夏油っぽい女子生徒をブルアカに入れて先生を曇らせたいだけの話   作:かゆ、うま2世

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懐玉─参─

最初に出会ったのは、なんてことないいつもの日常の中だった。神霊を祓い、取り込む。その中で、神霊に襲われている人間に出会う事は何度もあった。それだけならいつも通りだった。見られないように、離れたところから祓うだけ

 

 

「うぅ……いつもは襲って来ないのに…」

 

 

その言葉を、聞くまでは

 

 

「ねぇ、君」

「へ、わ、私!?どなたです……か……」

 

 

私の声に反応して振り向いた、正義実現委員会の制服を着た少女。声と反応から、恐らくは気の弱いタイプなのだろう

 

 

「───いつも見えるのかい?」

 

 

たった一言。聞きたい事は充分だった

 

 

「あ……はい。いつも見えます」

 

 

その言葉を聞いた時、私の中にどれだけ歓喜の感情が溢れかえっただろうか

 

 

「実は私も見えるんだ。私は夏油。これからは親友だね」

「え?」

 

 

そうして私は、彼女と親友になった。初めてできた親友との日々は、これまで過ごしてきた時間の中で一番輝いていたと思う

 

 

「……おいしい」

「ソフトクリームって総じてそういうものだと思いますけど……」

 

 

口に残った神霊の味なんて気にならない程に、親友と過ごす時間は何よりも幸せで、輝いていた。長い悪夢が終わったのだと、そう思える程だった

 

無くしていた日常が、彼女となら取り戻せる。認識の不一致もなく、お互いがお互いの世界を共有できる。共に過ごし、笑い合い、支え合う事ができる

 

 

「夏油ちゃんは凄いよね」

「何が?」

「ほら、あの化け物……神霊をさ、たった一人でずっと倒してきたんでしょ?そんな事出来る人、中々居ないと思うよ。少なくとも、私は絶対無理かな……」

「……似たような事を言うんだね」

 

 

彼女が居ると、毎日が楽しかった

 

──────────────────

 

 

 

「てな感じで、ついに私にも親友ができたのさ」

「ベタ惚れだね」

「そりゃあベタ惚れにもなるさ……」

 

 

いつも通りの、先生との時間。私と親友の事を話してみると、本当にベタ惚れだなと自覚させられる。それでも、この感情が嫌じゃなかった

 

 

「気は弱いけど、本当にいい子だよ。何より神霊が見えるってのがいい。気味悪がられる事も無いし、同じ世界を共有できるからね」

「……因みに、見える人ならここにもいるんだけど」

「……先生、それはちょっと引いてしまいそうになる」

「手厳しいね」

 

 

声が弾む。心も躍る。今まで真っ暗闇だった世界が、たったこれだけのことで色鮮やかに彩られる。私の世界に色を与えてくれるのは、親友の笑顔だけだった

 

 

「……でも、良かった。今の夏油、凄く生き生きしてるし」

「そう?」

「うん。前の夏油は……言ってしまえば目が死んでたから」

「……確かに」

 

 

目が死んでた。まさにその通りだった

でも今は、彼女の笑顔を思い出すだけで頬が緩む。完全に恋する乙女みたいな顔になっているのに、自分では気づけなかった

 

 

「神霊を祓うのは今も大変」

「うん」

「でも、その子がいるから頑張れる」

「……正解。よく分かってるね、先生」

 

 

先生の言う通り、私は彼女のおかげで頑張れる。これまではただ漠然と、やらなければいけないと思ったからやっていた。これからは違う。彼女の為に頑張れる

 

 

「……何かあったら頼ってね、夏油」

「……自分でどうとでもできるさ」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「……………」

 

 

薄暗い神社の中、歪んだ神秘の残穢を辿る。なんてことない、最近話題になり始めた心霊スポット。そういう場所には、ほぼ確実に神霊がいる

出てきた神霊は全て取り込む。酷い味の連続だが、以前ほど気が滅入る事は無くなった。どうせ取り込むなら、甘ければいいのだが

 

 

「結局は烏合か。どうせなら強いのが欲しいんだがね」

 

 

現れる神霊も、結局は数の多い雑魚ばかり。私の術式にとってはこういうのを取り込んでおく事も重要ではあるのだが、強さを重点に置いてしまうのは仕方が無いと思う

 

 

「……血の匂い」

 

 

雑魚ばかりと言えど、キヴォトスの生徒にとっては充分天敵たり得るのが神霊だ。面白半分でこんな場所に来てしまったが故に死んでしまう。何とも酷い話である

 

 

「…何だ、今のが一番デカいのか」

 

 

片手間に祓い、取り込んだ神霊。この心霊スポットの主だったようだが、何というか、本当に弱かった

 

 

「……さて、死体───」

 

 

血の匂いの方に目を向ける

 

 

「────」

 

 

そこには、いる筈のない人物が居た。それも、いつだって会いたくて仕方が無い、だけど今だけは会いたくなかったヒト────────いや、そんなはずはない

 

 

「………何故?」

 

 

彼女がこんなところに居るはずがない。彼女は気が弱くて、怖いものは大嫌いで、だからこんな所にいる訳が無くて───

 

 

「……そう、か」

 

 

大口を開けた芋虫のような神霊を、彼女の死体に向ける。神霊は、稀に人の死体を動かし、実体を得る場合がある

死体本人が神霊に転じて死体を動かしているのか、別の神霊が死体を乗っ取ったのかは定かではないが、一つ言える事があるとすれば、こんな場所に死体を放置するのはナシだ

 

 

「…………」

 

 

彼女は死んだ。その事実はもう飲み込んだ。死んだのならせめて、せめて正しく弔ってやらなければならない

 

 

「……?」

 

 

腕の中の彼女が、僅かに動いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『げぇえぇとぉぉおぉおちゃあぁああん』

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