地に立ちて_見上げる天に_藍見えず   作:黒兎可

20 / 21
前半と後半で時系列がちょっとズレていますので、ちょっと読みづらいかも・・・?
そしてついに? あの娘が出てくる・・・!


雲乱す蜘蛛

 

 

 

 

 

「おや? どうしたのかな。何か貴女の不評を買うようなことはなかったと思うのだが、吾妻の当主」

「……義兄(にい)さんですか? そんなことを言ったのは」

「フフ、感想は控えさせてもらうよ。何を言っても藪から蛇が出てきそうだからね」

「あなたですか。義兄(あに)が友と呼んでいる、色々と悪い遊びを教えた張本人は」

「フフっ」

「息をするように心に瑕を持つ女を慰め口説くようなあの振る舞い……、結婚後は多少控えているようですが、全く何をやらかさせているのですか。私が把握しているだけでも我が家の女中姉妹(あの子たち)だけに飽き足らず裂読(さきよみ)蜻雲(とんぼぐも)、外では小川(おがわ)夢見鳥(ゆめみとり)に呉服屋、修多羅研の()()に霊術院の講師に菅ノ木(かんのぎ)矢神(やがみ)の小娘他諸々。(おおい)の家の()()は直系だから()()()()()()()でしょうが、果ては虎徹(こてつ)に手を出して在学中に子供まで孕まさせて……。一体あなたは義兄をどうしたいというのですか?」

「いや少し、待ってもらいたい。そのテの話は流石に僕と関係ないの思うのだが? 後、矢神君は僕と彼と同世代だったから小娘と言うのはいささか────」

「虎徹程度に後れをとっているのだから小娘で充分でしょう。あの虎徹程度に後れを取るなど、どんな引っ込み思案ですか」

「……知り合いなのかな? 彼女と……ええと、虎徹(こてつ)錫音(すずね)と」

「ええ、まあ、知り合いと言うか。私がまだ流魂街の屋敷(こちら)の管理をする前、瀞霊廷住みだった頃の寺子屋(がっこう)で先輩後輩の関係です。私が当然、上として。……あの泥棒猫がッ」

「成程、それもあってなお一層当たりが強いのか……」

「そういえば虎徹、誰かに相談したとか言っていましたね。名前は聞いていませんでしたが、義兄に近く、眼鏡の────ん、なるほど」

「何を納得したと言うのか。何だろうか、その目は。

 ………………確かに彼女を()()煽り嗾けはしたが、まさかああも一切の妥協や容赦もなく、外堀を埋めに掛かるなど想定が難しいと思うが? いや、それをこちらの想定の敗北であるという風に言うならば『多少なりとも』『個人的な事情で』気にはかかるが、正直……この類の話は面倒になってきていてね。志道がよくげっそりして、彼女がつやつやと若々しい少女らしくなっている姿を見るたびに」

「燃やします。虎徹も、義兄も、貴方も。

 君臨者よ。血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ────」

「即断即決が過ぎやしないだろうかッ!? ────砕けろ、鏡花水月!」

 

「流石にここで殺す訳にもいかないし、妙に催眠のかかりが悪いな……。それにこの思い切りの良さと物騒さと威圧は、志道に聞くところの初代剣八並のそれと近い所があるかな? …………嗚呼なるほど、彼が彼女を苦手にしているのはそういうことか」

「燃やします」

「ッ!? 感情の高ぶりに対する催眠を怒りで凌駕しただと!? 重ねるぞ、鏡花水月!!」

 

