転生して魔法少女になったけど汚れ仕事ばかりです   作:タメガイ連盟員

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長らく間が空いてしまい申し訳ありません。他の作品の前書きと活動報告にも書きましたが、目の病気をやってしまったので、続きもまたお待たせすることになりそうです。読んで頂いている方々にも申し訳ありませんが、完結はさせたいと思っているので気長にお付き合い頂ければ幸いです。

なお、本作はタグにもある通り『陰鬱曇らせ杯』参加作品です。誰も幸せにならない、絶望の物語です。それでもよろしければ、お付き合いください。
感想返しは間が空きすぎたので、個別には行いませんが、書いてくれた方には改めてお礼申し上げます。
「これ、魔法少女の皮を被ったダーク系の特撮じゃね?」との感想がありましたが、私は少女の絶望が好きなので! 魔法少女にしました。



第八話

走り去る零奈の後ろ姿を呆然と見送る陽介。走り去ったと言っても、家はすぐ近くだから会おうと思えばすぐ会えるのだが、果たして彼女の部屋を訪ねたとしても顔を出すだろうか。そんなことを考えていると、突如、陽介の臀部に衝撃が加わる。

「痛っ!? 誰……日向! なにすん」

「なにしてんのよ!」

 陽介は妹の突然の襲撃に抗議しようとするも遮られてしまう。

「零奈ちゃん泣いてたよ!? いったいなにしやがったの!!」

「俺にもわかんねえよ!」

「なにそれ!? このノンデリアニキ!!」

「あのー、おふたりさん?」

 口喧嘩をおっ始めた二人の間に入るように、優姫が呆れた様子で割って入る。

「ここ、駅前ですぜ」

 当然ながら、周囲の注意を集めてしまっていることに気付いた2人はそそくさとその場を離れる。優姫は呆れながらそのあとに続くのだった。

 さて、場所は変わって、太田家近くの公園。

「あれ、ついてきたの?」

「んー、ひなっち、あたしに話、したそうだったし」

 

「うーん、そだね、聞いてくれる?」

 

「おうよ」

 

 どんな話か、と言えば今日後をつけていた零奈のことだ。陽向、それから陽介と零奈はいわゆる幼馴染みだ。母親同士が親友だったことがその縁の始まりだと言える。もっとも、零奈の母親は12年前の事件で死亡しているが、それでも、太田兄妹の母は親友の娘の世話を焼いている。当然陽向もそんな零奈の事情は知っているが、母親が亡くなっていることには触れないように、と自分の母親に言い聞かされていたからその通りにしている。

 零奈が太田家の近所アパート(太田家が大家なのだが)に住んでいるため、小さい頃からよく一緒に遊んでいたものだ。

「でもさ、零奈ちゃんってちいさい頃はお兄ちゃんとか、男の子と遊ぶことが多くてさ」

「えっ、そうなの? めっちゃ大人しそうに見えるけど」

「そうなの。小学校に上がるまで、零奈ちゃんのこと男の子だって思ってたし」

「そこまでか」

「でも、あの日から、人が変わったみたいに、今みたいに大人しい子になったんだ」

 そう。あの日。陽向は忘れもしない、いや、忘れてはいけない出来事があった。

 四年ほど前のことだ。その日はとても月が綺麗だった。だから、家のベランダから見るだけでは満足できず、公園の開けた場所で見ようと、夜なのに屋外に出てしまったのだ。

 夜はマモノが現れる時間だ。街灯がある場所には現れにくいとは言え、危険であることに変わりはない。そして、あるいは当然と言うべきか、陽向はマモノに襲われたのだった。マモノに襲われれば、例え大人でもひとたまりも無い。当然、未だ魔法少女になっていない陽向は絶体絶命の状況だった。そして、マモノの爪が陽向に迫り、もうお終いだ、と思ったそのとき、その爪を遮り、零奈が陽向のことを庇ったのだ。無論、零奈にもマモノをどうにかする力などない。マモノの爪は、零奈の胸を貫いた。それからのことは、陽向もよく覚えていない。ただ、零奈の背から吹き出した血が自身を濡らしたことだけしかわからなかった。

