超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
発:第一潜航艦隊巡航潜水艦 イ402
宛:霧の艦隊総旗艦 超戦艦ヤマト
対象:元大西洋方面艦隊第二艦隊旗艦 コンカラー
数年前、欧州方面艦隊より単艦で突如出奔した大戦艦コンカラーについて報告いたします。彼女が霧の艦隊を出奔して数年が立ちますが、現在に至るまで彼女の状況は不明です。
彼女が率いていた欧州方面艦隊第二艦隊に所属していた艦艇の記録ログは2054年4月■日午前■時■■分■■秒で一度途切れており、当該時刻にコンカラーが艦隊指揮権を行使し所属艦艇のコアを停止、自己復旧プログラムによりコアが再起動する数分の間に艦隊から離脱した模様です。また、離脱後の航路や離脱に至った動機などは不明です。
しかしながら、同じく欧州方面艦隊に所属していたビスマルク麾下の艦艇に捕捉されていないことから、おそらく出奔後直進ルートで北洋方面艦隊との合流を図ったのではないかと思われます。
繰り返しますが、現在の彼女の動向は不明であり、どこに出現してもおかしくありません。
彼女の武装はクラインフィールドの脆弱性と引き換えに攻撃能力と再生能力に特化しており、並の艦隊で彼女と相対した場合、碌な傷も与えられず敗退することでしょう。
仮に彼女が北洋方面艦隊に撃退されることなく彼女らの一員になっているのだとすれば、既に所属が確認されているティルピッツやミズーリに勝るとも劣らない脅威となり得ると考えます。
彼女が率いていた欧州方面艦隊第二艦隊は代替処置として現在大戦艦フッドが率いていますが、それとは別にコンカラー自身の旗艦装備は持ち逃げされており、それを利用した攻撃もあり得ます。
北洋方面艦隊以外にも、単艦で霧に反旗を翻す艦が現れた以上、第二の例が現れないとは限りません。
また今回のように艦隊の指揮を行う大戦艦クラスが反乱を起こした場合以前のメンタルモデル関連とは比較にならない、北洋方面艦隊の一件にすら相当する混乱が発生するでしょう。
これはメンタルモデルに由来する自我の齎す現象のため現状我々にはそれを抑制する具体的な手段は無いと思われます。
次回報告は、定時にお知らせ致します
―I-402―
<<<<>>>>
どうも、私だ。
今日は週末ということで、氷山港内部の居住区を散歩している。この前ティルピッツに勧められて行った店は看板通りとても美味しかったので、今度は私がまだ見ぬ名店を見つけてやろうということだ。
正直いろいろハイスペックなこの体は空腹とか感じないので食事は完全に趣味嗜好の範囲となっている。
具体的に言えばミズーリあたりはあまり食べているのを見たことがない。私の見てない場所で食べているのかもしれないが、とにかくそういう連中も中にはいるということだ。
「艦隊指揮はティルピッツに任せてきたし、なんかあっても
ちなみにアイツというのは少し前に私の直轄艦隊に編入したとある艦のことだ。
巡洋艦とかの比較的軽い艦種が多い直轄艦隊の中では若干浮いているが、そもそも現在私の直轄艦隊は分散して各巡航艦隊の補助に向かっているから悩む必要はあまりないだろう。
そんなことを考えながら路地を散策していると、昼間だと言うのに少し薄暗い路地の向こうに何やらほのかな明かりが見える。
「そういう隠れ家的な店こそ、美味しいって良く言われてるよね〜」
気分は正に孤独のグルメだ。
まぁ前述した通り私達は『腹が…減った…』などとは無縁ではあるが。
さてどんな店なのだろうと近づいて見ると、どうやら一世代前のカフェの様な雰囲気だ。
金獅子亭と控えめな看板がかけられたその店は、あえて光度を落としているのであろうランタンに今となってはほとんど見かけなくなったレンガ造りの建物がいい味を出している。
「…お邪魔しまーす…」
店に入る前あんなにテンションを上げておいて何だが、私は前世から通してかなりの人見知りだ、いや流石にレイキャビクの時みたいに大事ともなれば覚悟もつくけどこういう小さいところではそれが遺憾なく発揮される、されてしまう。
北管区のカジノのときも、軍資金を得るために質屋に行ったはいいものの、そのテントの前で5分程度もじもじしていた。
たまたま店に入るところだった気の良いギャンカスのオヤジがいなかったら結構危なかっただろう…気の良いギャンカスってなんだ?
