灰をあつめて天に撒き 風吹いて また魂燃ゆる   作:kuona

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今更ですが、旅人は空と蛍のどちらだとしても読めます。
今回は『あの刀』が出ます。

オリ主挿絵を目次ページに追加しました。良ければご覧下さい。


少女と意思ある刀

 

 

 

「お前小さいのにすごく強いんだなー!」

「わ、わっちはまだまだ未熟者でござりまするよ」

 

璃月港を出てしばらく。

目的地まであと半分、というところで彼らは休憩を取っていた。ここまで来るのに思いのほか早く移動することが出来た。

というのも、休憩も挟まず先陣切って風のように走り続ける小さな少女が道を阻んでくる敵を手のひらから飛ばす遠距離攻撃で倒してしまうので、障害がないも同然に進むことができたのである。

 

「灰理のあの攻撃すごかったな!雷みたいなのがビリビリッて指から飛んでくやつとか、ヒルチャールの暴徒を爆発させたやつ!」

「あれは鬼道と呼ばれる術なのでございまするよ。自身のもつエネルギーを使い発動させる霊術でございまする」

「へぇ〜、そんなものがあるのかぁ」

「あ、そうです!旅人殿、鍾離殿、先程はわっちが撃ち漏らした敵を倒していただきありがとうでございまする!」

「そうか、役に立てたようで何よりだ」

「どういたしまして。とはいえ灰理がほとんど倒してくれてるけどね」

「いえ!とてもありがたいでございまする」

「そうだな、ナイス尻拭いだぞ旅人!」

「パイモンその言い方なんかヤダ」

「ほぇ?」

「食べちゃおうかな」

「なっ!オイラは非常食じゃないって言ってるだろ〜!」

 

和気あいあいとした空気が流れる、そんな中。

 

「!」

 

突然、灰理の背負った刀からぶわりと炎が吹き出して辺りに火の粉が舞った。

 

「うわあ!?火が!」

「灰理!?」

「あちっ!あちち」

 

炎の噴出はすぐに収まったが、その余波をモロに食らった灰理を心配してパイモンと旅人が声を上げる。

パタパタと服に降りかかった火の粉をはたき落とす灰理に鍾離も近づきそれを手伝ってやる。

 

「しょ、鍾離殿。ありがとうでございまする」

「いや、これくらいどうということはない」

「オイ灰理、大丈夫か!?」

「今の炎は…?」

 

灰理は鍾離にお礼を言うと、赤い頬をぷくっと膨らませる。そして不機嫌そうにきゅう、と眉を寄せ背中に下げていた刀を紐を回し体の正面にもってくると、まるで話しかけるように喋りだした。

 

「何をするのでございまするかっ。服に穴が空いてしまいまする!」

『……』

「貴殿はぽんぽんと使えるような刀ではないのでございまする!」

『……』

「未熟者なのはわっちが一番わかっていまするっ!」

 

ぷりぷりと怒りながら一人で言葉を発する灰理に旅人とパイモンは首を傾げた。

一方的に話しかけているというよりも、まるで会話をしているかのような様子だったからである。

 

「灰理、誰と話してるんだ?」

「…あ、えと。流刃若火でございまする」

「りゅうじんじゃっか?」

「この刀の名前でございまする」

 

そう言って少女は胸の前で握った刀を掲げた。

 

「灰理は刀と話せるのか!?」

「流刃若火とは話せるでございまする。他の刀とは話せないでございまするよ」

「え、どうしてその刀とだけ話せるんだ?」

「それは恐らく、流刃若火という刀に心があるからだろう」

 

パイモンが顎に手を当てて不思議そうに首を捻ると、鍾離が口を開いた。

 

「流刃若火はとある男の魂を元に作られているらしいからな」

「魂を元にって…妖刀か!?」

「その男の人ってもしかして依頼人のひと?」

「そうだ。それにしても灰理殿が背負っていたのは流刃若火だったのか。元柳斎殿から借りてきたのか?」

 

鍾離がそう問いかけると、灰理は小さな肩をギクッとさせて流刃若火を慌てて背中に回した。

 

「そ、そうでございまするよ!」

「先程まで流刃若火と話していたようだが、何と言っていたんだ?」

「えっと、先程までの戦闘でなぜ自分を使わなかったのかと言われたでございまする」

「ん〜どういうことだ?」

「使って欲しくて拗ねてるってことかな」

 

旅人が言うと、灰理の背中から再度先程より控えめに炎が吹き出した。灰理はきゅ、と首を竦めたが、今度は少女に火の粉が落ちることはなかった。

 

「旅人の言葉は当たりのようだな」

「これは当たりの反応なのか…?」

 

鍾離の言葉にパイモンが首を傾げる。

正解にしろハズレにしろ、どっちも炎のモーションしか出ないと思うのだが…

 

「灰理は刀を使わないの?」

「使えまする。けれどわっちはまだ未熟者ゆえ、流刃若火の炎を扱いきれぬかもしれないのでございまする」

「そんなに火力が高いのか?」

「確かに流刃若火の炎は並の威力を遥かに凌ぐものだ。周りに味方のいる場面では灰理殿も使いづらいのだろう」

「それにすごく大きい刀だもんね。振り回すのが大変そう」

 

旅人は灰理の背中にある刀を眺めながら言う。

少量の火の粉をヒラヒラと舞わせるその刀は、灰理が腰に差したとしたら地面に引き摺ってしまうだろう刀身の長さだ。

片手剣をメインで使う旅人からすれば、自分の体より大きな剣を振り回す稲妻の早柚などは純粋に凄いと思うのである。

 

「とはいえこんなにアピールしてるなら使ってあげないと可哀想だよな。……そうだ!これから行く純水精霊のところは場所も開けてるし沢山の水に囲まれてるから、そこで使えばいいんじゃないか?」

 

そうこう考えているうちにパイモンがなかなかいい提案をした。

 

「ふむ、確かにあそこならば大丈夫かもしれない」

「いいのでございまするか?」

 

鍾離からゴーサインが出ると灰理は表情を明るくさせた。背中の流刃若火も喜んでいるのか、再度ひらひらと柔らかく火の粉が舞った。

 

「へへ、こいつも喜んでるみたいだな」

「パイモンも流刃若火の言いたいことが分かるようになってきたね」

「凄いでございまするパイモン殿っ」

「へへーん!」

 

先程流刃若火の心情を汲み取る鍾離に首を傾げていたパイモンだったが、どうやら自身もだんだんと刀の言いたいことが分かるようになってきたらしい。灰理にニコニコ褒められて、胸をそらして鼻高々な様子である。

 

「ハハッ…ならばそろそろ出立するとしよう。あまり待たせてはまた流刃若火の機嫌を損ねてしまうかもしれないからな」

「それもそうだな!」

「はいなのでございまする」

「うん」

 

鍾離に対して三者三葉に返事を返し、一行はまた目的地に向かって移動を始めた。

 

月光が彼らに降り注ぐ。

夜はまだ、戌の刻を回ったという頃である。

 

 

 





原作で流刃若火は人の姿をとらないし喋りもしないので、無言の圧(炎)を披露してもらいました。

作者はモチベーションが急降下しやすいくせに遅筆のため苦労してます。
連載を何年も続けてる方は本当に尊敬します。
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