超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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わずか3連で出てくれた天城さんに無限の感謝を




……200連してもいまだに出ない涼波に願いを込めて。


第三十二話

「…で、コレ何?」

 

 コトノと現状共有も兼ねた一通りの雑談を終えたところで、ここに来た()()を片手に構えてコトノへと問いかける。

 私の右手に握られた本題とは、一つの画像。

 

 横須賀沖の海底で発見した謎の大戦艦。

 艦影からして間違いなく東洋方面艦隊の所属艦ではないあの大戦艦。

 東洋方面艦隊ではないのならコンゴウやナガトには直接的な命令権はない、そして霧の艦隊が特別な理由もなく自身の持ち場を離れるとは考えにくい上、この学園祭は表面上は霧に脅威となるものは一切存在しないと言っていい。

 

 そうなってくるとアレが来訪した原因はただ一つ――艦隊総旗艦として霧の艦隊全てに命令権を持つコトノしかありえない。

 

 アレは一体何なのか、そしてコトノはなぜアレをここに呼び込んだのか。

 少なくとも原作にはいないはずの艦である以上、その理由を聞いておかないわけにはいかなかった。

 

「あ~…それ?」

 

 なかなか厳しい覚悟で聞いた私に反してコトノは気さくそうに、まるでなんでもないかのように答えた。

 その様子はどこか拍子抜けしたようなものであり、コトノがさほど重要視しているわけでもないのが伝わってきた。

 

「あの子…というか元々は別の子を呼んだんだけど、面倒くさがって部下に任せちゃったらしいんだよね」

 

「ひどい上司もいたもんだ…」

 

 コトノが白くて細くて冷たい目でこちらを見ているが生憎私にはそんな心当たりはない、ないったらない。

 

「というか、エレちゃんがそういうの気にするの珍しいね、やっぱりイブキちゃんたちが心配?」

 

「バレた? メンタルモデルとしての経験値は上なんだけどあの二人はどこか危なっかしくてね」

 

 イブキたちの報告からして今回の第四施設での一件において彼女たちはタカオ側に立ちそうなのでイレギュラー要素となりうるアレについて聞いてみたのだが……そんなにあからさまだっただろうか…?

 イブキたちの保護者としては一応コンカラーがいるにはいるのだが、彼女は十中八九上陰次官に目をつけられているので迂闊に行動させて緊張感を高めるわけには行かない。

 

 それよりも、コトノの口ぶり的に彼女が興味本位で呼んだわけではなさそうだが、だからといって部下として呼んだわけでもなさそうだ。

 となると一体どういう意図で…?

 

「第四施設で話す内容を大西洋の皆にも聞いてもらいたくてね、そっち(北洋方面艦隊)からはエレちゃんが来てくれたけど大西洋は皆忙しいのかな」

 

「それはアレかな? 私が暇人だって言いたいのかな?」

 

「違うの? 面白そうだからって言ってコンゴウにちょっかい出してなかった?」

 

「……ハイ」

 

 何も言い返せない…

 

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某日 太平洋上

 

 所変わって海の上。

 名目上の派遣艦隊旗艦であるハルナの命令で重巡マヤは護衛対象であり実質的な司令官でもある蒔絵を乗せて太平洋を航行していた。

 

「ああああ! 立夏さんつよーい!!!!」

 

 周囲の穏やかな海とは正反対に熱烈な感情の籠もった絶叫が響き渡る。

 その絶叫の主はこの艦の主でもある重巡マヤのメンタルモデルであり、彼女と蒔絵たちの眼前には少しレトロなすごろくが広げられていた。

 

 そのすごろくでは一つのコマがかなりの大差をつけて圧勝しており、そのコマの持ち主である蒔絵の護衛役、立夏と呼ばれるサイボーグの少女に非難…というよりはイカサマの疑惑が向けられているようだ。

 

「来た」

 

 喧々囂々とマヤの艦上が騒がしくなっていく中、転がって駄々をこねていたマヤが急に起き上がり、海の遠くを見ながらそうつぶやいた。

 

 もちろんすぐ隣ですごろくに興じていた蒔絵がそのつぶやきを聞き逃す道理はなく、持っていたルーレット板を置き、通信機器を触り始めた。

 立夏はイ400の定期偵察行動――定期便ではないかとマヤに聞いたが、答えるような直後に放たれたマヤの再度の呟きによってその可能性は否定されることとなる。

 

「感3()()()()()()()?」

 

「4? 向こうも思い切ってるね」

 

 霧の統合戦術ネットワーク曰く400と行動をともにしているのは402やズイカクなどの有力艦が多いがその分数は少ない。

 4隻という数字は現在予想できる出撃数の可能上限とほぼ変わらない値であり、慎重な400が安易にそのような行動をするとは到底思えなかった。

 

「これは…タカオお姉ちゃん…?」

 

