超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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広島行ってました、もみじ饅頭美味しい


第二十九話

「か…帰ってきたーー!」

 

 そう言った瞬間に私の眼の前には巨大な氷の塊が飛び込んでくる

 

 やっと北洋方面艦隊の現母港である氷山港に帰ってくることが出来た。

 期間的に言えばそう長い間ではなかったが、その密度がすごすぎて一気にげっそりした気分だ。

 

 単冠湾周辺で展開している海域強襲制圧艦群による哨戒網を掻い潜るためにしていた潜航航行から浮上し、帰還の歓声を上げた直後、私の視界の端に映り込んだのは平常時より目に見えて拡張された氷山港のアタッチメントパーツとも言えるドック。

 

 このドック群は建造当時四基のみであったのだが、現在は目に見えているだけで六基、しかもその全てに北洋方面艦隊所属の艦が入渠していた。

 

 ティルピッツからは多少の被害を受けたが退けることが出来たと報告を受けていたが、果たしてこれは多少の被害と言えるのだろうか、まぁ大西洋の欧州、北米方面艦隊に加えて正体不明の秘匿艦隊を相手取ったことを考えるとそれらを撃退しただけでも十分な功績だとは思う。

 

 そんな事を考えてながらドックと同じく損傷した艦が並ぶ港に入った私を見つけたのはすぐそばの埠頭でアーク・ロイヤルと共に何やら話し込んでいたティルピッツであった。

 

 埠頭に並んでいる艦は多くが軽微な損傷ではあるが、その中にチラホラと大きな損傷のある艦があるところを見るに、あのドック数では足りないほどの激戦であったらしい。

 

「お帰りなさいませ旗艦様早速ですが―――」

 

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某日 大西洋

 

 ここで刻はリシュリューによる超重力砲の強襲発射直後まで遡る。

 

「エクセター!! 被害報告!!」

 

 リシュリューにより北洋方面艦隊の決戦戦力の一つ、海域強襲制圧艦フォーミダブルを砕かれ、数秒前には予測もできなかった混乱に包まれていた。

 

 そんな中、正気と判断力を瀬戸際のところで維持していたティルピッツの激が飛ぶ。

 

 その先は陣形後方に位置していた重巡洋艦エクセター、直前に後方に向かわせたフォーミダブルらとは異なり、もとより艦隊後方が定位置なので指揮系統としてはエディンバラよりこちらに問う方が正しい。

 

「…集計終わりました! フォーミダブル、シュロップシャーが直撃を受けそれぞれ戦闘不能、ライプツィヒ、Z2、Z36、キャヴァリア、チーフテンが重力波の影響で兵装に多大な損害を受け同じく戦闘続行は困難です!」

 

「――ッ!」

 

 解ってはいたことだ。

 そもそも北洋方面艦隊は周囲の艦隊との戦力差を緩和するため、密集陣形を好んで使用していた。

 そんなところに後方から高火力の直線攻撃。被害が大きくなるのは自明であろう。

 

「戦闘が困難な艦はエディンバラと――第二戦闘群から駆逐艦を数隻つけて離脱させなさい、選出は一任します!」

 

 戦闘が困難になった艦の後送のために更に追加で戦力を割く、このままではジリ貧なのは痛いほどよく解っているが、それでも引けない理由が確かにこのときの北洋方面艦隊第一巡航艦隊には重くのしかかっていた。

 

「各艦、リシュリューに攻撃を集中させろ!! 前のソビエツキ―から攻撃が飛んでくる前に!!」

 

 普段から自身に課している口調すらかなぐり捨て、荒々しく檄を飛ばす最大の理由は、彼女らの後方、リシュリューが出現した地点よりさほど遠くない地点にあった。

 

「我々が突破されるということは、氷山港が直接戦火に晒されるに等しい! それだけはなんとしても避けろ!!」

 

 そう、第一巡航艦隊からそう遠くない位置、そこには未だ氷山港が鎮座していた。

 もちろん内部ではアーク・ロイヤルを筆頭とした居残り組が先導して退避を行っているが、何分デカい。退避の完了にはそれ相応の時間がかかる。

 