しかし、そんな気持ちを振り切って店の扉を開けた私にかけられた声はなんというかとても聞き覚えのある声で――
「いらっしゃいま………あ。」
「…ゑ?」
<<<<>>>>
「全く、貴方様がこちらに来るとは思いませんでしたよ…」
「いや、私も貴女がこんなところで店やってるとは思わなかったよ……コンカラー」
この店の経営者であり、今私の目の前の机に紅茶ととある物をそっと置いたのは北洋方面艦隊旗艦直轄艦隊所属、
なんで私と同じティアⅩに数えられるコンカラーなのに大戦艦級なのとか、そもそもなんでコンカラーがいるのとかの疑問はあるだろうが、まぁとりあえず私が言いたいことは…
大丈夫?これ、私の目の前にとても悍ましいパイの様な何かがあるんだけど…まだ今12月じゃないよ?*1
なんかコンカラーめっちゃニコニコしてるんだけどこれ食べろってこと?この特級呪物モドキ食べろってこと?
ノーモーションで目の前に出された英国面の具現化を見て私は動けずにいた。
そんな私をパイが死んだ比企谷の様な目で見上げている。
…いやアイツは元々死んだ目か。
なにはともあれ、元々欧州方面艦隊の第二巡航艦隊旗艦をやっていたコンカラーがここにいる訳は2054年まで遡る――
―そんな遡ってないな…
<<<<>>>>
「時代は変わってもカニはやっぱり北海道だね〜」
第四施設事件での1件を終えた私は、最初はそのまま氷山港まで北上して戻ろうかと思っていたが、ナガトたちに補足されないように陸路で北管区へ向かい、青函トンネル跡地をくぐり抜けて北管区に到着すると、ちょうど歩いていた道の左に蟹屋を見つけそーっと入ってみた。
見るからに高そうな店であったが、入ったらからにはなにか頼まなければと思い、適当な蟹を頼んでみたところ、先程の言葉につながったというわけだ。
この海上封鎖のなかでこんな美味しい海鮮を出している店がうちの氷山港以外にも存在するとは思わなかった。
ぜひまた来てみよう、そう考えていると学園にいたここ数年艦隊の指揮を任せていたティルピッツから緊急の通信が入った。
『旗艦様、緊急です!
大西洋方面より急速にこちらに接近する艦を捉えました!』
『大西洋方面?
どの艦か分かる?』
『はい、対象は欧州方面艦隊第二巡航艦隊旗艦、大戦艦コンカラーです!』
『コンカラー』
その艦名は、欧州方面艦隊の巡航ルートの偵察を行ったタシュケントから上げられた報告を見て私が直ぐに最重要監視艦に指定した艦のものであった。
何と言っても、私と同じwows由来と見られる艦である。
私と同じ転生者である可能性があるのもあるが、何と言っても…
何度あの類の艦に煮え湯を飲まされたか分からないが、その頂点とも言えるコンカラーがいる。
主砲はプラズマ弾とかだろうし私の副砲と同じ様にゲーム内のHEの特徴がそのまま引き継がれているとは限らないが、それを抜きにしてもGKと同格であるティアⅩに君臨する艦を無警戒でいられるわけがないだろう。
それに、あの艦は超回復により見た目以上の耐久性を誇っていた。何故大戦艦のクラスにいるのかは不明だが、弱体化されていたとしても容易に撃沈出来る艦でないのは確かだろう。
そんな訳で、コンカラーの動向には気を配っていたはずだが、それにしても実質的な向こうの最高戦力が輪形陣も組まずに単騎で…?
これまでの様なただの威力偵察ではないだろう、何か特殊な事情でもあるのか?
とりあえずティルピッツにはホールドの指示を出しておこう。
『今から私もそっちに向かうからそれまで持ちこたえて、あと氷山港は護衛つけて後退させて』
『了解…………何だと!?』
ティルピッツからの了承の数秒後、困惑したような彼女の声が通信に入る。
この様な状況でアレだが、彼女のこんな声は久しぶりに聞いた気がする。
『……旗艦様…その…
対象がこちらの管轄海域ライン上で停止、白旗を上げています…』
え…?
