今回はやちるちゃん回な気がするのと、何かのフラグ…?
あっこれは酷い、と。眼前で繰り広げられる地獄絵図に、虎徹志道は遠い目をして現実逃避していた。座りながらせんべいを摘まんで茶を一口。ほう、と息をつき、横目で隣にいる草鹿やちるの姿を見る。
「剣ちゃん楽しそうだけど、あんまり
「そうですね。まぁ…………、身になるものも何かはあるかと。合うものもあるし、合わないものもあるということで」
「またそうやってはぐらかしてー、ぷんぷん! お饅頭ちょうだいっ!」
「はいはい」
志道の言いぶりにぷりぷり怒ったやちるだが、要求するのはお饅頭程度と可愛らしいもの。見た目通りそこは幼女らしいのか、志道も自分の娘に近い年齢に見える彼女を甘やかす方向性らしい。
すっと袖の下から取り出した袋入りの一口饅頭を食べてご満悦なやちるへ、特に理由もなくその頭を撫でる志道は完全に保護者の風格であった。
そしてそんな二人の後ろで、志道に隠れるように地獄絵図から目をそらしている男が一人。枯れ枝のように痩せた長身の男、志道ほぼ直属の部下のような
時折揺れるこの暗黒空間と、吹き荒れる暴風のような熱風と衝撃に身体を震わせながら、思わずツッコミを入れた。
「……剣術なんて必要なんスかね、更木隊長」
「――――もっと、もっとだ! もっと激しく来ねェと何も学べねぇぞジジィ!」
「この小童めがッ、少しは言うことを聞かぬか! 卯ノ花よりも性質の悪い……!」
そう、彼等の前方は死屍累々。各々死覇装をまとった死神に限らず、霊術院生や他の斬術修行に来ている門弟も数多く。そのどれもが一様に打ちのめされており、さらには更木の霊圧やら剣閃の荒々しさに蹴散らされ吹き飛ばされていた。
これには相対する長老・山本元柳斎重國も冷汗である。諸々の手続きの関係で同伴していなかった己の副官がいないこともあり、加減して抑え込むことの難しさに頭を抱えていた。
なお「卯ノ花隊長の方が性質悪いんだけどなぁ、あの人聞いているようで聞き流していることの方が多いし」と実体験をつぶやいている志道はご愛敬。
「打ち下ろすのに片手じゃ足りねェって体験は
「教えるのは斬術だと言っておるだろうにッ! 少しは受けて型を見る余裕を持たぬかっ!」
「無理な話だぜ、俺は『斬り合い』で全てを学んできたからなァ!――――」
激突する山本総隊長の斬魄刀から放たれる熱波と、更木隊長の斬魄刀から放たれる純粋な霊圧の衝撃。それらは「正面同士は」相殺こそすれ、周囲には当然のように圧倒的な物理暴力をもたらす。ただそれに対してやちるは特に何もリアクションをとらず、志道は背部に出現している四つの自動剣腕が上手い事往なして処理していた。
ちなみに、そのおこぼれにあずかり、目を焼かれるのを回避している七生なのであった。
「あんなもん、怪獣大戦争じゃないっスか……。というか、山本総隊長やべぇっス」
「護廷隊の始まりのころから未だに総隊長はってるお方だからね。『霊的に成長せず』ああなったわけじゃなく『成長し続けて』ああなってるということは、下手すると絵本に語られる滅却師との戦争の頃より強くなってるかもしれないし」
「うわぁ……」
「まあ、それと戦えてるウチの更木隊長は一体何なんだって話にもなるけどね」
「えぇ……(困惑)」
「
「それは、嫌でも理解させられてますけどね毎日毎日……。というか、やなぎんって普通に誰かわからないっスけど副隊長!?」
やちるのからかいに困惑する七生に「苗字からだろうね」と志道はやはり更木たちの方に視線を向けない。ため息をつきながら上空、すなわち「無間裂詠の空間」に取り込まれた道場の天井、薄暗い闇に覆われた木張りのそこを見て、再度ため息。
「
「? 何の話ー?」
「何でもないですよ。……あっおまんじゅう、もっと要ります?」
