超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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今回ちょっと短いです


あと読みにくい……かも…


第四十四話

某日 横須賀 第四施設跡地

 

「しっかし、ここも変わらないね」

 

 若干キレ気味のコトノに呼び出された私は現在進行系で瓦礫の山に手をかけつつ嘗ての大火の傷跡を色濃く残す第四施設の奥深くへと潜っていた。

 呼び出しをかけるのなら目標地点へのルートぐらいはしっかりして欲しいものである。

 

『まったくだ、特にあの車椅子の御仁など、進むこともままならんぞ』

 

 なんとなく嫌な予感がしたため、通行の障害になりそうな大きめの瓦礫を中心に端へ寄せたりそれも不可能なものはメンタルモデル自慢の膂力によって砕く。

 時折空中をふわふわと巡回する球体とすれ違うのでコトノにもこの様子は伝わっているだろう。

 

『む? 我の意識が表層に影響を……? …なるほど、地下の()の影響か』

 

 クイズ大会は負けた。

 い、いや、わざとだし? 優勝しちゃうと表彰式辞退しづらいからわざと手を抜いただけだし? 本気でやってたら私が勝ってたから!

 

『不思議だな、我のメモリによればあのときの私の思考回路に意図的なラグは存在しなかったはずだが』

 

 やめだやめ、一人でこんな話しても虚しいだけだし。

 さっさとコトノの所に向かおう。というかこれ以上遅れたら何言われるかわかったもんじゃない。

 

 霧の介入があったとは言えあの事件の後十七年も当時のままで放置されていただけあって、エントランスホールだったであろう広間から少し進むと電気も通っていない暗闇が身を包んだ。

 時折天井に空いた穴から太陽の光が筋のように差し込むが、それでも全体を通して不気味な雰囲気であることに変わりはない。むしろその光による明暗がより()()()を際立たせている気がする。

 

 お化けの一匹や二匹平気で出そうな感じだ。

 

『我を亡霊とは生意気な。もし仮にそうであればその亡霊の身体を嬉々として乗り回す私は何者だというのだ?』

 

 そんなことを考えているうちに第四施設の最深部、潜水艦用の埠頭があったフロアへと足を踏み入れる。

 ボロボロの階段を降りきってまず目に入ってきたのはここまでにうんざりするほど転がっていた瓦礫や燃えカスが蝶番を挟んでかろうじて手を繋いでいるだけのドアとは似ても似つかない金属質の光沢を持つ巨大な壁だった。

 その随所にはまるで自分たちの縄張りだとでも言わんばかりに霧の紋章が刻まれ、この先が人類の理解が及ばない一種の異界であることを示していた。

 

 原作と同じ形だけど、やっぱりこれまでのお化け屋敷的恐怖とは別の意味で怖い。

 

 というか、これどうやって開けるの?

 えーっと、原作だと……402が中に声をかけて開けてもらってたっけ?

 

 いや、タカオにお披露目したときはそのまま開けてたから何かしらパスみたいなのが必要なのか?

 

『それには及ばん。この程度、我であろうと私であろうと片手間で解錠できる』

 

 金属質と見慣れたコンクリートの間で、ガコンとなにかが落ちるような音が響いたかと思えば、複雑に絡み合ったような構造をした壁面が動き出し、内部への道を拓いた。

 

 『我が使用できる演算領域も拡大しているな……やはり()()()()()()に関してはこれまで通り我がサポートする必要があるな。何、この世界の未来を見るなどと大言壮語を並べたのだ、協力してやらねば同居人として不義理であろうよ』

 

 中にいたのは予想通りコトノとヤマトの二人組だった。

 二人は何処か驚いたような目線でこちらを一直線に見てくる。

 

「ごめん、クイズ研のところの大会に夢中になっちゃってて……」

 

「それはいい……いやよくないけど、今どうやってそこの扉開けたの?」

 

「どうやってって……私は触ってないからそっちが開けてくれたんじゃないの?」

 

 どうやっても何も、それを考えていたら突然開いたんだけど。

 てっきりカメラかなんかで私が着いたことを知ったコトノあたりが気を利かせて、というか一刻も早く遅れてきた私をしばくために開けたのだと思っていたけど、あの様子を見るに違うのか?

