ヨン様の一人称とか作者の知性が不足してる気もするので、そこは色々ご容赦くださいませ汗
私が彼を正しく認識したのは、まだ私と彼が在学中の頃だった。
真央霊術院入学期。お互いまだ青少年と言うべき年齢の姿をしていた頃。
同期として入学した私と彼だが、私はまだ彼を「目を離してはならない存在」として認識してはいなかった。
髪色は少し変わっているが、それだけの凡庸な生徒の一人。試験の成績もとりたてて高いわけでもなく、私のように「己の異常性を隠している」わけでもない。当たり前に学生をして、当たり前のように失敗をして、当たり前のように成功体験を積み上げる誰かでしかなかったのだ。
私たちが斬魄刀を配られてからも、事情はそう変わりない。
浅打。すべての斬魄刀の基礎となる、名を持たぬその凡庸な剣。
事前に予習や情報収集をしていたこともあり、教員たる死神からのその説明も他の生徒より誰よりも正しく理解できていたと思っていた。
それゆえに、私も斬魄刀との対話、およびその同調、屈服まで時間はかからないと判断していた。
当初の目標は、一週間。その程度で事が終わると判断していた。
予想を裏切られ、私の斬魄刀はそう簡単に同調も屈服もしてはくれなかった。
彼女、とあえて呼ぼうか。彼女は誰に似たのか、かなりプライドが高く、見栄を重視し、事実を歪曲させ、そして同時に才能に溢れていた。
私と彼女との競い合いは極限を極め、しかし日々の生活においてその様を、この異常性を私は隠匿した。
入学後の一月と少しで、己の斬魄刀に自我を生じさせているというのがどれほど異常かというのは、我々がいた前にも後にも聞いた死神達の情報からして、ありえないものであった。
故に増長していたわけではないが、この段階で私はますます周囲の人間を私と同じ人間と見ることはなかった。
木端といえばあまりに傲慢だが、あえて言うなら「守られるべき人々」であると表現できるか。
ともに肩を並べて戦う相手ではない。その霊力も、斬術も、造詣が、ありとあらゆるもに対するものの見方が私とはあまりに違いすぎた。
否、私が彼らとあまりに違いすぎた――――入学の時点で、それ以前から感じていた「この三界の違和感」が膨れ上がっていた、この私は。
そんなある日、ふと斬術の授業の際に気付いたのだ。生徒の中でただ一人、斬魄刀の様子が違う生徒がいたことを。
おおよそ生徒達は「刀鍛冶」に依頼して、鞘や鍔の外形を変えたりといった調整をしていた。私もその例に漏れず、多少は外見を変更した。
彼もそうであったが、それでも生徒達と唯一違うものがあった。
彼の斬魄刀の刀身には、まるで開かれた瞳のような刃紋が浮かび上がっていたのだ。
一見してただ「たまたま」そうなっているような、そんな見た目だったが。それがおかしい事を私は十分に理解していた。
浅打、少なくともその刃の見た目は恐ろしいまでに完全に共通した見た目だ。そこに差があっては、完成する個々人の斬魄刀にも影響が出るせいだろう。成程、これを作り出した存在は余程に「完成された」刀作りをしたのだろう。あるいは「それを超えた」「一つの概念に縛られたような」その刀の出来栄えは、職人芸の域を通り越してやはり違和感があったが。
故にこそ、そんな変化が起こっていること自体おかしいのだ。
そして彼の、
明らかに教員相手に限らず、周囲の生徒の動きを「あらかじめ知っていたかのような」身のこなし。
背後からの奇襲が来る数秒前から嫌そうな顔をして、足の開きを変えてすぐさま反応できるようにしており、実際その動きは予想に違わず彼への不意打ちを許さない。
明らかに「視ているものが違う」――――それが斬魄刀の能力であろうことは、私には察せられた。視野のその広さ、事前に察知できる情報のそれを思えば、彼の斬魄刀に目が浮かんでいることにも、納得がいく。
