超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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Limbus Companyやってたら特色フィクサー『赤き征裁』とか言うネタが思い浮かんだので初投稿です。


第十八話

 

「――ん?何だアレ」

 

「どうしたのですか!?カラッチョロ!」

 

 大戦艦として、広大な索敵能力を誇り、かつ現在レパルスが率いている叛乱艦隊の中では比較的損害の軽微なカラッチョロの持つソナーセンサーが、艦隊の進行方向からしておおよそ三時の方角、つまりは艦隊の右舷側から急速に接近する一つの推進音を捉えた。

 仮にその推進音の主が現在自らを追い立てている霧の東洋艦隊の別働隊か、もしくはそれらが発射した魚雷の類であるとするならば、そのような攻撃を魚雷一本の単射のみで済ませるとは考えづらい。

 逃げているこちらを一撃のもとに仕留めるため、持てる火力をすべて叩き込んできただろう。

 そもそも、カラッチョロは勿論のことであるがレパルスもいくら消耗しているからと言って、侵食魚雷一本で沈むほどやわな艦ではない。駆逐艦であるヴァンパイアは怪しいが、魚雷の一本くらい回避起動やら各種デコイ等で容易に回避することができるであろう。

 先程の声は、そんなカラッチョロの困惑が声という形を持ってもれたものであるが、自身の艦隊に細心の注意を払っていたレパルスはその声を聞き逃すことなく、声の主であるカラッチョロへ向けて、強く聞き返した。

 

「そこまででけー声出さなくても聞こえてるよ。いや、なんか右から一本だけ魚雷が――

 

ッ!?」

 

 レパルスからの問いに答えようとしたカラッチョロが口を開いていた最中、件の魚雷が炸裂した。しかしながらその炸裂は目標物への命中や磁気反応の近接信管によるものではなく、意図してその地点で展開されたものであった。

 その魚雷の弾頭部より、数多の小型スピーカーが海中へと散布され、それらにより音の嵐とでも表現できるような極大の音波が海域へと放たれる。

 ソナーの反応に演算能力を集中していたカラッチョロは、突然放たれたその音波に顔をしかめ、耳を軽く抑えた。

 

 

「っ!?…カラッチョロ!、ヴァンパイア!、この音波に紛れて潜航します、私の航路をトレースしてください!」

 

「了解!潜るぞ!」

 

《ヂヂッ》

 

 レパルスのその指示に合わせ2隻もそれぞれの艦底部に備えたスラスターを起動させて海中へと潜航する。

 海上ではレパルスらを追跡していたプリンス・オブ・ウェールズとその随伴艦がばら撒かれた小型スピーカーの除去を行っていたが、その作業に時間をかけた結果として、レパルスらはその後特に追撃を受けることなく東洋方面艦隊の管轄ライン上に存在するとある小島にたどり着くことができた。

 

 そうして、霧の東洋艦隊は『北洋方面艦隊に続いて二例目の複数の大型艦による叛乱が発生した艦隊』という旗艦であるプリンス・オブ・ウェールズからすれば非常に不名誉な称号をいただくこととなった。

 

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「――思えば、私が私自身を操艦するのは久しぶりだな」

 

 401からすると遥か南方で霧史上二例目の明確な叛乱が起きていたから前後して、401艦内は静寂に包まれ――というほどではないが、ある種異様な空気感に包まれていた。

 その要因はこの401の機能を司るメンタルモデルであるイオナが現在座っている椅子にある。

 401の副艦長を務める織部僧の席のすぐとなりに配置されているその席は、艦長である千早群像の席であり、それまでイオナは座席に腰を下ろすことなく戦闘を行っていたのであるが、それ自体はイオナが自身の意志で立っているため特段気にすることもない。問題はその席に座るものが現在この401には乗艦していないということだ。

 

 現在、千早群像は数年前に自身の駆る401を用いて撃沈したヒュウガのメンタルモデルとともに401のサポート用に彼女の設計、建造したオプション艦の一隻である『マツシマ』に乗り込み、彼らの護衛対象である白鯨とのランデブーに赴いていた。

 今回彼らが関東地方を統括する中央管区の軍部次官である上陰龍次郎から受けた仕事の内容は要約すれば『日本が開発した霧に対抗することのできる兵器を量産するために工業力に比較的余裕のあるアメリカにその資料を届けてほしい』というものであった。