「霧も建造ドックくらい持っているのでしょ? だったら有り得る話だよ。それよりももう2隻の方が不気味」

 

 そう言いつつ蒔絵は壁にかけられたヘッドホンを手に取り、自身の体格にオーダーメイドされたそれを装着した。

 その随所にはキリクマが描かれており、制作者はある意味明白と言えそうだ。

 

「機関いっぱーい!」

 

 先程までとは打って変わって明るいマヤの言葉とともに艦尾が泡立ち、艦影とは似ても似つかない急加速に艦上が大きく揺れる。

 そんな中艦橋付近では立夏がタラップからの投げ込みで蒔絵を艦長椅子にホールインワンさせる神業を披露していた。

 

「お待たせ、戦術データ出して」

 

「いえっさー」

 

 艦長椅子から多数のデバイスを展開し戦闘準備を整えた蒔絵の合図で艦橋上部のモニターに各艦の映し出される。

 

「これは…存在を隠そうとしてないね…それに、未確認艦2隻同士の距離がかなり近い」

 

 モニターを見る限り400を除く3隻は海上を悠々と航行しており、その行動に自らの存在を秘匿しようとする意図は感じ取れなかった。

 特にUNKNOWNと表示されている未確認艦2隻の距離がかなり近く、以前参考にとハルナから提供された横須賀海戦時のハルナとキリシマの合体機動を思わせるものであった。

 反応の規模から見て2隻は大きくとも重巡級だろうが、未確認というものはそれだけで重大な脅威たりうる。

 

「どうしようか? マッキー?」

 

「とりあえず、射程ギリギリだけど威嚇射撃行ってみようか」

 

「ミサイル?」

 

「もったいないから実弾は禁止」

 

 メンタルモデル自慢の脚力で艦橋最上部に飛び乗ったマヤが頭だけ出してそう提案するが、にべもなく却下された。

 現在マヤは派遣艦隊の名が示す通り、本隊である第一巡航艦隊からは離れて活動しており、その上現在その第一巡航艦隊は401との戦いで旗艦であるコンゴウを失い、戦力を大幅に低下させていた。

 つまりは現状マヤは弾薬補給の目処が立たず、使えば使うほど艦が軽くなる状態であった。

 

「主砲プラズマ弾、水平線の向こうに曲射したいから質量持たせて。目標は――タカオかな、よく分からないやつを下手に刺激したくない」

 

「いえっさー、観測システム上空に上げるね」

 

「方位3時の方向仰角は0度、威嚇だから大まかで良いよただし――

 

 

出力は最大!!」

 

 会話が進むごとにマヤの艦体のバイナルパターンが輝きを増し、搭載する重力子機関から吐き出されるエネルギーが砲身へと集約されているのがよく分かる。

 

「全砲門射撃用意よし」

 

打ち方はじめ!

 

ふぁいやー!

 

 会場に響き渡る大声とともにマヤの主砲からプラズマの奔流が飛び出し、海を切り裂きながら水平線のはるか先まで飛び越え、やがて見えなくなった。

 

<<<<>>>>

 

《これはこれは…》

 

 マヤの威嚇射撃を受けたタカオ艦上…ではなく、横須賀の海洋総合技術学園の校舎の屋上ではタカオのメンタルモデルが弁当をつまんでいた手を止め、屋上からわずかに見える海へと視線を向いけていた。

 太平洋上でマヤと接触しているはずのタカオのメンタルモデルが何故ここにいるのか、という話だが、理由は単純、彼女の日本国内での身分が一般学生であるということに尽きる。

 

 現在はコアを艦体へと移しているため、正確にはあちらを本体というべき話ではあるのだが、彼女自身は自我を持つメンタルモデルの方を重要視しているきらいがあるようだ。

 

 もちろん身分の制約もメンタルモデルに対する固執もあまりない400は自身の艦体とともに現地に展開している。

 

「我々の基本戦術では無いわ、気を付けて」

 

 400の警告通りこのような行動ルーチンは統合戦術ネットワークには記載されておらず、外部からの影響によるマヤ独自の戦闘行動の変化と言えるだろう。

 

 このような戦闘行動の変化は北洋方面艦隊の叛乱時より確認されていたが、その多くが北洋方面艦隊の所属艦についての報告であり、然程霧の内部では起こってはいなかったが、メンタルモデルの獲得とともに『個性』とも言うべきものが霧の艦隊内部でも蔓延し、その結果としてマヤやハルナに代表されるような特異な戦闘形態が生まれたのではないかと推測されているが、あくまで推測の域を出ていない。

 

《確かマヤにはデザインチャイルドが乗っていたわね》

 

《それと最近、北管区の領事館からサイボーグが一体、派遣されているわ》

 

《デザインチャイルドのボディガードってところかしら》

 

《多分》

 