「欲しいー! こてっちゃんも錫ねんも、色々わかってくれるから大好きっ!」
再び袖から取り出した饅頭をひったくるように奪い取ってニコニコ笑顔で頬張る彼女に、七生は「何で虎徹
端的に言えば、これは山本総隊長のはからい。
十一番隊史上最強の呼び声も高くなりつつある、新任の更木剣八に斬術を教えようと言う試み。
例え最強と呼ばれようと、護廷十三隊結成から千年はゆうに物事を見て「未だに強くなり続けている」彼からすれば、まだまだ半人前の小童にすぎない。加えて旧知の
その霊的な特性からして周辺被害が物凄いことになるだろうと予想されること、また尸魂界の意思決定機関である中央四十六室が妨害してくるだろうことを予想した護廷隊の長老は、おのが副隊長にその話を相談した。
結果として呼ばれたのが、かつて数年間だけ一番隊に在籍していた志道であり、その卍解たる無間裂詠による「無間の召喚」をもって、その霊的な被害と状況を外界からシャットアウトするという力業での対処を考えたのだ。
ただし、山本元柳斎重國はその性質を見誤っていた。
「はーっはっはっはっはッ――――! 毎日ンな風に斬り合ってくれるんなら、もっと色々俺も仕事するぜジジィ!」
「つまるところ、楽しくなりすぎちゃってお勉強するどころじゃないんだね」
「剣ちゃん、あんまりそういうの好きじゃないもん」
「他の門弟とか全員ボッコボコなんスけど……」
いいんスかアレ、とドン引きする七生ではあるが、一応そこは最低限気を遣ってるのか、巻き添えになれど死にはしていなかったりする。
猛る剣八を見ながら、今頃外で四十六室からの妨害にあの手この手で対応しているだろう一番隊副隊長・雀部長次郎のことを思い出し「あっちの方が楽で良さそうだなぁ」と現実逃避している志道である。
なお当然、隣の芝はなんとやらだ。
そして志道に甘えるように、その背中をよじ登ったやちるは肩車しながら「剣ちゃん頑張れー!」と愉し気に応援している。
七生は、そんな彼らを見てやはり訝しむ。
「……本当、どうして副隊長の座なんて、簡単に譲っちまったんだ」
「…………それは七生の方がわかってるんじゃない?
実際、上位席官としては明らかに指折りの一人だからね。僕だって卍解しないと戦い辛いくらいだし」
ぼそっと呟いた独り言だったが、思わぬところから返答があり。志道は肩をすくめながら、元気だしなと七生にはせんべいを手渡した。
※ ※ ※
「一ノ瀬君、どうだった?」
「あー副隊長、アイツ途中で復活しました。四番隊に運ぶ前にっつーか、後、えー、何っスか? あのなんかデケェ男。
隊長ぶっ殺してたけど、どう見ても死神じゃなかったし、あの男。これって剣八の襲名になりますよね、一応。でも死神じゃないし…………」
「五助君……、鬼厳城隊長の扱いが軽いね?」
「いやだって……、ねぇ?」
そういえば七生は暗示にかかってはいなかったけ、と、虎徹志道
つい先ほど、自らの部隊の隊長が殺されたと言うに、この二人は妙に軽い。理由としては色々とあるが、一つはその隊長が明らかに弱いことが原因だろう。もともと腕っぷし一つで成り上がるのがこの十一番隊であるからして、特例で隊長となっていた志道ですらその斬術拳技走法鬼呪は最低限保証されている。
それを打倒したのだから件の鬼厳城剣八とて実力はそれなりだと思ってはいたのだが……、彼が倒れてから数人の隊士が突然苦しみだしたことや、その隊士たちが三席四席を始め上位席官であることから、この虎徹
「あんまりカリカリしても記入ミスが増えるだけだからね。……繰り返すけど、
「……副隊長、その、隊長になる前のあの野郎とは親しかったんスか?」
「僕、基本はみんなと仲良かったからね。彼が隊長になった後も、彼も彼の子飼いも皆、最低限の仕事はしてくれていただろう」
「そりゃそうですけど……」
