超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
皆様の高評価と感想のお陰で私はこの将来的に黒歴史確定の怪文書を綴る事ができています。
これからもよろしくお願いします!
某日 太平洋上某所
タカオは先のU-2501との激戦の中、2501の意表を突いて繰り出した切り札の超重力砲も2501が持つミラーリングシステムにより無効化され、その余波である巨大な重力波によりかろうじて形を守っていた艦体ごと吹き飛ばされ、付近…と言うには遠すぎるが、戦域データの提供という形で一時的に協力していたイ-402にコアを回収され、現在は彼女が連れてきた霧の艦隊の総旗艦である超戦艦ヤマトの艦上にて再起動を待つのみの状態となっていた。
「勝手をしました、総旗艦」
402はまず、元々の任務であった種子島沖で401に撃沈された軽巡洋艦ナガラのコアの捜索という任務の帰りとはいえ、直属の上司であるヤマトの許可を取らずタカオと2501の戦闘に介入したことを謝罪する。
こうしてみると、彼女の姉である401のメンタルモデルとそっくりであり、後に日本政府が見間違えかけたのも頷ける話だ。
「いいえ、良くやってくれました」
しかし、402の予想に反して、ヤマトは彼女の取った行動を褒めるように話す。
実際、彼女の片割れとも言えるコトノの目的は言ってしまえば霧の艦隊に所属している各艦に個性を持たせることであるので、メンタルモデル達の自主性が育つのは歓迎すべきことなのだ。
そんな総旗艦の反応に内心で驚きつつ、402はタカオのコアが現在402によって封印状態にあることを伝える。
「…では、解きなさい」
これもまた402の予想に反して、ヤマトはタカオのコアの封印を解除するように伝える。
「しかし…大丈夫ですか」
確認を取るように問う402に対し、ヤマトはその真意を問い返す。
「総旗艦はタカオをどうなさるおつもりですか?」
現状タカオの扱いとしては霧の艦隊を出奔した一種の脱走艦となっており、彼女が401に味方している現状を好ましく思っていない艦も多い。
また、彼女自身も401…の艦長である千早群像の下に帰還することを目的としており、ここで開放すれば暴れ出すだろう。
そのことを心配しての言葉だったが
「かと言ってこのまま、ここでこうしているわけには行かないでしょう?」
ヤマトのその言葉もまた正しい、実際402の演算領域はタカオのコアの封印に多くのリソースを割くことを余儀なくされており、このままでは彼女の本来の業務である諜報活動にも支障をきたすことは間違いないだろう。
「では…起動させます」
402のその言葉の直後、眠っているかのような様子であったタカオの額に彼女のクレストが浮かび上がり、目を見開く。
「ご機嫌ようタカオ、貴女とは第二艦隊再編時に会って以来ですね。」
2501との戦闘の最中で意識が途切れているタカオは、目を覚ましたら眼前に総旗艦がいるという現在の状況に戸惑いを隠せないでいる。
そんな彼女にヤマトは自らの持つナノマテリアルをタカオのメンタルモデルを修復するために与え、一部手足の欠損していたタカオを元の状態へ戻させる。
「おはようお姫様、王子のキスは無いよ」
なんとか甲板上に足を乗せたタカオをジト目で軽くにらみつつ、402は軽く皮肉を飛ばす。
タカオもそれに反応しようとしたが、それより先に彼女自身のメモリーに起こっているある異常に気がつく。
「う…お前…私の記憶メモリーの一部にロックを…」
自身の記憶メモリーの中でも、先程の2501との戦闘ログの全てがロックされていることに気が付き、顔を俯かせる。
「お前は、見てはいけない物を見たからね。」
見てはいけないものとは、タカオとの戦闘の中で2501が使用したミラーリングシステムのことである。
本来あの装備は超戦艦であるヤマトらにしか搭載されていないものであり、演算力的にも2501が扱える兵装では到底ない。
そんなミラーリングシステムの展開時のログをロックすると共に、2501との戦闘ログそのものもロックしたのだ。
「お前から預かったダミーは約束通り届けたよ、ちなみにお前を既でのところで救ったのは401だ」
402がそう言うと、タカオは自身の元の任務を思い出したかのように甲板の端まで飛び出すと周囲の様子を伺う。
「そうだ!
作戦は?
