超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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ギリギリセーフ!!

…ですよね?

…決してアズレンに追加されたナヒ―モフの研究やってて遅れたわけじゃないですよ?


第二十五話

某日 横須賀 喫茶『獅子亭』店内

 

 夕暮れの暖かい光が店内を包む中、『獅子亭』の店内には未だ三人の影が存在していた。

 店の入口のドアに掛けられた木板にはClosedの文字が近くの立てかけ看板と同じ様に控えめに書かれているが、店内はその三人のおかげで普段…と言ってもこの喫茶が開店したのは数日前のためまだあまり馴染んでるとは言い難いが、とにかくそれまでの閉店時間より遅い時間にも関わらず店内は営業時と変わらない様子だった。

 

「――それにしても、許可が出てたとはいえ、あんなことまで言ってよかったの? クラマ」

 

 そう言った伊吹――イブキの手には最初のものとは異なるものの未だコーヒーカップが握られており、クラマとタカオの問答の後にも彼女が繰り返しコーヒーを頼んでいたことを示している。

 件のタカオはといえば、クラマとの問答の直後、飛び出すように店を出ていってしまった。

 ちゃんと頼んだコーヒー分の代金を払ってから出ていったのには彼女の真面目さを示しているのかもしれない。

 

「大丈夫だって、旗艦様ももうすぐこっちに来るらしいし、それがなくても私とお姉ちゃん、それに追加で元とはいえ一応艦隊旗艦がいればよっぽどなんとかなると思うよ?」

 

 そう答えたクラマの左手にはスプーン、眼の前のテーブルには大きなパフェが置かれており、そのパフェの残量から推測するにそこそこ前から手がつけられているようだ。

 答えた後、クラマは一気にパフェをかき込み、パフェの入っていた逆円錐状の特徴的な器の中には内側側面についたホイップクリームが残っているのみとなった。

 

「まぁ、確かにコンカラーさんがいれば大丈夫だと思うけど……というかコンカラーさんはこっち来て大丈夫だったんですか?」

 

 そう呟いたイブキは隣で行われたパフェに対する冒涜とも言える食べ方から若干目をそらしつつ手に持っていたコーヒーカップをテーブルに置いた。

 

「一応アーク・ロイヤルさんに任せてきたのでそのあたりは大丈夫ですよ。……あと一応私も戸籍作ってきたんですからちゃんとレイチェル・メアリー・ドレイクって名前で呼んでくれませんかね?」

 

 先程までカウンターでカップを拭いていた店主、もといコンカラーはそうつぶやきつつイブキたちが座っているテーブルに歩み寄りさも当たり前のように先程までタカオが座っていた対面の席に腰を下ろす。

 つい数刻まえに自身が人類の敵とも言える存在であることをカミングアウトした相手に対するこの対応はイブキの言う通り彼女もイブキたちと同等の存在であることを示唆していた。

 

「フルネームで呼べばいいの?」

 

「そこは普通にレイチェルさんでいいですけど…」

 

 無邪気を装って聞いたクラマにコンカラーが返す。

 正直一学生と喫茶の店主の関係性ではよっぽど名前で呼び合うことはないだろうが。

 

 ちなみにこの三隻は今回のコンカラー出向にあたって臨時的にコンカラー旗艦の遊撃艦隊扱いになっているが、コンカラー自身が北洋方面艦隊に途中から所属した関係上比較的とはいえ艦としてもメンタルモデルをとしても新参であるので、自身の艦隊旗艦に対しても基本タメ口な鞍馬はともかく、イブキとコンカラーは互いにどちらが上に当たるのかいまいち分からず結果として互いが互いに中途半端な敬語を使うというなんともちぐはぐな関係性となっている。

 

「というか、いくらなんでももうそろそろ帰ってくれません?」

 

 呆れたようにそういったコンカラーが窓の方へ目をやると先程までぎりぎり持ちこたえていた太陽も沈み、時間を経るごとに店内と外の明度差が激しくなっていった。

 

「そうですね…」

 

「えぇ〜? もう一個食べちゃだめ?」

 

「今日何個食べたか言ってみて」

 

「6個だけど」

 

「帰るよ」

 

 イブキはクラマの両手を持って引きずるように店の出口へと向かう。

 

 体格が完全と枕詞を付けてもいいほどに同じなため、ドアノブに手をかけるのにはかなりの時間がかかった。

 しかしながらイブキの必死の引っ張りにより、どうにかドアを開けて夜風を一身に浴びたところで、まだ家に着いたわけではないのにある種の達成感に浸っているイブキに背中から声がかかる。

