Loose my hero 作:雨と無知使い様
今更ですがライルの変身後の姿はバイオハザードのタイラントの異常に発達した部分に、黒いナノマシンが蠢いている感じです。
つまりヴェ○ム
「残弾は三発、冗談抜きに死にかけたな……」
噛み砕かれた俺の左腕はダラリと力なくぶら下がり、歯型だったのか、激しく揺さぶれた結果、激しい裂傷が刻まれた傷口からは止まる事なく血液が氾濫する。
予備の弾倉まで使った挙げ句、敵対した最低級の獣3匹内、2体撃破、残り一匹には逃げられた。
不完全な変身とはいえもう少しまともに動けたのなら、三匹とも倒せていた……いや、これは言い訳になるな。
あの日までは此処までの無様を晒すことはなかったのだが、超人因子が破損してからは少しも前進してるとは言えない。
何としても、この世界から獣達を排斥する。
それだけが俺に遺された唯一の償いで、生き方。
とはいえ以前とは勝手が大きく変わったのも大きな事実だ。
これまで通りの冷静さ。その裏に潜んだナニかが突如顕在化し始めた。
原因ははっきりとは分からない。
だが思い当たる節、いや変化の兆しとなったものはわかる。
それは一体何なのかというと、
『サンプルを摂取します。』
ズズズと音を立てて獣の亡骸にへばりつく相棒を眺めながら、俺は瓦礫にもたれかかる。
敵と戦うならば、敵を知るべし。
そんなもっともな正論を受け、俺は獣と戦いそのサンプルをアドナイが採取し、弱点を解析する。
あわよくば変身を妨げる超人因子の損傷の原因究明、あわよくば修復……という次第だ。
このサンプルの回収をし始めてから、失敗続きだった変身がほんの少しずつだが、成功できるようになってきた。
最初は胸部、次は左腕、今日で顔半分。
ちょっとした進化だが、それでも着実に歪ながらも変身は成功への兆しを見せ始めた。
未だ発展途上とはいえ、獣共と戦う術を手に入れたのは大きな成果である。
一向に弱点らしいものが分からないままだが、前進はしている。
それだけ変身という手札は貴重で肝要なものだ。
故に失われたものの大きさは計り知れない。
ヒーローが不在の人類は、余りに脆い。
絶望が世界を支配してからは特にだ。
無数にいたヒーロー達は文字通り絶滅して、軍事力の大半に匹敵する存在を失った世界は瞬き間に蹂躙された。
これまでどんな手傷を負っても、心に病を抱えようともうちに潜む超人因子が破損する事は一度もなかった。
しかしあの日、空に
もはや変身という術を失った人類は途方もなく無力だ。
「ぅっぷ、まるで、内臓が攪拌されたような、気分だ……」
そしてその一人、俺もまた最低級の獣を相手に瀕死の重傷を負いつつ、今日もまた生き残った。
適合手術を受けたとて、超人因子が破損した今は少しばかり頑丈で力が強い人間にすぎない。
弾丸を素手で掴んだり、何万トンもの脚力もない。
精々腕が千切れても失血死するまでの猶予が長くて、内臓が飛び出たり、弾けたとしても数時間程度は支障なく活動出来るくらいだ。
『もう暫く辛抱してくださいライル。それに何だも言いますが……』
「みなまで言うな、セーフモードで戦うのは止めろ、だろ?」
『……分かっているなら、行動してください』
セーフモードに移行した場合は戦闘を中止し、即座に撤退しろ。
適合手術を受けて直ぐに誰もが教わる事。
そんな初歩的な事、ヒーローを応援する子供でも知っている事実だが、実際のところ昔はそうでは無かった。
最古のスーパーヒーローである"超人"は歴代で最も強く、完全無欠のヒーローと称され、一度も敗北する事なく敵対組織を解体に追い込んだ。
しかし俺が生きた時代のヒーローは彼らと比べて貧弱だった。
語弊を生むようだがこれは紛れもない事実だ。
それにその原因も特定されている。
超人因子。
スーパーヒーローにのみ刻まれるとされるソレは、"始まりの超人"から検出され、後世のためと提供されたものだ。
そのエネルギーの源は人々の希望や声援であり、そのすべてがかの超人へと集約していた。
しかしそのメカニズムの解明は余りにも遅すぎたのだ。
適合さえ出来るのならば誰でも超人となれる世界。
世界を守るため、人類の進化のためと無償で提供された技術は瞬きの間に世界中へと広まり、超人の間によって生まれた子は、超人因子を継承する事が分かり、適合性のない者は、いつの間にか進化の過程で淘汰され、その姿を消した。
結果、人類の全てが超人となった訳だが、肝心な超人因子が機能不全に陥る事態となった。
何せ、人々の想いが集約して生まれたのが真のスーパーヒーロー。
超人は想いを独占することで、漸くヒーロー足り得る存在となるだ。
