めてくれないかなあ、春華(はるか)

 

 ほう、と藍染が一言漏らす程に鮮烈な赤。

 紅に染まった髪をしたその少女が、どこか苛立たしそうに志道を半眼で、咎めるように見ていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 尸魂界西梢局より帰還した藍染惣右介。道中、北方の遠征討伐隊に警護されながら現地の魔女(バランサー)たちとの折衝もつつがなく終わり、件の(ホロウ)への対処も零番隊が()()()対応したことで、何事も無く東梢局へと戻って来た彼であったが。帰還早々に、総隊長へとある資料の閲覧について打診をした。

 その結果、一番隊よりわざわざ指名されて、藍染に同伴しているのが志道である。本来なら彼の「事実上」副官である七生(しっせい)も同伴したがったようだが、そちらはそちらで体調が悪く「無理はしないでね」の一言で、現在は社屋で事務作業のため缶詰状態だった。

 さておき。

 

『いや、名前を聞いた時は多少驚いたとも。吾妻の家が貴族筋らしいというのは事前に調べていたことはあったが、ここでこう関わってくるとはね。もっとも君は事前に予想していたと思うから、黙っていたのは中々に水臭いじゃないかと言うのが、友人らしい振る舞いということになるのかな?』

『まあ、取り繕わなくて大丈夫じゃないかな? どーうせ内心は何とも思ってないだろ? 惣右介』

『? おや。いつになく投げやりだね』

 

 微笑みを絶やさず言葉を交わす藍染惣右介は「当然のように」普段通りの外面を取り繕った振る舞いであるが、相対する虎徹志道はとてもとても深いため息とともに、明らかに嫌そうな目で彼を見返していた。

 

『で、今回は何を知りたいんだい? 僕に聞かず現地に行きたいってことは直に目で見たいってことなんだろうけど────神器、天賜兵装“熾水(しすい)の鏡”を見たいって言うのは』

『西で聞いた話と以前調べていた情報とを総合して、少し気になることが出来たからね。……まさか君の家に保管されているとは思ってなかったが』

『まあ、義実家ではある……んだけど虎徹の家じゃなくて吾妻の家だからなあ、ちょっとややこしいね』

 

 苦笑いをする志道は少しだけ調子が戻ったように見える。だからこそ、藍染は話を進めた。

 

『約三百年ほど前。護廷十三隊に壊滅的な被害を与えた大虚(メノスグランデ)不滅王(フェニーチェ)」。最終的に当時の十一番隊と五番隊が主となり討伐したとされるが、その討伐に使用されたのが熾水鏡(しすいきょう)だ」

 

 周囲に音は漏れない。もはや慣れたように、言葉一つ一つの注意を逸らし誤認させることなど、彼にとっては鼻歌をしながらでも出来ることであろう(性格的に鼻歌は歌わないだろうが)。

 

「かの虚が現存する最初の破面(アランカル)と呼ばれる特殊な虚の記録にあたる。つまりは、死神の力を得た虚だ』

『うん。それで?』

『西においては(ドラゴン)とも呼ばれるカテゴリーに入ることになるが、霊法則が違えど種族境界の超越あるいは破壊は、おおよそ単一の魂魄で為しうる限度を超えている、というのが()の結論だ。だからこそ魔女の中でも完現術(フルブリング)と呼ばれる能力の持ち主に、興味を引かれた』

 

 かの力は特殊能力というよりも、霊界を脅かす()()の類である。

 

『東西どちらでも、集めた限りこの情報の前提は覆らなかった。もちろん個人差はあるが、根幹をなす魂魄の理解と同調……、理屈で言えば天月(あまつき)晩翠(ばんすい)の「胡蝶之夢理論」にも通じるところがある』

『世界とは誰かが見ている夢幻の類である、というやつかな?』

『嗚呼。削除された部分も多かったが、確認した記録の限り、()()()()()()()()()に干渉する類の力に間違いはないだろう』

 

『────つまるところ、件の鏡によって分解された虚というのは────完現術師(フルブリンガー)同様に霊王のパーツを持っていた死神を喰らい、その力を獲得したのではないか。だからこそ、疑似的に浦原喜助の崩玉(ほうぎょく)のような作用が偶然働き、両者の境界が破壊されたのではないか』

『……それを確信したいから、鏡、見たいと? アレがまったく影響していない状態で破面として成立したのなら仮説の証明の一端になるってことかい? ややこしいなあ……』

『嗚呼、そうだね。推測に飛躍があるのは認めよう。ただ当時の()()()()()()()も確認した上で、実物を知らなければ話にならないのだから。目指す頂きへのアプローチの仕方は、いくつか手札として持っておきたいからね』

 

 ともあれそんな目的を抱えながら。表面的には「同様のケースが起こった場合の対処の参考になるかもしれない」というお題目の元、藍染惣右介は熾水鏡を見るために、吾妻の家を訪ねるに至った。

 