 通信を繰り返している最中にもマヤからの砲撃は絶え間なく降り注いでおり、このまま進み続ければいつかは被弾して無視できない損傷を負うことが目に見えていた。

 マヤからすれば当てる気のない攻撃ではあるが、戦いとは相手があって初めて成立するものであり、マヤの予測から外れる行動をタカオが行えば直撃してしまう可能性を否定できなかった。

 

《勘で撃たれているから弾道を予測できないわ、最大出力射だからまぐれ当たりも怖くて迂闊に舵も切れない、潜航する》

 

《了解、海中ではフォローする》

 

《よろしく

 

 

――残りは任せるわよ》

 

 そう通信を残すとタカオはチャフを散布しつつその艦体を海中へと沈め、マヤのレーダーから身を隠した。

 

 海上に残ったのはマヤのレーダーにも写っていた2隻の未確認艦。

 その艦影は極めて似通っており、一目で2隻が姉妹艦であるということが理解できる。

 

 加えて言えば艦橋を含めた艦中央部は東洋方面艦隊第二巡航艦隊に属する重巡モガミとの類似点を多く見つけることができ、この2隻が旧日本海軍に関わりの深い艦であることを示していた。

 一隻は緑、もう一隻は青色のバイナルパターンを輝かせる2隻はそれだけで先程潜航したタカオに勝るとも劣らない威容を放っており、戦力的にも十分有力であると言えそうだ。

 

《了解、そちらは回避に専念して》

 

《そうそう、もしそっちが被弾したら大変だからね〜》

 

 後は任せると通信を入れた直後、先述の2隻のものと思われる音声データがタカオの通信に入り込んだ。

 

 その2隻――イブキとクラマもタカオと同じく身分は学生であるため、メンタルモデルはタカオとそう遠くない距離の教室でコンカラーが試行錯誤して作った弁当をつついていたが、艦隊とコアはタカオたちと共に太平洋へと赴いていた。

 

 理由としてはいくつかあるが、最も大きな理由は新造されたタカオの艦体の各種スペックの調査であろう。

 本人たちはそんな事おくびにも出さないが、ともに行動するかもしれない存在の動き方を知っておきたいというのは当然と言えるだろう。

 

 それに、タカオが彼女たちの敵に回らないとは限らないのだから。

 

 

 事前の軽いミーティングでマヤからの攻撃行動があった場合イブキらは独立して回避などの行動をすることになってはいたが、当のマヤがタカオのみを狙ってきたため回避の必要がないと判断しそのまま海上航行を続けていた。

 

《で、アンタたちは一体何するつもりなワケ?》

 

 任せた側でもあるタカオはというと、正直言って2人を信用しきれてはいなかった。

 

 ここしばらくの交流から見た所、彼女ら自身の人格に特に際立った問題はなさそうだが、なんといっても北洋方面艦隊の艦である。

 上司がアレである以上どんな危険性を孕んでいるのか予想がつかず、それ故にタカオは彼女たちに不安の入り混じった複雑な感情を抱いていた。

 

《うーん…どうする? お姉ちゃん》

 

《とりあえずこっちも何発か撃ち返しておこう、撃たれっぱなしってのも気に食わないし》

 

 イブキのメンタルモデルは学園にいるため学園内で被っている猫を脱ぐ事なくはっきりとした口調で喋っているが、猫による上方補正があっても二人の会話において主導権を握るのはクラマのようだ。

 

《じゃあじゃあ、アレ使っても良い? 久ぶりだしさ、パーッと派手にやっちゃおうよ!》

 

《アレ…まぁ良いけど、絶対にマヤに当てちゃダメだからね? まともに当てたら多分消し飛んじゃう》

 

 共通通信で繰り広げられる物騒な会話にタカオは無意識に眉をひそめつつ、2人の言うアレとは何なのか推測を巡らせる。

 イブキの言葉からして高火力兵器であるのは確実、だがしかしタカオの持つ兵装の中で最大射程、最大火力を誇る超重力砲と言えども損傷のない重巡を一撃で消し飛ばすには至らない。

 

 であるならばアレとはコンゴウが最近使用したという旗艦装備の類だろうか?

 

 否、そもそも旗艦装備とはその名の通り旗艦専用の装備である。

 いくら北洋方面艦隊と言えど戦力的には重巡に過ぎない彼女らに装備できるはずはないだろう。

 

《準備するからタカオは離れないと巻き込まれちゃうよ?》

 

《そういうのは早く言いなさいよ!》

 

 考えが堂々巡りを繰り返していると、突然クラマから名指しで通信が入り、遅いとも言える警告の文言に文句を飛ばしながら大急ぎで舵を切った。




思った以上に遅れてすみませんでした……

この間にイスレ様よりソユーズたちのイメージファイルを頂きました!
感謝…圧倒的感謝…!!

でも試験はまだ終わってないのでもちょっとだけ不定期がつづくんじゃ…

ムサシ追撃戦、GKちゃんは?

  • 参加
  • 不参加(ティルピッツ主導)
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