超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
某日 太平洋
危ない危ない……いやマジで。
ショウカクがまさかあそこで介入してくるとは思わなかった、確かに海域強襲制圧艦のクラインフィールドなら侵食魚雷の数本くらい余裕で受けられるだろう。
そのためアタゴの攻撃能力をそのまま振りかざせる上に防御後はショウカクも追加で攻撃に参加できる。
アタゴの参戦は原作通りだから良いとしてショウカクを説得したのもアシガラなのかな?
全く厄介なことをしてくれる、でもコトノの言う通り『大海戦』前みたいな戦闘マシーンに比べればこっちの方が良いとは思う。
なんというか、前世からの人間としての感性はなったばかりのコトノに比べると殆ど残っていない自覚はあるけどそれでも話し相手は表情豊かであるに越したことはない。
前世といえばもっと心配になるようなこともいくつかある。
例えばということで一つ上げるとするならばやはり記憶のことだろう。
前世のこういう二次創作でもよく触れられていたことであるが、私は一応人知を超越した高エネルギー体であるのでそういったものとは無縁だと思っていたが、その結果があの第四施設事件である。
正直あれに関しては霧の艦隊の変化において良い意味でも悪い意味でもコトノという私とは違ういわば
少なくとも私が北洋方面艦隊を率いて全世界の霧の艦隊相手にクーデターを起こすよりは遥かにマシだろう、よしんばクーデターが成功したとして万を上回る可能性すらある霧の艦隊を完全に統率するのはどう考えても私には無理だ。
そんなわけであれは覚えていたとしても傍観――というかやることは変わらなかったような気がするが、一度起こったことが二度起こらないとは限らない。
というか間違いなく起こる。
仮になかったとしても私がそもそも前世で読んでいない20巻以降の事象が分からない事に変わりはない。
第4施設事件の事もあってあの時点で覚えてる知識はちゃんと個人アーカイブ化したけど若干手遅れ感があるのは否めない。
そもそも私含めた北洋方面艦隊が原作では出てきていなかったはずの艦隊なのだ、そのへんに関する乖離がこれ以上起こらないわけもないだろう。
というかコンカラーの一件も考えると北洋方面艦隊以外にもあぁいう事が起きていないとも限らない何度もいうがミッドウェー級とバトるなんて絶対拒否したい案件である。
それ以前に艦体規模が上がると総じてメンタルモデルも聡明になることが多い、恐らくはその艦の演算力に関係しているのだろうがそれだけでも私みたいな雑な超戦艦プレッシャーで見栄貼ってる私にはガン刺さりする。
学園での会話すら常時情報を検索しながらなんとか取り繕っていたような状況だったのだ、正直もうやりたくない。
こういうのにはよく使われる例えではあるが、まさに『右目と左目で別方向を見ている感覚』というやつである。
まさか歩きながら話すだけで感覚シミュレーターが吐き気を出力するとは思わなかった。
なにはともあれ、眼の前の事案に対処しなければならないのは変わらないのでこんな現実逃避にも似た話をするのもそろそろ止めなければならないだろう、何しろこんなことを考えている間に現実世界では0.01秒ほどの時間が経っているのだ。
霧の艦艇においてそれだけの時間があれば攻撃目標を再ロックするのはそう難しいことではない、ショウカクは元々反射衛星をロックしておいたからミズーリに連絡して即座に攻撃に移ることができたため現状沈黙しているがやはり反射衛星砲の特性上攻撃にラグが発生するためショウカクには一撃許してしまった。
その直後にミズーリの砲撃が着弾したことで沈黙、現在はバイナルパターンも消えているのでクラインフィールドごとやったと思われる。
こうしている今にも尋常ではない量の侵食弾頭魚雷が401に向かっている。
というかデフォの海域強襲制圧艦の戦い方ってあんな感じなのかな、ということはヤマトクラスの演算能力であれやってくるシナノがいるってこと?
やばくない?
しっかし実際あの魚雷どうしようか、401の機動力と防御力であれを乗り切るのはまず無理だろうしそうなると私が外部から介入する必要がある。
一番手っ取り早いのはこちらから迎撃用の魚雷を発射することだがそんな騒音を出せば発射位置を特定されかねない。
なんとかしてかき消せるような騒音を―――
《旗艦様、次弾は必要でしょうか?》
――そうじゃん、その手があった。
やっぱり持つべきは優秀な部下だよ、個人的にポンコツ属性があるとなお良い。
そうと決まれば案の定いつの間にか撃ち落とされてしまった反射衛星の代替のルートを形成しなくちゃ。
この発射後の脆弱性もどうにかしたいところなんだけどねぇ…
《では、先ほどと同座標に2斉射打ち込みます》
その通信の直後遠方の海域にいるミズーリから彼女自身を彩るラインと同色の藍色のビームが射出される。
なんというか…色も相まって某宇宙戦艦に見えなくもない。取り敢えずさっきと同じ様に各砲塔2回反射でルートを組んでるけど音だけなら別に一回でも良かったかな?
