超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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春休みなのに夏休みと同等以上の課題が出るってシンプルにおかしいと思うの…

今回の話は課題終わりの深夜テンションで書いているためいつも以上にイタイ描写が多いと思われます、ご注意ください。


第十九話

 

某日 太平洋

 

 現在、当海域にてアメリカへ向かう401一行を阻止するべくコンゴウが麾下の艦隊を用いて網を張っていた。

 コンゴウの率いる東洋方面艦隊第一巡航艦隊は先日の横須賀要塞港海戦を初めとして、これまでに複数回401を取り逃してきた。そのため普段は定期の巡航航路から決して動くことのなかった旗艦である大戦艦コンゴウが直接赴く事態となっている。

 もちろん、それほどまでに生真面目であったコンゴウが自身の本来の職務を疎かにするはずが無く、大戦艦イセを筆頭に一定数の艦隊を定期航路の巡航艦隊として残してきてはいるが、白鯨も含めれば2隻の潜水艦を相手にするような戦力ではなく、どれほどコンゴウが401を危険視しているのかが伺い知れる陣容であった。

 

 そんな大艦隊ではあるが、そのすべてがコンゴウの直接の配下というわけではなく、他の艦隊から援護や支援、はたまた監視を命じられてこの海域にて待機している艦も存在した。

 例えば、現在コンゴウの横に艦体を接舷して作業を行っているアカシは霧の艦隊の中でも珍しい工作艦に分類される艦であり、本来なら後方にて損傷した艦の修理を行うのが役目であるが、今回はコンゴウのとある()()()を運用するための作業を行っていた。

 

 ヒエイの率いる重巡部隊の後方で潜航待機しているアタゴは401に撃破されたタカオの妹とも言える艦であり、401に対して並々ならぬ感情を抱いてはいるが、自身の直接の上官である第二巡航艦隊旗艦の大戦艦ナガトの事態の監視という命令に背くつもりはなく、たとえコンゴウの艦隊が401に敗北しようとも特に手出しせず自身の艦隊へと帰還するつもりであった。

 

 そしてもう一つ、艦隊旗艦を務めるコンゴウとその直属としてミョウコウなどの重巡部隊を率いるヒエイの更に後方、その水面にはコンゴウでさえもあまり見かけない艦影が映し出されていた。

 

 ショウカク――そう呼ばれたその艦に代表される艦種の来歴は極めて数奇なものであった。大艦巨砲主義が世界の軍部の主流となっていた19世紀前半において大型艦でありながら大口径砲を一切搭載せずまだ『空を飛ぶ危ない乗り物』程度の認識であった航空機を主武装として使用する異形の船。その甲板は航空機の発着という単一目的のために特化され、最低限の大きさで設置された航空指揮用の島型艦橋のみがぽつんと立っており、その前方を航行するコンゴウやヒエイのような荒々しさは微塵も感じられない。しかしその艦種は世界大戦の後太古の遺物となった戦艦に取って代わり各国海軍の主力となったことは言うまでもないだろう。

 

 その後無人の対艦、対空兵器…いわゆるミサイルや、スーパーキャビテーションにより超高速で海中を航走する新型魚雷が生まれたことで一時的に価値が揺らぐこともあったものの、搭載する航空機による圧倒的な遠距離攻撃能力は揺るぎないものであり、『大海戦』以前に至るまで艦隊の中核として機能したのは紛れもない事実である。

 

 その名は、航空母艦。しかしながらこの霧の艦隊内では全く異なる名前で呼ばれている。

 その理由は様々あるのだが、どれも長い話になるためここでは割愛することにする。

 ()()()()()()()と呼ばれる彼女らは、空母由来の高い演算能力を持ち、純粋な戦闘能力で言えば大戦艦級を上回っているとさえ言うことができる。

 また、東洋方面艦隊所属の海域強襲制圧艦はその殆どが単冠湾に集められており、北方の危機に備えている。

 

 つまりはコンゴウの第一巡航艦隊には存在しないはずの艦種である。

 ではなぜそんな艦がこの海域にいるのかというと、それは数日前のコンゴウとナガトとの通信に起因する。

 

 

 

 

『――大変そうね、コンゴウ』

 

 コンゴウが横須賀要塞港に差し向けたキリシマとハルナが撃沈されたとの知らせを受けた数刻後、彼女らに追従させていたマヤに事情を聞いているさなか、コンゴウの思考領域内に聞き覚えのある声が響き渡った。