 屋敷の廊下を歩く二人の前方には、先ほどの春華と呼ばれた少女に付き従っていた女中。

 ぎしぎしと鳴る床。一歩一歩踏みしめるごとに、段々重くなってくる志道の足取り。本当に面倒くさがっているのだなと判断した藍染は、目的遂行のために最低限の会話を振ることにした。

 

「君の妹を見るのは、彼女で二人目だね。こちらは苦手としているようだが」

「その言いぶりは話がややこしくなるなあ……」

 

 現十三番隊第十席席官の一人、(おおい)真澪那(まみな)が実妹であり。さきほど出会った赤毛の彼女こそが、義妹にあたる吾妻(あづま)春華(はるか)であった。名前の華やかさに反して雰囲気はつんけんしており、しかし子供っぽさを感じさせない大人びた容姿をした少女である。真澪那や、志道の妻よりは年上のように見えるが、それでもまだ容姿に幼さは残っていた。

 

「家庭環境はちょっとデリケートだからなあ。あんまりうまく説明はできないよ? 追及されても」

「そうか。では、話せる分だけで構わない」

「それもまあ、到着してからの方が進みが良いからなあ。あー、どうしたものかなあ……」

 

 どうにも虎徹の家庭については特に隠すことはないようだが、吾妻の家については色々と話したがらないらしい。とはいえこのまま彼がやる気をなくしても詰まらないし、歩き方が雑になると未だに解除していない絡繰り腕がぶつかって来て鬱陶しい。いまだ襲撃に備えているらしいのだが、それはそうと鬱陶しいことに違いはないので、最低限彼が気を張れる程度に話題選びをするのは当然といえた。

 

「君の義妹、あの赤毛は……朱司波(すずなみ)の縁者ということかな?」

「そだねー」

「……もう少しやる気を出したらどうかな? 志道」

「んー、補足すると志波(しば)尾花(おばな)とか肆矢(よつや)みたいな関係になるかな。遠縁と言えば遠縁になる。もともと不滅王(フェニーチェ)の襲撃時に朱司波の家が使ったんだけど、家の血が絶えちゃった関係で、管理できる家に回って来た、みたいな話らしいよ?」

 

 ちなみにそれが養子扱いだった平子元隊長が朱司波の家を継げなかった理由、と志道は肩をすくめた。つまりは、血筋こそが重要であるがゆえに、養子などお呼びではないということだ。

 そうか、と。平子の名前が出たことで、藍染はなんとなく会話を打ち切った。

 

 しばらく無言で歩く両者と、先導する女中。……歩けど歩けど到着しないせいか、彼女が申し訳なさそうに口火を切った。

 

「もうしばらく掛かりますので、藍染様におかれましてはもうしばらく我慢をお願いしますね?」

「構わないですよ」

「志道様も~、機嫌直してくださいよ~? 春華様だってずっとずっと帰って来なくて寂しかったんですからね?」

「かつてと立場が逆だと思えば、感慨深いやら何やら……。だからって暴力は良くないよ、暴力は」

「それはまあ、乙女の愛らしい嫉妬とか?」

兄妹(きょうだい)だからそう思われてもなあ……」

「義理ですけど、そのあたりは複雑なのは結婚当時からよくご存知でしょうし~。まあ、だからあんまり帰ってこないんでしょうけど」

「……春華には悪いことしてるとは思ってるよ」

「春華様も気持ちが制御できないのは、わかってると思うんですけどね。……まあ、しばらく会わないうち錫音(すずね)さんの出産報告が来るたびにブチギレてましたけど」

「怖いなあ……。年賀状の字もそうだったけど」

「錫音さんは、一体何を目指してらっしゃるんでしょうかねぇ……。あっさり襲われてる志道様もどうかと思いますけど」

()()()求められたら拒めないよ。ちゃんと結婚してるんだし、僕からも求めることだってあるし」

「比率、9対1とかじゃありません?」

「………………ノーコメント」

「あらあら」

 

 私は一体何を聞かされているのだろうか、という藍染惣右介の内心はともかく。実際、(おおい)志道(しどう)吾妻(あづま)志道になってから現在までの経緯を、それとなく会話に滲ませている辺りは二人そろって確信犯なのだろうと、藍染は判断する。時折二人して彼のことを見てくるし、あからさまに言う必要がないことまで話題としてあえて聞かせているようにも見える。

 

(志道主導ではないだろうから、おそらくこの女中が私に気遣っているということかな?)