「ハァ、ハァ……、ふぅ。柄にもなく慌ててしまった。いかに貴族相手といえど、この私が正式な死神でもない相手に何故こう寒気を感じねばならないのだろうか…………」

「自業自得では? それで、私から何を聞きたいというのですか。()()()()()()()いくらでも、私の知ることを教えてさしあげますが」

「嗚呼、落ち着いてくれたようで何よりだ。だが、あらかた知るべきことはもう知っているから、吾妻の家にまつわる話はこれ以上深堀は難しいだろう。

 ……とするならば、志道についてかな? 少し、君が知る彼の話をしてもらえないだろうか」

「構いませんが、何を話せと?」

「そうだね。…………(おおい)の家の、おそらくは跡取りだった彼が何故わざわざ吾妻に養子にされたのか。何かしらの目論見があったにせよ、何故、虎徹錫音に婿入りする形を容認しているのか、だろうか。

 もちろん情報源を君一人に絞るつもりはないが、一次情報としての君の話はそれなりに興味がある」

「……()について聞くと、そう言う訳ではないのですね」

「それについても聞くが、最も警戒する相手を常に意識するならば、真っ先に確認するべきことの優先順位を間違えはしないものだ」

「警戒? 友人ではないのですか、義兄の」

「そう、友人。未だに友人さ────────()()()()()()()()()()()、ね」

「…………?」

「フフ。所詮は戯れの一つだよ。ともあれ、聞かせては貰えないだろうか、志道について」

「…………話すのは、構いませんが。それでしたら一つ、願いを聞いてはもらえないでしょうか」

「何だろうか」

()()()()()()()()()()()()()()()。唯一、虎徹が少し出し抜けたくらいで、後は誰も彼もが()()に勝つことはできませんでした」

「あれ、とは…………、人物をとるような言い回しではないが、毛嫌いしている情念はわかるね。少々面倒くさくなってきたが、話は聞いておこう」

「……義兄の、斬魄刀です」

「む?」

 

 ────あの人の本来の斬魄刀は、裂読などではありません。

 

「婚後に虎徹が、それを証明しています。少々事故のような形でしたが、その時に義兄本来の斬魄刀が全く別に存在することを確認しました」

「………………ふむ」

「二本目の斬魄刀などでは断じてありません。あれは、義兄の()()()()を利用してこの世に這い出てきた、全く別の何かです。いまだに義兄本来の斬魄刀を押しのけて、あの人の中心に居座り続けている────明らかに普通じゃない、精神世界を侵略され、()()()()()()()()()それを承認させています」

「…………」

「あれのせいで、義兄は壊れました。義兄は歪みました。本来であるならば()()()()()()()()()はずのあの人は、未だその心をあれに囚われたまま。虎徹などではない、断じてありません。数多の情報(いと)執念(いと)でもって、義兄の意思を縛り付け続け、負担を強いています。

 霊術院において虎徹と婚約した時点では、もう手遅れでした──────義兄を戻すことなど、私たちにすらもう出来ません」

「………………」

「お願いします、あなたを、義兄の友人と見込んで頼みます。

 どうか、義兄を、あの人を、()()()()から解放してください。あの人に────」

 

 

 

「────あの人が、()()()()()()()()()()を、()()()()()()()()()を、普通を、取り戻させてあげてください」

 

 

 

 深夜の吾妻邸。軒先で涙ながらに頭を下げる少女に、藍染惣右介は虚無のような感情の乗らない視線を向けていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「飛べ、蜻雲(とんぼぐも)────!」

(はし)れ、凍雲(いてぐも)────!」

 

「わあ……! 姉さんたち、頑張れー!」

 

 瀞霊廷某所、「虎徹錬刀場」の看板が掲げられた屋敷の奥。刀剣の練磨のための鍛冶所としてのスペースとは別に存在する、区画としては大きな庭で。二人の死神の女性がそれぞれ斬魄刀を構え、斬り合っていた。

 一人は、鍔から三又に別れた刀を持つ()()。女性にしては妙に高い身長と、色の抜けた、ぼやけた色の白い髪が目立つ。

 一人は、巨大な竹とんぼを二つ重ねたのような形状に変化した刀を振るう女性。身長はさほど高くないが、相対する少女よりも身体の()()()()が死覇装越しにもよくわかる。長い黒髪に枯葉めいた金色がメッシュのように入っており、二括り流し(ツーサイドアップ)の色が綺麗に黒と金で対照的になっている。

