超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
前回の冒頭書いてる時点ではこんな大事にするつもり無かったんだけどな……
二十世紀、凍てつく極北の帝国を内部から食い荒らす形で突如出現した巨大国家、ソビエト社会主義共和国連邦。
世界で初めて共産主義を国義として定めた国家はその特異性ゆえ産声を言い終わる前から明確、潜在的問わず数多くの敵をその国境の両側に数多く有していた。
そうした敵に対応するにはどうすればいいのか。
軍拡だ。我らの敵が手出しすることの出来ないほどの圧倒的な軍事力が必要だ。
ソ連の首脳部、少なくとも
だが、それには明確な、そして困難な問題が横たわっていた。
軍備力の基礎となる生産能力の問題である。
第一次世界大戦の真っ只中に始まったロシア内戦は元々荒廃していた大地をそこに住んでいた人ごと不毛の大地へと変貌させた。
もちろんそんな国土にまともな生産機関、生産部門、ノウハウさえ残っているはずはなく、ソ連はまず工場を建てるための土壌の基礎づくりから始めることとなった。
国土を守る軍部でさえもその影響から逃れることは困難であり、海軍に至っては実働可能な保有戦艦がガングート級と内戦が建造真っ只中に発生しドックに放置されていた
当然、帝国をそのまま呑み込んだ広大な海岸線を戦艦四隻で防衛できるはずもなく、ソ連海軍軍部は海軍力の向上に苦心していた。
その中でアメリカ国内で新型戦艦の建造を行う案も存在していたが、結局うまくは行かなかった。
時は流れて1936年、ソ連軍部内でとある計画が成立した。
大艦隊建造計画と名付けられたその計画の内容は1946年までに戦艦15隻、重巡洋艦16隻を主力とする文字通りの大艦隊を国内で建造するものであった。
それでも当時の状況を考えれば大分に無理のあるものであったのには変わらないが。
この計画見直しの最中に設計局長や開発責任者などがとある理由で
実際にはその半年近く前から各地の工廠のドックには4隻分の巨大な竜骨が据えられていたのであるが。
こうしてソビエツキー・ソユーズ級と名付けられた本戦艦であるが、その後も混乱が相次ぐこととなった。
不十分な設備や資材の問題は一向に解決の目処が立たず、このまま建造中止になるものかと思われていたが、そこに一つの特大スクープが舞い込んだ。
『ドイツが大艦隊の整備計画を推し進めている』
共産党の情報部門が仕入れたその情報によれば、ドイツは1940年代中に多数の大型艦を整備する予定だという。
時間が経ちその詳細が明らかになるとともにソ連海軍は狂騒に包まれた。
結局ソビエツキー・ソユーズ級戦艦は当初の半分、つまりは現在起工されている4隻を完成させることが決定し、労働者たちの血の努力によってそれはなされようとしていた。
しかしここである悲劇が建造計画を襲う。
ソビエツキー・ソユーズ級戦艦2番艦であるソビエツカヤ・ウクライナを建造していたニコラエフがドイツ軍の支配下に落ちたのだ。
国内で冗談みたいな巨大戦艦を建造しているドイツにとってドックに鎮座していたこの巨大な鋼鉄の塊はさぞ魅力的に見えたのだろう。
結果としてソ連軍が同地を奪還した際にはドックにはほぼ何も残っていなかったという。
この鋼材は最終的にH級と呼ばれるとある戦艦の建造資材に流用されることとなるのだが、それはまた別の話となる。
ソ連海軍はソビエツカヤ・ウクライナの建造を断念し、他の三隻に注力しようという方針になったのだが、そのときにはもうドイツの敗北は決定的なものとなっており、懸念されていたドイツ艦隊もほとんど整備が完了してない上に壊滅状態となればソビエツキー・ソユーズ級戦艦そのものの存在価値を疑問視する声が上がり始めるのも当然と言えよう。
当時の海軍はそれでも3隻だけはなんとか竣工にこぎつけることが出来たが、工程の杜撰さなどから実働状態を保つことが出来たのは1番艦のソビエツキー・ソユーズのみであり、繰り上がって建造された2番艦のソビエツカヤ・ベラルーシアと3番艦のソビエツカヤ・ロシアでは故障やその他問題が多発し港から離れることはほとんどなかった。
