超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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第二十三話

 

 まずいまずいまずい―――!

 

 なぜ耐えられた?

 なぜ察知された?

 なぜ見逃した―――?

 

 

 

 ―――っと、止め止め。

 

 こんなキャラじゃないしね、私。

 

 実際問題どうして耐えられたのだろうか、といっても正直予想はできているが。

 

 シンプルに火力が足りなかったのだろう、ミズーリはどこまで行っても大戦艦級の枠を出ないということか。

 私が思っていたよりも大きな差が超戦艦と大戦艦の間には横たわっていたようだ。

 

 そうと言ってもそれだけでは増幅された主砲を察知する前に貫かれてしまうだろう、原理について私はよく知らないが実質的なビームである霧の艦艇の主砲を舐めてはいけない。

 

 そこで出てくるのが反射衛星が破壊直前に送信してきたデータに映り込んだ艦、重巡ナチである。

 反射衛星は攻撃能力に特化しているため、基本的には私が座標データを送って攻撃を行うのだが、そのデータ上でもナチの存在は確認できていた。

 

 事実上コンゴウの直轄とも言えるミョウコウ型重巡洋艦はそれぞれが個性的な武装を有しており、その中でもナチは大規模戦闘において破格とも言える装備を有している。

 

 超高域三次元レーダーの集合体とも言えるそれは、自艦の周囲に多数のレーダーユニットを展開することで文字通り海底まで目と耳で見通すものである。

 確か映画の方だと落石のみで401をロックオンしてたような…

 

 はっきり言ってミョウコウ姉妹の中で最も警戒すべき艦である。

 今回の結果にもこの索敵能力が大きく関わってると見て間違いないだろう、原作において群像が虎の子の超重砲を用いてまで確実に撃破した理由が伺えるというものだ。

 

 

 

 気付けなかったことについては……言い訳もすまい、完全に私の落ち度だ。

 もっと見ておけばショウカクの不自然なまでの損傷の少なさに至れたというものを。

 

 少しばかり言い訳をさせてもらえるとするならば、私はつい先程までパターン消失=機能停止だと考えていた。

 原作でもその機能を停止して沈みゆく霧の艦からはパターンが見受けられなかったし、ヒュウガやタカオが艦体を取り戻す際にも自身の手で起動させるまではパターンが浮かび上がらなかった。

 

 しかし実際はどうだ、パターン消失後に撃ち込んだ二射目すら、無傷とはいかないまでも、ショウカクは耐えきって見せた。

 このことから推測するにバイナルパターンとは重力子機関の副産物のようなものであり、緊急時には無理やりエネルギー変換することも可能なのではないだろうか。

 

 そうだとすればパターン消失=機能停止ではなく、むしろ限界までエネルギーを集約している状態の可能性があるということだ。

 

 それ以上に、『反射衛星砲が防がれた』という状態は極めて不味い。

 あの方法で実績ができてしまえば、実質的な威力低下、ひいては再びの全面戦争が勃発しかねない。

 

 今はまだ連射で押し切れる上、最適化するにはかなりの時間を要するだろうが、可能性があるということはやってくるとして予想したほうが後々の私の精神衛生上よろしいだろう。

 

 手っ取り早く対策するなら北洋方面艦隊所属の大戦艦級の主砲出力を上げることだけどこれは単純すぎてうまくいきそうにないかな?

 十中八九主砲を筆頭にした武装関係は機関出力に直結するだろうしそこを弄くるとなると最悪重力子機関の総入れ替えが必要になるだろう、そんな事が可能なのかはわからないし、そもそも換えの重力子機関をどこから調達するかという問題もある。

 

 どうしたもんかな―――

 

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「―――簡潔に聞くがヒュウガ、あの攻撃についてなにか知っているか?」

 

「そうねぇ、あの攻撃について…知ってはいないけど心当たりがないといえば嘘になるわねぇ」

 

 オプション艦『マツシマ』艦内の、その艦体規模と比較すると極めて小さい艦橋にてそんな声が響く。

 そんな小さな艦橋であるので、搭乗しているのは声の主―――千早群像と大戦艦ヒュウガのメンタルモデルだけである。

 

 二人の眼の前にそれぞれ展開されたビジョンには、つい先程401から送信された画像データが展開されていた。

 そこに映るのは、特徴的な島型艦橋が見るも無惨に焼け落ち、パターンも相当に薄くなった海域強襲制圧艦ショウカクであった。

 