 

 そんな二人をどちらも応援する金髪の少女は、にこにこと楽しそうだった。

 

 ぎゃりぎゃりとそれぞれ逆回転に回る上下の竹とんぼ──羽根が日本刀の刃となっているのだが──によって巻き起こされる局所的な突風。それを利用して、瞬歩の速度をさらに倍増させて突進し切り刻むような動きをする女性。彼女に対して、少女は己の斬魄刀を振るう。と同時に、刃同士の間に氷の幕が張られ、さながら大きな扇のようになり────その一振りに応じて、()()()()()()()()

 

「相変わらず意味がわかりませんことよ! (わたくし)の蜻雲くらいシンプルに扱いあそばせ!」

「いやだって、これお父さんに教わった()()()()な使い方だし……というか、お姉ちゃん何その口調!?」

「乙女のたしなみですわよ~~~~!」

 

 どうやら何か変なことを学んだらしい(?)女性に、少女は絶叫を上げる。

 炎を巻き込み刃全体が熱に包まれると同時に、女性は突進を止めて瞬歩で後退。今度は逆方向に回転させて、その炎ごと突風で少女へと追い返そうとする。

 その熱波と炎に対して、少女は再び刃を振るう。すると、今度は刃の間に張られた氷が解け、礫のようになり炎の壁とぶつかり、蒸気を立てて消滅。

 その隙間から、氷の板が、足場のようなそれが突如として伸びる。

 温度が丁度良い具合に落ち着いたその瞬間を狙い、少女は瞬歩でその間を抜けて足場に乗る。と、氷と足の接触で()()()()、霊圧に応じてその勢いは加速。突きの体勢のまま突進をしかけ────。

 

「オーッホッホッホ!」

「あふンッ!?」

 

 動きを完全に読んでいた女性によって背後を取られ、そのまま刃の柄尻を背中に叩き込まれた。

 悶絶。切り傷にはならないが、完全な奇襲での殴打なので普通に痛い。現世と異なり「霊的な」素地の関係でそう長引くダメージにはなり得ないだろうが、それでも痛いものは痛いのだ。

 そしてその変に適当に放った後、片手で口元を隠すようなポーズを取り大声で笑った、すなわち、オーッホッホッホ! と。

 

「まだまだ鍛え方が足りませんわね、オーッホッホッホ! 功夫(くんふー)ですわ、功夫(くんふー)! その無駄に伸ばした身長を生かした斬拳走鬼を積んで、出直し遊ばせなさい! オーッホッホッホ!」

「お姉ちゃん、どんま~い!」

「く、悔しい……! 何かヘンなのに被れたお姉ちゃんに身長煽られてるの、すっごい悔しい……!」

「オーッホッホッホ! ……お待ちなさいな、ヘンなのとは何ですの、ヘンなのとは。現世の淑女のたしなみですわよ? 上流階級の子女に必須ですのよ?」

「えぇ……? でもそのしゃべり、絶対変だって。いつか消えてなくなるよ絶対」

「そうとは限りませんが、少なくとも当代では必要なことでしてよ?」

 

「──────いや、ちょっと古いと思うけどなあ……。勇音(いさね)がうちの副隊長と追いかけっこしてたくらいの頃かな? 大体」

 

 そんな最中、苦笑いをしながら現れたのは虎徹志道。相変わらずの黒ずくめな死覇装に、白いメッシュのようなものが入った黒髪と、黒い眼鏡。それからなんとなく眉が太い。お父さん! と三者三様に声を上げて駆けよる彼女たちも全体的に眉が太く、血縁を感じさせるところであった。

 

 ……なお、女性はなんとなく彼と同年代程度に見えるが、彼女もまた「お父様!」と声を上げて嬉しそうに近寄ってきている辺り、それぞれの関係は推して知るべし。

 