さらに実質的な唯一のソビエツキー・ソユーズ級であったソビエツキー・ソユーズもその生涯は良いものであったとはとても言えなかった。
乗員は常に不足し、わずかに乗っている乗員も年端のいかない訓練兵のような者ばかり、そもそも国土を戦場とした大戦争を戦い抜いたソ連にこんなデカブツをまともに運用できる能力は残されていなかったのだ。
海の向こうのアメリカが同時期に建造していたアイオワ級戦艦は改装を施しミサイル戦艦となることでしばしの余生を送ったが、ソビエツキー・ソユーズにはそれも許されなかった。
最後まで戦艦として全うしたしたと言えば聞こえはいいが実態は資金難と資材難の二重苦で改装を施すことが出来なかっただけである。
結局、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦は実戦を経験することなく就役から15年で解体され、その後のソ連海軍はキエフ級に代表される重航空巡洋艦という独特な発展を辿っていくことになる。
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某日 大西洋北方海域
「ブリュッヒャー、そちらでも対象を補足していますか?」
「はい、敵戦艦三隻を中心とする対象艦隊は警戒ライン南方47000にて停止しています」
北洋方面艦隊にて大西洋方面を担当する第一艦隊の旗艦、ティルピッツの搭載するレーダーは前衛艦隊のブリュッヒャーの報告通りバルト海から出撃した艦隊が北洋方面艦隊が開戦前の管轄海域を元に設定した警戒ラインの南方にて待機している様子を映し出していた。
自らの総旗艦である超戦艦グローサー・クルフュルストによると太平洋の第二艦隊にも北米艦隊が迫っているらしい。
第二艦隊のミズーリからの情報も北洋方面艦隊ネットワークにアップロードされているが、あちらは常設の警戒艦隊に加え、巡航艦隊から追加の部隊が展開しているのみであり、こちらのようなデータ外の戦力が出現しているわけではない。
恐らく対象の艦隊を差し向けたのは欧州方面艦隊のビスマルクであろうがレイキャビク襲撃の際の苛烈な攻撃を考えるとあの程度の規模の打撃艦隊で攻撃をかけることはせず、大西洋の霧の艦隊全てに呼びかけて総攻撃を仕掛けてくるだろう。
それなのに現在の大西洋方面の展開戦力は対象艦隊と海域強襲制圧艦ヨークタウンを中心とする欧州方面艦隊と北米方面艦隊の混合一個艦隊。
第一艦隊の戦力は上回っているがレイキャビク襲撃時に比べれば劣る。
これでは一方的に自身の秘匿戦力を無為に晒したに等しい。
ティルピッツ自身は他の霧の艦隊を過小評価しているつもりはないが、結果的に攻勢を行った主力艦隊が軒並み撃破されたレイキャビク襲撃より少ない戦力で攻撃を行うとは考えづらい。
「大戦艦ソビエツキー・ソユーズ……一体何を考えている?」
残された可能性は対象艦隊の旗艦と思われる大戦艦ソビエツキー・ソユーズが大戦艦の枠組みを超えた戦力を保有している可能性。
前衛艦隊の後方に展開する第一艦隊主力の中心に位置するティルピッツは思わずそう呟く。
巡航艦隊以上の規模の旗艦にのみ装備が認められる旗艦装備、ティルピッツも保有してるそれはグローサー・クルフュルストの持つ反射衛星群に代表されるように一般装備とは一線を画す戦闘能力を持つ。
それだけで戦闘の前提をひっくり返すものも多く例えば現在太平洋で稼働しているコンゴウの旗艦装備はその補給の続く限り自身の艦隊を無尽蔵に展開させるものであり、艦隊の展開時間を大幅に短縮することができる。
そのような旗艦装備をソビエツキー・ソユーズが保有しているとすれば、現在の展開状況にも納得がいく。
同時に警戒ライン南方で静止している現状が非常に不気味に思えてくる。
「フォーミダブル、エディンバラとともに艦隊後方に展開してください。なんというか……動きが、いえ、動きがないからこそ対象艦隊の行動が不気味です」
『予感』今は人間のそれとまでは行かなくとも、間違いなく
艦隊戦力の中核たる海域強襲制圧艦フォーミダブルを敵の反応がない、それどころか自艦隊の勢力圏である後方に展開させるなど単なる兵器であった頃のティルピッツ自身であれば声を上げて嗤ったことだろう。
