超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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やっと…終わった…

あと久しぶりに展開アンケート始めました


第三十三話

某日 バルト海

 

「この忙しいときにあの子を動かさせるなんて、旗艦っていうのは空気を読めない艦種ね」

 

「そうね、じゃあ後は頼んだわ。私はもう…寝る」

 

 煙幕かと見紛うほどに濃密な霧に包まれたバルト海、その中央部に声の主たちは鎮座していた。

 

 …正確には、微睡んでいた、というのが正しいのかもしれないが。

 

 霧の欧州方面艦隊、第一特務艦隊旗艦大戦艦ソビエツキー・ソユーズその人であった。

 

「ベラルーシア? 件のビスマルクはどんな感じ?」

 

 隣で眠りに落ちたもう一人のソユーズにちらりと目を向けながら自身がそれまで下に敷いていたクッションから腰を上げると、あくまで眠たげな様子を隠すことのない声音で右舷につけている自身の妹、ソビエツカヤ・ベラルーシアに問いを投げかける。

 

 一見すると子どもにしか見えないソユーズがそう話す光景は違和感しかないが、この光景、もしくはソユーズが二人して惰眠を貪っている様子はこの艦隊ではよく見かけるものとなっていた。

 

 この様子だと彼女らは普段から一人が寝ている間にもう一人がメインフレームとして動く方法を取っているようだ。

 

「現在は千早翔像、ムサシとともにジブラルタル要塞を攻略中、陥落次第地中海へ進出するとのことです。正直言って…想定より大分速いですね、このままですとあの子が帰って来るより早く戦端を開く必要がありそうです」

 

 ベラルーシアも聞かれることをある程度予想していたのか淀みなく答える。

 

『戦端を開く』

 

 その言葉に嘘はなく、実際に特務艦隊にはとある艦に対する攻撃命令が欧州方面艦隊の旗艦であるビスマルクから直接下されていた。

 

 ではその対象とは一体何か。

 目下最大の脅威である北洋方面艦隊の大西洋部隊旗艦を務め、先日の海戦では奇襲でリシュリューを突っ込ませたのにも関わらず痛み分けに持っていかれたティルピッツか?

 ―否

 はたまたその親玉、先程話に上ったムサシや現総旗艦であるヤマトに比肩しうる戦闘能力を誇り、レイキャビク強襲の際こちらに大損害を与えた北洋方面艦隊旗艦、グローサー・クルフュルストか?

 ――否

 時折不審な動きを見せるビスマルクの協力者、ムサシと千早翔像か?

 ―――是

 

 第一特務艦隊に下された命令とは『合図があり次第バルト海を出撃して展開、超戦艦ムサシ及び千早翔像を()()()()』というものであった。

 

 処分、その無機質で無感動な二文字に超えられた意味は――沈めろ(殺せ)ということ。

 

 少し重くなった空気の中、それを変えるようにベラルーシアが口を開く。

 

「それにしても…、この霧…なんとかならないんですか? こんな調子じゃ星も見れません…」

 

 そう言ったベラルーシアが空を見上げるが、その視線の先に広がるのはどこまでも広がる薄灰色の霧のみであり彼女が欲する満天の星空とはかけ離れたものであった。

 

 先程の報告とは異なり、一気に語間の間が増えた口調からして、こちらが本来…というか戦闘外のいつもの調子らしい。

 

「仕方ないでしょう? 北の連中に補足されないためにはこれが手っ取り早いの」

 

「だからといって…こんな極端にしなくても…」

 

「空が見たいなら外縁哨戒のロシアと代わってきなさい、この前からあの子は特に働きすぎよ」

 

「あー…ロシアはなんというか…この前ティルピッツにやり込められたのを相当根に持ってるようで…今度こそって言って聞かないんです…」

 

「あんの…まあいいわ、後で私から直接言っとく」

 

 話を聞く限り末妹であるソビエツカヤ・ロシアは二人の姉と異なりかなり感情的でアグレッシブな性格の持ち主であるようだった。

 

 もっとも、現在彼女が数隻の駆逐艦を率いて行っている外縁哨戒は北洋方面艦隊を対象としたものではなく、南方―ビスマルク関係で不測の事態が発生した場合の即応が主眼であるので彼女の熱意とは若干方向性がずれている気がしなくもないが。

 

「それより問題はこの裏側よ。総旗艦…一体何を考えているのやら…」

 

「学園祭…でしたっけ? まさかあの子指名で招待状が来るとは…」

 