 太平洋の横断自体は、攻撃型に改装したとはいえ潜水艦として高い隠匿性を誇る401にとって到底無理とは言えないものであったが、その依頼を受けることにした群像は一つの条件をつけた。

 曰く『件の新兵器の資料は人類艦が運搬し、401はその護衛及びサポートに専任する」というもの。

 ナノマテリアルによって分子レベルから完成された船体を持つ霧の艦艇と比べれば人類艦のステルス性は極めて低いと言わざるを得ない。もちろんそんな艦は言ってしまえばお荷物である。

 

 そのようなデメリットを態々提示した理由は、現在の人類の持つ霧に対する先入観を払拭するためであると横須賀要塞港海戦の直前にイオナは伝えられた。

 群像が言うには、『今の人類には自信が必要』らしい、霧の艦隊には敵いっこないという『大海戦』という高すぎる授業料を払って得た認識をどうにかして打ち払わなければならない、ではどうするか?

 

 簡単である、『人類艦が霧の艦隊を出し抜いた』と思わせるような実績を作ってしまえばいい。

 

 この『人類艦が』という所がこの話のミソである。『人類が』というものでは認識を打ち払うには値しないことを群像は身を持って知っている。

 早い話が、『あれは霧である401のおかげだ』と言われてしまうのである。

 そうなってしまえば認識の改革は望むべくもないだろう。

 

 群像としてはそういう意図があって提示した条件であったのだが、ここで困ったのは今回の依頼のクライアントである中央管区政府、もっと言えば戦闘用の艦船を保有する統制軍軍部である。

 

 これも簡単であった、そんな艦が手元にないのである。

 

 壊滅的な被害を被った『大海戦』からはそれなりの歳月が経っているとはいえ、周囲を海、つまりは霧の支配領域に囲まれている日本では新造艦用の資材を入手することすら困難を極め、手に入ったとしても海上封鎖の影響で造船機関が軒並みダウンしてしまっている状況であった。

 中央管区政府は特定の企業団体を集中して援助することでなんとかその解決策を見出したが、その頃には国内の分裂は決定的なものとなってしまっていた。

 結果として現在に至るまで統制軍はそれほど多くの艦船を保有しているわけでもなく、新造艦でさえも一部の例外を除いて『大海戦』以前に確立された技術の応用といった保守的な設計のものばかりであった。

 

 前提条件として、霧の艦隊が跋扈する太平洋を横断する以上、レーダーステルス性能に限界のある水上艦ではなく、潜水艦である必要があるだろう。

 その上単純にアメリカまで最低限度の戦闘能力を維持しながら余裕をもった潜航能力を保有している必要がある。

 どこかにそんな艦はないものかと軍部の人間がかけずり回って探した結果、白羽の矢が立ったのが今回この任務に従事している原子力潜水艦『白鯨』である。

 白鯨は艦歴こそ竣工して数年と戦闘艦としては極めて浅いものであったが、その軍歴はあまりにも白いものであった。

 この状況であるから、原子力がどうだということをいってられる物ではなかったのであるが、いざ鳴り物入りで作ってみるととある問題が浮上した。

 

 これ、どうやって使うの?

 

 ごもっともである。結局白鯨級は3隻建造されたが、現在日本周囲の海域は霧の艦隊に完全に支配されており、沿岸漁業すら危ぶまれる始末だ。

 そんな状況で、外装パーツまで含めれば1000mを超える巨艦をどう運用するのか。加えて言えば原子力機関を搭載する以上、メンテナンスにかかる技術力や資金もばかにならない。

 当初は重力子機関を401から移植、もしくはコピーして搭載する案もあったのであるが、いざ解析を開始してみると予想以上に理解不能のオンパレードであったため断念されたらしい。

 

 そんなわけで霧に対する対抗艦として建造されながらモスボールの様な扱いを受けていた白鯨級であるが、とある転機が訪れた、401による霧の艦艇の撃沈報告である。これにより各国では潜水艦開発の機運が高まり、白鯨級も再び運用されることとなった。