 

 それでいて彼女の志道に向ける視線もまた、単なる主従というには微妙に()()()()()ものがあるため、藍染惣右介は閉口したまま。彼女に限らずあの当初襲い掛かった四つ子も、彼の義妹だろう赤毛の少女も、誰も彼も微妙に彼に向ける視線が()()であるゆえに、藪蛇は御免被りたいのであった。

 いわゆる、女の情念は怖いという案件である。

 

 そうこう話しているうちに、着崩した死覇装の男が「よっ大将久しぶりじゃないですか!」と声をかけてきたりもしたが、軽く会話を交わして深くは追及せずに進む。

 

「一応言っておくと、吾妻で雇ってる探偵……になるのかな? 現世風に言うと探偵かな、うん。事務所はこっちじゃなくて流魂街の方だけど」

「服装からして予備隊士かな?」

「うん。鬼道関係がだいぶ特殊すぎて、護廷隊向きじゃないからってことで貴族側に回されてる、みたいな? ざっくり搔い摘むとそんな経緯になる」

「……予備隊士というと、そちらの方も含むかもしれないが、五つ子の女中たちは? 明らかに斬魄刀の改号のようなものを口に出していたが」

 

 藍染の言葉に「五つ子じゃないですよ~」と女中は笑う。

 

「彼女が長女で、あの子たちは下の子だよ。まあ察してるとは思うけど、普通に貴族雇いの死神ではあるかな。ちょっと前に実習に出てた犬崎君とかと同じだね」

「そうか。…………僕らの受け持った年代では見覚えがないね」

「それは僕らより年増────」「あら? 何かほざきよりましたか?」「────、いや、あの、ごめんなさい冗談です。えっと、年上の()()()たちだからね」

 

 なるほど、と満面の凄みのある笑顔を向けて来る女中に、志道共々藍染は両手を上げて降参のポーズをとった。女の執念やら情念やら、そういった強い感情が混じったものは怖いか面倒なのである。

 そして到着した一室。「私はここで」と女中はそのまま屋敷の奥へ小走りで「逃げる様に」離脱し、戸を引いた志道と藍染惣右介のみが残されることになった。

 

「資料とか、うちに残ってる記録は後で見るだろうけど、とりあえず本体は触らないようにね。冗談抜きで魂魄核が漂霊界(ひょうれいかい)に飛ばされかねないから」

「……事実上の即死を宣告されたのだが? 黒腔の外側の()()()()()だろうそれは」

「触らなければどうということはない、ってところかな?」

 

 部屋は、まるで神社の奉納殿のようであった。倉庫というには妙に手狭で、部屋の奥に飾られ安置されているのは「四つの宝玉が」あしらわれた、どこか中華系を思わせる装飾の古い鏡。水銀系のそれではなく、鈍い鉄の色を映すものであった。

 どこかその鈍い反射が眼球、光のない瞳のようだ。藍染はそう呟き、目を細める。

 そんな藍染惣右介に、虎徹志道は語る。

 

「これ自体は使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものらしい。けど……、今はちょっと暴走していてね。今というか、三百年くらい前からずっとらしいけど」

「暴走、か」

「うん。他者の操作を受け付けず、触れた対象の霊子をひたすら漂霊界に垂れ流す、みたいな」

 

 よっと、と。そんなことを言いながら納刀しつつ、全く怖れる様子も無く、鏡のすぐ横の棚に置いてあったふきんで(面倒そうに)磨き始める志道。

 いや待て何をしているんだ、と思いっきり自分の言った言葉に反する行動をとる志道に突っ込む藍染惣右介。「触れたら死ぬ」と言いながら当たり前のように鏡の外側を触ったりしながらきゅっきゅと音を立てているのだからツッコミも入る。

 もっとも、相手は相手で「君はマネしないように」などと雑に言って来るのだが。

 

「一応、朱司波の縁者なら多少は軽減されるからね。吸い上げられる霊子は」

「……君にも朱司波の血が流れているということかい?」

「いや全く?

 うん、まあ、だから僕が吾妻の養子にさせられたって感じなんだけど」

 

 僕だけ本当に全く何の言われも無く影響ないんだよね、と、さらりと意味不明なことをのたまう志道。

 

「何だったっけな……。昔会った偉い人には『おんしの心そのものが鏡みたいなものじゃから、影響が対消滅するようなものか? それっぽい理屈は上手く言えぬというか、よくわからぬ』とか言われたっけ」

「その話を聞かされるこちらの身にもなって欲しい所だが……」

「とはいえ暴走してることに変わりはないから、危ないって言えば危ないんだよね────虚の霊圧を流し込まれた魂魄が境界破壊に耐えられず、魂魄自殺をするみたいな、そういう危うさがある」

「…………」

 

 志道の例えに、藍染惣右介は押し黙る。

 そんな藍染を見て、志道は「あっ気にしないでいいよ? 夢見鳥(ゆめみとり)さんのことは」と苦笑い。

 

「彼女を……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう? 裂読(さきよみ)が調べないのを良いことに、あえて、僕がどう反応するか試すつもりで黙っているみたいだけれど」

「…………」

「君自身、相手を指定して実験してた時と指定しないで雑に実験していた時があるから、確証がないってこともあるのか。まあでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、その目論見はナンセンスだと言っておこう。

 ──────こんな形で、()()()()()()()()()()()

「…………そうか」

 

 表面上はにこやかに会話を交わす両者。その彼等の内心はともかくとして。それぞれ腰にさす斬魄刀が、彼等の意でも汲んでいるのかそれぞれカタカタと「勝手に」震えていた。

 

 

 

 

 

 

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