 学園祭というのはもちろん現在進行系で人類、霧双方の思惑の下準備が進められている海洋総合技術学園のものであり、霧側の主催者とも言えるヤマトからこの特務艦隊にも招待が来ていた。

 

 しかしながらその招待はソユーズに向けたものではなく、その麾下の1隻に対してのものでった。

 結局その艦を地球の裏側まで向かわせたのだが、ベラルーシアは未だその件についての疑問を拭えないようであった。

 

「あぁ、あれ? まず間違いなくビスマルクが一枚噛んでいるわよ」

 

「ビスマルクが…ですか…? 確かにあれはビスマルクを経由してこっちに回ってきましたが…」

 

 突然なんでもないかのように明かされた大胆すぎる推測にベラルーシアは驚きを隠す事ができずにいた。

 ベラルーシアの言った通り件の招待はヤマトから直接送られたものではなく一度欧州方面艦隊を統括するビスマルクの手元を通ってきており、ビスマルクが内容をいじることができたという点に関しては反論の余地もないが、肝心の理由が分からなかった。

 

「原文ではあなたかロシアのどちらか…もしかしたら私だったのかもしれないけど、とにかくその当たりが書かれていたのでしょうね。そして…それこそが理由よ」

 

「私達が…ですか…?」

 

「ビスマルクは私達をヤマトに見せるべきでないと判断したのよ、多分向こうには適当な理由を並べた謝罪文を送りつけてるんじゃないかしら? ま、私はどちらにせよここで寝続けることを選ぶでしょうけどね」

 

「ですが…何故そこまでして私達を向かわせないように…」

 

「ビスマルクも馬鹿じゃないし、特に理由もなくヤマトに嘘をつくとは思えない。となると後は一つ、()()()()()()()()()()()が向こうにいる可能性が高いと判断したってことでしょうね」

 

私達(特務艦隊主力)を見せられない相手、確かに特務艦隊は厳格な秘匿姿勢を貫いてはいるが、知られて都合の悪い相手というのは特に存在しないはず…()()()()()()

 

 そこまで考えた直後、またもなんでもない風に、まるで今日見た夢を誰かに話すような気軽な口調で、あまりにも意外な、それでいてそうとしか考えられない原因を口にした。

 

「間違いなく、いるでしょうね。北の連中(北洋方面艦隊)が」

 

「北洋方面艦隊…たしかにそれなら辻褄が合いますね…」

 

 ソユーズの言う通り、特務艦隊の仮想敵である北洋方面艦隊が現地にいるのだとすれば招待状に乗ることはみすみすこちらの手札を相手に見せびらかすことに等しく、ビスマルクが忌避するのも頷ける話だ。

 

 それはそれとしてこちらに何も言わずに改竄した文書を渡してきたのはどうかと思うが。

 

「この様子だと他の艦隊にも招待が行っているはず…北米艦隊は教授気取りが勝手に行ったからいいとして、もしかしたら太平洋の南の連中にも行ってるかもしれないわね」

 

「南…南洋方面艦隊ですか…あそこはなんというか…その…」

 

「情報大好きなあの覗き魔のことだしまず間違いなく()を送ってるでしょうね。最も、あそこの戦力自体はたかが知れてるから大っぴらに動いてくることはないでしょうけど」

 

 覗き魔、とは海域を超えた観測能力を持つ南洋方面艦隊の旗艦プリンツ・ループレヒトのことであり、口ぶりからしてレキシントン共々あまり良い印象は抱いていないようだ。

 

「それよりも問題は北の連中…北洋方面艦隊よ。こっちは支配海域に対して戦力は比較的潤沢だし、この前の太平洋での一件もある。あそこまで騒動を起こしてなおヤマトが動かないってなると…ヤマトが北洋方面艦隊と繋がってるって言われても驚けないわね」

 

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某日 太平洋上

 

 さんさんと照りつける青空の下、凪いだ海の上を2隻の重巡洋艦がその行き足を止め、その身を水の流れに任せていた。

 

 しかしながら、その艦影は数刻前とは大きく様変わりしており、一見では同様の艦とは思えないだろう。

 2隻の重巡洋艦――イブキとクラマはその艦体を平行に並べ、その間には互いを固定するように多数の構造体が跨っていた。

 

 双胴艦とも言えるこの形態こそが彼女らの真骨頂であり、北洋方面艦隊が彼女らを持て余していた理由でもある。

 

《よしよし、タカオも軸線から外れたね》

 

《なにか怒ってたみたいだけど、大丈夫?》

 

《大丈夫大丈《―――!》…やっぱ大丈夫じゃないかも》

 

《ほらいわんこっちゃない。旗艦様からも止められちゃったし、アレは使えないよ》

 