 

アクセス履歴も残ってない……一体どうやって?……なんでもないよ、そう言えばそっちの二人はどうしてるの?」

 

 そんなバレバレの小声使わなくても良いんじゃないか?

 メンタルモデルの聴力舐めんなよ?

 

 しっかし、あの様子を見るにコトノが開けたわけじゃなさそうだけど、そうなると一体……

 何度も言うが私は壁に触れてすら無いし、何よりあんな壁の解錠方法なんて見当もつかない。

 

 こういう時に疑うべき事象は経験則的にただ一つ。

 

 原作外の存在(イレギュラー)である。

 

『イレギュラーは(お前)の方だろうが』

 

 私達北洋方面艦隊を筆頭に、元欧州方面艦隊所属のコンカラー、同じく欧州方面艦隊のソビエツキー・ソユーズ率いる秘匿艦隊と、この世界に存在するイレギュラーは挙げようと思えばいくらでも挙げることができる。

 

 誰だ?

 

『何を今更、数えるまでもない最大のイレギュラーが眼前の小娘の目の奥にいるだろう?』

 

 ……候補が多すぎるものを考えても仕方がない。そもそも、この時点においてそれらがどのような影響を与えているのかすら最早私の理解の範疇を大きく超えている。

 恐らく起こるであろうビスマルクとムサシの仲違いでさえ、現状はまだ不確定な推測に過ぎない上、私はそのシーンを()()()()()

 

 少なくとも此処から先の大西洋において、私の演算領域に刻まれた記憶(原作知識)は役に立たないものと見るべきだろう。

 

『そもそも我や私がいる時点でそのようなものをアテにする方が間違っていると、我は再三咎めたうえでビスマルクの推測も手助けしたのだがな。――ここまで()に近づいた状態でも我の及ぼせる力の範囲がこの程度だとすると、やはり私との直接交渉はかなり先になりそうだな』

 

 原作知識が役に立たないとすると、信じられるのは正真正銘私の演算領域だけだ。

 今まで以上に世界情報とその裏に隠された真意を見抜いていく必要がある。

 

『それに関しては、引き続き我に任せておけ。尤も、我にできるのは精々が自問自答の返答役くらいだが……少なくとも私の突飛な思いつきよりは上等なものを約束しよう』

 

 それはそれとして、私が今いるのは横須賀は第四施設跡である。

 地球の反対側のことなど、考えてもしょうがない。

 極論、北洋方面艦隊と氷山港に被害が出なければそれでいい。

 

『全くもって、理想論だな。敵を全滅させることより被害をゼロにするほうが何倍も成し難いことぐらい『大海戦』で私も分かっているだろうに。』

 

『だが、それが良い。この世界で理想を呟けるようなロマンチストに我は手を貸しているのだからな。』

 

『私のアーカイブ(記憶)を見る限り、こういう状態を『惚れた』と表現するのだったか? 全く、人類の言葉とは情緒豊かなものだ』

 

「二人…って言うと、イブキとクラマのこと?」

 

 現在彼女達はこの学園の生徒としての身分で行動しているので、恐らくは学園のどこかにはいるだろうが、それが一体どうしたというのだろうか。

 

「あの子達もそろそろこっちに呼んでくれるかな。ハルナちゃんたちが動き出した」

 

「タカオ達がもう妨害に入ってるんじゃない?」

 

 原作中でもタカオ達だけでどうにかなっていた。

 未知のイレギュラーの存在が仄めかされた今、ここでイブキたちを投入することはなるべく避けたい。経験値的にもタカオたちのように不安があるわけでもないし。

 

「いくらあの子達でも流石に大戦艦3隻は厳しいだろうからね」

 

「……3隻? ハルナとキリシマと……誰?」

 

「大西洋から来た子が協力してるみたい。ハルナちゃんはあれで友だち作りが上手いね――エレちゃんと違って」

 

 うっさい

 

『そういうところではないか?』

 

《イブキ、今何処にいる?》

 

 コトノの言葉に返すものを見つけられなかった私は、彼女から目を逸らしながらイブキへと通信をかける。はて、イブキたちは何処かクラブに入っていただろうか。

 

 私?

 帰宅部だが?

