超戦艦 Großer Kurfürst 作:U・K・Owen
追記;白鯨について、劇中会話から恐らく正式には白鯨Ⅲだと思われますが原作内では番号を省いているため本作でも一部を除き『白鯨』で統一させていただきます。
某日 氷山港
――あぁ、タシュケント。戻っていたのですか。
お疲れとは思いますが、とりあえず入港の申請は出しておいてくださいね。
コンカラーが太平洋にいる現在は一応私がここの管理者ですから、大西洋の警戒以上に仕事を増やされては困ります。
それで、ようやくまとまった休暇をいただけたのですね。
私の演算能力を貸し与えるので市内を散策してみてはどうですか?
いえ、礼には及びませんよ。
日頃から貴女の索敵能力には感謝していますので、これくらいは。
最近はピケット艦の改修も進んでいますが、未だ索敵の主軸であることに変わりありませんしね。
日頃の苦労、お察ししますよ。
――え?
今後の予定も考えると
ま…、まぁ…そうかもしれませんね…
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某日 太平洋
時間は大きく遡り、401がコンゴウと死闘を繰り広げていた頃。
重力波とプラズマ飛び交う海域とは対象的に静かで暗闇のみが広がる海中にソレはいた。
攻撃型原子力潜水艦、白鯨。
その仰々しい肩書とは裏腹に、今回の太平洋横断作戦では裏方も裏方。
しかしながら1000mを超える巨鯨の胃の中には文字通り今回の横断作戦の理由が飲み込まれていた。
振動弾頭と呼ばれるその兵器は、上層部によれば霧の艦艇の装甲すら撃ち抜いて撃破することができる……らしい。
なにぶん霧の艦艇の詳細なスペックがある程度判明してきた頃から『霧に対抗できる新兵器ができたぞ』からの『全然効かへんやないかい』の命をかけた壮大なコントは数え切れないほど繰り広げられてきた。
多くの場合は無人試験の段階で効果が疑問視されていたので貴重な人的資源を無駄に浪費することがなかったことは不幸中の幸いと言えようか。
そんなわけで運び屋として作戦目標そのものを運ぶ白鯨の乗組員ですら話を持ちかけられた時は開発担当局の職員を白を超えてどこか黒い目で見ていた。
だがしかし、とある映像を見せられたことでその目は急に生命感を取り戻すこととなる。
画面中央に映る霧の水雷艇。余談だが、いくらSFじみた性能を誇る霧の艦隊といえども全ての海岸線を見張るには絶対的に数が足りない。
よってそのような用途には比較的現実的なスペックを持つ水雷艇や、場所によっては揚陸艇護衛用の小型艇すら起用しているらしい。
これら小型艇とその他の戦闘艦艇とではたった一つ、しかし人類にとってはこれ以上ない
霧の艦艇が標準装備する重力子兵器を装甲をその存在ごと捩じ切り破綻させる無敵の矛とするならば、ソレは人類の攻撃をエネルギーごと受け流して無効化する無敵の盾。
クラインフィールドと呼ばれる幾何学的防護壁が存在しないということだ。
それはつまり、攻撃が直接その船体に届くことを意味する。
しかし、それだけのハンデを背負っている水雷艇にさえ、人類は手が出せなかった。
先述した無敵の矛の一つ、侵食弾頭弾。
たった数発搭載されているその超兵器と見た目以上のレートでもって光弾を吐き出す機銃にによりこちらのミサイル、果ては砲弾ですらそのことごとくを撃ち落とされ、どうにかくぐり抜けた数発もその船体に傷をつけるには至らなかった。
やがて霧側も脅威ではないと判定したのか、ついには迎撃行動も取らず、攻撃を無視して悠々と航行することになる始末。
人類は海岸線から見えるボートの様な船が目と鼻の先を通り過ぎていくのを指を咥えて見ていることしかできなかった。
そんなボートに向かって一筋の雷跡がスルスルと伸びて行き、やがてその航路と交差する。
次の瞬間、水雷艇の船体が綻ぶように崩れ、やがて爆発を起こして波間へと消えた。
これまでの言葉だけ調子の良い兵器たちとは違う、真の意味で霧を撃滅しうる兵器。
だがしかし、察しの良い数名は嫌な予感をその一連の映像から感じ取った。
映像中の目標はあくまで沿岸警戒用の水雷艇クラスであり、クラインフィールドを持たない。
霧の艦隊において駆逐艦以上の規模を持つ艦はその強度にこそ差はあれど、皆クラインフィールドを標準装備している。
エネルギーだろうが物理弾だろうがその許容上限を超えない限り無限の防御力を誇るそれをいかにして突破するか、そしてこれに気づけるものは皆、この裏に隠された