「やあ、檻理隊(かんりたい)は順調かな? 砕蜂(ソイフォン)()()になってからまだ日が浅いけれど」

「もちろんですことよ! お父様におかれましては、そこは大船に乗ったつもりでいてくださいまし! 砕蜂隊長の顔は直接拝んだことはありませんけど、オーッホッホッホ!」

「後そんな口調になったって痣城隊長の好みにはならないから、止めなさい輪音(りんね)錫道(すずみち)錫弘(すずひろ)も白目向いてたから、さっき通りすがりに」

「ぶぅー。というか、あの二人は弟なのだから姉をもっと敬うべきかと思いますの、わたくしおそらくこの尸魂界で最も一途な乙女ですもの、オーッホッホッホッ!」

「((いさ)ねーさん、輪ねーさんまーた変な事言い出してるけどさあ)」

「(しっ! 見ちゃいけません、清音(きよね))」

「一途といっても隊長が君に最後までそういう素振りを見せなかったのは、あれは隊長個人の問題だからね。……後僕の見立てだと、隊長って胸が()()()()みたいな年上のお姉さんが好きな気がするから、今のままだとどう頑張ってもイメージに合わないね。せめて勇音くらいないと」

「お父さん、私巻き込まないで!」

「むかーッ! ちょっと、お父様におかれましては言って良い事と悪いことがあると思うんだけど! というか、これ寄越せ! 寄越せ!」

「ひゃぅん!?」

 

 途端、子供のように喚きながら妹の胸を揉みしだく彼女は、虎徹輪音(りんね)。虎徹志道……当時は吾妻志道であったが、その彼と虎徹錫音の長女である。一番最初に生まれた、という意味で長女であり、他の弟妹たちとやや年の離れた女死神である。

 現在は隠密機動の檻理隊所属、獄卒めいた仕事に従事している。

 

 そんな彼女であるが、突然スイッチが切れたように一瞬表情を失い、何やら顔を真っ赤にした次女を投げ捨てる長女。三女が「お姉ちゃん大丈夫……?」と困惑する中「あそうそう」と平坦な声で続ける。その辺に投げ捨て居ていた巨大竹とんぼのような斬魄刀を拾い、解放前の状態に封印して納刀し、志道の前に差し出す。

 

「ちょっと()てもらって良いかしら? お父様。久々に勇音の()()()()()()をみてたんだけど、最後の方で急に回転がおかしくなりかけてたから。あやうく転んじゃうところだったもの」

「あー、うん。…………まあ、事情はわかった。こっちで何とかしておくよ」

 

 苦笑いしながら右手で蜻雲を受け取る志道。反対の左手は、己の斬魄刀の柄尻をとんとんと指で叩いている。何かしらその動きに意味を見出すのは娘たちには難しかったが、唯一その仕草を長女だけがちらりと一瞥していた。

 

 ちょっとだけ待って、と言って、志道は眼鏡越しに右手の斬魄刀を見つめて、目を閉じ────。

 

 

 

「…………、ああ、やっぱりこういうことになっていたか。さっきから、さきが全然反応しないと思ったら……」

 

『やーいやーい、頭あっぱらぱー』

『あなた、もっと言うにしても何かあるでしょー! というかあっぱらぱーじゃないもん! クールなキャラだもん、私!』

『くぅる?(笑)』

『あったまきた! いいかげん、アタシのシドーを返してよー! この、()()()()()()!』

『あ゛? よし死にたいらしいね。────生きていようが死んでいようが、私の前じゃ等しく無意味だ』

 

 目を開けた時点で、志道は全く異なる場所に居た。夕暮れの田園。田園がある土地自体は空中に浮かんだ浮遊島のようになっており、見渡す限り実っている稲穂を育成するための水源は何処にも存在しない。ある意味、何かしらの原風景を一つ切り取ったようなその光景────郷愁を感じる、幻想的と言えなくもないそんな場所で、二人の少女たちが()()()()()()()