 

『帰宅部……ふむ、家へ帰ることを目的とする……何もやっていないではないか』

 

《ええと、今施設の外でタカオと合流したところですけど……またなにかありました?》

 

 あまり長くない無音の後に返ってきたイブキの言葉には間違いなく困惑の感情が多分に含まれていた。

 

 そして、その言葉を受け取った私の顔もまた困惑に歪んでいるのが何処か他人事のように理解できた。

 

《また? 私はそっちに何も言っていないはずだけど?》

 

 元々イブキたちは施設の一件に関わらせることなく周囲の警戒に終始させるつもりでいた。

 今朝にその旨をイブキに伝え存分に学園祭を楽しんでこいと送り出した後には彼女らの青春の邪魔をすると悪いので特に連絡入れてなかったはず……

 

《え? ついさっき旗艦様が増援が確認されたからタカオと合流しておけって言ってきたばかりじゃないですか》

 

《あ、あぁ、ごめんごめん、忘れてた。そのままタカオ、アタゴと合同でハルナたちの妨害にあたって。ただし、妨害優先で最悪入られてもいい。存分に暴れてきていいよ》

 

「……これでいいよね?」

 

 原作でもコトノは実践訓練の様なものだと考えていたみたいだし、イブキたちも無理に戦わせるべきでないだろう。

 確認を取るようにコトノの方に目線を戻してそう問うが、それに答えたのは珍しくヤマトの方だった。

 

「えぇ、彼女達にもこの景色を見る権利があるでしょう」

 

 そう言って背後を振り返ったヤマトの先には、それぞれ幾何学的な紋章が刻まれた石碑のようなものが三つ並んでいた。

 中央はヤマト、右にはムサシの紋章が刻まれているので、恐らく左の石碑に刻まれた勾玉を模した紋章がシナノのものなのだろう。

 

 また、三つの中でムサシの紋章が刻まれたものだけ、その右上部が折れて焼け焦げた床に転がっていた。

 それの意味するところは全くもって不明だが、ヤマトの目線に籠もるなにかから言って、とても重要な意味を持つのだろう。

 

《この前使えなかったアレは使っちゃだめ?》

 

 イブキとともに行動しているのであろうクラマが通信に割り込んで無邪気な声でそう聞いてくる。

 この前、というのは十中八九マヤへの威嚇射撃のことだろう。

 

《絶対駄目。あれはシミュレーション……いや、もしかしたら近いうちに使うことになるかもしれないからメンテナンスだけしておいて》

 

 ここからは私の知識によって戦闘を避けることができなくなる。

 ビスマルクがどう動くのかが目下の課題だが、戦闘になった際にイブキたちの火力は十分に頼りになる。

 

《オッケー! さっすが旗艦様、話が分かるぅー!》

 

《……イブキ、ちゃんと見張っといてね》

 

《ぜ……善処します……》

 

 自信なさげなイブキの声を最後に、概念通信による連絡が途絶えた。

 

 

 

 

 私はそのような通信など入れていない。

 

『我もまさか我単独での通信が行えるほどに主導権が戻っているとは思わなかったな』

 

 最初の時点でどれほどその言葉が出かかっただろうか、少なくとも喉元数センチまで来ていたのは間違いないだろう。

 しかし、仮にあの場面でそれを口にすればいらない疑念をイブキたちにも伝染させかねない。

 

 イブキ達が通信を信じて行動したということは、恐らくその通信元の信号は私と同一であったのだろう。そうでなければクラマ……はともかくイブキが動くはずがない。

 

 私の演算領域に侵入できれば私の名を騙って動くことは可能ではあるが、言うまでもなくそれには私の情報防壁を破る必要がある。

 演算領域には原作知識を筆頭とした最高機密が数多く存在するためにその防御も極めて固くなっている。

 不自然なログも見当たらないし、侵入されたとは考えづらいだろう。

 

『何を隠そう、この我がシステムの管理をしているからな。私のアーカイブに存在した攻性防壁とやらも参考にさせてもらったぞ』

 

 残る可能性は私がトチ狂って通信を入れた可能性だが、今朝からの記憶がはっきりしている以上それもない。

 

 

 

 一体、誰が?

 

『もう少しで私とも話ができそうだが……まぁ、焦らずに行こう。見ているだけでも十分楽しいからな』




40連でヨークタウンⅡが3枚……?


私は未来で最悪な死に方をしてしまうのでしょうか

ムサシ追撃戦、GKちゃんは?

  • 参加
  • 不参加(ティルピッツ主導)
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