「八代目の痣城隊長がその類のこと全然ダメダメだったからね。隊長も隊長で『切り捨てた』部分だから仕方は無いんだけど。
だから、代わりに僕がメンバーとの相互理解やら何やらにつとめてた訳だ。……んー、ちょっと長くなるし、お茶菓子でも飲んで何か食べるかい?」
「いや、流石にそこまで休憩するのは――――」
「ようかん!」
「はいはい」
「いや、俺は何も言って……って、何だこのガキ!?」
そうして十一番隊舎の事務室とも呼べるこの部屋に、突如現れた小柄に明るい髪の少女がやちるであった。当時から今も何一つ身長は変わらず、ただ服装は死覇装ではなくボロボロの衣類である。
そんな彼女は、志道が棚から取り出す菓子類に目を輝かせ、「はいどうぞ」と目の前に置かれた竹筒の羊羹を愉し気に出して食べていた。
「あま~い! 甘いよ、めがねん!」
「それは斬新な呼び方だね、フフフ」
「いや、フフフじゃねぇでしょう副隊長!? このガキって確か、あの野郎ぶっ殺した男の肩に乗っかってた……」
「おかわりある?」
「早っ!? 羊羹、食うの早ッ!?」
「今、冷めてるけどお茶いれるから待っててね。一気に食べると喉つまらせるから」
「は~い!」
「副隊長も何か手馴れてるッ!!?」
伊達に妻子持ちではない虎徹志道である。幼子の扱いもなんのその。適当にご機嫌とりをしながら、会話を続行する志道に謎の尊敬と焦燥のある七生であったが、くしくもその嫌な予感は的中した。
「えっとねー。剣ちゃんが、自分の居場所くらい自分で
だから、えっと……、二番目? ちょうだい!」
「副隊長の座を譲れって事かな?」
「うん!」
ニコニコ笑顔で饅頭を食べる幼女を視つつも、床に刺した自らの斬魄刀を一瞥する志道。目玉模様の波紋がきらりと光ったような、そうでもないような。「なるほどね」とつぶやくと、肩をすくめて彼女の頭を撫でた。
「くすぐったいー」
「条件付きで、良いですよ? 草鹿
「ほえ? あたし、名前教えたっけ――――」
「……納得が! いかねぇですよ!」
そして、七生は怒髪天となった。枯れた肉体に喝を入れ立ち上がり、腰に差した小太刀サイズの斬魄刀を抜く。
こちらを視る無垢な表情。斬魄刀すら持って居ない子供に、自らを「救い上げてくれた」、死神として死んだ我が身をそれでも必要だとしてくれた敬愛すべき上司を愚弄するような状況が続いていることが、いい加減彼の限界を突破し、堪忍袋の緒が切れていた。
当たり散らす先が幼女であるという事実すら、客観視できないほどに。
そんな彼に対し、志道は「あっ止めた方がいいんだけど……」と歯切れが悪い。
「止めないでください副隊長……、そもそも実力で言えばアンタは隊長のままなんだろ。だったら、こんな形でずっと舐められっぱなしなんて、俺は我慢できねぇ。
十一番隊第八席・
「まねっこパンチ!」
「――ひぐゥ!?」
そして斬魄刀の改号を唱えた瞬間。刀身が、先端にクナイの刃のようなものがついた鞭のような形状へと変化した瞬間に、楽しそうに飛び上がったやちるの拳が七生の腹に刺さった。
拳は一発だと言うに、その打撃は「腹部三か所」を抉るような一撃。
そのまま気絶して倒れる七生に、やちるは「あれ?」と不思議そうであった。
「強そうだったのに、すっごい雑魚……?」
「七生、昔に大けがを負って本当なら死神としてはもう終わってるタイプだからね。斬魄刀はまあまあ強いんだけど」
「なんで辞めてないの?」
「僕がいないときに一人でこなせる事務処理能力って中々いないし、卍解まで覚えれば戦線復帰できそうだからかな?」
「ふ~ん。……それで、条件って?」
こてん、と首をかしげるやちる。幼児らしく愛らしい仕草であったが、そんな彼女を見て苦笑いを浮かべながら、志道は入口の戸を閉め、音が漏れるのを防いだ上で言った。
「いかに斬魄刀といえど、最低限の事務作業は覚えてもらいますよ?