401はコンゴウの哨戒圏を抜けたの?」
「いいや、お前を救うために転進してきた。現在はあの『白鯨』とかいう潜水艦とランデブーを目指しているはずだ。」
「帰らなきゃ…艦隊に…」
「どうやって?」
自身の所属する『蒼き鋼』の旗艦である401の現状を問うたタカオに対して、402は素直に真実を伝える。
しかし、彼女は無理矢理にでも艦隊に帰還しようとしていた。
「申し訳ありませんが、貴女を今戻す訳には行きません。
『千早群像の側に居ろ』という命を出したのは私ですが、状況が変わりました。」
402と同様にヤマトも淡々と彼女の申し出を拒否する意を示す。
二人の間ににわかに剣呑な空気が漂い始める。
「…もし、何が何でも艦隊に帰るとお答えしたら?」
「あなたを説得するしかありませんね」
「どのように?」
「まずは言葉で、それでも聞き入れてもらえなければ…」
「もらえなければ…?」
「実力行使…ですかね?」
その問答が繰り返される事に周囲の波音は大きくなり、ヤマトの最後の言葉とともに402がヤマトの前に入る。
「私の演算素子は幾らシミュレーションを繰り返しても『納得はしない』としか出力しません」
「えぇ、私の演算素子もそう解答しています」
「無駄な時間は使わないでおきましょうか、総旗艦」
タカオはそう言い放つと額にクレストを浮かび上がらせ、背を少し低くして前へ駆け出す。
402がそれを止めようとした瞬間、彼女の視界の左端に閃光がきらめく。
「くっ!?
駆逐艦をハッキングした!?」
タカオのハッキングしたカスミの主砲による射撃により足を止めた402の横を駆け抜けたタカオはそのまま飛び上がり、ヤマトに向けてカカト落としを繰り出す。
「でっ…りゃぁぁぁぁ!!」
だが、その一撃はヤマトが軽く右手をかざすのみで防がれ、二人の間に互いのフィールドがぶつかり合うことによる火花が走る。
その感触に、タカオが軽い違和感を感じた直後
「こらぁぁ!
そこの小娘!
もうすぐ友達が来るっていうのに人の上で暴れるんじゃない!
王子様に言いつけるぞ!」
広々としたヤマトの甲板を突き抜ける大声にタカオが驚いて声のした方を振り向くと、そこには硫黄島で見たデータにあった天羽琴乃にそっくりな格好をしたもう一人のヤマトのメンタルモデル、コトノが第二主砲塔の上に立っていた。
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「ーそしてね、一人じゃ、つまらなかったの」
コトノとの会話の後、見事に着飾られたタカオを椅子に座らせたコトノは、自分の艦の端に並ぶ小さな柵に手を置きながらそう呟く。
その言葉を微かながら聞き取ったタカオは、夕日の中まじまじとその背中を見つめる。
暫くの間そうしていると、通信が入ったのか唐突にコトノが振り返り、少し上を見ながら喋り始める。
「ヤハギと接触したのね、そう、ヤハギに案内させるからそのまま彼女の後ろについて来て」
コトノの知り合いだろうか、今までとはまた違った声色でまるで親友を待ち望むように上機嫌に話す。
このことについて何も聞かされていなかったのか、402が怪訝そうにヤマトに質問する。
「総旗艦様、どの艦が向かっているのですか?」
その言葉にコトノはまるで『やっちゃった』というような副音声が浮かび上がるジェスチャーをしつつ、確認を取るようにもう一人のヤマトへ問う。
「あぁ〜…、言ってなかったっけ?」
「えぇ、言ってないですね。」
彼女の想像通り、402達に伝えることを忘れていたらしい、バツの悪そうな顔を402へ向けたコトノは頬をかきながら話す。
「う〜ん、と言ってももうすぐこっち来ちゃうしなあ…
まぁ少なくとも悪い子ではないよ。」
考えてみれば、総旗艦であるヤマトの手足として各地の諜報活動を担っていた402が知らない相手というのもおかしな話だ。
霧の艦隊全てを統括するヤマトが直接出向くようなことは極めて少なく、彼女が手にする情報の殆どは402を筆頭とする諜報艦隊からのものだ。
そのため、世界規模のものはともかく、霧の艦隊内の情報において402らの知らない情報をヤマトが一方的に知っているという状況は極めて少ない。
「はぁ、ヤハギが艦隊から分離していたのはそういうことでしたか。
とりあえず、どこの艦隊の者かだけでもお聞かせ願えませんか?」
諜報艦らしく402が少しでも情報を得ようとコトノに問いかける。
その質問にコトノはちらりとヤマトの方を向くと、まるでなんでもないことのように答えた。
「えっとね、あの子は北洋方面艦隊の所属だよ~」
彼女らしい軽快な口調で伝えられたその事実は、402のみならずこの問答の隙にここから逃げ出そうとコトノに半ば無理やり座らされた椅子から立ち上がる最中であったタカオの身体と思考をも停止させるには十分すぎるほどに衝撃的なものであった。