 

「ナガトか…、そちらでも把握しているだろうが、戦艦2隻を失った…申し開きもない」

 

 戦力的には手負いの401一隻しかいない状況で大戦艦級2隻を撃沈されるとは思っていなかったコンゴウは、先代の霧の艦隊総旗艦であり、現在は自身と同格の東洋方面艦隊第二巡航艦隊の旗艦を務めるナガトの言葉に素直に謝罪する。

 実際に401の弾薬は底をつきかけていたし、ヒュウガ戦の際は大量の侵食魚雷を放って撃沈していたのでこの件に関してあまりコンゴウを責めることはできないのであるが、それは自身の矜持であったのだろうか。

 

『別に責めているわけじゃないわ、これからどうするのかお聞かせ願いたくて、このままでは日本の包囲網にも穴が開くし…』

 

「…そうだな」

 

『何なら、ショウカク、ズイカクをそちらに送りましょうか?』

 

「海域強襲制圧艦をか…? いや…いい、()()()()()()()()()()()()()

 

 現在、東洋方面艦隊に所属している海域強襲制圧艦は、総旗艦であるヤマトの命によって単冠湾にその殆どが集められている。表向きは『北洋方面艦隊の侵攻を阻止するため』となっており、実際当初はあまり間違いではなかったのだが、コトノにエレオノーレの正体が割れた結果、今はまた別の目的のために待機を命じられているのであるが、それを知るのは当事者の2名だけであった。

 それを抜きにしても海域強襲制圧艦は大戦艦を上回りうる極めて強力な艦であり、401の件もあって霧全体がピリついている現在おいそれと動かすわけにはいかなかった。

 

「取り敢えず今は艦隊の再編成に専念することにする、その後…私は南の哨戒任務に戻る。401もロストしたし…少し頭を冷やすよ」

 

『そう…、それじゃ私も自分の役目を果たすわ』

 

「了解した」

 

『そういえばほんの2時間前、観測艦が北方で面白い物を探知したの、データを転送するわ』

 

 その通信の直後、コンゴウにとある海域の観測データが送信される。

 そのデータに目を通したコンゴウはその目を大きく見開き、ゆっくりと腰を上げる。

 雰囲気という言語化することのできないコンゴウの変化を感じ取ったのか、いつもコンゴウの周りを飛び交っている海鳥も一斉に空へと羽ばたく。

 

『現在はロスト…面白いでしょう?』

 

「…ナガト、先程の発言は撤回する、海域強襲制圧艦を回してくれ」

 

『あら?、何かあなたの琴線に触る物でもあったかしら?』

 

 手のひらを返すようなコンゴウの発言にナガトは軽い調子で返す、その様子にコンゴウはあきあきとしながらも言葉を重ねる。

 

「お前もわかっているだろう、これは大西洋から来ている、しかも恐らくは()()()()()()()、あそこは奴らの支配領域だ、そんな奴らが素直に通すとは思えない……今回の一件、北洋方面艦隊も一枚噛んでいると見て間違いないだろう。そうなると流石にこのままでは戦力が足りない」

 

 北方海域で探知したということは、高確率で北洋方面艦隊の足下を抜けてきたことになる。それに比べたら、まだ北洋方面艦隊とつながっていると考える方が自然であろう。

 そうなると既に単冠湾の連中が敷いた警戒網は抜かれている可能性が高く、401との決戦となるであろう第1巡航艦隊に回したほうが確実であろうという考えであった。

 

『承知しました、では急ぎ回すように連絡を入れます、合流は数日後になると思われますがよろしいですか?』

 

「あぁ、問題ない。401だけなら我らで沈められるだろう」

 

 こうしてショウカクとズイカクの編入が決定したが、その直後に総旗艦がズイカクを特殊任務に就かせた事により結局間に合ったのはショウカクだけであった。

 しかし、一隻とはいってもその戦闘能力には目を見張る物があり、401戦での活躍、更には干渉してくる可能性のある北洋方面艦隊の艦にもよほどのことがない限り優位に戦えるだろう。

 

 もっとも、この海域にいる…というかこの海域を観測している存在は『よほどのこと』に分類される類のものであったのであるが。

 

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「――で、こっからどうするよ」

 

