夏油っぽい女子生徒をブルアカに入れて先生を曇らせたいだけの話   作:かゆ、うま2世

1 / 6
続け(願望)



始まり

誰もいない夜中の街。一際闇が深くなっていく、路地裏の奥。ぐちゃぐちゃと聞こえる咀嚼音を聞き流しながら、一歩一歩、私は彼らに近づいて行く。

 

 

「……………」

 

 

四足歩行で、顔は口だけの化け物。自慢の口から血を流しながらこちらを見るそれに向かって、ゆらりと力なく手を伸ばす

 

青が周囲を照らし、化け物は小さな玉に変わった

 

 

「……食べて」

 

 

消失したヘイロー。食いちぎられた腹。大量の出血。確実に死んでいるその少女を、何も残さない為に食べさせる

 

こんな日々が、どれだけ続いた事だろうか

 

 

「……はぁ」

 

 

祓う、取り込む。その繰り返し

 

 

「あ……む…」

 

 

誰も知らない、神霊の味

 

 

 

 

吐瀉物を処理した雑巾を、丸呑みしているような

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

銃声が嫌いだ。奴等が産まれる

いざこざが嫌いだ。奴等が産まれる

神秘が嫌いだ。奴等が産まれる

自分が嫌いだ。奴等が産まれる

 

 

 

何を思っても、一人の人の虚しい妄想に全ては消える。このキヴォトスに、銃声が響かない日は一日たりとも存在しない

 

 

 

───生まれつき、人には見えないモノが見えた

 

 

 

その正体は、神秘と負の感情から産まれる化け物。私はこれを神霊と呼んでいた。由来は適当だ。神秘から産まれる幽霊みたいなナニカ。だから神霊

このキヴォトスで度々発生する行方不明事件の原因の七、八割は神霊の仕業。そして、誰もそれを知らない。当然だ。奴等が見える人間を、私は私以外に知らないのだから

神霊に対抗出来るのは、常に神霊が見える私だけ。他の人も特殊な状況下では見えるけど、それだけで対抗できるなら行方不明者はもっと少ないだろう。だから私は戦っている

 

私にこんな力があるせいで、私の日常が壊れていく

 

 

「はぁ……」

 

 

いつも通り、どこかの廃墟を一人歩く。壁についた銃弾の痕一つを見るたび、気が重くなる。この調子なら、明日か明後日にはまた別の神霊が産まれる筈だ

 

神霊が産まれるメカニズムは簡単だ。皆、銃弾に神秘を込めて放っている。だが、それが全弾命中するのかと言えばそうではない。外した銃弾は、壁や地面に神秘と共に残り続ける。その神秘と、人の持つ負の感情。この二つが合わさって神霊は産まれる

 

少し前からどっかに行った連邦生徒会長のせいで犯罪率も爆伸び。当然神霊の数も質も上がっている。毎日毎日、命がけの戦いだ

 

 

「……また来よう」

 

 

この上なく醜い蝿のような神霊を一匹。廃墟に残してこの場を後にした

 

 

 

 

神霊操術。私はこの力をそう呼んでいる

 

使い方は簡単だ。ゲロ雑巾にした神霊を食べて取り込めば、その神霊を使役可能になる。これの強みは手数の多さだ。これがなければ、キヴォトス中の神霊の対処なんてとっくに匙を投げていた

使役する神霊との感覚共有はできないが、呼び出しや異常事態の通達程度なら難なくこなせる。さっきの廃墟で神霊が出れば、私が行って祓う。こういう仕事のストックが、後三か四あった筈だ

 

 

「………」

 

 

適当な店を見つけて、パラソルのついた外の席に座る。頼んだのはブラックコーヒー。日常的にゲロ雑巾を食べているから、極端な味以外のものは口に残った味が邪魔をしてあまり好きになれない

 

 

「……はぁ」

 

 

背もたれに体を預け、街並みを見つめる。空気は澄み、空は快晴。爽やかな一日の筈なのに、私の目に映る全ては曇り空のよう

 

 

「……にが」

 

 

コーヒーは苦い。でも不味いよりはマシ。ただ、それだけだ。他の感想なんてない

 

 

「……あれは、確か」

 

 

響いた銃声。視線の先では、キヴォトスでは珍しくもない不良生徒とまた別の生徒の戦いが始まっていた。ただ、いつもと違うのは──ヘイローを持たない、大人の存在

 

先生。連邦生徒会長が失踪した時からこのキヴォトスに現れた大人。シャーレとかいう組織で活躍中らしいが、ハッキリ言って大嫌いだ

当然だろう。アイツは生徒を指揮して、ああいういざこざを解決している。当然銃を撃ち、撃たれるわけだから、神霊の発生原因を作っているのだ

彼を巡って争いが発生する事もあるだろうし、彼という存在が引き金で神霊が大量に発生する事も否定できない

 

 

「………」

 

 

コーヒーを持つ手に力が入る。きっと酷い眼を……いや、それはいつものことだ。神霊が生まれれば深夜だろうと向かう訳だから碌に寝られないし、私みたいなのは気味悪がられて友達の一人も出来ない。だからいつも目つきが悪くなる

……でも、それはそれとして腹が立つ

 

銃弾を介して神秘をばら撒かなければ神霊は生まれない。なのに、アイツのせいで銃を使った争いは減るどころか増える一方だ。いつまでこの生活を続ければいいのか。誰に感謝される事も無いのに

いつになったら、口の中からこの味が消えるのだろう

 

 

「ねぇ」

 

 

聞き慣れない声が、私の近くで響いた

 

 

「大丈夫?顔色悪いけど」

 

 

先生が、目の前に座っていた

 

 

「……別に、何も」

「そうは見えないけど……」

 

 

今すぐ神霊に食わせたいのを必死で我慢……いや、待て

 

 

(……我慢する必要はあるのか?)

 

 

コイツが死ねば、まず間違いなく銃撃戦の数は減る。それだけ神霊の発生数も減るだろう

意義はある

 

 

(今ここで───)

 

 

先生の背後に、口だけの芋虫のような神霊を出現させ────

 

 

「………」

 

 

神霊発生のSOS。置いておいた蝿が反応を示した。もうこの男に構っている暇はない

 

 

「……困ってるんで、ここのコーヒー払っといてください」

「え?」

 

 

コーヒー代を先生に押し付け、その場を後に───

 

 

「待って待って!名前だけでも!」

 

 

 

 

 

「……夏油。ただの夏油です」

 




夏油ちゃん
たった一人で神霊を祓い続けている。キヴォトスの環境では永遠に神霊が湧いてくるので一生ゲロ雑巾食わされて疲弊してる。短めの黒髪。胸は結構ある。前髪は変じゃない

評価は五人で色付くからね、皆するよね(強欲)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。