 元はと言えば秘匿艦隊の出現時点では余裕があったのだ、だからこそティルピッツは氷山港を本来の建造目的――艦隊後方に展開可能な前線基地として運用することにした。

 

 だがしかし、先の強襲攻撃によって全ての前提が覆った。

 

 リシュリューが出現した位置はちょうど氷山港との間の海域、今はこちらを攻撃しているがいつその攻撃目標が氷山港に切り替わるかは分からない、ただでさえ脆弱な氷山港だ、主砲の一撃でも喰らえば十分に致命傷になりうる。

 

 アーク・ロイヤルのクラインフィールドが展開されている限り、主砲の一発で破断するということはないだろうが、それ以上の火力ならば可能性は十分にある。

 

 二発目の超重力砲、だが警戒すべきはリシュリューではない。

 これほどまで近距離であれば、発射前のかなり早い段階でエネルギー回路の流れから予測することができる。

 

 では真に警戒すべきはなにか?

 

 いまだ不気味な沈黙を保つ秘匿艦隊、ソビエツキー・ソユーズ…ではなくその側に侍る二艦である。

 

 あのリシュリューの出現は間違いなく旗艦装備かそれに類するものだ。

 であるならば演算能力の関係上大戦艦クラスでは超重力砲との併載は不可能、よってソビエツキー・ソユーズ本体の火力はそう警戒すべきものではない。

 

「リシュリュー、沈黙を確認!!」

 

 そこまで思考した直後、エクセターより再度の通信が走った。

 初撃で少なくない戦力を失いこそしたが、エクセター含め戦闘艦は十分残っている。

 ただでさえエネルギーと演算能力を多く喰う超重力砲を放った直後では如何に大戦艦級と言えど侵食弾頭弾の飽和攻撃によって手足をもぎ取られることは当然であった。

 

「よくや――」

 

 よくやった、ティルピッツがそう反射的に叫ぼうとしたのを遮るようにして、またも通信が舞い込む。

 

「こちらブリュッヒャー! ソビエツカヤ・ロシアを起点として高エネルギー反応! 予測目標は――艦隊中心部!!」

 

 ブリュッヒャーがそう言い終わるのが早いか、ティルピッツの眼前に目もくらむような強烈な光が飛来し、彼女自身のクラインフィールドが閃光と悲鳴とも形容できる軋みをあげ、結果としてティルピッツはソビエツカヤ・ロシアからの超重力砲を防ぎ切ることに成功した。

 

「…ッ……」

 

 だがいかに北洋方面艦隊の実質的な頂点を勤め上げるティルピッツといえども、同格と言っていい艦から放たれた超重力砲を防ぐのは大分な無理を必要としたようで、艦上のメンタルモデル、特に先程から指示を出していた隣で艦隊維持とレーダー分析に精を出していた艦体担当の方は激しく肩を上下させていた。

 

 言ってしまってはなんだが、本来ならあそこまで艦隊指揮に演算リソースを割り振った状況で同格の超重力砲など耐えれたものではない。

 

 ではなぜ耐えられたのか、そしてなぜこれほどまでにブリュッヒャーの探知情報が遅かったのか、それはたった一つの原因に収束する。

 

「火力を犠牲にした速射……やってくれるじゃない…」

 

 超重力砲の速射、たしかに威力はフルチャージしたときより劣るが、重力子の縮退開始から素早く放つことができる。

 このような突発的な攻撃にはうってつけとも言えるだろう。

 

 そしてなにより――

 

「ッ!!」

 

 今度は斜め前方に展開していたデューク・オブ・ヨークが閃光に包まれる、辛うじて彼女も耐え抜いたようだが、限界が足音を響かせて迫っているのは間違いではないだろう。

 

 これこそが単純明快にして最大の利点、連射が効くということだ。

 

 一発一発の火力は低めだとは言え、それでも通常兵装とは比較にならない大威力を誇る。

 そんな物をポンポンと撃ち込まれてしまってはたとえ後方の憂いを絶ったとしても待ち構えているのは全滅の二文字だけである。

 

 先程まで指揮を行っていたティルピッツのメンタルモデルは顔を俯かせ、小刻みに肩を震わせている。

 口から漏れ出る息は次第に勢いを増し、ダメージコントロールに勤しんでいた艦体担当は嫌なものを予見したかのように表情を曇らせる。

 

 なおも強まる息遣いが、明確に笑い声であると判別できるようになった直後。

 突然顔を上げて大声で笑う、その表情はこれまた普段とはかけ離れたある種狂気的とも取れるものであった。

 

「フフ…フハハハ!! そっちがその気ならこっちもやってやろうじゃない!!」

 

 

 ことここに至って、ティルピッツは自身の奥の手を晒すことを決心した

 

「勝手だが、貴様らの命――私が貰い受ける!!