それにもかかわらず、自らが始解した事実を誰にも公開した様子がない。
加えて問題は、彼がいつその始解に至ったかだ。
見た限り、彼は己の斬魄刀の扱いに「異様に」習熟している。
まるで入学してからすぐ始解へと至り、そのまま鍛錬を積んでいるような。
そもそも派手な変化をしていないことも、私が気づくのに遅れた原因の一つと言えるだろう。
これを放置しては、私の精神的な敗北と言われても仕方がない。
敗北は、その事実を凌駕するために存在するべきだ。
私が彼に目をつけて、情報収集を始めるのにそう時間はかからなかった。
一年が経過する頃には、その彼の斬魄刀は「周囲の情報収集をして」「彼に知覚させ解析の補助をする」と言った類のものだろうと推測がついていた。
この頃には私も「鏡花水月」の名を聞くことが出来るようになっていたが、当然のように私たちほど自らの斬魄刀を「覚醒」させていた者はいない。
それも、私も彼も同様に自らの斬魄刀のそれを隠したまま。
だからこそ、彼が足しげく通う、瀞霊廷内の真央図書館にて、二人きりに慣れるタイミングを見計らった。鏡花水月の能力を応用して人払いをし、いっそ興味本位がてら彼に尋ねてみたのだ。
『少し良いかな、吾妻志道君。僕は――――』
『藍染惣右介。クラスの人数は多いけど、知ってるよ成績優秀者』
『そう、か。…………話をしても?』
『問題ないよ。まあ、時間が惜しいから本を読みながらで良ければね』
普通は失礼にあたるだろうが、眼鏡をかけた彼の雰囲気に、本の虫のイメージは合致しており、不思議と私は好感を抱いた。
いや、あるいはこの時点で「僕から声を掛けられた」ことに、いささかの振る舞いの変化もみられないことに、自らの確信をより深く私は納得を得る。
こちらから声をかけるよりも前の時点で。もしかすると、私が彼を尾行していた今朝の時点から、彼は私の存在に気付いていたのかもしれない。
それ故に、私も細かい部分を省いてストレートに聞いた。
『何故、君は自らが始解をしていることを誰にも言わないのだい?』
『君とは逆の理由だよ。……後それから、この
もっとも、返答は私の予想をはるかに上回ったのだが。
今までの動きから、おおよそ彼の能力は「自らの霊圧が及ぶ範囲における現象の観測および解析」程度だと判断していたが、その認識を改めざるを得ないかもしれない。
その言葉の意味が含んでいる部分によっては、私の個人的な
すぐさま情報を引き出すため、鏡花水月を構えて改号を唱えたが。
『無駄だよ。……というより「相性が悪すぎる」。裂読に君の『不完全な催眠』は効かない』
『…………ッ』
焦りと言う感情を覚えたのも、随分と久々の事だった。
と、彼はここでようやく本を閉じ、僕の方を見た。……外から見れば、突然の僕の乱心めいた行動だったろうそれを前にしても、未だに雰囲気が変わらない。
それはつまり、彼はほぼ間違いなく私が何を考え、何をしようとしたかを正しく捉えた上で、その行動の是非を無意味なものとして切り捨てている。
むしろ、座りなよ、と苦笑いされ、珍しく憮然としながら対面に座ったことを良く覚えている。
『発動条件は、始解の際の霊圧の奔流によって光り輝く刀身を相手に見せること。効力としては認識の誤認、喪失、取り違え、あるいは混乱かな? これを強力な暗示で持って任意に引き起こすことが出来る。
弱点としては、始解のそれを見せなければなんら効果を発揮することは無い、発動に際して意外と霊圧を消耗する、斬魄刀自体の形状が変わるわけでも無いことから「暗示もまた0を1にすることはできない」。イコール、例え催眠をさせるにしてもある程度の適用限界が存在する、というところかな?』