そんな事を考えている内にも、ミズーリの放ったビームは衛星を結んで私のはるか上空を駆け巡っている。
もうそろそろかな?
――第2中継の衛星からの反射の通信を受信、魚雷発射!
多分これでなんとかなると思うけど念の為向こうにクラインフィールドを貼れるように準備しておこう。
遠距離でもクラインフィールドを貼れることは貼れるんだけど結構演算力喰うんだよな、アニメ時空とはいえ割と難なくやっていたハルナとキリシマって凄いんだなって。
――ん、もう撃墜されたか。
やっぱ対応も早くなってるな…どうにか対策を打ち出しておかないと…
発射元はヒエイかな?
――は?
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同刻 イ401艦内
「ちょいちょいちょい!! スゲぇ量の魚雷だぞ!! 全部迎撃は無理だ!!」
単調な警告音と時折外から響く腹に来るような低い爆発音、それに加えて赤い光が乱反射している401の艦橋で一際大きな声が響き渡った。
その声の主は401の砲雷担当を務める橿原杏平であり、件の魚雷を放った元凶は先程までコンゴウの後方で生還していたアタゴとショウカクであり、そのうち先に放たれたアタゴの分はアクティブデコイと音響魚雷を使用してなんとか切り抜けることができたが、その後のショウカクの攻撃の苛烈さはアタゴの比ではなく、これまで海域強襲制圧艦との戦闘を行うことがなかったのもあり、401の処理能力を遥かに超えていた。
なんとか杏平の驚異的な技術力をもって保たせてはいるが、海中を疾駆する魚雷の本数は微塵も減っておらず、このまま行けばいずれクラインフィールドすら押し切られて爆沈することになるのは目に見えていた。
しかしながら401は勿論群像が乗っているマツシマにもこの状況を覆すような力はなく、手詰まりと言っても良い状況であった。
強いて良いことを述べるのだとすればショウカクがミサイルと魚雷をフルバーストした直後ショウカクを藍色の光柱が包み込み、それ以降目立った行動を起こしていないことだろうか。
魚雷の回避に全リソースを割いているため海上の詳しい状況は窺い知ることはできないが、ここまでの間に再攻撃を行ってこないことを見るに戦闘不能か少なくとも武装を一時停止せざるを得ない自体に置かれていることは間違いないだろう。
そんなわけで杏平が言ったことは事実の再確認に過ぎず、この場にいる全員が同じ認識を持っていた。
その直後、突然として先程ショウカクに光柱が降り注いだ際と同様の爆発音が響き、イオナも含めた艦橋クルーの全員が反射的に上を見上げた。
まぁここは金属の棺桶とも言うべき潜水艦の内部であるのでいくら上を覗こうとその目に映るのは普段とは違い警告灯のおかげで赤く染まった見慣れた天井であったのであるが。
「――ッ!! 本艦右舷10時方向より魚雷多数接近! 数――196!」
僧の次に目線を前に戻した静が自身のヘッドホンに左手を当てながら座っている椅子を回転させて僧に報告を行った。
「……!」
その報告を聞いた僧の表情はいつもどおりマスクに覆われていて窺い知ることはできないが、それでもその身にまとう雰囲気がまた一段と険しくなったのを感じ取ることができた。
杏平に至っては本格的に脳の処理能力を越えだし、普段のような文句を一つも言えなくなっていた。
だがしかし、新しく現れた魚雷群の
魚雷の予想航路を睨みながらもう残り本数が一桁に迫ってきていた音響魚雷のプリセットを行っている最中、意味がわからないという風に先程に負けず劣らずの大声を上げた。
「何だよこれ、全部ショウカクの魚雷に向かってるぞ!?」
そう叫んだ杏平の眼の前のディスプレイには新しく現れた魚雷群の予測航路が示されており、その線は同じディスプレイに元々表示されていたショウカクの魚雷群のものと綺麗に重なっていた。
このまま行けば間違いなくショウカクのものと交錯し爆発するだろう。
後方から杏平のディスプレイが見えていた僧がそこまで考えたとき、普段はこの艦の艦長である千早群像のものである隣の席から聞き慣れた声が聞こえた。
「―交差と同時にアクティブデコイ射出、機関停止!」
「は!? マジかよ!?」