 

死に直せ(■■■■)花六(■■)────────チッやっぱ()()()()()()()使えないか。なら、こっちだ』

 

 小太刀かナイフか、微妙な長さの小刀を構えて何かを呟いた少女の声は、聞こえない。否、()()()()()()()()()。何かしらの影響を受けたそれを見て舌打ちをすると、やや乱暴な口調の少女は、そのおかっぱめいた黒髪から()()()()()()()()()()を伸ばす。めきめきと肉と骨が内側から組代わるような、おおよそ異形の怪物に変貌するような音を立てた彼女の四つ足。それぞれ人間の頭を蜘蛛の胸に見立てているような形で生えたそれらには、その大きさ相応に、足先には鋭い小太刀のような刃が生えていた。

 身体を浮かせ、めきめきとやはり異音を立てながらがしゃがしゃと駆動して地を這う四つの腕。

 

 対するもう一人の少女は「大きな竹とんぼに捕まりながら」、おかっぱの少女の変貌にとても厭そうな顔をしていた。ドン引きというやつである。

 

「いやだから、普通にナイワーって感じなんだけど……。よくそんなバケモノみたいな姿で()()シドーたぶらかせたわよね~。というか、私の内在世界(こっち)にそんなキモいので入ってこないでくれない?』

『────────!』

『いや、人間の言葉も忘れるとか完全にバケモノじゃない。────飛べ、蜻雲!』

 

 長い金色の髪────揺れる稲穂と同じ黄金を持つそれを振り乱す少女は、どこからか取り出した大量の竹とんぼを、指と指の隙間に雑に構えて、ぶんと振り回して放った。

 放たれた竹とんぼは一つ一つがその直後に巨大化し、刃が二重に。すなわち虎徹輪廻が扱っていた蜻雲の、その形状に変化する。

 

 殺人竹とんぼのようなそれらは、おそらくは金髪の少女の意に従い縦横無尽に無限軌道を描き、正面や死角、のべつまくなくあらゆる角度から地面にいる変貌した少女を襲おうとし────。

 

『────()えてるぜ』

 

 ぼそりとそう呟くと、地面に刺さっていた腕のうちの一つ、左側頭部から伸びるそれが空中へ目掛けてぶんぶんと刃先を振り回し。その雑な動きで殺人竹とんぼの刃側面や軸の根などに当たり、直撃コースを往なす。

 かと思えば一本のみ少女の本体めがけて跳んで来るものを、人間の手に持った小太刀のようなそれで一度弾き…………。弾かれた殺人竹とんぼは、金の少女の意思を受け付けず、ただただまっすぐ相手目掛けて跳んで行った。

 

『ええええええ!? うそうそ、何で何でー!?」

『乗ってた意思を()()()()()からな。ま、潔く死んどけ』

『ひぃいいいいいん! お助けェー!』

 

 慌てた金の少女は空中で逃げようと飛び回るが、そんな動きに対してまるで事前に何処へ向かうかを察知しているかのように、一切直撃コースを外れない殺人竹とんぼ。そしてその二重の刃は少女目掛けて迫り────。

 

『…………ちっ』

「ち、じゃないよ、さき。()()()()()()()()意地悪しちゃ駄目だよ。それに、女の子はもうちょっと口調をやわらかくしないと」

『あァ?』

「どっちがケンカ売ったかは知らないけど、まあとりあえず……、大丈夫? 蜻雲」

『きゅぅぅぅぅ~…………』

 

 目を回し、憔悴の末に意識が朦朧としているような少女。彼女を肩に抱える志道は、その反対の左手に()()()()()()()()を握っていた。具体的に言えば、さきほど異形と化した少女────斬魄刀・裂読(さきよみ)の本体である彼女が打ち払ったものを。