<<<<>>>>
そこから先はまぁドタバタだった。
名残惜しみながら会計をしてカニ屋を飛び出した私はそのまま海に飛び込んで艦体に乗って大西洋へと向かった。
その間にティルピッツにはダメ元でコンカラーの武装解除を指示していたが、何故かキーコードごと了承されたらしい。
ますます不思議だ、つい先日まで我々と全力で敵対していた欧州方面艦隊の艦、それも一個艦隊を束ねる大戦艦級が単艦で白旗上げて突っ込んでくるとは…
戦力的にみても上なのはあちらだし長期戦になればジリ貧になるのはむしろこちらの方なだけにこの状況は不可解極まるといったところだが、とりあえずあちらに敵意がないのなら多少は安心できるだろう…
「――で、今現在霧の艦隊と敵対しているこっちに突っ込んできたと」
「はい、流石にあそこにはいられない気がして…」
そして今現在、私の艦上でコンカラーのメンタルモデルの一人と話し合っているというわけだ。
もう一人は自身の艦体の制御を行っているらしく、ティルピッツ麾下の艦に囲まれたコンカラー艦上にいる。というか遠目だけどあれってもしかしなくても獅子王か?
彼女の話を信じるならば、メンタルモデルを得たことで独自の価値感を会得し、それらが自身の配下の艦隊とあまりにもかけ離れていたことでそれを理由に排斥されることを恐れて元から敵対しているこっちに転がり込んで来たらしい。
まぁ武装のキーコードまで渡してるし多分真実なんだろうが…
「そう言えばさ、コンカラー」
「…?何でしょうか?」
「『スモーランド』って知ってる?」
「いえ…寡聞にして存じ上げませんが…地名のことではないですよね?」
『スモーランド』―それは一部の者にとっては禁忌に近い名だ、具体的に言うと駆逐艦乗りにとって。
運営が酒場で造った、などと揶揄される性能を誇る、簡単に言えばOPであるその艦は遭遇した者にトラウマを植え付け、そして販売停止処分となった。
この質問は半分冗談だが、その後も色々話してみたところ、前世…というか別の世界の記憶はないようだった。
コンカラーなんて艦を知っているとなると高確率で同類だと思っていたのだが…メンタルモデルの見た目もあれだし。
というか、コンカラーと呼ぶのもちょっと微妙な気がする。
―こいつ…ライオンのコアを使ってやがる…!
…何というか、つまりはそういうことである。
私と違い、『コンカラー』なんて艦はこの世界でも着工すらされていない。
元々下地があったならともかくそんな艦がいきなり現れていたのは私も不思議に思っていたのだが、彼女のコアを直接確認することでその疑問は氷解した。
そう、この艦未製艦であるライオンのコアを使っているのだ。
どういう原理なのかはまったく分からんが、少なくとも目の前の彼女が保有するコアのコードは大戦艦ライオンの物だ。乗っ取りでもしたのだろうか。
本人にはその感覚は無いようだが…本来デルタコアとはいえ大戦艦級のコアで超戦艦クラスのサイズを誇るコンカラーの艦体を運用しているのだ、無理も出るというものだろう。
具体的には、余剰で回せる演算能力が大戦艦級としてみるとかなり少ない。
その上、回せる演算能力の殆どが元になった艦の特徴を受け継いでいるのか、自身の艦体の再生に特化している。つまりは攻撃面やクラインフィールドによる防御力はそこらの一般的な大戦艦級にすら劣るというわけだ。
その反面、艦体の回復能力には目を見張る物がある。
これはコアの出力からの逆算で出した予測だが、概ね重巡洋艦二隻分程度の演算能力をフルで再生に回す事ができるだろう。しかも艦体の再生によって演算力そのものの絶対量が減るわけではないので再生用のナノマテリアルの備蓄さえ十分ならば理論上は無限に戦闘能力を維持することが出来る。
…コンカラーってこんな艦だったっけ?
私のイメージだと脆弱な装甲による生存性を特殊な修理班で補っているイメージだったけど…霧の艦艇ってクラインフィールドの下の艦体は武装基準的に全部同じようなもんだから回復能力が際立ってるのか…
「とりあえず…うち来る?」
<<<<>>>>
そんなわけで北洋方面艦隊に加入したコンカラーだったが、流石にいきなり巡航艦隊に組み込むといろいろ不都合が出るだろうということで一旦は私の直轄艦隊として登録した。
そして、それからもうそこそこの月日が経っている…決して編成変えるのをめんどくさがった訳じゃないぞ。
コンカラー曰くこの氷山港はとても気に入っているらしく、現在の管理はティルピッツから引き継いで行っているらしい。
この前実験施設ができたと聞いて行ってみたら『対空火炎放射器』なるものを大真面目で造っていた。君ほんとに前世の記憶ないの?