 

 

 

同調開始(einstimmen)!!

 

 ティルピッツが周囲の艦のメンタルモデルが聞き取れるほどの大音量でそう叫んだのを合図にして、周囲の艦はティルピッツの艦体色である仄暗い紫色へと染まっていった。

 

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「―――これで以上です。結果として我々はフォーミダブルを筆頭に多大な損害を負い、現在巡航艦隊を緊急で呼び戻したコンカラーに一任している状況になります」

 

「リシュリューの強襲ねぇ…直前の探査データをこっちに回してくれない?」

 

「了解です」

 

 そう言ったティルピッツから送られた詳細なデータを見る限り、レーダー上では超重砲によってフォーミダブルが大損害を受けるまでレーダー上にリシュリューの反応はなく、文字通りなにもない空間から突然出現したように見える。

 

 遠距離の実質的なワープという一点だとつい先日顕現したコンゴウの旗艦装備が真っ先に思い浮かぶが、あれはあくまで自身を目標地点としてコアのみを転送し、現地で補給艦からのナノマテリアルを使用して艦体を再構成しているに過ぎない。言ってしまえば当該旗艦装備を所有する艦がワープ先に必要なのだ。

 

 だが今回の襲撃ではそのような反応もなく、どちらかというとステルス機の挙動に近い気がする。

 

「そう言えば、リシュリューのコアは回収できたの?」

 

「いえ、お恥ずかしながら。我々が撃沈した際にコア反応は見受けられませんでした。」

 

「コア反応がない? 幽霊船だとでも言うわけ?」

 

 言うまでも無いことだが、超重力砲を始めとした霧の超兵器はその全てが重力子機関から出力されるエネルギー、ひいてはそれを維持するコアに依存している。

 

 それがない、ということはいわば電池もバッテリーも無く自走するラジコンと同じだ。

物理的にありえない。

 

 私達だって最低限の物理法則くらいは守っているつもりである。

 

「恐らくはコアを事前に他艦に移し、事前に積み込んだナノマテリアルを用いて遠隔で戦闘を行っていたのでしょう」

 

「なるほどね…実質的な使い捨てってことか、贅沢でいいねぇ」

 

 全く羨ましい、こっちはナノマテリアルの補給に四苦八苦しているというのに。

 

 ちなみに現在はコトノからの輸入に結構な割合を頼っている状態だ、初会合のときにそれとなく話題を出したら割とすんなり受けてくれたとはいえ、それでも私とコトノの繋がりは最高機密であり、おいそれと関わる艦を増やすわけにも行かず、補給型の潜水艦数隻による鼠輸送が主である。

 

 もちろん自給する能力自体はあるのだが、恐らく霧の艦隊というシステムそのものが離反を考慮していないためか、周囲の艦隊同士で適宜共有することを前提としている節があり我々だけでは限界があるのだ。

 

 ……いや、離反を考慮に入れているからこその相互依存体制なのか?

 

 これまではあんまり損害を受けることがなかったため在庫的には多少の余裕があったが、それも今回の一件で消し飛んでしまうだろう。

 場合によっては緊急で私の武装を崩す必要も出てくるかもしれない。

 

「でも超重力砲って結構演算力喰うよね?」

 

「はい、ですので同種のステルス状態の艦を付近に待機させ、その艦にコアを移乗させていたのだと思われます」

 

「じゃあ少なくともあのときあの海域には敵対艦がリシュリューの他にもいたってことか…」

 

「仮とはいえ方面艦隊旗艦クラスの大戦艦のバックアップとするとその艦も最低でも大戦艦級と見るのが妥当でしょうね」

 

「じゃあなおさらソビエツキー・ソユーズが関わってるのは間違いないってことになる…厄介だなぁ…」

 