 

「あの、イブキさん?」

 

 いきなり自身の名前を呼ばれて軽く困惑しながら後ろを振り返るとこちらもわかりやすく困惑して頬をかいていたコンカラーと目があった。

 

 

 

「お代…払ってくれません? 一応、お店っていう体でやってるんで…」

 

「……」

 

 都合よくコアを自閉モードにしたクラマの両手が、いやに重く感じられた。

 

 

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 コアに立て籠もった妹を後で絶対にしばくと固く誓いながら、イブキが特別重いわけでも分厚いわけでもない財布からカードを出している頃、先に帰ったタカオはというと―――

 

「うん、やっぱり美味しいわね」

 

 自宅でカツオのタタキを満喫していた。

 

 このカツオ、実はズイカクが獲ってきたものであり少し前にも同様に食卓に並んだが、その際好評であったためタレなどを調整してもう一度並んだというわけだ。

 

 ちなみに前回はマグロの兜焼きも並んだのだが、きれいな食べ方がわからん、とズイカクが嘯き、402含めたその場の全員がそれに同意したため今回は並んでいない。

 

 さらに言えばこの家…というかこの高層マンションの一室も数年前にとある人物が使用していた部屋なのだが……それはまた、別の話であろう。

 

 きれいに皿に盛り付けられ、いわゆるちゃぶ台と呼ばれる低いテーブルに置かれたカツオのタタキを、同居している400と402、そして総旗艦命令でコンゴウ艦隊への派遣を取りやめて合流した海域強襲制圧艦ズイカクがおろしポン酢や柚子胡椒など各々気に入った味付けで白飯と合わせていた。

 

「しかし、あちらから接触してくるとはな」

 

 一度箸を置き、お茶に手を伸ばしながら402はそう呟いた。

 

「?アンタ、イブキたちのこと知ってたってこと?」

 

 402のそんなつぶやきを目ざとく聞いていたタカオは思わず問う。

 その声音には少し前のヤマト艦上での一件のようにまた自分だけが蚊帳の外に置かれるのではないかという危惧がありありと表れていた。

 

 実際には眼の前に座っている402もまた、あの場ではほとんど蚊帳の外だったのであるが。

 

「いや、つい先程総旗艦からグローサー・クルフュルストがこちらへ向かう旨の通信を受けてな、まさかもう先行部隊が潜入していたとは思わなかったが」

 

 

 横須賀に到着してからしばらく、特に追加の通信も入っていなかったため、突然入ってきた自身の直属の上司からの緊急連絡に軽く、いや、しっかり身構えた402であったが、蓋を開けてみれば『友達がそっち行くから仲良くしてあげて』といったものであった。

 

 当初は意味もわからず狼狽えたが、402の脳裏にもヤマト艦上での一件が思い浮かび、すぐにその()()が何者なのかを察した。

 

 現在北管区にいると思われるハルナたちがどういった動きをするのか未だつかめていない以上、少なくとも総旗艦とは友好的な戦力の追加は歓迎すべきとは行かないまでも忌むべきものではないのだが、それにしたって過剰戦力過ぎた。

 

 コトノの()()であるグローサー・クルフュルストは紛れもなくヤマトと同格の超戦艦であり、それに加えてタカオの言葉を信じるならばグローサー・クルフュルストの北洋方面艦隊から先行部隊として最低でもすでに重巡洋艦クラスが二隻学園に在籍しているらしい。

 

 重巡が二隻もいればそれだけでズイカクを抜いた402たちと戦力的に十二分に拮抗でき、それに超戦艦が加わるとなれば、ズイカクを戦力の勘定に入れてもまとめて吹き飛ばされるのがオチだろう。

 

「え? アレがこっちに来るっていうの!?」

 

 それまでの調子とは打って変わって突然大声を上げたタカオにズイカクが肩を跳ねさせる。

 402からの情報共有が許可された400とは違い、彼女にとってはグローサー・クルフュルストは初見の存在であり、なぜタカオがそこまで驚愕するのかがイマイチ理解できなかった。

 

「総旗艦は『友達』としか言ってなかったがな」

 

「友達……『友達』ねぇ…、確かに十中八九アレのことでしょうねぇ…」

 

 眉をひそめながら402に同意すると、まるで気を紛らわせるような明るい調子で口を開く。

 

「まぁでも、あの二人に関してはあんまり心配しなくてもいい気がするけどね」

 

