超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
この回は作者がようやく購入した26巻にて名前だけとはいえティルピッツが出てきてしまったことに対する言い訳回です。
また多数の独自解釈を含むため、今後過去改変の可能性が高いです。ご了承ください。
某日 北極海
「どうですどうです!?
これ、私達もやりましょうよ!」
はいどうも、私です。
現在ティルピッツに普段からは想像できないような超ハイテンションで迫られている。
彼女の美しい両目は大きく見開かれており、その中に爛々とした星が輝いてるように見える。
普段はしっかりした仕事のできるやつなのに…
どうしてこう…
このティルピッツの謎のハイテンションの原因は先刻タシュケントが持ち帰ってきた横須賀要塞港海戦の戦闘データにある。
この海戦では、ハルナとキリシマが直線上に合体することで超重力砲のライフリングを1列に並べ、威力と射程の向上を果たしている。
ぶっちゃけ機動力とか生存性とか柔軟性とか犠牲にするものが多すぎるためかなりロマン寄りの形態だが、何故かそれがティルピッツにぶっ刺さったらしい。
「やるって言ったって、どうやるのさ。
私の超重力砲は貴女とは違う配置方式なんだよ?」
そう、問題はそこである。いや、それだけではないが。
私の超重力砲システムは通常の艦艇とは異なり、横向きにそれぞれが並んでいる。
通常は艦体そのものを砲身として前に撃つのだが、私含めた超戦艦は横向きに撃つのが最大火力となるのだ。
そんな私と縦方向に一基という配置方式を持つティルピッツとハではハルナ達と同じような方式で合体してもなんの意味がないどころかただ機動力の低下というデメリットのみを受けてしまう。
まぁ縦に組み替えることもできるけどそれやるなら最初から単艦で撃ったほうが速い。
というかそもそもそこまで出力を上げても私らなら元々の出力で殆ど全てをなぎ払えるから意味が無いような気もするが…
「それは…その…あっそうだ!
横付けすればいいんですよ!
人類の艦にもあった双胴…船とかなんとか言うやつみたいな感じで!
それなら旗艦様の超重力砲の射線もあまり塞ぎません!」
天啓を得たというふうにティルピッツが叫ぶ、そういう話じゃないんだけど…
「それはそれで2隻でやると大きさ的にバランス悪くない?」
とりあえず今はなんとかしてこの合体至上主義者を止めないと。
このままでは私も巻き込まれてしまう。
「じゃあ太平洋のミズーリも呼びましょう!
そうすれば旗艦様を中心に挟み込むように3隻でバランスよく合体できます!」
そっかぁ(思考停止)
…じゃなくて、本当にやるの?
マジで?
「もちろんです!
後輩にあんな物見せられたらそれ以上の物を作ってやりましょう!」
「後輩…まぁそれもそうか…」
元になった艦の艦齢で言うならこちらの方が結構年下なのだが、メンタルモデルとしてははるか先輩なのでその言い方も間違っては無い…のかな?
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某日 硫黄島基地
「さてさて、天羽ちゃんはどこかな〜」
硫黄島にて、401のクルー達から元同級生である天羽琴乃とエレオノーレ・ミラ・フュルストの情報を聞いたヒュウガは、さらなる情報を知るため彼女らが在籍していた海洋総合技術学園のサーバーにアクセスしていた。
そこにちょうどタカオが意識体のまま接触してきた。
どうやら想い人である千早群像の幼馴染ということで興味が湧いたらしい。
そのことをどうにか誤魔化そうとするタカオをからかいながら彼女らは学園の生徒データにたどり着く。
「これは……総旗艦…!?」
そんな言葉を発するヒュウガの隣でタカオもまた、驚きの声を上げていた。
口を開けたまま愕然とするタカオの前には学園時代のエレオノーレの生徒データが表示されていた。
「こいつ…函館の…!?」
函館、北管区の港町の一つであるその名前を聞いたヒュウガは一旦ヤマトのことは置いておいてタカオにそのことについて問う。
「函館って?