言うまでもなく日本国内のエネルギー事情は切羽詰まっており、振動弾頭のような素人目にも超が3つ4つ重なる高コスト兵器をそうポンポンと生み出せるわけがない。
必然的にその量産は他国に頼ることとなり、現状の各国情勢などを考えるとそれらの条件に合致するのは太平洋の向こう側のアメリカだけだそうだ。
ではどうやって振動弾頭の資料を運ぶのか、真っ先に思い浮かぶのは現在大陸間の物資輸送において一般的に使用されているSSTOだが、これに関してはあくまで霧が見逃しているだけであり、これに軍事物資を載せていると脅威と判断され長射程のエネルギー砲で撃ち落とされてしまう。
そこまで行くと自分たちが呼ばれた理由にも合点がいく。
つまりは自分たちにこれを運べというのだろう。
無茶な話だ、只でさえ太平洋の横断には多大なコストと長大な時間がかかるのに加え、太平洋中央海域は文字通り霧の艦隊が支配する内海と化している。
もちろんこれらの海域を巡航しているのは水雷艇のようなクルーザーに毛が生えたようなちゃちな船ではなく、重巡洋艦や大戦艦と言ったクラインフィールドを装備し侵食弾頭弾をはじめとする重力子兵器を山のように積み込んだ生粋の戦闘艦ばかり。
攻撃型とはいえ人類艦の域を出ない白鯨に対抗手段はなく、見つかればそのまま撃沈されるのを待つしかない。
頼みの綱となる微細動タイルもその実績は人類間のもののみであり、果たして霧の艦艇のアクティブソナーに効果があるのかは大いに疑問なところだ。
「だが、霧の艦隊を釣り上げる陽動がいたらどうする ?」
その疑念を口にした直後、開発局員ともに入室した目付きの悪い軍務省次官、上陰が不意にそう呟く。
確かにそんな都合の良い存在がいれば釣り上げられた霧の艦隊の下をくぐり抜ける形で太平洋を横断することができるかもしれない。
だが、そんなことをすれば間違いなくその『囮』は無事では済まない。
良くて撃沈、最悪の場合は本隊を釣り上げることすら叶わない可能性が高い。
そうなってしまえば白鯨は本隊と直接当たることとなり、そうなればこの計画の失敗は免れないだろう。
「本計画には『蒼き鋼』も参加することになっている」
その考えを見透かすように上陰は言葉を続ける。
『蒼き鋼』
統制軍関係者にとってそれは霧の巡航潜水艦イ401を示すある種の符号であり、この計画に軍務省がいかに本腰を据えて関わっているかを強く示すものでもあった。
数こそ少ないが、現状の日本が出す事のできる最大戦力とも言える彼らは太平洋で唯一霧を撃沈した実績を持つものであり、世界規模で見ても対霧において間違いなくトップと言える存在だ。
彼らならば、霧の艦隊も無視はできない。
巡航艦隊を釣り上げ、日本近海の包囲網に一時的なれど穴を開けてくれるであろう。
その穴に白鯨が首尾よく潜り込めるのかは、また別の話であるが。
結局のところ、軍務省が頷いている以上現場の白鯨に拒否権はなく、白鯨は積み込めるだけの食料とダミーとして持たされた空の資料を積み込んで霧の海上封鎖以降前代未聞の太平洋横断へと赴くために釜に火をつけた。
ここで時間は進み、冒頭へと繋がる。
出港直前の緊張や不安とは裏腹に、大戦艦2隻との戦闘という想定外にもほどがある船出から始まった太平洋横断計画は東洋艦隊の内乱騒ぎなどいくつかの脅威に直面しながらも順調に進み、計画は後半に差し掛かろうとしていた。
つい先程白鯨は401の艦長である千早群像から振動弾頭のサンプルと資料の本物を受け取り、今後の予定を確認するための対談を済ませて群像が戦闘海域へ赴こうと白鯨から離艦しようとしていた頃、それは起こった。
その巨体に見合って決して狭いとは言えない白鯨の艦内に腹に響くような重厚な爆発音が鳴り響く。
間を空けずにこの白鯨の艦長である駒城大作の直ぐ側に設置されていた艦内通信用の機器が大きな音を立ててその存在意義を主張した。
「どうした」
咄嗟に機器を手に取った駒城がそう問うた直後にもう一度先程と同様の爆発音が響き、白鯨の巨体が身じろぎをするように震える。
《魚雷が炸裂しました、発射は4秒前》
「位置は?」
《確認しています―距離約1600、方位2−1−2》
ひとしきり揺れが落ち着いた後、通信器機を装着し直した駒城の耳が管制室からの報告を聞きっ取った。
帰ってきた言葉が示すのはこの白鯨の南南西、然程遠くない距離に魚雷を撃ってくるような何かが存在するということだ。