『…………』
『そう怖い顔しないでよ。ほら、眼鏡あげるから』
『いや、別に要らないのだが』
『あった方が良いと思うよ。意外と君、自分の計算外のことを「楽しむ」余裕がないタイプみたいだから。黒幕気取りたいなら、まずは想定外計算外が起こったところで余裕を持った振る舞いをしないと』
その物言いには少し納得するところがあったが、それでも何故眼鏡をかけろと、自分の懐から取り出したものを手渡してくるのだろうか。
わざわざ目の前で
『ここで斬り合いをしたいわけじゃ無いからね。……あー、だから特に、ナイショにしておいてくれるなら、少しくらいは君が知りたいことを教えてあげられるよ』
『知りたいこと…………』
そこでまず彼から教わったものは、現在の彼が読んでいた尸魂界の歴史書についてだ。
歴史書、というよりは物語調であり、挿絵も含めてどこか子供向けの絵本のようなつくりをしている。
それを見開きながら教えられた「
『……この「地上に降りた太陽」のように描かれているのが、現護廷十三隊の総隊長?』
『の、卍解だね。…………んー、多分、これのせいでいわゆる「王族特務」に召し上げるわけにもいかなくなったんだよ、総隊長さん。
なにせ上の人たちは、この絵本をベースに考えるなら、斬魄刀の真の解放だけで「三界が揺れる」ってことになるし。
『まるで君は、見て来たように色々と語るのだね』
『見ることは出来ないけど、
僕の裂読の能力は「絶対測定」。裂読が誇る「情報結界」の範囲に収まったものなら、その情報をつぶさに収集して、そのもののあらまし、経緯、現状、これから起こる事を一通り情報収集し貯め込み、それらをもとに短期的な未来予測を可能にする。
精度は…………、霊圧次第かな?』
『つまり、高い霊圧を放てばそれを弾くことが出来ると言う事か』
『微妙に違うんだけど、まあその認識でいいんじゃないかな。僕もまだいまいち、この子の能力を正しく読み取れていないし』
この時点での僕と彼との霊圧差は、明らかに僕の方が高かった。
しかしそれでも、彼の机に立てかけた斬魄刀は、僕の情報を正しく読み取っていた。
とするなら、彼の物言いが正しいのならば。文字通り天文学的な霊圧差が存在しない限り、その情報結界とやらからは逃れられないと言うことになる。
これは、ある種の敗北だった。
情報戦という一点において、私は一方的に彼に知られる立場にある。
場合によってはすぐさま殺す必要が出てくるかもしれない。朧気ながらに抱いていた野望を口にすることはなかったが、しかし彼は苦笑いして、鏡花水月に手をかける私の方を見た。
『焦らなくても数年以内には、チャンスが巡ってくるよ。…………在学中かな? うん。
いつどこで、という情報が欲しいなら、僕を殺さないことだ。まだ周辺情報が足りないから、確たることが言えないからね。
こっちは敵対している訳でも無い。そして君もまた、自らの大願を自らの力のみで叶えるだけの「力は持ち合わせていない」。政治力、情報力、戦闘力、どれをとってもまだまだ頭に殻を被ったヒヨコだ。
さっきの総隊長レベルからすればね』
『…………』
『ほかに知りたいことは?』
そして彼は、本当に終始、私を前にして態度が変わらなかった。
途中から殺気が漏れていたろう私を前に、一切振る舞いが変わらなかった。
恐れが、ないわけではないだろう。しかし、そこには一つの確かな「勇気」を感じ取ることもできない。
ありていに言えば、彼は完全に「僕を見切っていた」。
それ故に、瞳に浮かんだ感情は「退屈」そのものだった。
嗚呼、まるではるかな高みから
ともあれ、私と彼との交流は、こうして始まった。
『やぁ、今日も読書かい? 吾妻君』