「どういうことだ?」

 

 性能的には自身と同格の重巡二隻、それに加えてヤマト艦上で402とタカオのみに語られた北洋方面艦隊の成り立ちから察するに402たちより遥かに積んでいると思われる経験を考慮すると実際には上回っている可能性が高い相手に対して『気にしなくていい』と言い放ったタカオに今度は402が疑心の目を向ける。

 

「あの子達、なんというかこう…言いづらいんだけど、『学園生活を満喫してる』って感じがするのよね、普通に友達を作って、普通に馬鹿やってって感じで」

 

「…」

 

 『普通に馬鹿やって』とはどういうことだろうかと疑問に思いながらも402はタカオの話に耳を傾ける。

 

「そもそも、あの子達がこっちに来てもう結構経つのに今更こっちに接触してきたってなると、あちらさんには元々大々的に動くつもりはないんじゃないかって話。話しぶりからして私達のことも結構前から感づいてたみたいだし」

 

「何にしても、相手はあの北洋方面艦隊だ。用心してもしすぎるということはないだろう。」

 

「ま、結局はそうなるわよね。いざとなればそこの釣りバカになんとかしてもらいましょ」

 

 

 

「…え?」

 

 そんなタカオと402の会話から、ようやくその内容を察したズイカクは知らぬ間に自身が北洋方面艦隊に対するカウンターパートじみた立ち位置になりつつあるのを理解して箸を取り落とした。

 

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「上陰次官補、これを」

 

 日本国中央管区軍務次官補である上陰龍二郎は、そう言った部下から差し出された封筒を開き、自身の椅子に座って取り出した書類に目を通す。

 

 その中で上陰の視線がある一点で止まったのを確認して、先程の部下がさらに口を開く。

 

「次官補のおっしゃっていたレイチェル・メアリー・ドレイクですが、やはりデータに不自然な点がありました」

 

 『レイチェル・メアリー・ドレイク』それはハルナやタカオの潜入が発覚した段階で戸籍の再調査を行ったところ浮かび上がった女性であり、現在の横須賀役所の個人データを信じるならば、横須賀市内で喫茶店を営んでいる女性だ。

 

 不自然な点というのは、データの提出日である。

 現在でも中央管区行政府は『大海戦』前後の混乱からの回復が不完全であるために、後から個人データが送られることも多々あるが、そのほとんど―というか全てと言ってもいい―が孤児や捨て子を市民が拾ったケースであり、提出されるのは決まって子どものものだ。

 

 その点彼女のデータはつい最近提出されたものである上、そのデータを見る限り彼女は上記のような子どもと言うにはいささか無理がある年齢であった。

 百歩譲ってそれまで放浪に近い生活をしていたのだとしてもそんな人物がなんの脈絡もなくいきなり飲食店の経営を始めるというのは不自然なことだ。

 

 しかし、担当者があまり重要視しなかったため最初の報告書には極めて簡潔に書かれていたが、それを不審に思った上陰が個人調査を命じたというわけだった。

 

「職業を始めとしたその他のデータには特別相違は見られませんでした。しかしながら、言ってしまえば繁盛しているとは言い難い彼女の喫茶に頻繁に出入りしている人物がいました」

 

 そう言った直後、上陰がめくった三枚目の用紙には、姉妹と思われる紫髪の二人の少女と、つい先日議題に上がっていた重巡タカオのメンタルモデルと思われる存在がレイチェル・メアリー・ドレイクの経営する喫茶に入っていく様子の画像が印刷されていた。

 

「海洋総合技術学園に在籍している氷筍伊吹と氷筍鞍馬の二名です。画像の通り、彼女らはタカオ、ひいては霧の艦隊と何らかの関係性がある可能性があり、こちらは現在詳しく調査中です」

 

 あとお店のコーヒーは美味しかったそうです、と半ば囮調査に近い方法で向かわせた部下が言っていたことを飲み込みながら報告を終えた。




店主「…もしかして、やっちゃった…?」



上陰おじさんとか402みたいな冷静キャラのエミュムズすぎ問題。

それはそれとして誰かwows艦のクロスオーバーとかもっと書いてくれませんかね?
あるにはあるけど…もっと沢山見たい。

読者様方も推し艦をぜひ動かしてみませんか?

なお黒歴史となった場合の保証はいたしません。


つづく…


…っていうの前回忘れてたな…

設定集って…

  • 活動報告のままでいい
  • 小説の方に移してほしい
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