夏油っぽい女子生徒をブルアカに入れて先生を曇らせたいだけの話   作:かゆ、うま2世

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懐玉─弍─

「はぁ……先生、それ本当なんですか。神霊が見えるようになったって」

「うん、本当」

 

 

あれから──少し奇妙な話だけど、先生ともう一度出会った。そこで聞いた衝撃的な話。先生も神霊が見えるようになったらしい

 

 

「あれ見えますか」

「蝿がスイミーしてるね」

「……嘘はないみたいですね」

 

 

試験のつもりで少し遠くのビルで蝿をスイミーさせていたが、先生はあっさり蠅を発見した。先生は嘘をついていない。確実に神霊の存在を視認できるようになっている

理由は知らない。神秘を持たない先生が、歪んだ神秘の塊である神霊に触れてしまったから起きたバグ……というのが状況から立てた仮説だが、本当のところは誰にもわからないだろう

 

 

「……貧乏くじ引きましたね。あんなの見えるようになっても何の得にもなりませんよ」

「夏油はさ、生まれた時からこれが見えたの?」

「そうですけど」

「これが見える人、居ないんだったよね?」

「一人も」

「なら、ちょっと嬉しいかな」

「は?」

 

 

口から漏れたのは、普段ならまず出さない素っ頓狂な声。意味がわからない

 

 

「取り敢えず、神霊が見えるのはこれで私と夏油の二人。夏油を一人にさせずにすむからね」

「……一つ。先生は祓えない。私は今まで通り一人です」

「あはは…それはそう」

「二つ。見えてるとバレたら襲われます。それが嫌なら見えないフリをしてください。そう何回も助けてあげられませんからね」

「忠告してくれるんだ」

「ちょうど自分の発言を後悔し始めた所です。……はぁ、本当に何で助けたんだろう」

 

 

そうやって始まった私達の関係は、意外と長く続いていく事になる

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「……また来たんですか」

「そっちこそ」

 

 

昨日と同じ場所、同じ時間

 

 

「で、どうしたんですか。まさかまた神霊でも出たんですか?」

「違うよ」

 

 

そう言って先生は、私が腰掛けていたベンチの隣に座った

 

 

「君と、話がしたくてさ」

「……話したら、帰ってくださいよ」

「わかってるよ。ありがとう」

 

 

普通の世間話で、時間が過ぎていく。嫌いな人なのに、不快感は感じなかった。シャーレの先生。慕われている理由が少しわかった気がする

 

 

「夏油はさ、ずっと一人で神霊を祓ってるんだよね?」

「それが何か?」

「大変じゃないの?」

「大変に決まってるじゃないですか。皆馬鹿みたいに銃撃つせいで神霊湧きまくりですよ」

「そっか……」

「貴方もですからね、先生。貴方のせいで起きた戦いも少なくない。だから嫌いなんです」

「あー……ごめん…」

 

 

バツの悪そうな、申し訳なさそうな表情

 

 

「はぁ……もう銃規制しません?先生も仕事減るし神霊も湧かなくなるしお互いにいい事ずくめだと思いますけど。あぁ、そうだ。シャーレの権力で無理矢理銃規制進めて───」

「あはは……キヴォトスでは流石に無理じゃないかな…」

「……わかってますよ。言ってみただけですから。今日はもう寝ます。お互い死なないように頑張りましょう」

「うん、またね。おやすみ」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「───先生、少しお話しが」

「アコ?どうかしたの?」

 

 

翌日、シャーレの当番に現れたゲヘナの風紀委員会所属の生徒、天雨アコ。どこか険しい表情を浮かべた彼女は、開口一番何かを尋ねる

 

 

「夏油さんの事です。彼女とはどういった関係ですか?」

「アコ、知り合いなの?」

「知り合いも何も、彼女は元風紀委員です。とっくの昔に辞めて、それから行方知れずでしたが」

「そうなんだ。私と夏油は…ちょっと色々あって、偶に話す程度の仲だよ。もちろん、私の生徒でもあるけど」

「……彼女に見えるモノについては?」

「……なるほど」

 

 

先生が、考えるように沈黙する。やがて口を開いた

 

 

「色々あって、私にも見えるようになったんだ。彼女の言う事は本当だよ」

「……!そうですか…私は生憎、彼女に助けられた時に見えて、それっきりです」

「……見た事あるの?」

「ですから、そう言っているではありませんか」

 

 

夏油。彼女が元風紀委員会である事。アコは神霊を見た経験がある事。新たな情報を処理しつつアコの顔色を窺う

 

 

「……今でも、悪い夢だったのではないかと思います。このキヴォトスに、あんなモノが蔓延っているだなんて。それを、彼女以外の誰も知らないだなんて」

「何より──呆れるほどに紳士的で、どこか飄々としていた彼女が、あんなものをたった一人で背負って戦っていただなんて」

 

 

どこか悲痛な表情で、遥か遠くを想うようにアコは言う。そんな様子に、どこか寂しさと虚しさを覚えて、私はアコの言葉を受け止める

 

 

「……残念ながら、一時見えただけでは彼女の理解者にはなれなかったようです。私には、彼女の笑顔を見ることも、引き留めることもできなかった」

「……アコ」

「ですから、夏油さんを宜しくお願いします」

「……アコも、何かあったら頼ってね。夏油に救われたって点では、同じだと思うから」

「えぇ、その時は。──それでは先生、そろそろ仕事を始めましょうか」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「……天雨アコ?あぁ、彼女か。神霊を見たことがあるって事は知ってたけど、私が祓ったのも見られてたのか。初耳だな」

 

 

同じ時間、同じ場所、同じ雑談。相も変わらず先生はこの時間を過ごしてくれる

 

 

「ていうか、風紀委員会だったんだね」

「まぁ、人よりは動けたからね。実際、天職ではあったんだと思うよ。で……アコか。彼女は、まぁ。いい人ではあったよ。私の事も気味悪がらずに接してくれたし」

「何か含みのある言い方だね?」

「まさか。ただ、見えてる世界が違ったってだけさ。そんなことよりも先生、朗報があってね」

 

 

 

 

「私、友人ができたんだ。初めて見た、私以外の見える人のね」

 

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