何者が放ったかもわからない魚雷を全面的に信用するようなイオナのその言葉に一瞬だけ杏平は異を唱えようとするが、この機を逃したら捕捉から抜けられない可能性が高いことは良く分かっているので結局はその通りに動くことにするのであった。
結果としては、予測通り互いの魚雷群は交差し双方の魚雷はすべて爆発、401はその騒音に隠れて海底に潜むことができた。
いくつかの区画は閉鎖されたままであり、お世辞にも無事とは言い難い状況であったが、あの状況から生存できたというだけでも御の字であろう。
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同刻 海域強襲制圧艦 ショウカク 艦上
旗艦であるコンゴウの盾となり沈みゆくアシガラの説得もあり、一時的な所属であるとはいえコンゴウの指示なしに今海戦に参加することを決断したショウカクであったが、手始めにと艦上の侵食弾頭兵器を発射した直後、自身の遥か上空からビーム兵器による攻撃を喰らい、自身が周囲に撒き散らした噴射煙とビームの着弾により一時その姿を隠したが、それらが掻き消えた後に現れたのは
上空から観測していたのにグローサーは気づいていなかったが、バイナルパターンが消えた
逆に言えばそれ以外の被害――例えばビームを食らって艦体に大穴が空いているなど――もない。
ではなぜバイナルパターンのみが消えているのかといえば、簡単である、それの維持すら惜しむほどのエネルギーを別に充てたからだ。
知っての通り、霧の艦艇の中でも海域強襲制圧艦は群を抜いた演算能力を誇る。
『大海戦』直後のレイキャビク防衛戦に置いてグローサーは1回反射の主砲斉射にて一撃のもとに北米方面艦隊所属の海域強襲制圧艦エンタープライズを撃破していたが、それは超戦艦の馬鹿げた出力を持ってして初めて起こり得る事象である。
しかして今回砲撃を行ったのは大戦艦級であるミズーリであり、彼女もデルタコアによる強大な演算能力を誇るが、超戦艦には及ぶべくもない。
さらに言えば、今回は反射衛星を2基ずつ使用しており、その分威力が上がるのは間違いないが、その分絶対的な遅れが発生する。
―――そう、相手が持てる演算力を全て自艦直上のクラインフィールドに集中させられるだけの時間を。
海域強襲制圧艦は強大な演算能力の反面索敵方面に割けるリソースには制限があるので通常なら察知する前に着弾するのであるが、ここにはその索敵能力を補って余りある艦艇が存在していた。
ミョウコウ型重巡洋艦、ナチ。
ヒエイの直轄として索敵能力を大幅に強化した彼女は、北洋方面艦隊のタシュケントと異なり、重巡由来の演算能力により、自衛兵器も多くをそのまま搭載している。
ナチからのデータリンクにより数瞬前に自身へ迫りくる高エネルギー反応を検知したショウカクは即座に退避を断念し重力子機関に回している演算力をカットして予想される着弾地点であった自身の直上のクラインフィールドに全演算力を回し、見事砲撃を防ぎきったのであった。
ナチが先程使用された衛星兵器の撃墜のためミサイルを放った数刻後、再び高エネルギー反応を検知し、同じ様に艦直上にクラインフィールドにを展開し防御を試みるが、満足な回復期間のないまま受け止めた結果、クラインフィールドは破綻し、多少は進路をずらしたものの突き抜けた光によって艦橋は焼け落ちていた。
しかしながら被害はその程度であり、無傷の飛行甲板を展開し下手人である衛星に向かって明らかに過剰な量のミサイルがショウカクから放たれた。
遅れてすみません……時間がなかったのもそうですが、普通に難産でした。
また期末試験の数日後に模試がある謎日程のおかげで7月頭くらいまで不定期になります…そこからはなるべく頻度上げてくんでユルシテ…
感想も返すのが遅れるかもしれませんがちゃんと読んでますし、なるべく早く返しますのでガンガン投げてください。
皆様たくさんの応援ありがとうございます!
久しぶりに開いたら評価とかUA数とかめっちゃ色々上がっててびっくりしました、上げるのが遅すぎて二話連続で同じようなあとがきですけど…
つづく…
…と思います…
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