 まぁそんなうまい話はなく、結果として2隻がほぼ何もできずに撃沈されてしまったのであるが。

 

 こうして元々の主眼であった霧への対抗も果たせないとなると、最早このデカブツを運用するほどの余裕は日本にはなく、残った白鯨はとうとう本格的にホコリを被っていった。

 

 しかし、開発者が背伸びしたのか、それとも本当にこれで霧をばったばったと撃破できると思っていたのかは不明だが、この白鯨の外装パーツの中には外洋航行用に居住性を含めた航続能力に特化した物もあり、アメリカまでの長距離隠密運搬という今回の任務にはうってつけであった。

 

 横須賀港で久々の出撃準備をしている最中、入港した401の後を追うように霧の大戦艦が2隻襲撃に現れ、そのままの流れで霧の大戦艦との交戦に突入、攻撃用の外装パーツを丸ごとパージするなどの大きな損害を受けたが、401の協力の元、共同であったとはいえ人類艦で初めて霧を撃沈した武勲艦となった。

 その興奮冷めやらぬうちに白鯨の本来の任務であった太平洋横断作戦を遂行するため、横須賀要塞港を出港し静粛性の維持のため海流に乗る形で401のはるか後方を航行していた。

 

「落ち着きませんか?」

 

 隣の席に座る一世紀前のSFアニメのようなマスクを被った青年、先程の通りこの艦の副長である織部僧が以外そうにイオナへ声を掛ける。

 ちなみに、このマスクは彼が抱える空気系のアレルギーに対処するものであり、未だに群像を除く401のクルーたちに素顔を見せたことがない、イオナはというと、この艦内に入った時点で身体情報を細胞単位までやろうと思えばすべて把握することができるため、もちろんマスクの下の素顔もデータとしては知っている。素顔を生で見たことがないのは変わらないが。

 彼の感覚ではイオナは常に沈着冷静で取り乱したりこころここにあらずといったような様子とはかけ離れていたからだ。もっとも、その落ち着きの無さはすぐ隣に座る僧が集中しなければ感じることもできないほどの極めて小さなゆらぎであり、二人の眼の前に座っている水雷長の橿原杏平や、つい先程杏平と入れ替わりにシャワーに向かったソナー手の八月一日静には到底察知できるものではなかったが。

 

「意外なことにな」

 

 僧の言葉に、イオナは一瞬自分の左手に視線を向け、軽く自重するように眼前のモニターに広がる情報を見ながら返す。

 

「群像からあのプランを聞いたときはお前たちを抱えているとはいえ、私は私に戻るだけだと思っていたが」

 

「そうですね……、私も正直落ち着きません。群像と分かれたのはあなたと群像が二人だけで学園をあとにしたとき以来ですよ……」

 

 イオナの様子を意外そうに眺めていた僧は、自分も同じく群像がいないことで落ち着きを失っている旨の言葉をつぶやくと、彼の座る副長席から1段下がった位置に存在する3つの座席を見やる。

 真ん中の席とその左に置かれている席はそれぞれ杏平と静の席であり、それぞれの器具に紛れて趣味のものが散見される。というか趣味の品々のほうが多い気がする。

 

 ふととあることに思い至った僧は再びイオナの方へ顔を向け、問いかける。

 

「そういえば、調子の方は大丈夫ですか?彼女にはあぁ言っていましたが」

 

 調子とは言わずもがな、イオナ本人とそれに紐づく401についてである。

 艦の耳目とも言うべきソナー手である静が席を外している現在、この艦の索敵システムと元から大半受け持っていた操艦システムの殆どをイオナが直接コントロールしており、平時より間違いなく演算領域を使用しているはずであった。

 

「あぁ、それなら大丈夫だ、元々私の本体だからな、適度に動かさないと体がなまってしまう」

 

「……そうですか」

 

 そう言って顔を前に戻した僧の目に嫌でも入ってくるのは杏平の右側に置かれた座席、先程の2つと違いその席の上にはパソコンのようなコンソールが置かれているのみであり、使用者について推し量ることができるようなものは一つとして置かれておらず、まるで新品のようであった。




ちなみに4000字近くまで書いてボツになりました。
私にはまだ早かったぜ。

多分次回からコンゴウ戦入ります。


つづく……


…んか?これ。

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