超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
そんなわけで本編の目途が立たないので番外編です。ユルシテ……
2039年■月■日
北極点付近の海域にて突発的な重度の重力震及び閃光を観測。
同日国連艦隊に対し攻勢を行っていた霧の艦隊の全てが37分53秒間沈黙。
その後、全艦が戦闘行動の停止と北上を行う(北上が確認されたのは水上艦のみ、捕捉が不可能であった霧の艦隊所属の潜水艦の動向はつかめていない)。
霧の艦隊の北極圏突入に前後して継続的な重力震、北極海沿岸の観測施設が強力な電磁衝撃波により損壊(後に高出力超重力砲の副次的効果であると判明)。
同年■月■日
重力震後初めて米海軍の観測艦エピメテウスが北極圏に侵入。特筆すべき点として、当作戦『リトルジャンプ』は先の攻勢の被害によりミサイル駆逐艦二隻のみの護衛の下行われたが、作戦行動中の被害は荒天によりエピメテウスの装備するレーダーアンテナが損傷したのみであった。
エピメテウスが北極点に到達した際、当該海域は崩壊したナノマテリアルに覆われ、海面から数センチの層状に積み重なっていた。
霧の艦隊と思われる艦の残骸を複数確認。艦名・艦級が確認されたものは以下の通りである。
・大戦艦
『コロラド』『ニューヨーク』『ワシントン』『ウェストヴァージニア』『ニューメキシコ』『ネヴァダ』『ペンシルバニア』『オクラホマ』『ノースカロライナ』『ロドニー』『レナウン』『リヴェンジ』『ロイヤルソブリン』『ヴァンガード』『リットリオ』『ダンケルク』『ストラスブール』『ヤマシロ』『ムツ』
・航空母艦(現呼称:海域強襲制圧艦)
『エンタープライズ』『エセックス』『イントレピッド』『タイコンデロガ』『ハンコック』『バンカーヒル』『インドミダブル』『ヴィクトリアス』『タイホウ』『カガ』『ソウリュウ』『ウンリュウ』『カツラギ』
・重巡洋艦
『グアム』、ノーザンプトン級4隻、ニューオーリンズ級3隻、ボルチモア級7隻、ホーキンス級1隻、カウンティ級2隻、フルタカ級1隻、モガミ級2隻
・軽巡洋艦以下は判別不能
2039年■月■日
ロシア連邦が当時開発の最終段階にあった試作超音速爆撃機Tu-70M2ヴァルキーリヤによる北極圏の偵察を敢行。艦体を覆う光帯など霧の艦隊に酷似した外観的特徴を持つ戦闘艦艇を複数確認。しかしながら他の霧の艦艇に見られるような過去の戦闘艦艇との類似は確認されなかった。
2039年■月■日
ヴァルキーリヤが無人機動プロトコルの洋上試験中に未知の敵対勢力のミサイルにより撃墜される。撃墜時ヴァルキーリヤの速度はマッハ3に達しており、これはそれまで観測されていた霧の保有する誘導兵器の最高速度を上回っていたため、例外的に洋上での試験飛行が認められていた。
この事件から一時各国の航空機産業は過激なまでの先鋭機体と高速性能に固執するようになる。
2039年■月■日
ヴァルキーリヤが観測した霧の艦隊に酷似した艦艇群が南下を開始、霧の北米方面第二巡航艦隊と接触する。太平洋上にて約40分間の戦闘が行われ、第二巡航艦隊の反応消失。アメリカ合衆国がヴァルキーリヤの対抗馬として開発を進めていた超音速爆撃機B-160ブラックジャックを戦況把握を目的として戦闘区域へ侵入させたが、『大海戦』時を上回る濃霧のため詳細な観測を行うことができなかった。ブラックジャックは戦闘海域の外縁を飛行中に通信途絶。ヴァルキーリヤ撃墜の際と異なりミサイル接近警報は作動しなかっため、どちらかの勢力が保有する無誘導兵器(霧の艦隊の主武装であるプラズマ弾が有力視されている)によるものと思われる。
ブラックジャック撃墜直前の機内通信
「しかし……下方視界がゼロに等しいな。マーク! そっちは何か見えるか?」
「いいえ、こちらも下方は不鮮明です。計器を信用するなら海面が見えてもおかしくないのですが……」
「これじゃ偵察どころじゃないな……予定通りデータを取り次第帰投するぞ」
「それにしても、一体何が起こってるって言うんでしょうか。あの攻勢の時もここまでじゃなかったんでしょう?」
「分からん。だが確実なのは『大海戦』より苛烈な戦闘が起こってるってことだ」
「――データ取り終わりました」
「よし、帰るぞ。もうこんな嵐の中はゴメンだ――」
2040年■月
『リトルジャンプ』作戦時からアメリカ国防総省においてにわかに噂されていた『北方海域において霧の艦隊が制海権を失いつつある』ことが何者かの手によりリーク。大多数の国民が知ることとなる。当時内戦の回避に奔走していたFBIとCIAが協力してこのリークを行った犯人を捜索したが、明確な証拠を得られなかった。製造された記録のない端末からのアクセス記録だった、人類の戦力を釣り出すための霧の艦隊による罠、など根も葉もない噂が飛び交い、最終的には連邦政府が「今回のハッキングは明らかに人為的な意図をもって行われたものであり、ただ戦闘力でひき潰すことしか能のない霧には不可能なことだ」と公式に声明を出したことである程度の落ち着きを見せたが、国民の政府に対する不信感はこれまで以上に高まった。