「――――っ!」
思わず倒れた七生を見てから、志道を見上げるやちる。
彼は苦笑したまま、両手を上げて話を続けた。
「別に、誰かに言いふらしもしませんし、それを理由に副隊長の座を譲らないとかそういうこともありませんから。そこの七生もちゃんと気絶してるから情報漏れの心配もありませんし。
まあ、お手当が下がるのはちょっと痛いですけど、
当然、純粋に斬り合った際の実力でいっても、僕より強いという大前提はありますけどね」
「…………何故わかったんです?
おっと、と志道が今度は目を見開く番である。先ほどまでの能天気で奔放な雰囲気は突如なりを潜め、幼い姿ながら立ち振る舞いに節度と理性が伺える。表情もどこか大人びたものとなったやちるは、なるほど確かにその精神性の不釣り合いさからすれば、只の魂魄であるとは言い難い雰囲気が漂っていた。
微妙なやり辛さを覚えながら、志道は「あー」と言葉を選ぶ。
「僕の斬魄刀、裂読はかなり怖がりでして。情報収集と言えば聞こえは良いですが、覗き見が趣味みたいなものなんですよ。そうなるとあなた、野晒とて別に隠している訳でもないんでしょうから、判る人には判る話です。
多分、僕の嫁も『浅打の具象化』は見慣れているから、そっちも一発で正体が知られるとは思います。死覇装くらいは見繕った方が、気配は上手く隠せるかと」
「そういうことですか。……振る舞いだけこうしていても、ダメってことですね。人間の魂魄というのも中々難しい。
だけど、あなたが剣ちゃんや
あえてわざわざ手の内を大量に明らかにし、アドバイスまで送る志道。その戦意や悪意を感じない霊圧を前に、妙に理知的になったやちるは安堵したようにクスクス微笑む。手で口元を覆うその振る舞いは、どこか四番隊隊長・卯ノ花烈を思わせるもので、そう思えば漂う雰囲気の妙な得体の知れなさもどこか共通している。
人によっては色気すら感じさせるその大人びた振る舞いに、志道は彼女がどういった成り立ちで出来上がった斬魄刀なのか、おぼろげながら察しがついたのだった。
とはいえ怖い怖いと物を言わぬ男ならば、この男は卯ノ花烈に目を付けられ今の立場に押し込められたりしていない。何食わぬ顔でやちるに向けて「それはそうとして」と本題を切り出すあたり、志道はそれなりに肝が据わっていた。
「もし副隊長をやりたいんなら、書類仕事は覚えて頂かないといけませんかね。最終的にハンコだけ押印するとかにしても、流れとその作業理由やら、書類の形式くらいは覚えてもらいませんと」
「…………わ、私は斬魄刀ですのでそう言った人間がするような面倒なことは――」
「もし仮に何かあって僕や七生が倒れでもした時、更木隊長が代行できると思います?」
「うっ」
「目をそらしても仕事は無くなりませんので、出来ることからコツコツするべきかと」
「う、うぅ……」
「大丈夫、大体は手順書が出来てますから。まあまずは文字を覚える所から始めましょう。
ダイジョブ、ダイジョブ! 何かあったとき、緊急事態でも出来る程度の能力を身につけて貰えれば、それで十分ですから」
「文字わからないのまで知ってるんです!? あと何か全然大丈夫な気がしないんですけど、えっと……」
「虎徹志道です、お見知りおきを」
「こて……、うん、こてっちゃん絶対いじわる! 女の子泣かして楽しむタイプの人!」
「むしろ泣かされたのは僕なんですけどね……をのれ藍染惣右介…………」
どこか遠い目をする志道であったが、ともかくこうして二者間での副隊長委譲の合意は形成されており。
時折、虎徹家にて彼の娘と一緒に勉強をするようになったこともあり、やちるは志道の家族と意外と仲良くなったのだった。
※ ※ ※
「四十六室の言に従うのもこればかりは業腹じゃが、こんな稽古と呼べぬことを毎日続けておったら、護廷十三隊がもたん。何か策を練るべきかの……。
おぉ世話になったな虎徹志道、健勝のようで何より」