風の噂によると『予感』に似たものを感情シミュレーション上に発露したメンタルモデルはその多くが所属艦隊を出奔しているらしい。
ならばその源流は我々北洋方面艦隊なのだろうかと思考の隅で自嘲する。
仮に我々が源流なのだとしたらその原点は我々の旗艦にあたるのだろう。
彼女いわく『ノリと勢いと趣味で動いてる』そうだが、考えてみればそのような行動原理こそ兵器や道具からは最もかけ離れた行動原理なのだろう。
「ブリュッヒャー、間もなくタシュケントがそちらに展開します。彼女と連携して―――」
そこまで言ったところでティルピッツの右舷を後方から赤色の閃光――超重力砲が駆け抜けた。
自身のクラインフィールドをかすめてバチバチと轟音が鳴り響く中、ティルピッツはその閃光の発射元である後方を思わず振り返る。
水平線に隠れて目視での確認はできなかったが、彼女の保有する優秀なレーダーは突如艦隊後方に出現した先程の超重力砲の下手人をはっきりと捉えていた。
眼前に広がるレーダーサイトに声を失っていると、フォーミダブルと共に後方に展開しようとしていたエディンバラから耳を劈くような緊急電が入る。
「こちらエディンバラ! 艦隊後方より高エネルギー攻撃を確認! フォーミダブルがやられました! 対象の識別確認――」
不意をついた超重力砲による一撃で違わずこちらの最大戦力の一隻をえぐり取った。
間違いなくやり手、その上海域強襲制圧艦の強固なクラインフィールドを奇襲とはいえ一撃で貫く高火力。
導き出される下手人は――
「――欧州方面艦隊所属大戦艦リシュリュー!!」
――艦隊旗艦クラスの大戦艦による奇襲
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同刻 太平洋南方海域
「は? ですがあの海域は本来北米艦隊の管轄海域では?」
同じ星の北半分が戦火に包まれようとしていた頃。
その反対側を管轄する艦隊にそんな軽い驚きと疑問の声が響いていた。
声の主は大戦艦プリンツ・ハインリヒ、太平洋南方を支配する霧の艦隊南洋方面艦隊の一隻であり、実質的な副官を務めている艦でもある。
「えぇ、だからあちらのサウスダコタから直接の協力依頼よ? なんでも北洋方面艦隊の対応のため巡航艦隊を北上させるから暫くの間あちらさんの一部海域を肩代わりしてほしいらしいわ」
その問いに答えるのはハインリヒの上官、つまりは南洋方面艦隊の旗艦である大戦艦プリンツ・ループレヒト。
彼女が軽く伸ばした右手を広げると遠目ながら一斉に回頭を行う北米方面艦隊の艦艇が写し出された。
彼女の旗艦装備は距離による解像度の限界こそあるがある程度の距離までなら隣接する艦隊の支配領域の様子を覗き見ることも可能にしていた。
その証拠に今広がった北米方面艦隊の映像の隣には小さくであるが島に錨を下ろしている二隻の大戦艦の様子が映し出されている。
「しかし……北洋方面艦隊ですか……いえ、私も兵器として人格を得た者であるのでとやかくは言えませんが、何者なんでしょうか、あれらは」
一応艦隊派遣にちゃんと理由があったことに納得したハインリヒは今回の遠因である北洋方面艦隊に思いを馳せる。
自身の所属する南洋方面艦隊も相当に奇特な艦隊であることは重々承知しているのだが、だからこそそれ以上の
十七年前、突如牙を向いた我々の元同胞。
彼女らは一体どのような思考プロセスを通じてその選択に至ったのか。
そして隣接する艦隊はなぜあそこまで彼女らの行動に過敏になるのか、たかが一個方面艦隊にできることは限られている。彼女ら――いや、ビスマルクを筆頭とした欧州上位陣が今更そこまで固執する理由がつかめずにいた。
「そうね…もしかしたら案外、『ノリと勢い』みたいな愉快な方々かもしれないわね」
ソユーズ級の史実に関しては私がミリタリーにわかだから許し亭ユルシテ…
……
つづく…
…事ができるよう祈っております
ムサシ追撃戦、GKちゃんは?
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参加
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不参加(ティルピッツ主導)