にも関わらず超人因子を普及させてしまった弊害で、本来得られるはずの力が100億分の一になってしまい、進化とは程遠い結末を辿る。
とはいえ人々の声援を集約させれば力は得られる。
だから世界は人気を集中させて、公的なヒーローを作り上げて世界の敵と戦おうとした。
悪くない考えではあったが、結果的にこの試みも破綻している。
原因は国家観による競争。
ヒーローの強さが世界の治安を保つと言うことは、ある種の軍事力の誇示という側面を有している事となる。
だから世界各国で粗製濫造的にヒーローが作られたり、魔法少女や戦隊モノといった特殊なヒーローを使ったり、果てには犯罪組織にまで利用される始末となった。
最後のスーパーヒーロー"ラト"の時代には驚くことに公式ヒーローの数だけで100を超え、非公認のヒーローや有名人の人気を差し引いて計算すれば、"ラト"の戦闘力は"始まりの超人"と比べて百分の一にも満たない。
人間社会のゴタゴタの結果、ラトは獣に敗れ、人類は緩やかに絶滅への道を辿り始めた……というのが事の端末になる訳である。
俺はというと、愚かにもヒーローがお呼びじゃなくなったこの時代ならば、超人因子が機能するのでは?と考え、奮闘しようとした……
が、希望が絶えたこの世界では、マトモに変身すら出来ないという壁へ突き当たり、対策を考えているというのが現状。
「……俺は今、法律的には違法ヒーローになるのか?免許は取ってたが、違法改造スレスレの手術受けてた上、免許の更新もしていない……レジスタンスに捕まるのは流石に厄介か」
『インターネットに接続できません』
何気ない一言を拾い、検索エンジンにアクセス。
「何も別に調べろとは言ってはいないんだが、いやいい!調べようとするな!」
『検索を中止します』
音声認識で某的検索サイトへ繋がり、類似の検索結果を元にAIが回答するシステムは衛星が落とされた今なお、現在であり、不要な長物となっていた。
備え付けられた機能はいわば人間にとっての習性であり生理的なモノに近い。研究畑出身ではない俺にはどうすることもできず、この無駄となってしまった機能を外すには技術者を探すしかない。
たとえ見つかったとしても、設備や材料があるかはさておき、戦闘中に検索でもされればナビゲートもままならず、危機的状況に陥るリスクも看過できない。
ナビゲートと検索の優先順位はおそらく定められたおり、ナビゲート最優先……ではあったのだが俺のアドナイは
───つまり、こいつは違法改造されたデバイスで、戦闘中でも勝手に検索を開始して、『インターネットに接続できません』と喋るだけの厄介ナビゲートAIに成り下がったわけだ。
10年近くコイツと旅をしてきた事になるが、こればっかりはラトを恨んでもお門違いにはならんだろう。
「……っふう。で、まだセーフモード解除出来ないのか?」
戦闘を終えてから、それなりの時間が経過した。
今回の傷は普段のそれと比較して、幾分か酷い程度、それこそ常人なら生死の瀬戸際を彷徨う程度のありふれた傷にすぎない。
ヒーローにとっての致命傷は腹にデカい風穴が空いたり、首と胴が泣き別れになるようなもの、つまりは即死する以外で死に至るような手傷にはならない。
とはいえ再生能力も落ちているというのも事実、アドナイの指摘は正鵠を射ている。
『現在、サンプルの摂取と肉体の修復を継続しています。直に終了する見込みです』
「サンプルか、マーク博士が見つかれば少しは変わるのだろうか……」
アドナイの返答を聞いて、どうしようもなく無力感に苛まれながら一人黄昏れる。
マーク博士。
齢60を超えた老人で、ヒーローの時代を一代で築き上げた天才科学者。
二十歳の頃に超人と出会い、彼を研究してアドナイを開発した人類が誇る叡智、その人。
彼がまだ生きているのなら………
『ライル、遂行中の全てのタスクが完了しました。それと一件の通信が入っています』
「そうか……ん?通信?」
アドナイの報告に思わず、自分の耳を疑って聞き直す。
あの日以来、人類が有したインフラの大多数が使用不可能になっている。無線通信はレジスタンスの各拠点に置かれる中継機無しには繋がらず、緊急時にしか使われない。
それこそ無数の獣に拠点を襲撃されるような緊急事態くらいなものだ。
『録音を再生します』
《やあ"ラト"、私だ。かつてトウキョウと呼ばれた街、私は今そこにいる。》
「まさか!」
黒い立方体、待機状態のアドナイから響いた声。
忘れようもない、俺をこの道へと導いた人物にして、アドナイを開発した世界的著名人。
噂をすればなんとやら、というやつだろうか?