…そういえば貴女ここに来るまでそこにいたって言ってたわね。
そこでなにかあったの?」
メンタルモデル同士の距離が離れているため概念通信での会話であるが、それでもタカオにはヒュウガの問いに含まれた困惑を感じ取ることができた。
「えぇ、私があそこを出る前、402達と接触する直前にそっくりな子と会ったのよ。
なんか全体的に何を言ってるのかわからなかったけど…」
総旗艦の直属であり、並外れた情報収集能力を持つイ400級の2隻より先手を打ってタカオに接触した謎の人物の正体を疑問に思い、ヒュウガは問う。
「具体的にはどんなことを言っていたの?
少しでいいから教えて、総旗艦…ヤマトと何らかの関わりがあるかもしれないの。」
急に声音を変えたヒュウガに戸惑いながらも自身のデータを元に答える。
「いいけど…そんな大したことは言ってなかったような…
未来が見たいとか、硫黄島はもぬけの殻ではない…とか」
「未来についてはともかく、なんで私が硫黄島にいることを知っているのかしら。
私はこの体を持ってから人類に観測されたことはないと思うけど…」
そんな会話を続けているとタカオの脳裏にある異常なことが思い出される。
「そういえば、あいつはメンタルモデルかもしれない。
会話を一方的に切ったあと身体がナノマテリアルに崩れたのよ。」
今までの会話の勢いで出すには余りにも重要すぎる情報に思わずヒュウガは息を呑む。
第四施設事件で死んだはずのエレオノーレがメンタルモデルと同じ様な形で未だにその存在を保っているのだとすれば我らの総旗艦であるヤマトのメンタルモデルと瓜二つの外見をしている天羽琴乃も霧と関係している可能性が極めて高いからだ。
「それについてもっと教えて、いや、会話のデータをそのまま送って頂戴。」
このままでは埒が明かないと判断したヒュウガはタカオに会話のデータを送信するように求める。
それを聞いたタカオは何度か送信を試みるが
「私もそうしたいのはやまやまなんだけど…
今見たら会話データの転送がロックされてるのよ、私が中身を見ることはできるんだけど、それを転送することができないっていうか…とにかくこうやって口頭で伝えるしかないのよ」
彼女のデータには一種のコピー防止システムが組み込まれており、そのままの状態でヒュウガに共有することができなくなっていた。
「仮にも重巡洋艦である貴女のデータ領域を一方的にロックするとなると彼女は少なくとも大戦艦級レベルの能力を持ってると見て間違いなさそうね。
いや、彼女自身ではないのかもしれないけど。」
つまり、件の少女のバックに付いている存在がその演算能力を提供している可能性を考慮したヒュウガは無意識下で警戒をさらに引き上げる。
「それはそうね、あと、彼女は自身のことをケイと名乗っていたわ。十中八九偽名でしょうけど。」
「そうでしょうね。
…それにしてもここに来てこんな…」
これから硫黄島を発ち、人類の白鯨と共に太平洋を横断してアメリカ合衆国へ向かうというときに新たに判明した重大すぎる情報にヒュウガは頭を抱える。
「この情報、群像様にも共有したほうがいいかしら?」
余りにも自然な勢いで様を付けたタカオであったが、ヒュウガはそれに反応する余裕もなく、外したモノクルを付け直しながら答える。
「いえ、これはここだけの話にしておきましょう。
これからの大仕事の前に余計な情報を渡して混乱させるべきではないわ。」
現在彼ら401のクルーは硫黄島からの脱出計画を目前としている。
そんな彼らに今この『亡霊』ともとれる彼女らの情報を下手に渡して混乱させるべきではない、と考えたヒュウガはタカオからの提案に対しその理由も沿えて否定の意を示した。
「了解、じゃ、私は打ち合わせに向かうわ。
後のことはよろしくね、管理者さん」
「そっちこそ、イオナ姉様に失礼のないようにね」
「ハイハイ」
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某日 北海上空
この星の管理者であるヴァーディクト、その今代―かつてグレーテル・ヘキセ・アンドヴァリと呼ばれていた存在―は天空の彼方から海面を眺める。
宇宙服の下のその顔は細い目の厳かな雰囲気を感じさせる
(なんで!?)
わけでもなく、その美しい目を大きく見開いてこれでもかと驚愕していた。
彼女の驚きの原因はその視線の先、北極海に浮かぶ巨大な氷山を模した何かとその周囲に浮かんでいる多数の霧の艦艇である。
(なんでなんでなんで!?