2040年■月■日
アメリカ政府が声明を発表してからちょうど1か月後、イギリス政府が「出来立てのフィッシュアンドチップスがティータイムに帰ってきた」という言葉とともに、英国王立海軍所属の空母『パスファインダー』甲板上から釣り糸を垂らす士官の映像を公開する。艦橋上部から見渡す形で撮影された映像に陸地が一切映っていなかったことから、この映像はグレートブリテン島周辺の海域を霧の艦隊から奪還したことを示す映像として一躍世界中から注目を受けた。
イギリス政府は『パスファインダー』をはじめとした先遣部隊の調査報告次第、速やかに情報を世界に発信すると明言し、戦闘可能な全艦艇を投入する準備があるとした。
この映像の終了間際、僅かに数フレームながら『パスファインダー』の艦尾デッキにゴシック調の衣服を身にまとう少女のような人影が確認され、この映像は世界でも類を見ない政府が発表した
心霊映像としてもその名を馳せることとなる。
2040年■月
ロシアとカナダもイギリスと同様に暫定的ながら北方海域での安全が確保されたと発表。今後、この三国とアメリカが中心となって北極海を漂うナノマテリアルの調査を進めていくこととなる。
同月に日本政府が『大海戦』時に霧の潜水艦の拿捕に成功していたと発表した。調査は三管区合同で行われたが、明確な進歩は得られなかった。
――以上のことより、霧の艦体の構造、構成する物質の基礎成分は我々の理解の及ぶ範疇でありながら、その分子構成や出力回路についてはまったくその限りではなく、文字通りのブラックボックスといえるだろう。特に、クラインフィールドと呼ばれるエネルギー防護障壁はエネルギーの一時保存と放出の特性があること以外分かっていない。
しかしながら、今回の一連の調査で霧の艦体はあくまで我々の知る物理法則に準じていることが判明したのは大きな成果だろう。大戦艦『コロラド』主砲防循部の装甲骸を用いて行われた共振実験において、一定レベルの強力な共振運動を引き起こすことができれば霧の装甲材を十分に破断させることが可能であると確認された。クラインフィールドの突破方法や、共振を発生させる装置の実用的な弾頭サイズまでの小型化などの課題はあるが、解決することができれば間違いなくこの分野において大きな進歩となる。
反対に、我々はこの実験が示すもう一つの事実に目を向けなければならない。
私はあくまで科学者、それも専門は遺伝子工学だ。今回の実験には学生時代の恩師の伝手で立ち会ったに過ぎない。だからこそ軍事、ましてや政治のことになど口出しするつもりは毛頭ない。
毛頭ない……が、それは差し迫った危機を見なかったことにするというわけではない。
今海では霧と同等以上の戦闘能力を持った何らかの勢力による支配交代シナリオが発生している可能性が高い。だとすれば、我々が霧を打倒しうる力を持った時、この世に霧の艦隊など存在しないのかもしれない。
2040年■月
アメリカ、イギリス、ロシア、カナダの四か国が2054年度に確認されていた所属不明艦隊の存在を相次いで認める。当時のアメリカ大統領ガブリエルが発表会見の際に用いた『
四か国による合同調査報告書によると、この艦隊は徐々に南下を続けており、すでに一部の霧の艦隊と戦端を開いていると思われる。
また、彷徨える艦隊には同一の艦影が複数確認されている。ヴァルキーリヤ二号機が撮影した高高度画像には、霧の欧州方面艦隊旗艦である大戦艦ビスマルクと類似する特徴を複数保有する艦艇が少なくとも6隻確認された。
2041年■月
霧の北米方面艦隊がその制海権を完全に喪失。アイオワ、ヨークタウンをはじめとした主力大型艦艇群を同年初頭の北大西洋海戦にて喪失し、現在はカリブ海にて戦力の復旧に努めていると思われる。
駆逐艦以上の霧の艦艇の撃沈が確認されたのは今回が初である。反応の消失のみであった北米方面第二巡航艦隊の時とは異なり、大西洋に面し本海戦を観測可能な各国が大々的に発表した。しかし安全上の懸念から民間の遠洋漁業が解禁されることはなく、軍艦艇による計画漁業の規模が拡大したのみであった。
同時期からカナダ、イギリスの沿岸海域にて彷徨える艦隊の活動が活発化。現状被害は出ていないが、両国とも出現海域周辺に軍による規制を敷くこととなる。
2041年■月