現実逃避をするまでもなくその何かとは霧の艦艇であり、それはつまり霧に白鯨が探知されたことを表していた。
探知、即ち――死
昔馴染みの上陰が今回の太平洋横断の心構えとしてそっと耳打ちしてきたその言葉が脳裏に思い浮かぶ。
その言葉は決して誇張や脅しなどではないことは、この艦の姉であった白鯨Ⅱの最期が証明していた。
一度探知されてしまえば有効な反撃手段を持たない白鯨に対抗する術はなく、ただ撃沈を黙って受け入れるのみ。
唯一可能性があるとするならば千早群像がここに来るまでに用いたオプション艦マツシマだが、彼曰く純粋な戦闘艦ではないマツシマでは霧の艦艇との直接戦闘は無理があるらしい。
いざとなれば戦えないこともないそうだが…正直あまり期待しないほうが良いだろう。
心の裏のそうした焦燥を気取らせないように押さえつけながら群像へ離艦待機の要請を入れたところ、あちらも独自に状況を理解しているらしく特に問い返しもなく了承の返事のみが返された。
「ブリッジ、状況を確認! 場合によっては動くぞ」
《艦艇クラス確認、霧の駆逐―――》
そこまで言ったところで、ブリッジからの通信の声が唐突に途切れる。
駒城はブリッジに向かって早足で歩いていた動きを止め、視線を耳元へ回しながら何かしらの非常事態が置きたのであろうブリッジへと意識を移す。
《そ…それが…距離1700、方位1―9―4から魚雷発射音、感4! 駆逐艦へ向かいます!》
「 ブリッジへ向かう! 大至急情報の精査、それとこちらでもその様な艦がいるか千早艦長に問い合わせる!」
《了解――ッ! 駆逐艦迎撃航路で魚雷、感2! 交差まで後7、6、5、4、3、2、1、交差します!》
ブリッジ組員のカウントダウンが終わりを迎えると同時に、先ほどまでとは比べ物にならないほどの轟音が轟き、艦体が悲鳴を上げるように軋む。
繰り返しにはなるが、この海域に他の人類艦が存在するはずがない。
よって解析は終了していないが後者の艦も霧の艦艇であると考えるのが自然であるが、そうなってくると不可思議な事態が現出する。
先ほど会話に参加していたヒュウガが言外に匂わせた通り、霧の艦艇は本質的に機械であると同時に兵器であり、本来同士討ちなどありえない。
しかし先程の報告は間違いなく霧同士の戦闘を思わせる内容であり、先日のレパルスの一件といい霧の内部でも何か歪な変化が起こっているということだろう。
《解析終わりました、霧の重巡洋艦…いえ、恐らく巡洋戦艦クラスかと思われます!》
件のレパルスと同じ巡洋戦艦クラス、だが言い淀みから察するにレパルスが持っていた機関音とも異なる独自の機関音を持っているのだろう。
話は戻すが、レパルスの一件と今回の戦闘には一つ大きく異なる点が存在する。
レパルスの件は動きからあくまで突発的な艦隊内のいざこざということで説明できないこともないが、今回は間違いなく仮称巡洋戦艦が駆逐艦に対して明確な敵意を示している。
《駆逐艦、巡洋戦艦からそれぞれ、量子通信で本艦にメッセージを》
「メッセージだと…読め」
《駆逐艦からは『そこにいるのは分かっている諦めて本艦と接触してください。お願いします、東洋艦隊駆逐艦戦隊ヴァンパイア』これを繰り返していましたが、先程の攻撃後は沈黙しています》
同一の通信を連続して送信…居場所に関しては詳細に把握しているわけではないのだろうか?
副長がそうした推測を零すが、希望的観測ともとれるそれを鵜呑みにするわけにも行かない。
「巡洋戦艦からはなんと?」
《それが…その…繋ぎます》
困惑したようなブリッジ組員の言葉の後に、駒城のデバイスからSoundOnlyと表示されたウィンドウが立ち上がる。
《お、繋がった。…白鯨とやら、聞こえるか? オレは北洋方面艦隊所属、大型巡洋艦アラスカ。
アルペジオの二次創作で学園祭を描写しているものって本当に少なくて……
戦闘詳報の2巻が手に入り次第番外編を書く…かも。
つづく…
…のが待ち切れない人は自分で書くんDA☆
ただしそれを読む分こっちはさらに遅れるものとする。
ムサシ追撃戦、GKちゃんは?
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参加
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不参加(ティルピッツ主導)