なんであそこまで発展しているのよ!?
というかなんでティルピッツがあそこにいるの!?
それに極めつけはアレよ!何なのよあのバカでかい氷山!?)
彼女の予想よりはるかに早く『個性』を獲得するに至った霧の北洋方面艦隊はその存在自体が彼女自身と同じ様なこの世界におけるエラーともいえる産物であった。
まず彼女の眼前に存在するいくらなんでも自然物と言い張るには無理がある巨大氷山の下には強大な重力子反応があり、かなりの機関出力を持つ存在がその巨大氷山を維持するエネルギーを供給していることがわかる。
そもそもあの艦隊に現在所属しているティルピッツは嘗てのアドミラリティコード直轄艦隊である『緋色の艦隊』の旗艦である大戦艦ビスマルクの同型艦であり、ビスマルクと同じ大西洋方面艦隊に所属しているはずの戦艦である。
そんなティルピッツの他にも北米方面艦隊に所属するはずであったミズーリやホーネットなど多数の主力級大型艦艇が元々現状より遥かに小規模になるはずだった北洋方面艦隊に所属している原因であり、現在最も彼女を混乱させている元凶もたった今彼女の視界の中に浮かび上がってきた。
(それもこれも全部、すべてあの艦…超戦艦グローサー・クルフュルスト、あのイレギュラーが原因よ。
全く、シヴァルリィの試しとして異次元から魂を拾ってきたのがこんなことになるなんて…
はっきり言ってもう見ないふりしたいのだけど…
私のせいだしなぁ…)
そう、概ね彼女の考えていることは正しい。
現在ヨーロッパを席巻している騎士団、それに所属している人物はほぼすべてが過去の人物の転生体であり、それはグレーテル、ひいてはソレを管轄するシステムによるものであった。
そこでグレーテルが考えたことは『異次元から魂引っ張って来れるのでは?』というものであった。
異次元の、つまり全く違う歴史を持つ世界から連れてきた人物であれば自身の永劫とも言えるほどに続くこの退屈を紛らわせることができるのではないかと考えたのだ。
しかし、結果から言えばその計画は失敗した。
同じ人間と言っても別世界、ものによっては物理法則すら異なる世界の魂である。この世界の人間として定着させるにはいささか無理があったのだ。
そうした失敗の中で世界に散らばった魂の一つが物理的存在を得た、端的に言えば
機械として強固な規律に縛られている霧の艦隊間の通信に北洋方面艦隊が離反したとの情報が頻出するようになったことを不思議に思った彼女は、自身の持つ時空検索システム『ナグルファル』を用いて現在の北洋方面艦隊の状況を調べ、北洋方面艦隊の現状を知った。
そして実際の様子を見に来たところ多数の艦が一際大きな氷山の周囲に集まり、何か作業をしている状況を目にしたということだ
なにはともあれ、突然出現したイレギュラーである超戦艦グローサー・クルフュルストはその演算能力を持って起動前の無意識の状態で自身にふさわしい規模に艦隊を拡張、その中で未だ起動状態になかった他艦隊から艦を言ってしまえば強奪し、自身の指揮下に加えた。
そんなこんなで元々よりも遥かに規模を広げた北洋方面艦隊は、旗艦が最初から確個たる自意識を持っていたため艦隊規模でメンタルモデルの原初とも言える存在を作り出し、その結果として他艦隊とは比べ物にならないほどに人間臭い艦隊となっていた。
(あのイレギュラー…これからどうするつもりなのかしら…)
予定とは異なり、今や彼女自身やティルピッツを筆頭とする強大な戦闘能力を保持している霧の北洋方面艦隊。
自身にも予測することの出来ない彼女らの動向は霧のみならず世界規模に影響を及ぼしていくだろうと感じたヴァーディクトは頭を抱え、数刻後に出したその結論は―
(うん、見ないふりしましょう。
私は日本の彼の方を見るわ)
―ただの現実逃避であった。
合体はロマン
前書きの通り、やっと追いつきました。
今後がとても楽しみですねえ。
つづく
…ことができるのか?これ
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