超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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できたぁ!!


第四十八話

某日 横須賀 旧第四施設

 

 

「あー……見破られちゃったか。こっからどうする?お姉ちゃん」

 

 屋上に備え付けられていた柵に手を掛けて戦闘を観察していたクラマが振り返ってそう尋ねた。

 その背後では、スィノプがあり合わせの材料で構築した砲塔が首を振るたびにイブキの制御するデバイスが文字通り吹き飛ばされていた。

 

「やらかしたのはタカオかアタゴか、どっちにしても面倒なことを…」

 

 先程まで彼女たちはなぜだか第四施設に存在する多量のナノマテリアルを用いて、施設内への侵入を目論むキリシマと手を組んだスィノプの阻止にあたっていたが、数秒前にスィノプが突如その動きを止めたかと思えば、周囲に散らばるナノマテリアルを捲き上げ自身の武装としてしまった。

 

 本来ナノマテリアルはイニシャライズ――つまりは初期設定として保有者が使用権利を持つようになっているのだが、ここ第四施設に散らばるナノマテリアルにはそれらが行われておらず、いわば早いもの勝ちの状態にあった。

 

 重巡クラスのコアが持つ演算力ではその全てを支配下に置くには到底足りないため、破壊され崩壊した分を随時補給する形で運用していたが、それはつまり敵味方問わず足元に武器となる資材が転がっているに等しく、スィノプがそれに気づいてしまえば今現在眼前に広がる光景のごとく純粋な演算力の差からくる出力差を覆すことは困難であった。

 

 一応、イブキらにも火力差については十分以上に対抗できる方法はあるのだが、それは前もって使用を止められていた。

 

「撤退するよ、こっからは遅滞戦闘のつもりで」

 

「もう? 早くない?」

 

 クラマが予想していたよりも早く、そして迷いなく撤退の判断を固めたイブキはそそくさと準備をまとめると建物内部へと歩を進めた。その右手にもったバックには空になったコーヒー缶がパンパンに詰め込まれ歪な形状をしていた。

 

「あのレベルの火力出されたらこっちじゃ対抗できない。それに――」

 

「それに?」

 

 オウム返しに問うたクラマの方へイブキが顔を向けた直後、イブキが展開していた武装の中でも大きめのサイズのものがスィノプの武装から発射されたビームに貫かれ爆発を起こす。

 

「――クレーンはビームとか撃たないし、爆発なんてしない」

 

「あ~……確かにあれをただの工事で誤魔化すのは無理かも」

 

 その様子を見て納得したクラマも広げていたアルバムをぽんと閉じるとイブキに続くように建物に足を向けた。

 

「分かった! じゃあ今ある分はもう使い切っちゃうね!」

 

「えっ、ちょ――」

 

 直後、クラマが展開していた観測デバイスが一斉にスィノプへと向かい、その全てが迎撃され一際大きな爆発を起こした。

 

「お〜…お見事お見事」

 

「……あまり派手にしないようにって言った気がするんだけど」

 

 

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某日 太平洋南方海域

 

 

 この海域の環境特有の気候現象であるスコールによって齎された雨が轟音をたて荒れ狂う海面を叩きつけるように打つ中、それとは対称的に一切の音が存在しない静寂の深海では二隻の巨大な艨艟が海流に乗せられてその身を漂わせていた。

 向かう方角は東。目的は白鯨の救援。人類の潜水艦の援護という霧の艦隊にとって前代未聞……というわけではないが、ここ数年では考えられなかった行動を起こしていた。

 

「それにしても、一体どういう風の吹き回しですか?ループレヒト。以前の貴女ならこのような事をするような性格ではなかったと思いますが」

 

 海中を進む二艦の内の一人、元霧の東洋艦隊所属の大戦艦レパルスの声が暗い海の中で響く。

 彼女とその後方に付き添う同じく元霧の東洋艦隊所属の大戦艦フランチェスコ・カラッチョロは数日前までプリンス・オブ・ウェールズの放った追手から逃れるためモルッカ諸島の無人島にその身を寄せていたが、とある通信をきっかけにそのある種悶々とした日々は唐突に終わりを告げた。

 

 レパルスのみに送られたその通信は極めて単純で、だからこそ送り主の意図も明確すぎるほどに読み取ることができた。

 

『風の吹き回し……()()()()()、ということでは納得しないかしら?』

 