霧の北洋方面艦隊
かつて確かに霧の艦隊の編成表に存在していたその艦隊の名前は、いまや艦隊内において名前を出すことすらタブーのようなものとして扱われている。
その理由は、17年前に起因する。
アドミラリティーコードの勅命である、『人類を海洋から駆逐せよ』という命令を達成する大詰めとして、反抗作戦に出てくるであろう事実上最後の人類艦隊を完膚なきまでに叩き潰すために、特に広大かつ予想される人類側の海洋戦力も他と比べて郡を抜いている太平洋方面の霧の艦隊は、現状手すきで暇を持て余していると思われていた北洋方面艦隊に戦力の派遣による協力を求めた。実際攻撃対象の人類間も殆どおらず、手すきだった北洋方面艦隊はこの協力依頼を快く受諾したが、問題はその後だった。
北洋方面艦隊の動きが不穏だと訴えるナガトにより、とある報告を待って実行された第一波攻撃は無事に着弾し、人類側に多大な被害を与えたが、その後に発射された第二波攻撃は突如として人類艦隊周辺に浮上した北洋方面艦隊に所属する艦艇群に防がれ、お返しとばかりに乱射された超重力砲の嵐によって一時的にその海戦に参加していた艦隊は壊滅を余儀なくされた。
前述したナガトの疑いにより、念のためと臨戦状態で待機していた大西洋方面の艦隊の即時攻撃により北洋方面艦隊の拠点と思われていたレイキャビクを廃墟へと変えたことにより、何とか一方的な勝ち逃げは阻止できたが、問題の北洋方面艦隊の所属艦を一隻も沈めることが出来なかった以上、完全とは行かないまでも殆ど敗北に近いものを喫した。
その後は、双方傷ついた戦力の回復を急いだこともあり、現在まで小規模の小競り合いにとどまっているが、宣戦布告文からして北洋方面艦隊が丸ごと他の霧の艦隊と敵対していることは明白であり、反撃能力を持たない人類や、損害を受けてはいるがあくまで潜水艦一隻のみであった401一行とは異なり、こちらとの全面戦争も成し得る現状唯一の勢力として目下一番の警戒対象であることに変わりはない。
特に、コンゴウなどを筆頭とするメンタルモデル不要派の主な主張は『戦闘時、北洋方面艦隊所属艦の艦上にて観測された人型実体のように、我々もメンタルモデルなるものを実装した場合、新たな離反艦が出るのではないか』と言うものであり、それらからも彼女らがどれほど北洋方面艦隊の離反に驚愕し、また恐れているのかが容易に理解できる。
そんな艦隊に所属する艦が来ると?
まさか総旗艦が独自にコネクションを築いていたということだろうか。
「…その艦は総旗艦様がスパイとして北洋方面艦隊に送り込んだ艦でありますか?」
402もタカオとほぼ同様の推察にいたったのか、怪訝そうにコトノへ問う。
だが、その質問に対するコトノの答えはこれまた402とタカオを硬直させた。
「ん?
いやいや、あの子は私の大切な友達だよ」
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「お、来たみたいだね」
先ほどの会話から数刻後、目的の艦の反応を探知したらしいコトノはうれしそうに顔をほころばせつつ呟く。
「…っ!
総旗艦、この反応は!?」
「だーから大丈夫だって、私も何回か向こうに行ったことあるし」
総旗艦直属の諜報艦として超戦艦に迫るほどの広大な索敵範囲を持つ402もその反応を探知したのか、驚いたように目を見開き、勢いよくコトノの方へと問いかける。
よほど意外な反応だったのだろうか、などと考えるタカオは現在艦体を持っておらず索敵範囲は非常に限られているため、完全に蚊帳の外である。
それからさらに少しした後、正面に広がっていたクラインフィールドによる霧の向こう側からヤハギが後方に巨大な影を伴ってタカオの視界に現れた直後、ソレは姿を現した。
ヤハギの後方の影は霧を抜け、巨大な戦艦の姿としてタカオの目に映った。
軽巡洋艦の中でも大型の部類に入るヤハギがまるで駆逐艦かのように見えてしまう巨大な艦体の上に置かれたこれまた巨大な三連装砲塔に、艦橋の周囲に所狭しとハリネズミのように並べられた中口径砲の数々。
その戦艦は先導するヤハギに従い、一度ヤマトの側面を通り過ぎ、後方で艦底部のスラスターにより見事なターンを決めると、そのままもう一度ヤマトの側面へ入り、今度は速度を緩めてヤマトと併走する形をとった。
タカオがまじまじとその間を見つめていると、その艦橋上部にどこかで見覚えがあるような少女がいることに気づく。
そのことにタカオが声を上げるよりも早く、その少女はこちらに向けて大声を放った。
「コトノー!
来たよー!」
民明書房曰く高評価と感想それぞれモンエナ一本分くらいの作用があるそうです。
つづく
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