「そう言えば、ここは一人でやってるわけ?」
コンカラーはデルタコアらしくメンタルモデルを2つ持ってはいるが、この店内に存在する反応は一つのみである。
「いえ、今は当直の関係で海に出てもらってます。今頃デューク・オブ・ヨークあたりとチェスでもやってるんじゃないですかね?彼女もチェスは好きですし」
前にも言ったように私の直轄艦隊は現在各巡航艦隊の補助の任に就いている。一部はここ氷山港に常駐して護衛を行っているが、コンカラーは巡航組の方に属する。
理由としてはシンプルに防御火力としては頼りにくいのといざ本格的な攻勢を受けた際に最悪コンカラーを盾にして持ちこたえることが出来るからだ。というか、ここに常駐してるのは2隻だけだし…その他の所属艦は各々巡航艦隊に派遣されている。
タシュケント…?
あんな扱いやすい艦手放すわけ無いじゃん。今は試験的に大巡アラスカを護衛につけて単冠湾にいるであろう東洋方面艦隊に所属する海域強襲制圧艦の動向を探ってもらっている。
劇中描写的にあんまり動いては無さそうだけど、念の為だ。
大戦艦級を上回る演算能力で総攻撃を仕掛けられたらミズーリの巡航艦隊じゃ対処は無理だろうからね。
「やっぱり美味しいね…」
「そうですか?ありがとうございます、この茶葉はアーク・ロイヤルから直接仕入れているんですよ」
あぁ、どおりで美味しい訳だ。
現在彼女の管轄する農業区画はコンカラーの協力もあって急激に拡大しているとは聞いていたが、そういう事情があったのか。
…え?パイ?
…普通に美味しかったよ…若干認めたくないけど…
なんというか、形容しがたい味ではあったけど、結構いける味をしていた。
今度ティルピッツにでも勧めてみようか。
「それで、艦隊の皆とはどう?」
「どう…と言われましても…、まぁ結構いい感じだと思いますよ。ここは開いたばかりですけど何人かは来てくれましたし」
「例えばどんなのが来てるのさ?」
ティルピッツの名前が出ないように軽く祈りながら聞いてみる。個人的にはさっきも名前が出てたデューク・オブ・ヨークとか来てそうだけど。
「そうですね…良く来る人だとデューク・オブ・ヨークさんとか…あ、そういえば一昨日はミズーリさんが来たんですよ」
ミズーリ、飯食ってたのか。
まぁその口ぶりだとティルピッツはまだ来てないらしいな、これで行ったことあるところに誘うことは無くなった…と思う。
「後は…あぁ、いつもここにいるお二方も――」
その言葉を遮って、勢いよく店の扉が開かれ、扉の上についた鈴が大きく揺れる。
扉を開けた下手人は、ちょうど開いた扉に隠れて見えないが、次の瞬間に放たれた路地には似合わない大声のおかげで察する事ができた。
「お姉ちゃん!!はやく〜!!」
と言うわけで読者Xさんよりコンカラーの登場です!
当初はライオンとかに格下げして出そうと思っていたのですが、人名でライオンっていうのは個人的に違和感あったので無理やり弱体化しました。
メンタルモデルは「約束された勝利の剣」って大地を切り裂くらしいし実質超重力砲じゃねってことで決まりました、獅子王の「最果てにて輝ける槍」…?知らん(fateにわか)。
弱体化後の性能としては榴弾が無くなった代わりに主砲が一基増えて超回復貰えたモナークってイメージです。
今後もリクエスト艦は出していきますが、一部は立場的にちょっと後になるかも…
つづく…
…ことができないと殺される…少なくともリクエスト艦までは…
何が見たい?
-
401クルークート(続き)
-
掲示板回
-
アニメルート(続き)
-
報告書回
-
アーク・ロイヤルの農業生活
-
ティルピッツとタシュケントの苦労日誌
-
そんなことより本編を書け