 件の通信の送り主であり、現在進んでいるこの海域の支配者でもある南洋方面艦隊旗艦、大戦艦プリンツ・ループレヒトは隠密行動を行っていたレパルスの小さな呟きにさも当然かのように言葉を返すが、その内容は曖昧で、情報の正確さと確実性を至上命題とする普段のループレヒトから感じられる印象とは正反対のものであった。

 

 だがループレヒトが何の理由もなしにこのような迂遠な言い回しをした理由はただ一つ。レパルスであればこの言葉の真意を見抜いてくれるという信頼とも言うべき何かであった。

 

 なお、普段なら真っ先に『何のことを言っているんだ』と口を挟んで来るだろうカラッチョロは島を出てしばらくした時に

 

『――暇だ。寝る。なんかあったら起こしてくれ』

 

 とだけ残してレパルスの航路をトレースするプログラムだけ組んでスリープモードへ移行してしまった。

 

「……まさか、あの時のことをまだ――」

 

『まだ数年しか経っていないから、気にしていないと言えば嘘になるわね。良くも悪くも、あの事件は印象に残っているわ』

 

「だったら――」

 

『でも、それとこれとは別』

 

 その意図の通り、レパルスは言葉の裏に刻まれた文字を正しく読み取り、だからこそ驚愕した。

 レパルスの記憶の中では、あの事件の後に行われた古巣の解体に真っ先に賛成したのはループレヒトであり、その彼女が未だにあの事件に囚われているとは思いもしなかった。

 この数秒間で何度も反転する彼女の印象にレパルスが動揺を隠せずにいると、とっさに発した言葉に被せるようにループレヒトはその口を開いた。

 

『確かに、あの子……ハインリヒは例の一件と関係ない。でも、だからこそ貴女たちにあの子を負かせてほしいのよ。あの子に、敗北を教えてあげてほしいの

 

……正直、貴女達は余計になるかもしれないけど』

 

「余計?人類の潜水艦が実践経験がないとはいえ大戦艦を退けると?」

 

 とある理由から嫌でも霧同士の実践経験を積まされた()()とは異なり、東洋艦隊や南洋方面艦隊は言ってしまえば閑職。しかしながら東洋艦隊はその多くが()()の関係者であり、だからこそレパルスらの叛乱に敏感に反応した。

 だが、現在の南洋方面艦隊に所属する古巣の関係者はループレヒトのみ。

 解体後の再編成を行ったビスマルクがいかにループレヒトを脅威としていたかがよく見て取れた。

 実のところビスマルクが脅威とみなしたのはループレヒトの戦闘能力そのものではなく、彼女の持つ一種のカリスマとも言うべき指揮能力であった。だからこそ他の艦とは違い単艦で南洋方面艦隊へと送ったのだが、彼女は瞬く間に当時旗艦であったハインリヒをその傘下に加え、転属から僅か数日で現在の体制を構築してみせた。

 

 ビスマルクにとって幸いだったのは、ループレヒトの目指した体制が第二の北洋方面艦隊ではなくどこまでも受け身を貫く物だったことだろう。

 

『とぼけなくても分かっているわ。いるのでしょう?アラスカが』

 

「……どこでそれを?」

 

『管轄海域の最外縁とはいえ、あんなデカブツを私が見逃すわけないじゃない』

 

 ループレヒトの持つ旗艦装備による索敵範囲は北米艦隊や欧州方面艦隊など巡航艦隊を複数抱える大規模部隊よりは狭いものの十二分に広大な支配海域を覆い尽くして尚余りあるものであり、東洋方面艦隊の巡航部隊の目から逃れるために迂回航路を取っていた白鯨とその後方を追跡する大型艦を補足することは極めて容易かった。

 その上、白鯨の持つ特殊装備である微細動タイルの動作パターンは横須賀港海戦で対峙したハルナによって統合戦術ネットワーク上に共有されておりその特徴的な動きは水面下を静かに進む巨大な物体を白鯨だと同定するのに一役買っていた。

 

 そんな訳アリの人類艦をかなりの距離を開けつつも追跡する大型艦。統合戦術ネットワーク上にはどこもそのような艦を派遣したという情報はなく、ループレヒト自身の情報網でもってしても各方面艦隊から不自然に消えた艦は確認できなかった。

 

 となれば、その派遣元は一つしかない。

 単冠湾に展開している東洋方面艦隊の海域強襲制圧艦群の索敵ラインが機能していないことは先日の東洋方面第一巡航艦隊の戦闘中に発生した北洋方面艦隊からのものと思われる介入によって既に明らかになっており、大型艦が北洋方面艦隊の関係ではないことの証拠にはなり得なかった。