稽古終わりにつき卍解を解除した志道に、愚痴をこぼしながらも声をかける山本総隊長。七生や志道は頭を下げ、志道に肩車されたままのやちるも「またね、じいじ~!」と元気に手を振る。
立ち去った総隊長の背中を見送りながら、慌てたように立て直される道場を尻目に、更木剣八はどこか消化不良そうにため息をついた。
「どうしました? 隊長。射場さんでも呼んできましょうか?」
「呼んで来たって酒飲むだけじゃねぇか、休日はアイツ。……いや、確かに楽しかったっつーか、ジジィの本気をちったー見れたんだが、どうにも詰まらねぇ」
何かわかるか? と問う更木剣八に、志道は自らの斬魄刀を少しだけ抜き、目のような波紋を一瞥して納刀する。
「…………多分、ネタばらしされたみたいな気分になったからじゃないですかね」
「ネタばらし?」
「どゆこと、こてっちゃん」
剣八だけでなく、頭上のやちるが志道の髪の白い部分を摘まみながら問いかける。
「更木隊長って、あんまり相手の手の内を知らないで戦って、討ち果たすような戦い方の方が好きですよね。今までの傾向から言って、その身一つ刀一つで生き残って来たから」
「嗚呼、そういやそうだな」
「そこをいくと、今回山本総隊長は『斬術を教える』ための動きをしていた、つまり基本に忠実な斬り方をしていた。……今まで隊長が戦ってきた正規の相手って、大体はそうやって斬術を学んできてると思うので。
ましてや総隊長が使う斬術は紅染百式、つまり護廷十三隊の基本となる型。一部の人を除いて、大体の人の身体の動きのベースになっているのがそれになります」
「なんとなくはわかる。つまり、テメェの戦ってきた敵の基礎の基礎をネタばらしされたようなモンか。……なるほど詰まらねェ訳だ」
面白い話も聞けたけどなぁ、と剣八は肩をすくめ、やちるを志道の肩から持ち上げる。そのまま自分の背に乗せるが、いまだに志道の白髪部分を手放さないやちるであった。
言って聞かせて離させた志道であったが、そんな彼を見てニヤリと笑う。
「何だ、妙に懐いてんじゃねぇか」
「うん! 錫ねんも勇ねんもこてっちゃんも、いっぱい御菓子くれるし!」
「それだけではないとは、思いますけどね。それに御菓子は『今の状態を維持するためには』必要経費みたいなものでしょうし」
「それは……、うん」
いまいち剣八には理解できない会話をする二人であるが、しかしどこか親子めいたやり取りにも見えなくもない。考えてみれば、このやちるは自分が引き取ってからずっと適当に育ててきたのだが。そんな自分でカバーしきれないところもカバーしているように見える志道を見て、ふと興味が湧いた。
「なぁ。結婚って、楽しいのか? 戦いみてェに」
「…………まあ、予想外の連続が続くと言いますか。結婚もそうですし、子育てもそうですし、どれもこれも皆、ある意味戦いみたいなものですかね」
その答えに「ほう」と目力の強い笑みを深める剣八に、隊長も家庭持ったらわかりますよ、と煽るような志道。そんな彼にひやひやする七生はともかく、剣八の肩でやちるが「れっちゃん……?」と首をかしげていた。
【おまけ①】
「どうしましたか? 卯ノ花隊長」
「いえ、山田隊士。…………何かこう、得体の知れない生暖かい寒気が」
「それは寒気と呼ぶんでしょうかね」
「少なくとも私の生き方から考えられないような何かがあったような、殺気ではありませんが…………、悩ましいですね」
【おまけ②】
「どないしはりましたか? 藍染隊長。眼鏡曇っとりますやん」
「…………何かまた、志道が僕に妙なタスクを割り振ったか、増設して来たような気がしたのだがね」
「あのえらい物腰柔らかいパパはんが?」
「彼はある意味で凡庸で普通であり、それ故に妙なところで非凡で異常なことをやらかすところがあるからね。君も多少なりとも面識があるのだ、十分気を付けることだ」
次回は一応、鬼厳城剣八回予定