 翌朝、目を覚ました陽向は両親からこっぴどく怒られたが、なにがあったのかはわからないが、零奈が無事であることを知ってひどく安堵したことははっきりと覚えている。今にして思えば、近隣にいた魔法少女が倒したのだ、と思うが、そのときのマモノがどうなったのかわからない。

 そんな出来事のあとからだ、零奈が女の子らしくなっていったのは。なぜかはわからない。ただ、陽向にとって、零奈という存在に対する見方も変わっていった。その2年後に零奈の父親が死亡したことでその変化は決定的なものになったと言って良い。

 以前に陽向が優姫に語ったように、『彼女を幸せにしたい』と言う思いを抱くようになったことに気づいた。だからこそ、中学生になった直後に行われた魔法少女に適正検査で『ポジティブ』と言う判定が出たことに、強い喜びがあった。

「これで、零奈ちゃんを守れる」

 あの日、零奈が自分を庇ったことで傷ついたことは、陽向の心の奥底に燻り続けていた。そして、零奈の両親がマモノのせいで亡くなったことを思い起こせば、陽向がそのように思うのも当然のことだった。そして、陽向は当然のように魔法少女になる道を選んだのだった。当然、母親には反対された。これもまた当然のことだろう。親友とその夫がマモノ被害で亡くなっているし、そんなマモノと戦う魔法少女になるなんて、容易に認められる親はいないだろう。しかし、前述の思いから陽向は反対を押しのけ、魔法少女となったのだった。

「なるほどねぇ」

 優姫はそこまで強い意思を持って魔法少女をやっているわけではないが、気持ちはわかる。まあ、いささか重すぎるようにも思うが。

 もっとも、陽向は零奈が魔法少女になっていることは知らないし、そこでどんなことをしているのかも知らない。知らない方が幸いであることは少なからずあるものだが、これはその一例だろう。

「でさ、それで陽向のアニキとデートさせるのって、そういうこと?」

「むむむ」

 思わず唸る陽向。なにがむむむむだ。と言いたいところだが。

「お兄ちゃんデリカシーないからなぁ……」

「そこはまあ、うん」

 流石に優姫も否定できず、言葉を濁すしかない。彼女が見るところ、両片思いの一歩手前と言う印象だが、零奈の方が自己評価が低すぎて、陽介への好意を肯定できていないように見える。陽介の方は多少は意識し始めているのだろうが、ちいさい頃にイメージが強くて同性のように接してしまうのだろう。これはどっちも意識を変えてやらないとどうにもならないのでは?

「前途多難ですなぁ」

「そだね……」

 

 そうため息をつく2人だった。

 

 

 

 お気づきだとは思うが、陽向と零奈を襲ったマモノがどうなったのか。

 既に語られているが、現在の零奈は転生者である。正確に言えば、零奈には転生者と本来の零奈魂が同居している状態が10年ほど続いていたのだ。零奈はかつては男性であった転生者の魂の影響で男の子のような少女になっていたのだが、転生者の魂は一種の休眠状態にあったため、影響はその程度の影響しかなかった。

 しかし、零奈がマモノから陽向を庇うと言う事件が起きたことで状況が変わった。マモノは零奈の魂を食らい、零奈の肉体を支配しようとした。しかし、そこで想定外の事態が起きた。零奈の魂が消滅したためか、転生者の魂が覚醒し、肉体の主導権をマモノより先に握ったのだ。このため、本来なら魔人となるはずだったのが、エラーを起こし、マモノは体内で魔石に変化、現在の零奈となったのだった。

 そう、陽向から見た零奈の変化は、よく知る少女が、見知らぬ誰かになってしまった。そう言えるのだ。

 その意味でも、現在の零奈が自身の存在に欠陥を感じるのは当然のことかもしれなかった。零奈が消失したことを良いことにその肉体を奪っている。いや、もちろんこのような状態になったのはマモノの存在が原因ではあるのだが、一度死んだはずの男の魂が少女の肉体を奪った、と言う点には何も変わりは無いし、死を避けるためだけに、誰かを傷つけていることの言い訳にもならないのだが。

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