 

 その上、先述の横須賀港海戦に前後して、沖合での待機を命じられていた重巡洋艦マヤが興味深い報告を上げていた。

 

 曰く『なんか大っきい船がいた…かも、すぐ消えちゃったから沈没船か何かだと思うけど……』

 

 当時立場上マヤからの報告を直接受けたキリシマは沈没船かもしれないとしたマヤを全面的に信頼し特に追加の調査を指示することもなかった。

 まぁ、あの時点では北洋方面艦隊は表向き静観を保っていた上、キリシマらに与えられた目標はあくまでイ401の撃沈であり他の事象、それも外洋に待機させていた巡洋艦が文字通り数ピコ秒だけ探知した何かに態々かまっている余裕はなかったので、一概に彼女たちの怠慢だとは言えないところではある。

 

 ともかく、ループレヒトは誰にも見られることなく戦闘フォルダの中で薄く埃が積もっていたこの情報に目をつけた。

 それによれば、探知された艦影は約250m。巡洋艦としては極めて大型であるが、戦艦としてみれば小型に過ぎた。

 

 であるならば、レパルスなどと同じようにある種中途半端な規格の艦であろうと当たりをつけたループレヒトはハインリヒを通して北米方面艦隊に探りを入れていた。偶々ちょうどよく戦力派遣の依頼を受けていたために北米艦隊が選ばれただけであり、ループレヒトとしても特別調べる方法や順番について意図があったわけではなかったが、意外にも彼女は一箇所目で特大の当たりを釣り上げた。

 

 大型巡洋艦グアム

 アラスカの妹にあたる彼女の各種諸元は姉と似通っており、それらはマヤが報告した謎の大型艦と大部分が共通していた。このことから現在白鯨を追跡している艦はアラスカであると断定したわけだった。

 

 通常ならキリシマがそうであったように重要な情報だとは見做さなかったり特に興味を示さなかったであろうが、彼女のことを知る各所が彼女を覗き魔と称する由来となった情報に対する貪欲さが本来なら当事者であるレパルスらしか知り得ないであろう情報を掴ませたのだった。

 

 もしかしたら、東洋方面艦隊の某元巡航艦隊旗艦とその麾下であった艦たちのように自身の上官に似た奇特さも理由の一つと言えるのかもしれない。

 

「……まぁ、それはいいでしょう。貴女に何を言っても今更でしょうし」

 

『あら、よく分かってるじゃない』

 

 もちろん裏側であったそんな苦労はおくびにも出すこともなく、ループレヒトとレパルスの会話は続いた。

 

「で、結局どうして今更ハインリヒに実戦を積ませることにしたのですか?」

 

『そうね……勘、って言ったら笑うかしら?』

 

「えぇ、よりにもよって貴女が、そんな不確実なものを根拠に動くとは思えませんし」

 

『でも、人類にとってはいたく重要なものらしいじゃない。勘って』

 

 ループレヒトの口から飛び出した勘という言葉に本日何度目かのたじろぎを見せるが、通信越しでも伝わる声音の真剣さからそれが嘘偽りでないことが十分に察せられた。

 

「まさか……本当に?」

 

『私がそんな事を言っちゃまずいかしら? とにかく、あの潜水艦が太平洋横断に成功すれば、間違いなく世界は変わるでしょうね。それがいい方向か悪い方向かは、まだ分からないけど』

 

 レパルスとて、白鯨と401が協力して何かを運搬しようとしているのは知っていたが、言葉から察するにループレヒトはさらに深く、それこそ何を運んでいるのかさえ知っていそうな雰囲気であった。

 

『そうなった時に信用できるのは結局のところ自分自身よ。だからこそ、信じられるだけの経験が必要なの、例えそれが、苦い敗北であったとしても』

 

「まさか、貴女――」

 

『ここを捨てるつもりはないわよ。なんだかんだここは居心地も悪くない』

 

『お互い、頑張ろうじゃない。裏切り者の元部下として』

 

「……あの人、今どうしているんでしょうね」

 

『さぁ? 流石に()までは目が届かないからわからないわ』

 

『意外に、人類相手に商売でもしてるんじゃないかしら』

 

「それも勘ですか?」

 

『勘よ』

 

 




ラファエロのスキル難しすぎて何言ってるか分からぬ

ムサシ追撃戦、GKちゃんは?

  • 参加
  • 不参加(ティルピッツ主導)
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