『そういう藍染は、今日も何か相談かい?』
まるで絶対者のようなその振る舞いを前に、私は不思議と反発を覚えなかった。
本来であるならば「私の道の先に立つ者」の存在を、そのあり様が無様であればある程に許しはしないこの私にとって、それはかなり珍しいことでもあった。
意外と本の趣味が合ったとか、知らない音楽を教えてもらったとか、人間心理の造詣について僕より詳しかったとか、時には僕が彼の勉強を見たとか、一見して持ちつ持たれつ。それなりに友好的に接していた記憶がある。
何故、彼と一定の距離を保ちながら、接触できたのか。当時の私には理解が出来なかった。
そんなある日、彼がついに卍解にいたったからと、正しい始解を見せてくれた。既に入学してから、四年の歳月が過ぎていた。
夕暮れ時の訓練場、例によって鏡花水月で「潜在意識的に訓練場へと寄り付きづらい認識」を刷り込ませて人払いをした後に、彼は苦笑いしながら自らの斬魄刀を見ていた。
『屈服しても言う事聞きたくないみたいで、滅多に出してくれないんだよね。この「後ろの手」』
『手、というよりは…………、昆虫の脚のようだね』
絡繰り細工のような四つの腕が、彼の背に装着された円形の装置のようなものから伸びていた。その手先の先端は、人間のようなそれではなく鎌のような斬魄刀、それが四つ。
加えて手に持つ瞳のような波紋の浮かんだ斬魄刀。この五つの刃をもって、ようやく彼の斬魄刀「裂読」の始解であったらしい。
『二刀一対、どころではないが……』
『いや、そう言う問題じゃないよ。この始解の
指さす彼の言う通り、複腕の先端の刃にもそれぞれ目玉のような刃紋が浮かんでいる。
『本来はこの腕で、こっちに来る攻撃を自動迎撃したり、かわりに相手の隙をついて僕の斬撃とは別に自動で斬りかかったりとか、そういうことが出来る…………はずなんだけどね』
『面倒くさがりだったかい?』
『卍解してからもーっと酷くなったっちゃったよ。まぁ、これでようやく始解を公表できるようになったんだけど。
以前の場合、こっちの腕まで出るのが九分九厘なかったのに対して、今は三割くらいは出てくれるからね』
『低い打率だね……』
だが、この時点で彼は察していたのだろう。そのまま苦笑いしながら、背後の腕の上腕二本がこちらに斬りかかり――――。
『……お見事。斬拳走鬼は完全に「講師をしている死神」全員を超えたね。その実力があれば、十分実現可能なはずだ』
『…………いきなり何をするんだい』
鏡花水月で彼の一撃を受け、無詠唱で放った 破道の七十八「斬華輪」を重ね、霊圧の隙間を埋め防御した。
突然の攻撃に驚いた僕に、彼は肩をすくめて教えてくれた。
『初めて会った時に教えただろう? 君が知りたがっていること――――この斬魄刀の卍解で、そのタイミングを実現可能にできるようになった。
自らの努力と下積みによっての勝利でないことを、藍染は嫌がるかもしれないけどね。ここを逃すと何十年も後のタイミングになると思うから、善は急げだと提案させてもらうよ』
彼の物言いに不服もあったが、それでも付き合いが長くなってきたこともあり、お互いに協力する形で僕らは図書館の最奥に眠る、とある貴族が記した古い書物と、その真実を伝えるとある物品を目にすることになった。原本は大霊書回廊にあるものの写しであるそれを元に、欠損箇所を彼の言葉で補い。
すなわち――――僕はその場で、初めて「この世の原罪」を知ることになったのだ。
『……こんなものが、この世の真実だというのか? こんな無様な、こんな無体な……、こんな人柱と言うにもおぞましい所業が! 人の猜疑心と、傲慢さの上に、かの霊王は貶められてなおこの世界が成り立っているというのか !?