 添付されたデータによれば、これは魚雷などの海中を疾駆する兵器による攻撃ではなく、高出力の砲攻撃によってなされたものと推測できる。

 もちろん推測できるというだけでそれについて確定したわけではまったくないが、攻撃型に改装したとはいえそれ以前は高度な索敵能力を持っていた401のデータには一定の信頼が置けると言えよう。

 

 その上で群像は元東洋方面艦隊第二艦隊旗艦であり、旗艦装備を筆頭にする霧の特殊兵装にもある程度精通していると思われるヒュウガに直球で問を投げかけてみたが、帰ってきたのは彼女にしては珍しいなんとも不明瞭なものであった。

 

「心当たり…とはどういうことだ? あれは霧の技術じゃないのか?」

 

 ビーム砲に関しては人類も開発自体はしているが、未だ実用可能なレベルには至っておらず、その開発自体も霧の海上封鎖によって半ば凍結状態にある。

 故にあれほどの高出力を発揮できる攻撃を行うことができるのは霧のみだと考えていたが、そうするとまた別の問題が浮上する。

 

「いえ、あれは正真正銘間違いなく霧の兵器よ? 人類の砲ごときでショウカクのクラインフィールドを貫けるはずないじゃない」

 

「ということは、我々の他にもあの海域にはコンゴウたちと敵対している勢力が存在するということか?」

 

 そう、霧の艦隊とはつい数年前まで自我を保たない兵器であった関係上、まかり間違っても味方艦を攻撃することはありえない。

 となれば攻撃を行った側は明確な意志を持って撃ち込んだことになる。

 これは実質的な反逆行為と同義であり、もちろんそのような勢力は群像の知る中には存在しなかった。

 

「うーん、どこから説明したものかしらね」

 

 ヒュウガはそれについてもなにか思い悩んでいるようだが、群像が時間がかかっても良いからと促すとようやくその重い口を開いた。

 

「そうねぇ、問題は17年前――そっちが言うところの『大海戦』まで遡るわ」

 

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《――と言う訳で、私は一旦下がるね》

 

「あぁ、こちらからも駆逐艦を二隻つける」

 

 コンゴウのその言葉とともにショウカクとの通信は切断される。

 作業を終え自艦との接続を切断していく工作艦アカシを横目で眺めながら、しかして意識は先程の天を貫いた攻撃とその発射元に対して向ける。

 

 先程の攻撃は間違いなくショウカクの破壊、ひいては現在コンゴウたちが追い立てている401の援護を目的としたものであり、ショウカクの破壊こそ防いだものの、401には見事に雲隠れされてしまったのでこの闖入者の目的は果たされてしまったと言えよう。

 

 結果としてショウカクは一時的ながらも重力子機関がオーバーヒートを起こし、後方への退避を余儀なくされた。

 発射元に関してはナチが弾道計算から概ねの位置を割り出しているものの、用いられたのが超高高度を自在に移動する反射ビットのたぐいである可能性が高く、その位置が本当に発射点かはっきりしない上、そもそもこちらの兵装の射程圏外と来た。

 一応駆逐艦を進出させて確かめることはできるが、攻撃を行った直後ショウカクに撃ち込んできたところを見るに何らかの方法でこの海域をモニターしていると見て間違いないだろう。

 そのうえでショウカクにあれだけの損害を与えたとなれば相手は間違いなく大戦艦クラス、駆逐艦程度では薙ぎ払われておしまいであろう。

 

 予想外の攻撃によって戦力を減じた第一巡航艦隊であったが、それと引き換えるようなタイミングでコンゴウの艤装換装作業が終了、コンゴウのメンタルモデルの足元が唸るような響きを上げ、巡航艦隊の旗艦たるその威容を示すかのごとく出力を上げていく。

 

 通常の大戦艦であればそのエネルギー回路の先には大戦艦の装備の中で最も破壊力、射程に優れながらもその代償として制御に膨大な演算リソースを必要とする超重力砲が存在するはずだが、今は別のものへと取り替えられていた。

 

 コンゴウのはるか上空から鳥居を模した、しかしながら鳥居を模していると言う割にはあまりにも近未来的な構造物が複数落下し、コンゴウの両舷に横倒しの筒を作るかのように配置される。