四か国合同調査団が報告書を発表、報告書内では彷徨える艦隊は霧の艦隊と異なり、その艦体各所に有機的な構造体を複数備えていることが数百メートルまで接近したドローン映像とともに記された。なお、ドローン撮影含め調査団は計46回の接近及び空母の特徴を有する艦艇への2回の無人機による着艦を行ったが、いずれの際にも砲口を向けられるのみであり、直接的な攻撃は受けなかったとした。
調査内で発見された彷徨える艦隊構成艦については、以下に記す通りである。
・大戦艦α
霧の大戦艦ビスマルクと類似した特徴を複数備える。だが、艦後方の主砲二基が消失し、当該区画には未知の発信装置らしき巨大なアンテナが備わっている。彷徨える艦隊において旗艦的役割を持っていると思われ、基本的には各艦隊に1~2隻程度が随伴している
・大戦艦β
霧の大戦艦キングジョージⅤ世と類似した特徴を複数備える。艦中央部の航空艤装部に同口径の四連装主砲が一基追加されている。彷徨える艦隊において標準的な戦艦クラスであると思われ、一個艦隊に平均3~4隻が含まれる。
・大戦艦Σ
2039年の太平洋海戦直後に民間からの目撃情報が報告された大戦艦。α・βのどちらとも一致しない艦影だったとされる。その後の追加情報はなく、詳細不明。
・航空母艦α
2041年の大西洋海戦で喪失したと思われる霧の航空母艦ヨークタウンと類似した特徴を複数備える。艦首が肥大化し両舷にせり出す形で前方に指向する大口径の固定砲を複数備える。彷徨える艦隊において唯一の正規空母クラスであり、艦隊の防空を一手に担っていると思われ、上記の高高度画像には航空甲板上に駐機している多数の戦闘機の思わしき物体が映っている。艦隊ごとの配備数は大きく異なり、一隻も持たない艦隊もあれば、大型艦が本艦種のみで構成された艦隊も確認されている。
・巡洋艦α
ヨーク級を思わせる艦体にプリンツ・オイゲン級に酷似した上部構造物を備える。一部の例外を除いて彷徨える艦隊の中型艦はすべてこの艦で統一されている。
・巡洋艦Σ
霧の大型巡洋艦グアムの面影を持つ艦。艦影こそ似ているもののその保有武装はグアムとはかけ離れており、ほぼすべての対空火器を廃し、バスターソードやノコギリを彷彿させる多数の近接武装を備えている。VLSの類も確認されていないとされるが、本艦が確認されたのは2039年の太平洋海戦直後の一度のみであるため、大戦艦Σと同様他の艦と比べ不明な点が多い。
・駆逐艦α
霧のトライバル級大型駆逐艦を模した艦艇。現在この艦以外の小型艦艇は確認されていない。
―――やはり、α・βそれぞれが同一の艦種であるとしてもこれほどの類似性が発生するのはおかしい。兵器とは元来、その時々の情勢や
だがあの迷子艦隊はどうか。α・βの違いこそあれど、あの艦隊にははっきり二種類の戦艦しか存在しない。砲配置にマストの本数、果てには音紋まで同じときやがる。
ありえねぇ。あり得るはずがねぇ。俺たちにいわせりゃ霧にだってそれぞれの
………まさか、自己増殖だって言ってんのか? あの数と、あの戦闘能力が?
あり得ねぇ、あり得ねぇし………
……そんなバカげた軍隊、あり得ちゃいけねぇ。
2043年■月■日
ベーリング海にて霧の艦隊と彷徨える艦隊による多数の閃光と爆発を伴う大規模戦闘が勃発。米露合同観測所の報告によれば双方単艦での戦闘だったとされ、多数の映像記録から霧側の艦はそれまで暫定的な目撃情報のみでその存在が明確に明らかになっていなかったヤマト、彷徨える艦隊も同様にごく僅かな目撃情報しか得られていなかった大戦艦Σであると思われる。また、この映像記録群から大戦艦Σが二次大戦後期の米戦艦を模していることが判明し、前年の大西洋海戦で霧が喪失した大戦艦アイオワとの関連性が疑われている。
戦闘の推移は高濃度に霧に阻まれて観測できず。観測不可能領域の展張から37分27秒後に発生した2039年と同規模の重力震をもって本海戦は終結したと推測されている。しかしながらどちらの艦が勝利したのかは判明しておらず、両艦とも現在に至るまで再びの観測はされていない。
これを最後に彷徨える艦隊と霧の艦隊による戦闘は一時的に小康状態に入ることになる。
2046年■月■日
霧の東洋方面艦隊の拠点であったハシラジマが失陥。日本政府は衛星画像の解析の結果、ハシラジマを攻撃可能な位置に存在が確認されたのは巡洋艦Σだけであるとし、霧の軍事拠点を単艦で制圧した彷徨える艦隊に対する警戒が世界規模で強まる。アメリカ政府は彷徨える艦隊を霧に代わる新たな人類の脅威であると明言し、世界各国へ対抗兵器の共同開発の打診を行った。
分岐条件としては壊滅ルートを踏んだうえでGKちゃんが真っ先に前線に立つこと。
一応まだ続きます
皆アルペジオの二次書いて私に書き方を教えてください。特に20~21巻あたり。
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