 

 稲穂の上に「自らの」霊子で足場のようなものをうっすら形成して、その上に金の少女────斬魄刀・蜻雲である彼女を置いた志道。

 そしてめきめきと音を立ててそんな彼に高速で迫った後、あっさりとその四つの足を手元の小刀で削り落とした裂読は志道めがけてダイブする。

 

 あっさりとそんな彼女を抱き留めて、後ろから抱きしめる様に座わった。

 

「はい、どうどう」

『馬じゃないから、シドー』

「はいはい」

『はいは一回』

「はい。で、落ち着いた? あんまりかっかしてると()()()()()()()()()()()から、遊ぶにしても程々にね」

『別にキレちゃいないし。私、キレさせたら大したものだし…………』

 

 何故か意地を張る彼女に苦笑いを浮かべてその頭を撫で……、そして反対側の手で、眠りにつく蜻雲の頭も撫でる志道。そんな彼の左手に顔をこすりつけ、寝ぼけた蜻雲は「むにゃ……」と幸せそうに笑っていた。

 

 

 

「────────よし、終わったかな? もう大丈夫だと思うよ? さきも回収したし、蜻雲も少しかまってきたから」

「あー、ごめんなさいね? お父様。この子、お父様のこと大好きだから」

 

 あんまり笑えない話なんだけどなあ、と、苦笑いを浮かべる志道。彼と共に苦笑いする虎徹輪音に、不思議そうな妹たち二人であったが。

 

「────ん? 嗚呼、もう修得したのか。早いね一角君。さきの話だったら後20年くらいは後に修得するはずだったのに」

「お父様?」「お父さん?」「どしたの?」

 

 続けて零れた志道の独り言は流石に理解できず、三人そろって首を傾げた。

 

 

 

 

 


【前回分もまとめたメモ】

 

・没落貴族・吾妻(あづま)家:

 当然のように本作独自の家柄。ゲーム「BLEACH DS the 3rd Phantom」の重要人物、朱司波(すずなみ)姉弟(きょうだい)の親戚で(分家ほど血は近くない)、「メゾン・ド・チャンイチは事故物件」で言及されてるとある大虚の事件の折に使われた決戦兵装・熾水鏡(しすいきょう)の後始末および管理を継続している。瀞霊廷でなく流魂街に置かれているのは、件の大虚が再び出現する位置が熾水鏡のある座標に依存するため……と言われている。資産はあるが当主が素質ある相手を婿にとれなければ継続が難しいので、半ば没落貴族扱い。

 また、いつアルトゥロおよび配下の虚が出現するか不明であるため、家の管理で調査するため、興信所のような形で隠密機動から人員を派遣されていたりもする。

 

・熾水鏡:

 元ネタは同じく「3rd Phantom」から、大型の鉄鏡のような何か。本作では天賜兵装ないし神器の扱い(本作では天賜兵装=神器な扱い)。

 多分触れないと思うので言及しちゃうと、本作では霊王の瞳を精巧に刻んだ魔鏡。素材は浅打同様の工程を経て作られており、その似姿のみで霊王に類する何かしらの権能を発揮している。

 

・本作虎徹家の子供達:

 上から順に輪音(りんね)錫道(すずみち)錫弘(すずひろ)勇音(いさね)清音(きよね)。このうち長女次女三女は死神、長男次男は鍛冶の道と進路が分かれてる……というより、虎徹の実家から取られている。大体長女から時間的に開きがあって、続けて長男次男、さらに開きがあって次女三女と続いている。一姫二太郎のうち長女を勢いで作ったのち、計画的に二太郎を仕込んでからは、たぶん母親が無計画なせいで生まれてる……かもしれない。なお、これでも自重してる()。

 ちなみに「メゾン・ド・チャンイチは事故物件」の時系列にて、ちゃっかりもう一人生まれたり。……なお、これでも自重して(ry。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。