 タカオからの抗議には涼しい顔をしていたクラマだが、流石に自身の直属の上司からの制止となると聞かぬ存ぜぬはできないようで、学園にいたメンタルモデルの様子も冷や汗が幻視できるようなものであった。

 

 対してある程度この制止を予想していたイブキは、クラマがあそこまでタカオたちに大見得を切ってしまった以上ここで止めてはいさようならとは行かないだろうなと感じながら今後の動向について確認を取るが、その内心では若干の落胆があったことが言葉の調子から漏れ出ていた。

 

《うーん…じゃあさお姉ちゃん、前部主砲のコントロールこっちに回してくれない? こっちの照準システムはお姉ちゃんに渡すから》

 

《良いけど…ちゃんと数値通りに撃ってよ?》

 

《分かってる分かってる、じゃあこっちのアクセスコード送るね》

 

 その言葉と同時にイブキの砲塔がクラマのバイナルパターン色である緑色に染まり、反対にクラマの観測デバイスがイブキのバイナルパターン色である青色に染まることでそれぞれのアクセス権が相手に渡ったことが反映された。

 

 通常この様に他の艦に自身の武装のコントロール権を譲ることはどうしても多少のラグを生むため忌避されることが多いが、ことこの2隻に関しては話が違う。

 そもそも前述の忌避される要因であるラグは自身のものではなかった武装をいきなり接続することによる初期不良のようなものであり、長時間接続することでいわば慣れてしまえば然程問題にはならない。

 

 問題はデータを共有する際に生まれる艦対艦での同調率の差からくるパフォーマンスの低下であり、どうやっても数%のロスが生まれてしまう。

 結果として先程のラグと合わせて積極使用には向かないと判断されている。

 

 だがイブキとクラマ間の同調率は平均のそれより頭一つ抜けて高く、同調によるデメリットを打ち消すどころかそのデメリットをなくしてしまうような絶大な戦闘能力の向上が見られたため、この様に互いの武装のコントロール権を渡し合って片方が索敵、観測に専念している間、もう片方が戦闘武装をまとめて動かすことがいつもの戦闘スタイルとなっている。

 

《12時の方向、仰角0度、相手の観測系デバイスを掠めるように、データ送る》

 

《確認おーけー…無茶言うね、重巡の観測デバイスなんてこの距離だと砂粒みたいな物だよ?》

 

《あんだけ大見得切ったんだからそのくらいやらないと。大丈夫、コンカラーさんにあれだけ練習に付き合ってもらったんだから外すことはない……と思う》

 

《そこは言い切ってほしかったなー》

 

 間の抜けた会話の最中にも2隻の前部に配置された合わせて6基12門の主砲はコントロール権を持つクラマを示す緑色の輝きを増し、その砲口は放たれるエネルギーの大きさを物語るように大きく変形していた。

 

 実践で使用するのは久しぶりであるため最終調整を兼ねてもう一度イブキから共有された観測データと照準を照らし合わせる。

 

《第一から第六まで、射撃用意よし。弾着観測はどう?》

 

《こっちも準備できてる、仮にも重巡2隻分だからさっきのも合わせて精度は信用していいよ》

 

《そもそも疑ってなんてないよ、お姉ちゃんができるって言うなら私はやるだけ》

 

《そう…じゃあ思う存分ぶっ放して》

 

《了解! ファイアー!!

 

 通信越しでも伝わるクラマの気迫とともに横須賀の海洋総合技術学園から遠く離れた海上に浮かぶ1隻の艦から12条の眩い光線が打ち出された。

 

 

 

 

 

 

 

《――予測データとの一致を確認、お見事クラマ》

 

 弾着観測を行ったイブキの言葉が示す通り、放たれたビームはマヤの左舷側中央部に浮遊する観測デバイスのわずか数十センチ上空を駆け抜け、本体であるマヤにはもちろん被害は少したりともなく、目標となった観測デバイスも上面が軽く焦げ付くだけというこの場においては理想的とも言える威嚇射撃で持って見事なまでの挨拶をマヤに返した。

 

《本当!? じゃあ後で購買のアイス買って!》

 

《はいはい、午後の講義が終わったらね》




どうでもいいですけど、もうすぐこの駄文を書き始めてから一年が経つわけです。
私はなるべく週一本は上げるようにしてたと思うので――

365÷7=52.14……

現在の本数――39話

……アレ…?


つづく…

…にしても速度考えたほうが良いな

ムサシ追撃戦、GKちゃんは?

  • 参加
  • 不参加(ティルピッツ主導)
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