 雲一つない美しい星空の下、そんな言葉が今や住む者も消え失せた孤島の小さな入り江に響き渡る。

 その声の主は先日霧の東洋艦隊にて発生した叛乱においてレパルス側に立って戦闘を行った大戦艦、フランチェスコ・カラッチョロのものであった。

 現在彼女らはこの孤島に文字通り身を寄せており、いざ東洋艦隊から飛び出してみたはいいものの、はっきり言って行く宛もなくどうしようかと頭を悩ませていた。

 設備も含めて直近で頼りになりそうなのは霧の艦隊総旗艦である超戦艦ヤマトの実質的な直轄である霧の東洋方面艦隊であるが、あちらはあちらで今は別の用事にかかりきりの様で色よい返事は期待できないだろう。

 現在位置からもう少し南東に向かえば伝手がないこともないのだがあそこはあそこで今どのような状況なのかがよく分からないためこれも却下である、というかそもそもこの島を含めてあの艦隊とは管轄海域が極めて広い距離で重なっているためどこまで追手が来るか分かったものではない。

 

 そんなわけで艦隊の指揮を行っているレパルスはほとぼりが冷め次第東洋方面艦隊所有のハシラジマへと向かう予定であったが、ここで問題になってくるのはカラッチョロの扱いについてである。

 現在の扱いとしては地中海方面艦隊からの出向ということになっており、ハシラジマについた後に地中海方面艦隊をも巻き込んだ騒ぎになる可能性がある。

 …実際にはもう起こっているのであるが、それには一旦目をつむっておくことにしよう。

 とにかく、レパルスの認識としてはこれはあくまで東洋艦隊内の事案であり、それを理由に今後欧州方面艦隊に目を付けられることを危惧したのだ。

 

 もっとも、単純にそれだけが理由というわけでもないのだが。

 

「そもそも、貴女はどうしてこちらについてきたのですか?」

 

 カラッチョロはついこの間まで艦隊旗艦を務めていたこともあり、言葉を選ばずに言えばなかなか我の強い性格をしていた。そんな彼女が割とすんなりこちら側につく判断を下したのは正直意外なことであり、レパルスは今に至ってもその真意を知ることができずにいた。

 

「いや、シンプルにアイツが気に入らなくてな」

 

「アイツ?」

 

「プリンス・オブ・ウェールズだよ」

 

「あぁ、なるほど」

 

 レパルスは概ねの事情を理解した。

 要するに艦隊旗艦を行っていた艦を隣り合わせにするには無理があるということだろう。

 特に悪い意味で性格が似通っているとも言えるこの2隻は相性が良くなかったのであろう。

 

「そーいや、あの魚雷についてはなんか分かったのか?」

 

「えぇ、モーターの駆動パターンから推測するにあの魚雷はおそらく日本のものでしょう」

 

「日本?じゃああんとき日本の潜水艦か何かがあそこにいたっていうことか?まさか401とか」

 

「いえ、401は硫黄島沖で補足されております、全速力で機関を回したとしても到底あのタイミングには間に合いません」

 

「じゃあやっぱ日本の潜水艦か、いいねぇ度胸があって、嫌いじゃない」

 

「ですが…一体何の用があって…」

 

 顔に手を当てながらそうつぶやいて俯いたレパルスの横でカラッチョロは何も気にしていないかのように宣う。

 

「そんなの、直接聞いてくればいいじゃん、大まかな探知はできてるんだしさ」

 

「っえ!?そそそそんなこと…」

 

 跳ねるようなレパルスの声にカラッチョロは不思議そうに首を傾げる。

 そしてこれまでの様子を一部始終見ていたヴァンパイアは―――

 

「そんなことって、ただバーっと言ってテキトーに話聞いて帰ってこりゃいいだけだろ。そもそもそういうことをするためにメンタルモデルってあるんだし、何をそんなに――」

 

《ヂッ…ヂヂッ》

 

「ん?どうした?…

 

あぁ、そういうことね」

 

「そういうことってなんですかー!?」

 

 ―――大いに楽しんでいた。




真面目な話新調したパソコン周りの設定とかにも手間取ってました。

書いといてなんですけど、ショウカクってどうやって戦うんでしょうね?
シナノはあれ素の演算力もあるだろうし…

アンケートでは掲示板が人気なようで、多分次回はこれになります。


つづく…

…ことができればな!

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