恥を知れ! そのようなものを安寧などとは言わない、只の停滞だ! 自らが死していることに気づかずに、ただ死んでいるだけの余暇を無駄に泳ぎ浪費しているに過ぎないッ! それを生と、「勇気ある歩み」その軌跡だと、どうして言うことが出来ようか』
愕然とし、絶叫し、しかし「無数の目が蠢く」その空間の中にあってなお、彼は態度が変わらなかった。
僕の慟哭を前に、やはり態度も一つ変わらずに。
『わかっているとは思うけど、その書物が正しいなら……、零番隊とは「原初の世界」における神を指す言葉に近しい。後天的になったものですら、それは世界のシステムに組み込まれている、と言えるだろうからね。
そう簡単に打倒できるほど、世界って言うのは甘くないね――――っと』
思わず、私にしては珍しかったことに、怒りに任せて彼の襟首を持ち上げ、怒りの感情をぶつけようとしていた。その傲慢な目でまた僕を見下すのかと。はるか高みから、まるで全てを知った顔をして「それ程の高みにいるにもかかわらず」、何もせずただ手をこまねいているのかと。
事実は、違った。
私を見る彼の目は、どこか哀れみの色が浮かんでいた。
『人並外れて才があり、人並外れて早熟で、人並外れて多くの思考を持って居たからこそ……、意外と君はロマンチストなんだよ、藍染。だからその理想と現実との差に、他の誰よりも深く深く傷ついてしまったんだ。
世界がどうあるべきかを、誰よりも真剣に考えていたからこそ。今の世界が、君にとって最も唾棄すべきモノによって成り立ってしまっているという、今の現実に』
『僕が、傷ついている……?』
自分でも思ってもみなかった思考を言い当てられ。言葉を失った僕を誘導するように、彼は僕に先導して図書館の外に出た。
既に彼の卍解は解除され、暗黒が晴れた先には夜明けの太陽が昇り始めている。
『それを挫折というのはちょっと違うかもしれないけど、そこでクサらないのが君だと思うよ』
『…………わからない。何故君が、僕に、否、
『言っただろう? 数十年くらいの差はあるって。このままいくと、君は「一人で」その真実を知ることになったろうから』
『……』
肩をすくめて、吾妻は…………、
『それは流石に可哀想な気がしたからさ。だって、「友達がわざわざ落ち込むことがわかっているなら」、気休めでも一緒にいたいじゃないか』
『――――――――』
そして、予想外の一言を言われてしまった。
『私と君は、友達、なのか?』
『似たような視野を持って……、まあ僕の方はインチキみたいなものだけど、それでも多くの見分をもとに、思春期特有と言うにはいささか傲慢極まりない物言いでお互いに色々と見下してなんだかんだとやってきたことを思えば、さ。
そう言う相手は、お互い他に作りようがないんじゃないかな?』
『…………』
『だから、ここが分水嶺だ。あえて言うよ。「君の大願には何の意味もない」。公平世界仮説なんてまだ現世でも唱えられちゃいないだろうけど、少なくともこの世界には、未だに「霊王の視えざる手が」加えられている。
わかるかい? 生と死の境界を無残に奪われてなお、かの人は今の安定した世界を否定はしていないんだ』
『…………』
『それでも、やりたいんだろう? 頂点に立って言ってのけたいんだろう――――「こんな世界は間違っている」って』
『……ッ!』
そして、嗚呼その通り自らが言った通り、彼は「傲慢にも」僕の内心を、いつもと変わらない様子のまま言ってのけた。
同時に彼は、本当にいつも通り僕を否定しなかった。
『止まる気はないんだろう? やれやれ、末はおそらく「本物の」無間行きにでもなっちゃいそうなところなんだけどなぁ』
『………………どうして君は、私に協力してくれるんだ』
『協力はしていないよ。僕も「もっと知りたかった」ってだけ。友達が行くから、まぁ、ついでにバレない程度に? くらいなノリだよ』
『そこまで軽い気持ちで見るべきものではなかったはずだが……』
『だから言っただろう? ――――意味が無いんだよ、全部』
そして、志道の目からは、この時本当に「光が消えた」。
まるで彼の卍解の闇のように、黒々としたものが覗いた。
『神の見えざる手は、この世界の全域に及んでいる。世界を正しく観測して俯瞰すれば、その見えざる手から逃れられた存在は一人もいない。かの人が興味を持って居ないことを除けばね』