「そうですね、リシュリューには高火力の鉄砲玉以上の役割はなかったかと」

 

 旗艦装備というものはその見た目通りコアではなく艦体に依存する。

 

 つまりはリシュリューが艦体を失って尚推定大戦艦のステルスが剥がれなかったことを見るに、リシュリューの保持する旗艦装備によるステルスでないのは間違いないだろう。

 

「ですがリシュリューは欧州方面、それもフランス沿岸に展開する艦です。ソビエツキー・ソユーズの秘匿艦隊とは武装の共有に色々無理が生じるのでは?」

 

「そこは一時的に艦隊編入とかやればいくらでも無視できそうだし、そんなに無理があるわけでもないんじゃない?」

 

 ティルピッツの旗艦装備も他艦に干渉するタイプの物なので気がかりになったのだろうが、いかにもキツそうな『自艦隊に限る』という制約は逆に言ってしまえば『編成上だけでも自艦隊に組み込んでしまえばいい』ということになる。

 

 旗艦クラスの艦は自身の旗艦装備が封印されてしまうので行うことは稀だが、今回は恐らく火力だけの役割なので抜擢されたというところもあるのだろう。

 

 それより問題は恐らくソビエツキー・ソユーズのものと思われる旗艦装備だ。

 

「巡航艦隊所属のピケット艦群にはタシュケントを参考にソナーアレイ配置を改良して再配備、ドックにも優先して回しています」

 

「それもそうだけど、あれが旗艦装備って確証もないんだよねぇ…」

 

「……と、いいますと?」

 

「いや、確かにステルスは旗艦装備クラスの兵装だろうけど、それがソビエツキー・ソユーズの物だってこともわからないし、もっと言えば主効果すらもわからないんだよね」

 

 

 仮にソビエツキー・ソユーズのものだとしても、ステルスの原理によってはその他の効果も持つ可能性がある。

 例えば旗艦装備が特殊な改造を既存艦に施すことができるタイプのものであった場合、秘匿艦隊全艦が映画版のヒエイたちのように特殊兵装を艤装していてもおかしくない。

 

「まぁそんなこと言っていても終わらないし、とりあえずはバルト海周辺の警戒強化と氷山港の防御兵装の強化とかでいいと思うけどね」

 

「ですが純ナノマテリアル製ではない氷山港はどれほど強化しようと防御能力と形状維持に限界があります。いっそのこと最後方の整備施設に特化させたほうがよろしいのではないでしょうか?」

 

「うーん、やっぱりこれで砲火を食らうのは限界があるか……そうだね、防御兵装は最低限にして緊急時の退避性能を重視した感じにするか」

 

 もともとこの氷山港は前線すぐ後ろに配置する前提で計画されていたが住民が入ることが決定してからも大きな変更を施さなかったため、安全性に欠けるのではないかと問題はあったのだが、今回の一件でそれが浮き彫りになった形となる。

 

 欧州方面艦隊がここまでアグレッシブに動いてきた以上、中途半端に防御兵装にリソースを割くよりもその分を退避じの瞬発力に割り振ったほうがいいだろう。

 というか前線基地として運用したところで住居区画が機関部と直結している関係上まともな戦力になるとは思えない。

 

「了解しました、改装計画は巡航中のコンカラーが帰港次第検討を行います。…それで、旗艦様はこれからどう動くおつもりで?」

 

「もう一回横須賀に行こうと思ってね、第四施設事件って覚えてる?」

 

「えぇ、確か超戦艦ヤマトが原因の一端の可能性があるんでしたね」

 

「うんうん…で、そんな渦中…と言っても十何年も前だけど、ヤマトが何やら()()()()をするらしくてね」

 

「それを見に行くと?」

 

「本音をいうとイブキたちが心配ってのもある」

 

「それはそうですね…」




序章終了!!……多分。

最近非ログイン感想の設定の仕方を知りました、そこからできるんか。
聡明な皆様私を知識と考察でシバいてください、私はアルペジオにわかです(自戒)

え…?
夏休み……お前消えるのか…?

つづく…


…の?

ムサシ追撃戦、GKちゃんは?

  • 参加
  • 不参加(ティルピッツ主導)
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