 

 それを見下ろすコンゴウが自身の安全確保を最優先にするようにとアカシに命じた直後、一際大きな鳥居もどきがコンゴウの艦橋上部に落着し、そのような巨大物体が停止されたことによる衝撃波によって周囲の海水が巻き上げられた。

 とはいっても、先述の筒状の構造ができた時点でそれらの影響でコンゴウの球状の周囲からは水がなくなっていたので、巻き上げられた水量は比較的少ないものであった。

 

 コンゴウ上部の物体の鳥居で言う額束にあたる部分が装置の起動を示すように光を放った直後、アカシ麾下の補給艦隊に所属する補給艦の一隻が導かれるようにしてコンゴウ左舷の筒状構造体へと飲み込まれ、多数のコネクタによってコンゴウと接続された。

 

 その直後、コンゴウの艦首が左右に割けるように割れ、まるで何かを包み込むような形状へと変化した。

 

 同時に、コンゴウ内部から光の粒子のような形態のナノマテリアルが多数放出され、艦首部分の空間に集約されていく。

 暫くの間ナノマテリアルは不定形の光の塊のように振る舞っていたが、やがてそれぞれのまとまりへと分かれ、その中でもコンゴウの艦首部分に集った一団は厚身の刀身のような形状を形作り、その形成が後ろへと向かっていくにつれて入れ替わるように前部の光が収まっていき、ナノマテリアルが形成したものが露わとなる。

 

 それは厚身の刀身―――などではなく、現在海底にて身を潜めている401とよく似た潜水艦の艦首部分であった。

 

 

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「―――んで、現在まで今の今まで北洋方面艦隊は敵対を続けているってわけ」

 

「そんな事が…」

 

簡潔ながらも要所要所をしっかりと押さえたヒュウガの解説によって知らされたのは、霧の艦隊の一つであった北洋方面艦隊がはるか17年も前から離反していたという事実。

日頃霧の艦である401と密接な関係にある群像にとってはその全てが聞き逃すことのできないものであった。

 

「ということは、今回の攻撃にも北洋方面艦隊が関わっている、ということか?」

 

 そう聞く群像の脳裏に浮かぶのは先程の説明の中に出てきた『北洋方面艦隊への攻撃を行った艦隊が光の柱に貫かれて壊滅した』という話、見るからに先程のショウカクへの攻撃と酷似しており、心当たりとは十中八九このことだろうと群像は踏んでいた。

 

 また、ヒュウガの言葉が真実であるとするならば、横須賀港海戦時の謎の艦についても説明がつく。

 あれが仮に北洋方面艦隊に所属する偵察艦の類であったとするならば、401やハルナたちを捜索することなく離脱したのは自然であると言えるだろう。

 

「ま、私にも詳しい事情は知らされてないんだけどね。あそこに関してはだいぶ()、少なくとも一介の巡航艦隊旗艦風情には知らされない程度に秘匿されててね、詳しいことはわからないのよ」

 

「…まさか、総旗艦か?」

 

「恐らくね、あの様子だと旗艦直下で監視任務に就いてる艦以外にはほとんど知らされていないんじゃないかしら」

 

 なんでもないかのように語るヒュウガであったが、言うまでもなく敵対関係にある勢力間においてそのような対応は不自然に過ぎる。

 古い言葉に『彼を知り己を知れば百戦危うからず』というものがあるように、戦いにおいて最も重要だと言えるのは彼我の情報である。

 それを一方的に遮断するなど、とても単純な敵対関係であるとは思えない。

 

 万に一つの可能性ではあるが、敵対関係そのものが霧の艦隊へ何かしらの変化を促すブラフであるという可能性すらある。

 しかし、そうすると今更になってショウカクへ攻撃を行う理由が見えない。

 

「どちらにしても、今は眼の前の状況を片付けるべきなんじゃないかしら、艦長さん?」

 

 そんな風に思考の海に沈んでいる群像を見かねてか、ヒュウガが声を掛ける。

 

 その言葉に群像は前を向き直し、指揮を再開した、かのように見えたが其の実、彼の思考は未だに大部分が北洋方面艦隊で埋められていた。




試験は無事…ではありませんが終わりました。
こっから一週間いかないで模試があるってマジ?

多分…来週は上げれる…んじゃないかなぁ…


つづく…


…と思いますぅ…

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