『――――――――』
『だから、世界なんてそんないい加減で、適当で、誰かの都合で勝手に決まってるものなんだ。そこに抗うことに、僕はもう意味を見出せるような年齢じゃない。
若造だけど、それこそきっと裂読を手にするよりもはるか以前から』
嗚呼、だからこそ。
彼の絶望はそこに起因するのだろう。
霊王の意志。彼自身が多くの情報を観測するからこそ、この世界の今のあり様に「必ず」存在している、その力自体を観測するからこそ、この世界がいかに滑稽な猿芝居として成り立っているかを知っているからこその、絶望。
おおよそ僕にも計り知れないその絶望こそが、僕が彼に見た傲慢と「取り違えた」感情。
それは、諦観だ――――自らの生まれた理由を世に問うという、一つの魂魄として当たり前に存在する、勇気を踏み出す原動力の一つ。
それを最初から喪失していたからこそ、嗚呼、だから彼は「生きながらに死んでいる」のだ。
そのことに気付いた時、私は不意に微笑んでいた。いっそのこと大笑いしていた。彼から譲り受けた黒ぶち眼鏡の、「余裕のある」態度を崩さないための仮面をつけたまま、しかしどうしても笑ってしまった。
語らずとも、彼は私の内心を理解したらしい。目をも開き、意外なものを見た様子だ。嗚呼そうだろ、私だって私自身、信じられないくらいだ。
『本気かい?』
『嗚呼、そうだね。――――僕は僕自身の意志と力をもって、僕自身の正義感と僕自身の義憤と、僕自身の誇りにかけて、僕の生をまっとうしよう。そのことには変りない。
今の世界の在り方を砕き、新たな理をもって世界を治めるべきだ。
そうすれば――――僕が天に立てば、「君を縛るその絶望も」解き放たれるはずだ』
そうだ。まさか僕自身、彼に対してこんな「心の底から」気を遣うような心境が湧くとは、髪の毛先ほども思っていなかったのだ。
だからこそ、そんなこちらの心境の変化を見た吾妻は――――志道は苦笑いをして。
『……だったら、せいぜい僕は君の全身全霊の、世界への
いつか天に立つ君が、僕を始め全てを見下し、全てを解き放つその時を待って。
そして、この日から僕と志道は「本当の意味で」友人となった。
お互い味方をする訳でもないが、時に雑談で、時に持ちつ持たれつ。
嗚呼だからこそ、これは僕の我儘だった。
『二年の
じゃあ、ちょっとだけ『勇気の出るおまじない』だ。少しで良いから僕の手元を見ていてくれ――――』
――――砕けろ、鏡花水月。
友人だったからこそ、私は彼のことを良く知っている。
案外、彼がサボり魔であることも良く知っている。
気を抜けば自己研鑽を止め、あっという間に老け込んでしまうという確信が「友人だからこそ」存在した。
それは、許しがたい私と彼との別離だ。
だから、それをさせないために――――――――彼には守るべきものを持ってもらおうと。
守るべき者がある者は強いのだから、あえて意図的に彼のために作ろうと。彼に想いを寄せていた、3つは年の離れた後輩の少女をたきつけた。
結果は…………、中々予想外なことになったが。これもまた「余裕をもって」面白いと、僕は微笑んで受け流すことが出来るようになっていた。
彼には物凄い怒られたが、これもまた一興だ。
Q.斬魄刀について
A.名称は「
1話で剣ちゃんの攻撃をさばききったカラクリはこれ。威力がどれほど高くても、次にどこにくるか判っていれば避けようがある(※手加減モード前提)
なんなら他の隊士の今日討伐する虚に関する情報とかも、任務の種類と当日の本人たちのコンディション、流魂街とかの霊圧とかから測定して事前にある程度準備しておけるのが、彼が書類仕事に特化している所以の一つ。
Q.結局なんでヨン様は友達認定に至ったの?
A.ちょっと気に入らないけど気にかかる奴→意外と趣味が合う奴→同じ視野を得てなお自分に対する振る舞いの変わらない、可愛そうな奴 みたいに変遷していった。その当事者から友達扱いされて、しかも適切な距離をとったままでいてくれるその在り方に、心のどこかにあった孤独感が癒されたのかもしれない。
Q.虎徹錫音
A.大体ヨン様が彼女を焚きつけたのが、現在にまで至る志道の経歴がアレなことになってる原因(直因)。清音的なビジュアルに勇音をさらにオドオドさせた風な性格。