生きていたとは想像もしなかったが行幸だ。
《是非とも君と話をしたくてね、トウキョウで待っているよ。》
《あーそうそう。実はだね、あの日からもう1───ザザッだけ─────に─────
『録音の再生を終了します。マーク博士はどうやらトウキョウにいらっしゃるようですが、彼の地は………』
「………」
マーク博士の伝言を再び脳内で再生する。
古い時代、ブラウン管のテレビでよく見た砂嵐のようなノイズの混入で会話が阻害されていた。
トウキョウはあの日、獣達が現れた発生源。そして"ラト"が命を落としたとされる場所だ。
今や魔境と呼ばれる、ニホンの首都。
俺の故郷でもあるその国は、すでに獣達の占領下にあり、例え俺達が変身することができても極力訪れるたくはない場所だ。
少なくとも、
そんな場所にどうして博士がいる?
ヒーローでも二の足を踏むような魔境だ。
どう考えても、
「彼ら……」
ノイズでほとんどメッセージが飛んでいたが、要は博士の他にも人がいるという事。
「アドナイ、ここからトウキョウまで全力疾走でどのくらいかかる?」
『まさか行く気ですか?推奨はしませんよライル。そもそもヒーローとしての活動も今の貴方には適性ともいえませんし、第一───』
「だとしても、だ。俺たちは直接ラトから後を託されたんだ」
『なら尚更です。貴方にはラトの後を継いで頂かなければなりません、ここで貴方を見殺しにするのは彼の遺志に背くこととなります』
「だからと言ってラトが目の前で困っている者見捨てると?」
『彼ならば……』
「だろう。ならば行くしかない。」
矛盾する行いだというのは俺も痛いほどに分かる。
ラトの後を継いで世界を守る使命。
どれも俺には到底出来なかった事だ。
やっぱり、あの男は
「それに博士を助ける事が出来れば」
俺では
だからと言って、諦めるつもりもない。
未練がましく、縋り付いてでもこの可能性を捨てたくはない。
内心、どこかで諦めていた心に熱が灯ったような感覚。
灰色に澱んだ世界が色を魅せる。
「たとえ俺が死んでも」
あの男は打算では動かなかった。
気がついた時には敵の中へ飛び込むような、無謀で無遠慮で愚かな男だ。
そんな真似正気ではできない。
ラトの後を継ぐ?
ああ、きっとそれを真に受けてしまった俺は気でも狂っていたんだ。
だからこんな気狂いのような行動をしてしまう。
分かっている、トウキョウに向かえば確実に死ぬことは。
だが、
希望が、可能性が、未来が。
その輝きが目を焼いてしまったのだから、そうなれば最後だ。
まるで麻薬でも使ったかのように、戦いの高揚感にも似た熱のような何かが、痛みも恐怖も奪い去る。
命の使い道がようやく見つかった。
「世界を救える」
ライル……小市民根性が染みついている死にたがりのヒーロー。ラトから後を託されたがその真意を未だに汲み取れない男。ヒーローに焦がれて絶望した子供だった男の末路。
アドナイ……ラトに違法改造されたデバイス。性能もピーキーで身体の保護よりも戦闘に特化しており、選りすぐりの適合者でも装着してマトモに戦える人間は少ない。ラトの真意を知るが故の苦悩を抱え、ライルの自殺にも似た提案を拒まずにいる。
博士……獣が現れた日から姿を消していたが、何故かトウキョウにいた天才。
獣……神話級、伝説級、幻想級、空想級、架空級、妄想級の順にランク付けられており、現時点で直接確認されたのは幻想級まで。伝説級以上の目撃報告は
筆者の性癖の都合上、闇の深い世界観となっております。
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もっと(鬱展開)ちょうだい!
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やはり人類は愚か…-
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お慈悲を!
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待て!ブロリー!